「ただいま…」
「おかえりなさい…?」
 カウンターの中で洗い物をしていたティファは、
『どうしたのかしら…』
 看板娘がすこぶる不機嫌な顔で帰ってきたのを見て、首を傾げた。


赤い糸


 時刻は現在夕方の4時前。
 いつもは4時半過ぎ頃に帰宅し、店の開店準備を手伝ってくれている。いつもよりも早い帰宅な上、今夜はクラウドが3日ぶりに帰宅する予定だった為、店はお休みにする事になっていた。
 それなのに、いつもよりも早く、しかも不機嫌な顔をしているところを見ると、友達と喧嘩でもしたのかもしれない…。

 もちろん、もしも喧嘩をして帰ってきたとしても、マリンが一方的に悪いとは考えられない。
 マリンほど、優しく、思いやりがあって、明るい良い子はいない!そうティファは考えている。
 おまけに、将来が楽しみな程、可愛い顔立ちだ。
 ティファは、内心で『マリンが世界中の子供達の中で一番可愛いわ!!』と常々思っている。
 ようするに、輪をかけて『親バカ』なのだった。

 その可愛くて仕方の無いマリンが、不機嫌な顔をして帰宅したのだ。
 気にならないはずがない。

 ティファは、カウンターから出ると、マリンの真正面にしゃがみこんだ。
「何かあったの?」
 マリンは顔を覗き込まれると、「別に…」と視線を逸らして俯いた。
 その『何かありました!』と物語っている姿に、ティファは優しく口元を緩ませた。
「何も無かった…って顔じゃないけど?」
「…………」
「ね…?誰にも言わないから、悩んでるなら話して?私達、家族でしょう?」

 ティファの『家族』という事場に心を動かされたらしいマリンは、チラッとティファの顔に視線を流した。
 そして、ティファの優しい笑みに、こっくりと頷く。


「……あのね。さっき、友達とおしゃべりしてたの…」
「おしゃべり?」
 マリンをソファーに座らせ、ミックスジュースを作ってやってからじっくりと話を聞く事にしたティファに、マリンがポツポツ話し出した。
「うん。…それでね…」
「それで…?」
 焦らず、ゆったりと構えるティファに、ついっと顔を上げてマリンが目を合わせる。
 
「ティファ…『赤い糸の伝説』って知ってる…?」
「え…?『赤い糸』?赤い糸って、自分の運命の人の小指と自分の小指を結んでいるっていう話の事…?」
 唐突な質問に目を丸くし、まじまじとマリンを見つめる。
 マリンは、ティファの言葉にコクンと頷くと、再び視線を逸らして俯いた。
 ティファは、マリンのその言動に、たちまちのうちにマリンの抱えている問題の80%を理解した。

 友達は、赤い糸の伝説について、まことしやかに話をし、それに対してマリンが反論、友達の大多数から反感を買ってしまった…というところではないだろうか…。
 何といっても、我が家の愛娘は『realist』なのだ。
 ロマンとか、夢とかとは、少々離れた世界観を持っている。
 その娘のことだ。きっと、赤い糸の伝説もサクッと現実的主観から切って捨てたに違いない…。

 本当に、とてもとても可愛い娘なのだが、こう、もっと…、何と言うか…夢見る少女でいても良いのではないだろうか…?
 いや、そうでないといけない気がする…。
 しかし、店の手伝い等で、大人の世界を早くから見せてしまったせいだろう…。
 どうも、子供らしからぬ大人な考えを身に着けてしまっている。
 この事を考えると、本気で悩んでしまうティファなのだった…。

 だがしかし!
 今は、目の前の憂い顔を晴らす方が優先課題だ。

 さて…何と切り出すべきか…。

「マリンは、『赤い糸の伝説』って好きじゃないの?」
 ティファの言葉に、マリンはコックリと頷いた。
『やっぱりね…』
 自分の予想を裏切らない反応にティファは苦笑する。
 マリンは、じっと床を見つめている為、そんな自分の表情は見えていないが、恐らく気配で分かるのだろう。悲しそうな声で、
「やっぱり、私が変なのかな…」
と、呟いた。
「どうしてそう思うの?そういうものは、人それぞれじゃない?」

