「では、ここにはんこをお願いします」 「ええ、ここね?」 青年の差し出した受取証にはんこを押した婦人の手が、そのまま青年の手を握り締める。 「あ、あの…?」 「ねぇ…折角だからちょっと上がってお茶でもいかが?」 嫣然と微笑むその美女に、普通の男ならクラリ…とくるだろうに青年は違った。 額に汗が浮かび、どう見ても困惑&嫌悪としか思えない表情が整った顔(かんばせ)に表れている。 「いや…仕事が残ってますし、お届け先には基本的に上がらないようにしてますから」 にべもない素っ気無い言葉に、美女は甚だしくプライドを傷つけられた。 対する青年は、どこまでも無愛想な顔をしており、眦を吊り上げている美女の手から己の手を引き剥がすと、 「どうもありがとうございました。またのご利用を…」 いつもの営業上の台詞を口にし、踵を返したのだった…。 無愛想な青年と何でも屋踵を返したクラウドは、目の前の人物達にぎょっとした。 「………」 「「………」」 暫しの沈黙。 先に動いたのは無愛想な青年。 ビクッと身体を震わせると、目を大きく見開いて口をパクパクさせる。 対する砂色の短髪をツンツンと立てた青年と、漆黒の髪を肩まで伸ばした愛らしい女性はあんぐりと口を開けていた。 「あ、あ、あんた達は…!」「「クラウドさん!?」」 同時に三人の声が通りに響き、道行く人達がギョッとして振り向いた。 しかし三人共、注目の的になっている事になど全く気付く事無く、ありえない場所でありえない人物との再会にただただ驚いていた。 しかも…。 クラウドの場合は、あまりに人に見られたくない場面をよりによって知人に見られてしまったことにより、そのショックは非常に大きい。 全身の毛穴から汗が噴き出すのを感じるのは、気のせいではないだろう…。 「な、なな、なんでここに……」 わななきながら震える声を絞り出すクラウドに、青年と少女…、セトとマナの『凄腕の何でも屋』は、 「「仕事で…」」 声をはもらせたのだった…。 「それにしても…。まさかこんな所で出くわすとはな…」 「本当に…」 「……お疲れ様です…」 場所は変わって、三人は近くの喫茶店にいた。 流石にあの大通りで立ち話はマズイ…と気付いたのだ。 何しろ、突き刺さるような視線の数々が自分達に向けられていたのだから…。 その時の事を思い出して、三人は苦い笑いを浮かべた。 クラウドに至っては、額にびっしりと汗を浮かべている。 「ところで…さっき見た事についてなんだが……」 おもむろに口を開いたクラウドが、次に何を言おうとしているのか素早く察知した二人は、ブンブンと首を振った。 「「絶対に言いません!!」」 ユニゾンでそうスッパリと言い切った二人に、クラウドは全身でホッと安堵の為息を吐いた。 「ああ…本当にすまない……」 「いいえ!!」 「……モテるってのも大変ですね…」 力一杯クラウドの謝辞を受け止めたマナと、しみじみとそう呟いたセトにクラウドはテーブルに肘をつくと額を乗せた。 「……どうしてあんな女性がモテるんだ……?」 ボソッと呟いたクラウドに、二人はチラリと視線を交わす。 そして、恐る恐る声をかけた。 「あの…さっきの女の人への荷物…って……もしかして……」 「恋人からだったんですか?」 二人の質問に、自分が失言をしてしまった事に気づいたクラウドは、『しまった…』という表情になり、ガックリとテーブルに突っ伏した。 一応、守秘義務というものが仕事上には存在するので、おいそれと依頼人の事を漏らせないというのに…。 先程の女性のねとついた……まとわりつくような『毒気』に中てられて(あてられて)、つい漏らしてしまった……。 ほとほと自分の迂闊さに情けなさが込上げる。 しかし……。 「まぁ……仕方ないよな……」 そう一人ごちると、顔を引き攣らせて自分の様子を窺っている二人に苦笑して見せた。 「ああ…その通り。本当は守秘義務があるから話すわけにはいかないんだが……バレてしまったんだ、仕方ない。