ねぇ、どうしてそんなに貴方は幸せそうに微笑んでいるの…?

どうして、貴方の隣にいるのが私ではないの…?

貴方の隣に


 いつも貴方を見ているのに、貴方は私に気付かない。
 そう…、貴方が見ているのは、貴方の可愛い子供達と、貴方の隣にいつもいる優しい瞳をした美しい女性(ひと)。

 でも、気付いていないでしょ?

 彼女が本当は、貴方が思っている以上に、世の男性から求愛されているという事実に。

 だって、認めるのは悔しいけど、彼女は本当に『綺麗』なんですもの。
 そう…、ただ『見てくれ』だけが『綺麗』なんじゃなく、『内面』までもが澄んだ泉のように『綺麗』なの。
 その美しい『泉』の水を求めて、毎晩、彼女の営むお店に世の男性が足しげく通う。

 でもね。決してその『水』を、それらの男性が得られる事はないの。

 彼女の『澄んだ水』を得る事が出来る人は、貴方達の『ご友人達』と子供達、そして貴方だけ…。
 決して彼女は『その他大勢』に自分の『澄んだ水』を与える事はないの…。

 その事にとっくに『その他大勢』は気付いているというのに、諦めきれず、今夜もお店に、彼女の元に集う。

 その様子は、野の鳥が渇きを潤す為に綺麗な泉に群れを成しているようだわ……。
 野の鳥がその渇きを潤す為に泉に群れを成す光景は、何とも言えず自然の力強さを感じさせるけど、彼女に群れを成すその様は、何とも言えず滑稽なのよね。

 彼女の心を得る、なんて事、絶対に出来ないのに、それでも諦められず、未練と微かな希望を抱いて彼女に会いに行く『その他大勢』の姿は、一言で言えば『滑稽』『無様』なのよね。

 そして、私も……。

 貴方を諦めきれずに、こうして貴方が仕事へ出向く時、あるいは大きなバイクに乗って仕事から帰って来た時、その姿を一目見ようと胸を高鳴らせてそっと窺っているのだから……。

 ええ、分かっているの。
 そんな事をしても、貴方が彼女しか見えていない、その残酷な現実を思い知らされるだけだという事は……。
 そして、彼女も貴方しか見えていない、その事実を目の当たりにするだけだという事も、全部分かっているの…。

 それでも、私はどうしても貴方を諦める事が出来ないの。

 貴方に声をかけることすら出来ず、ただ物陰に隠れてそっと貴方の姿を盗み見る事しか出来ない、小心者の私には、万に一つも望みがない……その事も全部分かってるの……。

 それなのに、頭では理解出来ても、心は、貴方への想いは止まらない……。
 決して叶わぬ想いだと言うのに……。
 自分の心なのに、ちっとも自分の思い通りになってくれないの。

 貴方を諦める……、ただ一言で済んでしまうその事が出来ないの。
 そんな、未練を引っさげて、今日も仕事へ向かう貴方を、物陰からそっと盗み見る。

 私の周りの人達は、貴方の事を『無表情』『寡黙』『無愛想』なんて言っているけど、
決してそうじゃないって事を、私は知っている。

 だって、貴方の事を彼女や子供達以外ではきっと、誰よりも見ているんですもの。

 貴方は、仕事へ行く前、必ず子供達と彼女のお見送りを受けている。
 子供達は笑顔で貴方に「行ってらっしゃい!」「早く帰って来てくれよな!」等と言いながら、元気一杯に声を掛ける。
 そして、貴方も子供達へ笑顔を向けながら「ああ、良い子にしてるんだぞ」何て優しい言葉をかけながら、子供達の頭をポンポン優しく叩いて応じるの…。

 私は貴方のその姿だけでも、胸が締め付けられるような思いがする…。

 その優しい眼差しを、少しで良いから私にも向けてくれたら……。
 その大きな手で、そっと私に触れてくれたら……。
 きっと私は生きたまま天国へと旅立ってしまうのだわ。

 でも、貴方は子供達へ挨拶が終わると、子供達に向けた優しい笑顔以上の、愛情に満ちた瞳で彼女を見るの……。

 その瞳の、何て甘やかな事か……!
 
 彼女はその瞳を真っ直ぐに受け止めながら、彼女自身も澄んだ瞳に愛情を溢れさせてじっと貴方を見つめる。
 貴方はそんな彼女の瞳を、嬉しそうに微笑みながら見つめ、そっと優しく彼女に『行って来ます』のキスを贈る。
 彼女も、微笑みながらそれを受け取ると、顔を離して頬を染め、「気をつけてね」と優しく貴方に囁く……。
 貴方は、僅かに頷きながら、最後に子供達と彼女を順に見やってから「行って来る」と一言残して、バイクを駆って行ってしまうの……。

 子供達と彼女は、そんな貴方の後姿を、見えなくなるまで見送ってから店の中へと戻って行く。


 ねぇ……。

 どうして、彼女なのかしら?

