本当に…心から大切に思ってる。 愛しくて堪らない。 だけど、口下手で照れ屋な性格だからいつも素直に伝えられなくて…。 キミも俺と変わらないくらい照れ屋だから、素直に甘えてくれなくて…。 お互いがこんなんだから、甘えて、甘えられて…っていうのが極端に少ないよな、俺達ってさ。 だから、本当はいつもとてももどかしく思ってる…。 そう、だからさ。 弱ってたキミのために、今日くらいは頑張ってみたんだよ、俺なりに。 『今日はティファの休日だ。俺が家事を全部するから、どっか遊びに行って来いよ』 勇気を振り絞って、震えそうになる声にカツを入れて言ってみて……ちょっと後悔したけど。 でも、そんなものはすぐに吹き飛んだ。 心配そうな瞳の奧には、確かに嬉しそうに輝く光があって、それだけで嬉しくなってテンションが上がる。 うんと甘えて欲しい。 子供達も…だけどさ、誰よりも…愛しいキミに甘えて欲しい…。 なぁ、だからさ。 うんと甘えてくれないか? 例え、後々大変な事になったとしても、どうにかしてみせるから…さ。 デンジャラス クッキングティファがずっと我慢して色々頑張ってくれていたことは知ってた。 俺はそれに甘えてたんだよな。 でもそれじゃあダメなんだ。 いつでもティファを甘やかしたいし、ティファを大事にしたい。 甘えベタなティファを、世界中の誰よりも幸せにしたい。 そう……思ってる。 だから…。 長期の仕事を終えて帰宅したら、絶対にティファを存分に甘えさせようと思ってたんだ。 甘えベタなキミだから、絶対に素直にして欲しいことは言わないと分かってる。 でも、キミはそれと同じくらい真っ直ぐで、不器用だから逆にそれを逆手にとって、無理やり断れない状況に追いやれば良い、なんて考えたんだよな、ガラにもなく。 いっぱい、いっぱい…甘えさせたいから。 沢山、沢山、幸せになってもらいたいから。 溢れる笑顔を見せて欲しいから、それこそもう、こんなに考えた事ないんじゃないかってくらい色々考えた。 綺麗な服を買いに行こうか…。 アクセサリーを買いに行こうか…。 それとも、いっその事子供達をバレットに預けて二人っきりで………。 ……。 いやいや、ダメだ!! きっと人一倍照れ屋なティファは、そんな申し出断るに決まってる。 何よりも俺がそんな提案、恥ずかしくて出来ない。 なぁんて…悩んでいたら…。 「やっほー♪遊びに来たよぉ!!」 なんというタイミングでやって来るんだ、この破天荒娘!! …。 ……。 いや、待て。 「ユフィ、丁度良いところに来た!」 「ふぇ?」 目を丸くするユフィに、出かけるのを渋っていたティファを押し付ける。 デンゼルとマリンも本当は一緒に…と思ってたのに…。 「大丈夫だよ、ティファ」 「そうそう、俺達が一緒に残るから」 ……どういう意味だ、二人共…? 「そう……?じゃあ、悪いけど二人共、よろしくね…」 「しっかりクラウドのお守りしてやってねぇ〜♪」 ……ティファ、どうしてそんなにあっさりと承諾する!? ユフィ、お前は全くナンテことを……!! 「大丈夫!」 「私達にお任せあれ!!」 「うん、じゃあ……行ってきます」 ……ティファ…。 何故、否定しない? おまけに最後までそんな心配そうな目…。 ……………虚しくなってきた……。 「さ、クラウド!張り切って頑張ろう!」 「ティファが帰ってきたらビックリするくらい、お店を綺麗に掃除して、夕飯作るんだ〜!」 張り切る子供達に背を押され、手を引かれて店に戻る。 そうだよな。 ティファ一人だったら絶対に遊びに行きはしなかっただろうし、子供達が残ってくれたこの状況は普段、家にいない俺にとっては幸運なことだ。 日頃、ティファが仕事をしていて困っていることや気になっていることがあるかもしれない。 子供達なら知っているだろう。 「そうだな…うん、じゃあやるか」 「「 はぁい♪ 」」 …本当に、デンゼルとマリンはなんて可愛いんだ。 