それに、二人は他の人に言いまわったりしないだろう?」 懇願するかのような最後の言葉に、二人は思い切り頷いた。 フッと笑みを浮かべて感謝を表すと、丁度三人のテーブルに注文していたメニューが運ばれてきた。 クラウドにはブラックコーヒーとクラブハウスサンド、セトにはアイスコーヒーとカツサンド、マナにはミルクティーとベークドチーズケーキ。 三人は運ばれたそれらを口に運びながら、近況報告することになった。 「へぇ…。それで、今はこんなところにまで来てるのか…」 「ええ、そうなんです。どうしても原石が欲しいらしくて…」 「しかし……言ってはなんだが、あそこの宝石店の店主は気難しい事で有名だぞ?」 「…そうなんですよねぇ…。私達も何度かお願いに行ってるんですけど、全然取り合ってくれなくて…」 ねぇ、セトさん…。 すっかり気落ちした顔をして見上げてくるマナに、セトも「ああ……本当に困った……」と、溜め息をこぼしながらアイスコーヒーを啜った。 その仕草が非常に疲れて見えて、クラウドは片眉を下げた。 一生懸命頑張っている人間を応援したくなるのは人情というものだ。 それが、知人や友人なら尚更! クラウドは打ち沈んだ顔をして意気消沈している二人を見ながら、『さて……どうしたもんか……』と考え込んだ。 二人が現在請け負っている『何でも屋』の仕事。 それは、『マテリアの原石』の入手。 星の力が凝縮された『マテリア』。 その『マテリア』には『マテリア』としての力を宿す前の『原石』というものがある。 要するに、『星の力を凝縮してはいるが、何の属性も宿していない石』のことだ。 『無属性マテリア』とはまったくの別物。 その『原石』は非常に貴重で、マニアの間では堪らない品だそうだ。 何故なら、『マテリア』が発見された時には、既に何らかの力が宿っているのだから。 もっとも、『力を宿していないマテリア』など、本当にただの石ころなのだから一体どこが魅力的なのか一般人には理解出来ない。 ただ、石ころというにはあまりにもきれいなので、パッとみた所、『原石』は『普通の宝石』となんら代わり映えが無い……らしい。 クラウド自身、『マテリアの原石』はお目にかかったことが無かった。 「その気難しい店主は、売れない理由を何か言ってたか?」 思案顔で訊ねるクラウドに、何でも屋の二人は軽く首を振る。 「特にこれといってはなにも…」 「貴重なものだから、おいそれと手放す気になれない…。その一点張りです」 溜め息混じりの返答に、「ま、それはそうだろうな……」と同じく溜め息を吐きながら返す。 何となく重苦しい沈黙が流れる。 クラウドは、目の前の何でも屋の二人の悩んだ顔を見ながら暫くあれこれ打開策を考えていたが、突然喫茶店のウェイトレスが「あ、あの……クラウドさん……ですよね?」と、モジモジと声をかけてきたことにより、先程『何でも屋』の二人に見られた衝撃のシーンがフラッシュバックした。 もしも…。 もしもあの一件が他の知った人間に見られていたら……? 間違いなく、セブンスヘブンに情報が流れるだろう。 それも、まさに光速で!! 正直に白状してしまえば、あの手の出来事は一度や二度ではなかった。 時にはわざとバカデカイ荷物を頼み、家に入るような状況を作り出した女性もいた。 荷物を運び終えて汗ばんでいる彼に『シャワーだけでも…』『では、せめてこの冷たい飲み物だけでも…』と、勧めてくる美女達が一体何人いたことか…! しかも一番性質が悪かったのは、『冷たい飲み物でも…』との状況だった。 大きな荷物を運び終えた後は、当然冷たいもので喉を潤したくなる。 『クラウドさんへの感謝の気持ちです……。それでも……ダメですか?』 涙を薄っすら浮かべて見上げてくる美女に、少なからずも自分が悪いのでは!?という気持ちになっても仕方ないだろう……。 そして…。 『じゃ、じゃあ……飲み物だけ……』 そう言って、一気に飲み干したのが運の尽き。 