 どうして、あの幸せで満ちた光景の中にいるのが、彼女であって、私じゃないのかしら……。

 彼女なら、貴方でなくても他に男性を射止める事が簡単に出来るのに…。

 私には、貴方以外誰も目に映らないのに……。

 ああ、分かってるの。

 彼女にとっても、私と同じなんだって事くらい…。

『貴方以外、目に映らない』っていう事を……。


 でも、彼女と私の決定的に違うのは、彼女は自分に想いを寄せている『その他大勢』の人達に対して、驚く程鈍いのよね…。
 毎晩、お店に通ってくれているのが、まさか自分に会いに来てくれているのだって事を、
全くといって良いほど、理解出来ていないの。

 だから、なんでしょうね。

 毎晩お店を営んでいく事が出来るのは……。

 だって、そうでしょう?
 自分目当てで、こんなに沢山の男性が足しげく通っている事に気づいていたら、平然とした顔でお店を切り盛りしていくなんて事、出来る筈ないもの。

『彼ら』の想いに応える事など出来ないのだから…。
 そしてその現実に、きっと優しい彼女は苦しむでしょう。
 苦しんで、その結果、お店を辞めてしまうはずよね……。

 私のこの考えは、多分間違いではないと思うわ。

 貴方と同様、彼女も誰より優しい人だから……。

 他人の痛みを知る人だから…。

 だから、なんでしょうね…。

 貴方の心を射止める事が出来ないと知っている私や、彼女の心を得る事など出来ないと知りつつも、店に通ったり、彼女に求愛したりする男性が後を絶つ事なく、『未練』と『微かな望』を携えて、ほんの一目だけでもこの目に焼き付けたい、そう思ってしまうのは。

 貴方と彼女の優しさに、どうしようもなく心惹かれ、想いが募ってしまうのは…。


 ああ、本当に、私も『彼ら』もどうしようもなく愚かだわ。
 愚かで、悲しい人間だわ。

 それでも、貴方や、彼女を恋い慕う、この想いを止められないの。

 十分、イヤと言うほど叶わぬ想いだと分かっているのに、願ってしまうの…。
 思い描いてしまうの………。


 貴方の隣で微笑む自分の姿を…。
 
 私の隣で、優しく慈しむ眼差しを投げかけてくれるあなたの姿を…。


 ねぇ、どうして人は自分の感情をコントロール出来ないのかしら…。

 こんなに苦しいのに、貴方を慕う心を捨てられないの…。

 貴方を見れば見るほど、彼女に心囚われている姿を目の当たりにするだけだと分かっているのに。
 それでも、貴方の姿を一目見ようと、バイクの音がすれば咄嗟にそちらを見てしまうの…。
 子供達の嬉しそうな「おかえりなさい」と言う言葉に、反応してしまうの…。

 そして、彼女の「お疲れ様、クラウド」と優しく紡がれる言葉に、胸が抉られる様な痛みを感じながら、それでも私の目は貴方の姿を求めてしまうの…。


 本当に、私はどうしようもないわ。

 きっと、こんなに心惹かれるのは貴方だけ。

 これから先、どんな出会いがあっても、貴方だけよ…。

 貴方は私と言う存在に全く気付いていないけど、それでも良いの。

 きっと、私の存在に気付いたとしても、貴方の瞳に私は映らないから…。

 その事を、もう十分分かっているから…。


 だから、せめて許して…、こうして貴方の姿を盗み見るなんて卑しい行為をする私を…。

 願っているから…、誰よりも、貴方の幸せを願っているから……。

 貴方を幸せに出来るのが、私ではない事も、他の誰でもなく、彼女だけなんだとしても…。
 そして、貴方の幸せが、『彼女の幸せ』なんだとしても…、願っているわ、貴方がこれから先も『幸せ』であるように…。


 そして、今日も私は、貴方の姿を求めて、そっと物陰に隠れて窺ってしまうの……。


あとがき

はい、何だか訳分からないポエム調になってしまいましたが、これは言ってみればマナフィッシュの気持ちみたいなものです。ティファ好き!なマナフィッシュですが、クラウドの事ももちろんかなり大好きです(笑)
ですから、クラウドの事を好きだ〜!と言う気持ちをちょこっと書いてみました。
んで、このポエムの主人公(?)は、ちょっとストーカーちっくになっちゃいましたが、
クラウドの『無愛想』な普段の姿を見ていると、心惹かれてもなかなか面と向かう
事など、普通の女の子なら無理なんではないか…?と、勝手に思いまして、
こんな内気で暗い感じのキャラ(?)が出来上がりました。
もちろん、ティファの存在が大きい事もありますしね。
あんなに素敵な女性がいつも隣にいるのに、それでも自分の思いを伝えられる人って、
そうそういないと思うのですが、皆様はどうでしょうか?

最後までお付き合い下さり、有難うございました!!