「それで、これを取り付けたら良いのか?」 「うん!最近、取れかけてたから、ティファが気にしてたの」 「そうか」 マリンに言われて見てみると、店のドアベルがちょっとだけ取れかけている。 ネジの部分からダメになってるから、新しいものと交換だ。 「クラウド、これを掃除したいんだ、暫く掃除してないからさ」 「『ファン』をか?」 「うん、そう」 ドアベルを付け直したら、すぐにデンゼルが天井を指差した。 ゆっくりと回っているそれは、特に汚くは見えないけど…。 「…本当だな、すごい埃だ…」 脚立に上って間近で見ると、埃が積もっている。 おまけに、クリーム色だったはずの『ファン』は、黄色く黄ばんでいて、汚いことこの上ない。 「気付かなかったな…」 呟きながら脚立の天辺から軽るく床に飛び降りる。 「「 わ〜〜!! 」」 途端に、デンゼルとマリンから拍手をもらった。 首を傾げる俺に、 「クラウド、本当にカッコイイ!」 「身軽だよねぇ♪」 惜しみない称賛の言葉。 ………ダメだ…照れるじゃないか…。 「……こんなの…大したことじゃない…」 「俺もいつか、そんな風に『大したことじゃない』って言えるようになりたい!!」 「私も〜!!」 デンゼルがキラキラと目を輝かせてそう言ってくれるのは、掛け値なしで嬉しい。 だけど、マリンが同じ様にそう言うのが喜べないのは何故だろう…。 「……マリンは今のままで良いと思うぞ……」 「え〜〜?どうして〜?ティファだって強くてカッコイイのに〜!」 「………いや、確かにそうなんだけど……」 「どうして、どうして〜?」 ………どうして…と言われても、言葉に出来ない。 一つ分かることは…。 「きっとバレットが泣く…」 「え〜?そんなことないよぉ!」 「「 いや、絶対に泣く! 」」 珍しくデンゼルと声がハモル。 顔を見合わせ、まだ渋い顔をしているマリンにそっと背を向けて『ファン』を洗いに外に出た。 「…絶対にバレットのおっちゃん、泣くよなぁ…?」 「あぁ、泣く」 「だよなぁ…」 コソッと囁いてきたデンゼルにキッパリ頷くと、しみじみと息子は納得してくれた。 お願いだから、察してくれ、娘よ。 「さて、次は…」 「この棚をちょっと傾けてくれる?」 「分かった」 マリンに言われて、食器棚の中身を全部出して傾ける。 おぉ…。 埃がすごい! 素早くマリンが掃除機をかけて「オッケー♪」と笑う。 「クラウド、次はこっちこっち」 「分かった」 マリンに食器棚へグラス類を片付けてもらっている間に、店のソファーを持ち上げて今度はデンゼルが掃除機をかける。 「意外と埃ってたまってるもんなんだな…」 「うん、ティファが毎日綺麗に掃除してても、やっぱり物を持ち上げて掃除してるわけじゃないからさ、結構たまるんだよなぁ…」 「そうか…」 「だから、今日はクラウドがいてくれて本当に助かったよ」 「…そうか…」 今日はティファをゆっくりとさせて、お嬢様のように何にもしなくて済む一日にしよう、っていうのが目標だったのに、なんだか俺のためみたいな一日だな…。 それにしても、本当に大変なもんだな…家事って。 一日があっという間に終ろうとしてるじゃないか…。 それに、普段から身体は動かしてて体力とか運動には自信があるのに…。 「…腰が痛い…」 「クラウド、おっさんみたいな事言うなよ」 「仕方ないよ、普段しない動作を一杯したんだもん」 デンゼルが白けた顔をして…、マリンが苦笑してそれぞれ突っ込む。 本当に、我ながら情けない。 同じ様に今日一日、遊びにも行かずに掃除を手伝ってくれた子供達はこんなに元気なのに…。 「二人共、明日は一緒に買い物に行こうな」 感謝を込めてそう言うと、期待通り満面の笑みで歓声を上げてくれた。 …ホント、可愛いなぁ…。 「じゃあ、いよいよ最後だよ」 「うん、夕飯作らないとね!」 ウキウキと足取りも軽くキッチンに向かう二人に続く。 