飲み終えてグラスを女性に返し、玄関のドアノブに手を伸ばした時、奇妙な感覚に全身が襲われた。 なにやら視界が歪む。 意識が朦朧とする。 膝から力が抜け、どうしようもない眠気が襲ってくる。 その時に初めて、飲み物にクスリが混入されている事に気付いた。 緩慢な動きで振り返ると、先程とは打って変わって実に満足そうな……唇の両端が釣りあがった女性の姿。 ハッキリ言って、まるで獲物を捕獲する雌豹の様で身体中に悪寒が走る。 「あら…クラウドさん。お加減が悪いみたいですね。無理せずベッドできちんと休んでから次の仕事に行くようにしましょう?大丈夫、私、看病には慣れてますから」 ねっとりとした口調。 まるで舌なめずりをしているかのような肉食動物を髣髴とさせる彼女の声音と表情を前に、どんどん視界が暗くなっていく。 クラウドは最後の力を振り絞って携帯に手を伸ばし、その手にした携帯は身体を反転させる事で隠すと、リダイヤルボタンを押した。 そして…。 危うく鬼女に捕まりそうになった時、通話音が耳にどんよりと響いてきた。 『はい…クラウドさん?珍しい』 ですね…。 と、続くはずの台詞を遮り、クラウドはできる限りの大声で叫んだ。 「頼む!助けてくれ!!」 大声で叫んだつもりだったが、実際その時のクラウドの声は決して大きくは無かっただろう。 自分を追い詰めていた女性は、ちょっと驚いた顔をしていたが、すぐに力の入らなくなっているクラウドの手から、あっさりと携帯を取り上げてしまった。 そして、「ダメですよ、クラウドさん。これから二人で素敵な時間を過ごすんですから」といい終わらない間に、さっさと電源を落としてしまった。 カターン。 目の前の床に、携帯が虚しく落ちて転がる。 しかも、生憎女性側にクルクルと回転しながら…。 霞む視界に力を入れて、クラウドは必死になって女性をにらみつけた。 しかし、それに全く動じる事無く、むしろ面白くて……嬉しくて堪らないと言わんばかりに、女性は床から起き上がれないクラウドの身体の上にそっと乗っかると、そっとクラウドの整った顔に触れた。 ゾック〜〜!!! 全身が総毛立つ。 これはまずい…。 非常にまずい!! 一体どうしたら…? 武器はとてもじゃないが扱えない。 というか……立てない……(涙)。 パニックの頭で……ましてや今はクスリのせいで半分以上眠りの淵に足を突っ込んでいる。 その状況で、いくら華奢な女性であろうとも、逃げる事は……ほぼ不可能!! クラウドは必死に身をよじろうとしたが、それを女性はしっかりクラウドの首に腕を回し、それを阻止する。 熱っぽい眼差しで、ジッとクラウドの紺碧の瞳を見つめ、うっとりとしたと息を漏らす。 「本当に……素敵。貴方をWROの広報誌で見たときから……忘れられないの……」 ゾゾゾ〜〜〜!!!! 全身に悪寒が走る。 冗談じゃない! こんな見ず知らずの女に……いや、ティファ以外の女性に迫られても気持ちが悪いだけだ…。 吐き気がする。 ああ、それなのに…!! 全くと言って良いほど自由の利かなくなった重い身体に歯噛みする。 もうそこまで鬼女の毒手が迫っている。 クラウドは舌を噛む覚悟を決めた。 その時…!! 「クラウドさん!大丈夫ですか!?」 ドアを蹴破る音と共に、クラウドを死の淵から呼び戻すかのような救世主の声がした。 同時に、女性が甲高い悲鳴を上げてクラウドから離れる。 「あんた、クラウドさんになにをした!?」 普段は温厚な青年の怒声を最後に、クラウドの意識はプッツリと途絶えた。 次にクラウドが目を覚ましたのは、WROの医療施設の一室。 目の前にはクラウドを鬼女の毒牙から救ってくれた紫紺の瞳を持つ青年。 隣には彼の従兄弟の青年が心配そうな顔をして立っている。 「大丈夫ですか?」 「……ああ……」 緩慢な動きで起き上がろうとするクラウドを、プライアデスが慌てて押し止める。 「ダメですよ、ゆっくり休んでて下さい」 「いや…しかし……仕事が……」 「あ〜、それなら俺達が代わりにやっときましたから大丈夫。