 ティファの言葉に、マリンは口をキュッと結ぶ。
 何だか、よほど悔しい事でもあったのだろうか…?
 マリンの仕草に、そう思ったティファは、以前友達と『童話』についてひと悶着あった事を思い出した。
 確か、あの時も「私って変かな…?」と、大変自信を失っていたものだ。
 今回も、『童話』の時と同じ様に、友達と自分の持っている考え方の相違で悩んでいるのだろう。

 子供とは純粋な分だけ残酷になる事がある。
 自分の意見を率直に言ってしまう為、相手を傷つける場合がある事を悟りきっていない。
 そんな子供同士の喧嘩に、時にはその家族が相手の家族へ苦情を言う事も特に珍しくない。
 恐らく、こうして傷つき、傷つける事によって、人間関係を作り上げていく基礎を子供の頃に学ぶのだろう。
 そして、マリンは丁度、その時期を迎えている。
 今、この子供時代を傷つけ、傷つけられる経験をする事によって、大人になった時に周りの人間を幸せにする女性になる為に…。

 マリンが悲しむ顔は勿論見たくない。
 しかし、こう考えると、この今という時期に経験している出来事が、とても大切なものだとティファは感じている。
 きっと、マリンも大人になった時に振り返ってそう感じてくれるだろう。
 何しろ、こんなに聡い子供なのだから!
 きっと、大人になればなるほど、もっと聡明になるに違いない!!

 ティファは、悲しげに俯くマリンの顔を見ながら、一人、感慨にふけっていた…。
 そして、一人胸の中で親バカ振りを発揮していたりする。

「ね?別にマリンが信じて無くっても、友達が信じてても、別にどうってことないって思うんだけど、マリンはどうなの?」
「……私もそう思う…」
 ティファの言葉に、マリンは俯いたままだったが、ポツリと返答した。
 ティファは、にっこり微笑むと、
「ね?だったらそれで良いじゃない?きっと、友達も明日になったら今日の事なんて忘れてるわよ」
と、明るく言った。
 しかし、マリンは顔を上げてティファを見ると、目を潤ませた。
「違うの!そうじゃないの!!」
「え?何が、そうじゃないの……?」
 マリンの思わぬ反応に、目を丸くするティファに、マリンは堰を切ったように口を開いた。

「だって、またジェイミーがバカな事言うのよ!!」
「ジェイミーが…?」

 ジェイミーとは、『ピンチになったら助けに来てね』と、ティファが子供の頃クラウドに約束してもらった事と全く同じ事をデンゼルに要求し、マリンと喧嘩をした事のあるマリンとデンゼルの友達の一人だった。
 喧嘩してから数日後、ジェイミーのバースデーパーティーに御呼ばれし、その際に無事仲直りをしたのだったが、今日も何かトラブルを起こしたと言うのだろうか…。

 今では、マリンは顔をクシャクシャにしながら涙をポロポロ零している。

「だって、ジェイミーったら『私の小指の先にはデンゼルがいる』って言うの!!何の話かって聞いたら、赤い糸がデンゼルとジェイミーを結んでるんだって…!!つい、カッとなちゃって、『そんな『赤い糸』の話なんか、子供だましの絵空事だ』って言っちゃったの!!そしたら…!!」
「そしたら…?」
「私達はまだ子供なんだから別に良いじゃない!私は子供なのに大人ぶってて変だって言われちゃった〜!!」
 ピーピー泣き始めたマリンを、ティファは優しく抱きしめながら一種の複雑な心境を味わっていた。

 何故かと言うと…。

 確かに、マリンはまだまだ幼い子供なのだ…。
 ジェイミーの言う事は決して間違ってない…。
 むしろ、大人っぽい発言をするマリンは、子供達の中では浮いても仕方ないのかも…!?