今日のメニューはもう決めてある。 『ガーリックフランス』『コンソメスープ』『鮭のムニエル』『グリーンサラダ』『きのこと茄子のソテー』。 我ながら…いささか無謀と言うか…なんと言うか。 まぁ、デンゼルとマリンに言わせると、 「「 揚げ物じゃないから大丈夫 」」 だそうだ。 ガーリックフランスはパン屋で買ってきたものだから、これはまぁ、食べる直前に軽く焼いたらオッケー。 グリーンサラダも、野菜を洗って適当にちぎり、粉チーズをまぶしてドレッシングをかけたら良い、というマリンの言葉に従い、これもオッケー。 問題は、スープに鮭に…ソテーか…。 「クラウド、じゃあ鮭に塩コショウまぶして」 隣で、マリンが慣れた手つきで野菜を洗っている。 その更に隣では、デンゼルがスープ用にお湯を沸かしていた。 「あ、ああ…」 鮭を手に取る。 グニャリ。 「ゲッ…」 「「 わわ、なにやってんの!? 」」 「い、いや…持っただけなんだが…」 「「 握りつぶしてどうするの!? 」」 「す、すまない……」 まさか、こんなに柔らかいとは…。 指の間から無残につぶれ出たそれを見て、なんとなく不吉なものを感じる。 「仕方ないよ。じゃあ、コレはフライパンで焼きながら細かくしちゃおうか…」 「そうだな。クリームソースと絡めてパスタにでもかけたら美味しいだろ」 クリームソースと絡めてパスタにかける…? デンゼルとマリンが何やら不可思議な会話を交わしている。 ま、まぁ、よく分からないが、二人に任せよう…。 気を取り直してつぶれた鮭をとりあえずバットに置き、新しい鮭を慎重に取る。 よし。 今度は上手くいったな。 それで…塩コショウ。 と…。 「…ハ、ハックション!!」 ブワッ!! 「「 わわ、クラウドー!! 」」 「す、すまない………」 コショウのせいでつい、くしゃみが…。 鮭に向かってくしゃみをするわけにいかないので、咄嗟に横を向いたら…。 なんとそこには………小麦粉が……。 「折角今日一日かけて綺麗にしたのに〜!」 「台無しじゃんか〜!」 「 ………本当にすまない… 」 情けなくて…言葉も無い。 項垂れる俺に、渋い顔をしていた子供達が、途端に焦って 「ま、まぁ大丈夫だよ」 「うん、だって、乾いた粉だから、軽く拭いたらすぐに綺麗になるよ」 慰め始める。 ………虚しい…。 もう…アレだ。 料理は子供達に任せて俺は食器を出したりした方が良いんじゃないだろうか…? 「クラウド、大丈夫だよ。皆、最初は失敗するんだから」 「そうだよ、それにティファだってクラウドが作ってくれた、って知ったら絶対に喜ぶからさ〜、頑張ろう、な?」 ……子供達にここまでフォローされてるのに、止められるか? そんなの無理に決まってる…。 「そ、そうだな……すまない、二人共。頑張ってみる…」 「「 うん、頑張ろう! 」」 再度、気を取り直して鮭に向かう。 なんだか、この魚が巨大な敵に思えてきた。 息を止めてコショウを振る。 ……よし、上手くいったな。 デンゼルとマリンからホッとした気配を感じる。 …本当にごめんな、二人共。 明日はうんと買い物に付き合ってやるから…。 「じゃあ、クラウド、鮭に小麦粉をまぶして〜」 「…これか?」 「そうそう……うん。良い感じ」 「…そうか…」 マリンに褒められてホッとする俺って…一体どうなんだ…? マリンの隣では、デンゼルが慣れた包丁さばきでたまねぎを切っている。 ………いつの間に……。 俺もあれくらい上手になれたらティファの手助けがもっと出来るだろうに…。 「クラウド、よそ見しないの」 「あ…はい」 唇を尖らせるマリンに、シュンとする。 パッパッパ……と、余分な小麦粉を払って、いよいよフライパンで焼く段階に突入だ。 「じゃあ、フライパンに油を引いてね」 「分かった」 強火にかけたフライパンに油を垂らして満遍なくいき渡せる。 フライパンを持つのは…そんなに不器用ではないようだ。 