って言うかさ、クラウドさん。いくらクラウドさんでも『致死量の睡眠薬』を飲んでるんだから、今は絶対安静ですって」 グリートの呆れ返ったその言葉を理解するのに、たっぷり一分はかかった。 「え……?」 血の気が引くとはこのことだろう…。 クラウドは、鬼女が何を飲ませたのかを知り、サーーーッと青ざめたのだった。 「あの……?」 「クラウドさん?」 「……………大丈夫ですか?」 当時の事件を思い出してボーっとしていたクラウドは、三人の訝しげな声にハッと我に返った。 そして、慌てて「あ、ああ…すまない、大丈夫だ」と早口で取り繕うと、ウェイトレスに向き直った。 「それで…俺に何か?」 「あ…!そ、その……」 ウェイトレスはビクッと身体を震わせると、真っ赤になりながらハンカチを取り出した。 「その…これにサインをして頂けませんか?」 「え…!?」 ウェイトレスの可愛いお願いに、クラウドは面食らった。 今まで自分に話しかけてきた女性達は、少々強引な人達が多かった。 『遊びに行きましょうよ』『一緒に写真撮って下さい!』『握手して下さ〜い♪』『って言うか、もうぶっちゃけ私の彼氏になってくださ〜いvvv』等々。 だから、こんなに可愛らしくおずおずとお願いされた事がなかったので、思わず大きな声を出してしまったのだが、彼女にはそれが堪えたらしい。 慌てて「す、すいません。本当に失礼なお願いをしてしまって。忘れて下さい」そう早口に言ってその場を去ろうとする。 クラウドは思わず彼女の手を掴んで引き止めた。 途端に、ウェイトレスは真っ赤になった。 「あ、すまない」 パッと手を離して彼女を解放すると、赤い顔のまま硬直しているウェイトレスにぎこちなく微笑んだ。 「字、汚いけどかまわないか?」 パーッと顔を輝かせ、彼女は満面の笑みをこぼした。 「それにしても、クラウドさんってお優しいですよね」 嬉しそうに何度も頭を下げるウェイトレスがテーブルを去ってから、マナがニッコリと微笑んだ。 「いや……そういうわけじゃ……」 そう言いながら、『ああいう人ばっかりだと…良いんだけどな……』などとクラウドは内心で溜め息を吐いた。 「それにしても、さっきなにを考えてたんですか?」 「…さっき?」 「ええ、ウェイトレスさんが話しかけたとき。急にボーっとしてたでしょう?」 マナの言葉にクラウドは苦笑いを浮かべた。 「あ〜、まぁ…ちょっとイヤなことを思い出して……」 窓の外へ視線を投げながら、ふぅ…と溜め息を吐く。 セトがカツサンドを口に運びながら「モテるって…苦労が多いんですね」ボソリと呟いた。 他の男がそう言ったら嫌味にしか聞えないだろうに、セトが言うと同情されているのが良く分かる。 クラウドは肩を竦めた。 「別に、俺と言う一個人を好いてくれてるわけじゃないさ。『英雄』と言う肩書きが珍しいだけだ」 「でも、クラウドさんはカッコイイし、素敵ですよ?」 サラリと言ってのけたマナに、クラウドは目を丸くし、次いで薄っすらと赤くなった。 「……ありがとう……」 「ふふ。クラウドさんって可愛いんですね」 赤くなったクラウドに、マナはにこにこと嬉しそうに笑っている。 クラウドは『可愛い』と言われて更に顔を赤くした。 セトはそんな微笑ましいやり取りを見ながら、黙々と満足そうに食事を続けていたのだった。 「ところで、二人の仕事の話に戻るんだが…」 食事を終えてコーヒーを啜っていたクラウドがふと口を開いた。 二人共、真っ直ぐ顔を上げてクラウドを見る。 「その宝石店の店主に何か取り引き出来ないか打診してみたか?」 セトとマナは顔を見合わせると困ったように首を振った。 「それが……」 「打診しようにも取り付く島がなくて…」 二人の暗い顔に、クラウドは「そうか…」と呟くと、何を思ったのか、 「俺も一緒に行こう」 と言うなり、唖然とする二人の意見を待たずにさっさと立ち上がった。 「え!?」 「クラウドさん!?」 