 こう考えると、マリンがますます愛しく、いじらしく、そして可哀想になってきてしまった。
 普段から夜に店を開いているにも関わらず、手伝いをさせ過ぎ、その為大人の世界を見せ過ぎた代償かもしれない…。
 今夜はクラウドが帰宅するから、店を休むと前々から決めていたが、今後も少し検討しなくてはならないかも…。
 しかし、マリンもデンゼルも非常に自分の仕事に責任と誇りを持っているのを知っている。
 おまけに、子供達の手伝いがなくなると、正直店を営んでいくのはティファ一人ではきつい。

 泣きじゃくるマリンを抱きしめながら、ティファは途方にくれた。
 自分が子供の頃、友達と喧嘩した時はどうやって仲直りしただろうか、と思い出そうとするが、これと言って特に何も思い浮かばない。
 子供の頃の喧嘩は、大抵時間が解決してくれていたような気がする。
 それに、もともとあまり喧嘩をした記憶が無い。

 困った。
 このままではマリンがあまりに不憫だ。
 いっそ、クラウドに電話をかけて相談してみようか?
 いや、駄目だ。
 彼は子供の頃いつも独りだった。
 喧嘩ばかりしていたが、その後仲直りした、だなんて話、聞いた事無い。
 こんな相談を持ちかけたりしたら、嫌味にしか聞えないのではないか!?
 困った。
 本当に困った。


 その時。

「ただいま〜!ティファ、マリン帰って…、あ〜、やっぱりな…」

 デンゼルが帰宅し、ソファーでティファに抱きしめられて泣いているマリンを見て、ばつが悪そうな顔をした。
「おかえり、デンゼル」
 ティファがデンゼルに声をかけると、腕の中のマリンがピクッと身動きし、そのまま泣き止んでしまった。しかし、顔は上げずにそのままティファの胸の中でじっと息を殺している。

 そんなマリンとティファに、デンゼルは何となく落ち着かない素振りで近づくと、
「なあ、マリン…」
と、声をかけた。
 マリンは黙ったまま答えない。
 デンゼルは、困ったような顔でティファを見て、頭をガシガシ掻くとドカッと向かいのソファーに腰を下ろした。

「マリンさ…、どうせジェイミーの事だろ?」
「…………」
「あのさ。俺、ハッキリ言ってジェイミーの言った事なんか気にしてないからさ。だから、マリンも気にするのやめよう?」
「…………」
「ジェイミーだって、多分悪気があって言ったんじゃないと思うんだ…」
 このデンゼルの言葉に、それまで無言で身動き一つしなかったマリンが、ガバッとティファの胸から顔を上げると、キッとデンゼルを睨みつけた。

「何よ!デンゼルはジェイミーの肩持つの!!」
「な!?そんな事言ってないだろ!」
「言ってるもん!!」
「言ってないって!!」
「言ってるもん!じゃあ、悪気が無かったら何言っても良いの!?」
「…そ、そんな事言ってるわけじゃ…」
「だったら、どういう意味で言ってるのよ!!」
「いや、だからさ…」
「もういいもん!!デンゼルなんか大ッ嫌い!!」

 圧倒的に言葉でデンゼルと言い負かすと、呆気に取られるティファと、顔を真っ赤にさせて一生懸命言葉を考えているデンゼルを残し、マリンは子供部屋へ駆け上がってしまった。
 その後姿に、声をかける事も出来ず、二人はしばし無言で階段を見つめていたが、やがて二人同時に深い溜め息を吐いた。

「デンゼル…」
「何…ティファ?」
「詳しい話、聞かせてもらって良い?マリンからはまだほんの一部分しか聞いてないから…」
 デンゼルは、もう一度溜め息を吐くと、事の顛末を語りだした。


 詳細はこうだった。
 デンゼルと男の子数人がサッカーをして遊んでいる間、マリン達女の子はおしゃべりをしながら観戦していたらしい。
 しばらくサッカーをしていたが、疲れた為女の子達のいる所へ戻った際、ジェイミーがジュースを差し出してくれたそうだ。しかも、デンゼルにだけ…。
 その事を友人達が冷やかすと、ジェイミーが例の赤い糸の話を持ち出し、デンゼルと自分は結ばれているから、これくらい当たり前だ!と反論したらしい。
 それを聞いたマリンが、ティファの予想通り、赤い糸などくだらない迷信だ、と猛反論し、マリンの聞かせてくれた話に繋がり、現在に至るとの事だった…。