マリンがどこか感心したような溜め息を吐いた。 まぁ、いつも重たいものを持ってるからこれくらいの重さはなんとも無いしな。 「あ、マリン。ちょっと味見してくれないか?」 デンゼルがそう言って、マリンにスープがちょっぴり入った小皿を渡す。 一口味を見て「うん、美味しいよ♪」と言ったマリンに、デンゼルが嬉しそうにニッコリ笑った…。 ……なんだか……新婚さんみたいじゃないか……??? なぁんて思ってると…。 「クラウド!フライパン!!」 「え……あ、しまった」 フライパンを持ったまま、鮭を入れるのをすっかり忘れていた。 何やら煙らしきものが上がっている。 いかんいかん、すぐに鮭を投入しなくては! 「「 あぁぁぁああ!ダメーー!!! 」」 「 え!? 」 声を揃えて真っ青になった二人の制止虚しく、俺の手を離れて鮭がフライパンへ…。 途端。 バチバチバチバチッ!!!!! 「 あっつッ!?!?!? 」 と、飛んだ!? 鮭が弾けた!? いや、違う!! これは、油だ!! っていうか、熱い、熱い!!! 顔にも肩にも腕にも油が弾けて熱いのなんの!! 「クラウド、早く火から下ろして〜!!」 「フライパンの底を水につけて〜!!」 必死に叫びながらフライパンをもぎ取ろうとするデンゼルにマリンだったけど、もう頭は真っ白でパニック状態。 それでも、子供達にこの危険物を渡したら、今度は子供達が危ない!ってことだけは分かっていた。 だから…。 ガッシャン!ジューーーッ!!! バチバチバチバチッ!!!! 「あっつ、あっつい!!」 「「 クラウドー!?!? 」」 フライパンを中途半端に水の中につけたもんだから、油と水が『これでもかー!!』と弾け飛ぶ。 首、肩、腕、手…。 もう、いたるところに被害が………。 「「 クラウド、大丈夫!? 」」 子供達の悲鳴が心に痛い。 流しの中、無残な姿を晒している鮭と今の俺は寸分違わない気がした…。 「ただいま〜!」 「ただいま!」 ユフィと二人、今日は心ゆくまで遊ばせてもらった。 滅多に休みが無いのにクラウドはどうしても、今日一日は私に家事をさせない!と言って譲らなかった。 とっても申し訳なかったんだけど、でも同時にすごく嬉しかった。 だって、クラウドが私の事を想ってくれてる…ってことでしょ? クラウドも私も、お互い照れ屋だからこういうことはあんまり言ったり言われたりしない。 だから、今朝、急に 『今日はティファの休日だ。俺が家事を全部するから、どっか遊びに行って来いよ』 って言われた時はびっくりしちゃって、素直に嬉しいって言えなくて…申し訳ないことしちゃった。 だから、お詫びも込めて沢山お土産買ってきた。 勿論、私のへそくり。 ユフィが呆れた顔をして、 『クラウドとお子様二人の分ばっかり買ってないで、自分の分も買いなよ…。そうじゃないと帰ったらクラウド達に怒られちゃうんじゃない?』 って言われるくらい。 でも、本当に嬉しかったの。 女の子同士でショッピングして、美味しいランチを食べて。 他愛ないおしゃべりをして、ゆっくり羽を伸ばせて…本当に楽しかった。 でもね。 街を歩くカップルを見て、やっぱりちょっとだけ寂しく感じちゃった。 なぁんて、ユフィにバレたらきっとからかわれるんだろうけど。 だから、今度は私が勇気を出そうかな…。 今朝、勇気を出して私に『想い』を口にし、行動に表してくれたクラウドに倣って。 弾む心を胸いっぱいに溢れさせて帰宅。 ……した途端、鼻につく異臭。 「「 ………… 」」 なんとなぁく、イヤな予感。 「「 ティファ〜! 」」 駆け寄る子供達に更にイヤな予感。 「どうしたの!?何かあった!?」 「「 クラウドが〜!! 」」 ドックン! 必死な顔をしている子供達に心臓が大きく跳ねた。 そのままびっくりして固まっているユフィを置いて二階に駆け上がる。 「クラウド!!」 駆け込んだ寝室には…。 