慌てて立ち上がり、伝票を持ってレジに行ってしまったクラウドを追いかける。 「良いんだ。丁度俺もティファや子供達になにか土産を買いたかったし。あ、構わない、ここの分くらいご馳走してやるさ」 自分達の分を払おうと財布に手を伸ばす二人を押し止めると、クラウドはサッサと三人分の支払いを済ませ、店を後にした。 「本当にご馳走様です」 「すいませんでした」 後ろからついてくる二人に苦笑する。 「構わないと言っているのに…。ああ、ここだな」 立ち止まったのは一軒の小さな店。 少々古臭い造りの店だが、中を覗くと結構な客入りである。 セトとマナは顔を見合わせると何度か深呼吸をした。 よほどこの店の店主に嫌われているのだろう…。 店に入る為に、勇気を奮い起こしているようだ。 クラウドはそんな二人に頷いて見せると先に店に入った。 カランカラン…。 セブンスヘブンとは違うドアベルの音が三人を出迎えた。 カウンターの中にいた店主が振り向き、 「いらっしゃい………」 ませ。 と、続くはずの台詞を口の中で押し殺し、苦々しい顔つきになった。 気難しいという噂をそのまま表したかのような風貌。 薄くなった頭と太い眉、丸い顔と丸い体型はずんぐりとしていて、小さな目がギロリと何でも屋の二人を睨む。 「あんた達もしつこいな…。売るつもりはないと言っているだろうが!」 開口一番、噛み付くような台詞は店内にいた客達を少なからず驚かせた。 しかし、店主の気質を知っているのだろう。 さしてびっくりするわけでもなく、自分達の買い物に意識を戻した。 その光景に、驚いたのはクラウドだけ。 セトとマナは慣れているのだろう。 困ったようにぎこちなく笑っている。 「おやじ、悪いが今日は俺の買い物に付き合ってくれてるだけだ。二人を責めないで欲しい」 間に入ったクラウドを、店主は胡散臭そうにジロジロと見る。 値踏みするような視線が、やがて何かに気付いたようなものになり、それが驚愕に変化する。 その表情の変化に慣れているクラウドは、あえてそれを無視するとショーウィンドーに飾られている装飾品を眺めた。 色とりどりのそれらの品は、気難しいが己の仕事に誇りを持っている店主の選びに選んだ物ばかりで、噂どおりに素晴らしかった。 目移りするそれらを前に、クラウドは二人に声をかけた。 「なぁ、どれが良いと思う? 「え……?」 セトはクラウドの質問に面食らったが、マナはニッコリ微笑むとクラウドの隣に並んだ。 「ん〜…どれも凄く素敵ですけど…。これなんかはティファさんに似合うんじゃないですか?」 「どれだ?ああ、本当だな」 マナの指差す先には、花の形をしたピアス。 小振りな造りのそれは、真ん中にルビーをあしらっている銀細工だ。 当然、結構な値もするがそれだけの価値のある品だった。 「そうだな、これをもらおうか。それと……マリンとデンゼルはどうしようか……?」 「それなら、子供達にはまだこのお店の品は早過ぎますから、通りを挟んだところにある雑貨屋さんに行きましょう。凄く品が豊富ですし」 「そうか、じゃあそうする。おやじ、これをくれ」 マナとクラウドのやり取りを呆然と見ていた店主が、クラウドの呼びかけにハッと我に返り、慌てて駆け寄る。 「こ、こちらで…?」 「ああ、プレゼント用だから包んでくれ」 「へ、へい!」 バタバタと店の奥に駆け込み、再びバタバタと駆け戻る。 そして、いそいそとした手つきでその花のピアスを小箱にいれ、綺麗にラッピングした。 流れるようなその作業は、長年培ってきたもので見事なものだった。 太くて短い指をしているのに、その器用な様子にクラウドは「へぇ…流石だな」とつい漏らした。 「はい?」 首を傾げて見上げる店主に、クラウドは「あ…」と言うと思わず口をついて出た本音に苦笑する。 「ああ、おやじの手があんまり器用だから…つい……な。悪かった、上手くて当然なのにな」 俺は不器用だから…。 そう言って頬を掻くクラウドに、マナがニッコリと微笑み、セトが無表情に頷く。 