「………何だかそのジェイミーって、本当にロマンチストなのね…」
「………ロマンチストじゃなくて、思い込みが激しいんだと思うな…」

 デンゼルの話を聞き終えて、ティファが漏らした感想に、デンゼルが正直に自分の意見を述べた。

 確かに、思い込みが激しくなければ、友人達の前で『赤い糸で結ばれている』発言は出来ないかもしれない…。
 いや、それでも普通の羞恥心があれば、いくら子供でもそんな恥ずかしい事を友人の前で口に出来るだろうか……。

 しかし、さて困った事になった。
 マリンとジェイミーの話は分かったものの、解決策がない。
 どうやったらマリンが元気を取り戻してくれるのか、そして、友達と仲直りが出来て明日からまた笑って遊びに行ける様になるのか…。
 とてつもなく難問な気がして、ティファは溜め息を吐いた。



 結局。
 夕食の時間までマリンは下りてこなかった。
 帰宅したクラウドは、ティファから一連の出来事を聞き、マリンの顔を見に子供部屋のドアをノックした。

「マリン?」
 しかし、返事は無い。
 クラウドは、「入るぞ」と、声をかけてから、ドアをそっと開いた。
 子供部屋は、真っ暗だった。
 パチン、と電機のスイッチをつけると、ベッドに潜り込んでいたマリンが、顔を出さずにモゾモゾ動き、「おかえりなさい」と、くぐもった声を出した。
「ああ、ただいまマリン」
 クラウドは、苦笑しつつマリンの潜り込んでいるベッドに腰を下ろし、シーツの上からマリンの頭をポンポン叩いた。
「マリン、ティファとデンゼルが心配してたぞ」
「…………」
「なあ。マリンはデンゼルが嫌いなのか?」
「………嫌いじゃない…」
「じゃあ、俺とティファは?」
「………大好き…」
「そうか。俺もマリンが大好きだ」
 良かった、嫌われてなくて。

 そう冗談っぽく笑うクラウドに、漸くマリンは顔をそっと覗かせた。
 マリンの目はウサギの様に真っ赤になっている。
 クラウドは、そっとシーツごとマリンを抱き上げると、優しくマリンを抱きしめた。
 マリンの髪に頬を押し付け、ポンポン背中を叩いてやる。
 マリンは、そんなクラウドの胸に顔を埋め、クラウドの服をキュッと握ると、再び小刻みに震えて泣き出した。

「なあ、マリン。マリンは自分の運命の人がいたらいいな、って思った事あるか?」
 しゃくりあげているマリンに優しく声をかける。
 マリンは、何も言わなかったが、クラウドはそれを肯定と考えて話を進めた。
「俺も。あるって言うか、この子が俺の運命の人だったら良いなって考えた事があるよ」
 クラウドの言葉に、マリンがしゃくりあげながらそっと顔を上げた。
 そんなマリンの頬をそっと拭いながら、クラウドは照れ臭そうに笑って見せた。
「まあ、俺は今も昔も…て言うか、昔はもっと捻くれ者でさ。友達もいなかったから、好きになった子に自分の気持ちを伝えるなんて事、とんでもなかったな。だから、いっつも遠くからその子の事を見てたんだけど、いつの間にか、その子が俺の運命の人だったらどんなに良いだろうって考えるようになってたんだ」
 マリンは黙って聞いている。
「だからさ。その子が他の男の子と一緒に遊んでるのを見るのは、本当にイヤだったな。何か凄く悔しくて…。だから、ジェイミーって子も、きっと子供の頃の俺と一緒だと思うんだ」
 この言葉に、マリンはキョトンとした。
 クラウドはにっこり笑うと、マリンの鼻をチョン、とつついた。
「マリンがいっつもデンゼルと一緒にいるから、やきもち焼いてるんだ。だから、つい意地悪言ったんだと思う」
 マリンは目を丸くした。
 そして、クラウドを真っ直ぐに見つめて、「じゃあ、だから私にいつもきつく当たるの?」とかすれた声で問いかける。
 クラウドは、この『いつもきつく当たる』発言に、内心でかなり衝撃を受けたが、もともと無愛想な顔が幸いした。
 表情を変えずにマリンに頷いてみせる。
「ああ、多分な」
「そっか…」