「クラウド!?」 腕や首元に包帯を巻いたクラウドの姿。 ションボリとベッドに腰掛けているその姿に失神しそうになる。 「どうしたの!?なにがあったの!?!?」 駆け寄って両膝をついて顔を覗き込む。 どこか遠い目をしていた魔晄の瞳が私を映して…。 「…………ごめん…」 「え!?なにが、どうしたの!?」 「…………本当にごめん…」 こんなに力ない声を出すクラウドは、あの旅の時に1・2回、聞いたか…聞いてないかくらいよ!? なにがどうなったの!? パニックになりそうな私に、 「あのね、お料理が…」 いつの間にか傍に来ていた子供達がそっと事の顛末を教えてくれた。 「………バカじゃない…」 「ユフィ!!」 呆れた顔をしてボソッと一言呟いたユフィに、クラウドが益々小さくなった。 「なんだって簡単な『鮭のムニエル』くらいでそんなに大怪我するわけ…?」 「ユフィ!!!」 あ、クラウドがまた小さくなった。 ユフィの言う事も分かるわよ? 私だって、どうやったらここまで負傷出来るのか不思議……って、そうじゃなくて!! 「クラウド、大丈夫…?」 「……あぁ……」 「そんなに落ち込まないで?お料理は失敗しちゃったかもしれないけど、お店の中はすっごく綺麗になってたもん、とても嬉しいわ」 「………………」 「クラウド…」 「………………」 ダメだわ…。 すっかり落ち込んでる。 デンゼルとマリンが困ったように顔を見合わせ、ユフィが呆れ返って頭の後ろで手を組んだ。 私を喜ばせようと頑張ってくれたクラウド。 でも、人間『得手、不得手』があるもの。 それを一生懸命乗り越えて私のために頑張ってくれたクラウドの気持ちが素直に嬉しいのに…。 そっとクラウドの傍を離れると、ユフィ達を促して部屋を出る。 心配そうな顔をして見上げてくる子供達の頭をそれぞれ撫でて、 「それじゃ、ちゃっちゃと仕上げますか」 ニッコリ笑ってキッチンに向かった。 後ろからユフィも含めて嬉しそうにくっ付いてくる子供達に、頬が緩んだ…。 コンコンコン。 寝室のドアをそっとノックして部屋に入る。 返事は無いけど……入っても良いよね? クラウドはまだぼんやりとベッドに腰掛けていた。 その手には先ほどは無かった写真があった。 エアリスの教会で映した写真。 そっと隣に座るとクラウドがちょっと驚いた顔で見つめてきた。 「ティファ…?」 「ふふ、一緒に食べようよ」 私の手には二人分の食事を乗せたトレー。 困惑しているクラウドを横目に見ながら、ちょっと行儀悪いけどベッドの上にトレーを置く。 トレーには二人分のグラス。 その中には琥珀の液体。 一つを彼に渡して自分も取る。 「じゃ、乾杯しよ?」 「………なにに…?」 戸惑うクラウドに、ちょっと考える。 考えて……恥ずかしかったけど、軽く息を吸って勇気を出す。 「クラウドと私の気持ちに♪」 「 !! 」 チン。 軽く合わせて一気に飲み干す。 ちょっと度数の高いお酒が、喉をゆっくりと通っていく感触。 魔晄の瞳が呆けたように私を見ているのが…どうしようもなく恥ずかしい。 恥ずかしいけど…。 「クラウド、今日はありがとう」 「……お礼を言われるほどの事は…出来てない…。結局…コレもティファに作らせちゃったし…」 俯いて夕食を見る。 ふふ、本当にもう…クラウドったら可愛いんだから。 「クラウド。確かに料理は失敗したかもしれないけど、でもそんなのはどうでも良いの」 おずおずと私を見つめる紺碧の瞳が愛しい。 「クラウドが私のために一生懸命してくれたのが本当に嬉しいの。とても…幸せだよ?」 「……ティファ…」 「今日は本当に楽しかった。女の子同士で一緒にショッピングしたり、ご飯食べたり、おしゃべりしたり…。そういうの、今までほとんどなかったもの。だから本当に……楽しかったわ」 「……そっか…」 ちょっとだけ、表情が緩んだクラウドに自然と笑みが浮かぶ。 「うん!でもねクラウド、私は……その……」 「ん?」 