「俺も器用じゃないのでクラウドさんの気持ちが良く分かります」 「そうなのか?良かった…」 クラウドとセトのやり取りを聞いた店主は、目を丸くして改めて目の前の青年達を見つめた。 そして、何やら考え込んだかたと思うと「はぁ……やれやれ…」盛大な溜め息を吐いて首を振った。 「「「?」」」 首を傾げて店の奥へ足を運ぶ店主の背中を見送る。 次に店主が現れた時、彼は小さな木箱を持っていた。 仏頂面でカウンターの上に置き、何でも屋の二人を半ば睨むようにして見る。 「ほらよ、持ってけドロボー」 「「!?」」 驚く二人の前に現れたのは、ビロードに鎮座している『マテリアの原石』だった。 急展開にセトとマナ、そしてクラウドはポカンとするばかりだ。 いや。 確かにクラウドは『ジェノバ戦役の英雄』という肩書きを利用して、自分に縁のある二人を売り、いつか店主が話を聞いてくれたら……そのきっかけになってくれたら……。 そう思っていたのだ。 それなのに、あっさりと……こんなにも早く店主が折れてくれるとは!! 目を点にする三人に、店主は腰に手を当てて「ふぅ…」と息を吐き出した。 「この星の恩人様のご友人とあっちゃ……仕方ないだろう…。それに、まぁ…俺もちょいと意地が悪過ぎたと思ってたところだしな…」 最後はボソボソと照れ臭そうに言葉を濁し、「ほれ、さっさとそれを持って行きやがれ!」と、手でシッシと追い払うような仕草をして見せたのだった。 「本当に…本当にありがとうございました!!」 「もう…お礼の言いようが無いです…」 きちんと支払いを済ませた三人は、帰路についていた。 すっかり町は暮色に染まっている。 もうそろそろエッジに向けて走り出さないと深夜になってしまうだろう。 「いや、役に立てて良かった。それにティファ達にいい土産が買えたしな」 ゆるゆると微笑むクラウドの顔は、家族を想う優しい顔。 何でも屋の二人は改めて頭を下げると、 「ティファさん達によろしくお伝え下さい」 「また…お店に行かせてもらいます」 そう言って、フェンリルに跨ったクラウドを見た。 「ああ、二人共、身体に気をつけて頑張れよ」 「「はい」」 夕陽を浴びてオレンジ色に染まっている二人に見送られながら、クラウドは愛車に乗ってその町を後にした。 「やっぱりクラウドさんは凄い人ですね」 「ああ…そうだな」 「それにしても……」 「?」 「あの『噂』って本当なんでしょうか…?」 「…ああ、アレか?」 「はい、アレです」 何でも屋の二人が口にした『アレ』とは、二人がこの町に来るひとつ前の町での話し。 ジェノバ戦役の英雄が女性に薬を盛られて危険な状態にあったのを、たまたまその町に駐屯していたWROの隊員が救出した……というもの。 WROの医療施設で迅速な治療を受ける事が出来たおかげで命拾いをした…という話しなのだが……。 「「ま…いいか……」」 真相を知っているのは極々限られた人達だけ。 何でも屋の二人は、手に入った依頼の品を届けるべく、クラウドとは別の方向に足を向けたのだった。 そんな何でも屋の二人が後日、セブンスヘブンにやって来た時、出迎えてくれたのは子供達の満面の笑みと、花を模ったルビーを輝かせているピアスを耳にしていた女店主の明るい笑い声。 店の照明に照らされて輝くそのピアスに、二人は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった…。 あとがき はい。 なんだかえらく中途半端な気もしないでもないですが…(汗)。 お待たせしました〜!!95259番リクエストです♪ ルナ様……こんな駄文ですが……宜しければお受け取り下さいませ(土下座)。 もう…。 何でも屋の二人が活躍しなくてすんません!! クラウドが途中で鬼女に襲われそうなシーンなんか書いたせいで話しが……(滝汗)。 ごめんなさい!!本当に……(再び土下座)。 リクエスト、ありがとうございました!! |