 マリンは、クラウドの言葉に漸く微笑を見せ、照れ臭そうにモジモジした。
「ティファとデンゼル、怒ってなかった?」
「怒ってないよ。言っただろ?心配してるって…」
「うん…」
「本当に心配してるよ。今でも夕飯食べずにマリンが下りてくるのを待ってる」
「うん」
「さ、行こうか?」
「うん!」
 元気良く頷いてくれたマリンを床にそっと下ろすと、二人は手を繋いでティファとデンゼルが待っている食卓へと向かった。
 その途中、マリンがギュッとクラウドの手を握って「クラウド、お話ししてくれて有難う!」と、満面の笑みを見せてくれたのは、クラウドとマリンだけの秘密になった。



 その夜。
 子供達と楽しい夕食を摂る事ができてホッと胸を撫で下ろしたティファが、クラウドにそのお礼と称して、特製カクテルを振舞った。
「ねえ、クラウド。マリンと何の話をしたの?」
「ん?俺の子供の頃の話を少々…」
「そうなの!?」
「…なんでそんなに驚いてるんだ?」
「え…と、何でもない…かな…」
「おい、何でそんなに視線が泳いでるんだ…」
「あ、あはは〜、何でもない、何でもない」
「………嘘つけ」
「…………」
 白々しくとぼけて見せるティファに、クラウドは苦笑しながらカクテルを口に運んだ。
 ティファは、昼間自分が考えた『子供の頃、友達がいなかったから喧嘩の後の仲直りの仕方など、クラウドには相談出来ない』なんて大変失礼な事を思っただなんて、とてもじゃないが話せない、と固い決意をした。
「ところでさ、ティファは子供の頃『赤い糸』って信じてた?」
「え…、そりゃあ…まあ…、信じてたって言うか…」
「…?何だ、歯切れが悪いな」
「う、ううん、別に。それよりも、クラウドはどうだったの?やっぱり『興味ないね』だったわけ?」
 くすくす笑うティファに、クラウドは少々憮然とする。
「ティファって、時々本当に酷いよな」
「そう?」
「そう」
「ふふ、ごめんね。それで、どうなの?信じてた?信じてなかった?」
 楽しそうにするティファを、クラウドはじっと見つめていたが、おもむろに手招きをして自分の隣の席を指す。
「???」
 首を傾げながらも、どこか悪戯っぽい瞳を見せるクラウドに、ティファは好奇心を抑えきれず、カウンターから隣の席に移る。
 すると、クラウドはティファが腰掛けようとしたまさにその瞬間、ひょいっとティファの体を抱え上げ、自分の膝の上に横座りさせた。
「ちょ、ちょっと!?」
「油断大敵だな」
 楽しそうに笑いながら、ギュッと抱きしめるクラウドに、ティファは真っ赤になったものの、ようよう考えてみると、今夜は3日振りの再会なのだ。
 例え、1日でも会えないのは寂しい。
 クラウドの突然の行動には驚かされたが、彼がそうやって触れてくれるのが正直とても嬉しい。

 ティファは、彼女にしては珍しく、クラウドの腕に大人しく包まれて、至福の一時を分かち合った。



 翌日。
 遊びに行くのを渋っていたマリンを、デンゼルがやや強引に連れ出した。
「このままじゃ、いつまで経っても一緒に遊べなくなるじゃん!それに、俺はマリンがいないと遊んでても楽しくないんだからさ!お願いだから、一緒に遊びに行こう?」
 そう言われて、イヤだとは言えるはずもない。
 マリンは、不安そうな顔をしながら、デンゼルに手を引かれて遊びに行った。
 ティファとクラウドは、そんな二人の様子を心持ち心配しながらも、同時にデンゼルが傍にいるなら大丈夫…そう強く信じる事が出来た。

 そんな二人の期待に、見事に応えた事を知ったのは、お昼ごはんの時間に輝かしい笑顔で元気一杯に帰って来た時だった…。


あとがき

はい。赤い糸でした。本当はもう少しクラティ要素を…とか思ったのですが、
やはりラブラブ要素の少ない作品となりましたね(え?全然無い?はは、すみません)
きっと、マリンもデンゼルも、店の手伝いだけでなく、子供達の世界でも一生懸命頑張ってると思うんです。お互いがお互いを支えあって、一緒に笑ってるのではないでしょうか。
はい、全部マナフィッシュの妄想です(笑)