あ〜…恥ずかしい。 恥ずかしいけど…。 「誰よりも…その、クラウドと一緒に……」 「 ? 」 ……頑張れ、私!! 「クラウドと一緒にいたい」 「 え!? 」 「クラウドと一緒に過ごせる時間が、なにより嬉しいの」 「 (///) 」 黙ったまま目を丸くして、顔を真っ赤にするクラウドを前に深呼吸をする。 さぁ、もう少し頑張れ、私! クラウドが私にくれたのと同じくらいの勇気を出さないと!! 「明日は私とクラウドしかいないから、二人で一緒にお料理の練習したいなぁ……」 「え!?二人しか…って!?」 真っ赤になったままビックリするクラウドに、私も頭がカーッとなるくらい熱くなる。 「その…ユフィが……ね…」 「……あ、そ、そう…なのか…?」 「うん…」 それだけで通じる。 ユフィが気を利かせてくれたんだってこと。 「それでね、折角だから明日帰ってきた子供達とユフィにクラウドが手作りをご馳走したら、三人とも喜ぶと思うの」 「…いや…どうだかなぁ…それは……」 昼間の事を思い出したらしい彼が、赤い顔のままションボリとした。 ……その顔……ダメ、もう……抱きしめたくなる〜! 可愛いんだから〜!! 「大丈夫よ。私がゆっくり一日かけて教えてあげるから」 「……ティファが…?でも…店は…」 「そんなの休むに決まってるじゃない。さっきも言ったでしょ、私は、クラウドと……その……一緒にいるのが……」 言いながら段々言葉が尻すぼみになる。 クラウドの顔はそれに反比例して真っ赤になる。 お互い真っ赤になってちょっと俯いて…。 でも、今日はいつもみたいに恥ずかしがって終わり!じゃあ…ダメ!! 勇気を出して…。 「ね…?一緒に頑張ろうよ」 「………」 「…ダメ?」 小首を傾げて覗き込むと、魔晄の瞳と目が合った。 途端、クラウドは口元を片手で覆って顔を背けてしまった。 耳まで真っ赤で、これ以上ないくらい照れてるのが分かる。 「……よろしく…」 顔を横に向けたままボソッと呟かれた返事に、もう…胸がキュンとなる。 「クラウド…大好き」 極々自然に出た私の気持ちに、クラウドがビクッと身体を震わせて私へ向き直る。 そんな仕草も…愛しい。 だから。 これまた極々自然に目を丸くして固まってるクラウドへ、私からそっとキスを贈った。 「さぁて、あの二人は今頃上手くいってるのかねぇ…」 「大丈夫だよ、絶対!」 「うんうん、絶対にクラウドもティファも、明後日には幸せ一杯だよ」 「それにしてもさぁ、折角遊びに来たのにお子様達のお守りかぁ…」 「「 ユフィ(お)姉ちゃんが言い出したんじゃない(か)!! 」」 「アッハッハ〜♪まぁ、たまには友人孝行しとかないとね?」 「それにしても、エッジの宿屋に泊まるの、初めて〜♪」 「俺も!なんかキャンプみたいだな〜!」 「じゃあ、今夜は楽しくトランプ大会でもしますか?」 「「 わ〜〜い!! 」」 その翌日。 セブンスヘブンは当然の如く臨時休業二日目となり。 更にその日、帰宅した子供達とユフィに、クラウドが見事に『鮭のムニエル』を焼いてみせたのだった。 とても美味しかったその『鮭のムニエル』だが、やっぱり一番お腹一杯になったのは…。 時折、視線を絡めて甘く微笑むクラウドとティファの空気だったりして…。 はい、本当にご馳走様! あとがき T・Jシン様より 190000番キリリクでした♪ リク内容は『「アンバランスな感情」の後日談で♪ティファがどんなわがままや願い事をしたのか興味が凄くあります。』でした。 ………ティファ、わがまま言ってない…。 更にはお願い事も…していない…(撃沈)。 本当に申し訳ない出来上がりで…。 それなのに、お優しくもアプの了承を下さって本当に感謝です〜。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 少しでも楽しんで頂ければ幸せです♪ |