なんっなんだ、あいつら!!! バケツの水をぶっ掛けたくなるほどのムカツク奴らに、思いっきり舌を出した。 ………心の中で……。 英雄達のリーダー 〜 その時、子供達は… 〜大体、店に来た時点で『ゲッ…やな感じだな…』って思ったんだ。 あからさまにバカにしたような視線を店の中に走らせて、出迎えたマリンをこれまた小バカにしたように見下して…。 もしかしたら、そのままマリンを蹴り飛ばす気じゃ!?って思うほどそいつらが非常識で、凄くヤバイ雰囲気を出してたから、慌ててマリンの前に立ったんだ。 まぁ、結果的にはティファが助けてくれたからホントに蹴りを喰らわせようとしてたあいつ等の方が痛い思いをしたわけだけど…。 それでもあいつらがクラウドとティファに出した条件は、同じくらい頭が痛いものだった。 ― 俺達が勝ったら、ティファさんを『俺達専属の何でも屋』になって頂きます。 ― ふ〜ざ〜け〜る〜なっつうの!!!! クラウドもクラウドだよ! 何が『ああ、構わない』だよ!! そりゃ、クラウドがあの三人に負けるはず無いさ。 でも、そういう問題じゃないじゃんか!! 景品にされたティファの事、少しくらい考えてやれよ!! なぁんて思ってたけど、よくよく考えてみたらクラウドがティファの事を考えてないはずなくて…。 ティファも『景品』の話しが持ち上がった時はすっごく機嫌が悪そうだったけど、実際その翌日はすこぶるご機嫌だったし。 だから、俺やマリンがヤキモキする必要はどこにも無いんだけどさ…。 それでもさぁ…。 やっぱり心配だろう? その………俺達………家族……な、わけだし………。 ……。 ………。 あ、改めて言ってみると恥ずかしいもんだな……。 と、とにかく!! あの三バカオヤジは、クラウドにぎゃふんと言わせられなきゃな!!うん!!! それにしても、ライ兄ちゃんやリト兄ちゃん、それにシュリ兄ちゃんの事をすっげー嫌ってたな…。 それに……誰だったか……聞き慣れない人の名前も口走ってたし…。 要するに、自分達の力を認めてもらえなくて拗ねてるんだな…あの三人のオヤジ達は…。 ったく、いい年して恥ずかしくないのかよ。 ライ兄ちゃん達よりも年が上だと思ったけど、中身はうんと子供だな。 俺やマリンの方がよっぽどしっかりしてるんじゃないのか…? ……まぁ、これは言い過ぎか。 だけど、あの三バカオヤジ達、妙に自信満々だったけどまさか卑怯な真似はしないだろうな…。 だってさぁ、冷静に考えたらいくら三人で相手になる…って言っても、真っ向勝負でクラウドに勝てるはず無いじゃん? 初めてクラウドとティファに会ったあの日。 俺を蹴り飛ばそうとしてあっさりティファに邪魔されて…、ティファが殴りかかろうとしたのをクラウドがこれまたあっさりと横から拳を止めて見せたし…。 あれって、クラウドが邪魔してなかったら絶対にクリーンヒットしてたよなぁ…。 ぜ〜ったいによけれてないから!! だって、あん時のオッサンの顔、目がまん丸だったもんな。 ティファの攻撃も、クラウドが近付いてた動きも…ぜ〜んぜん、見えてなかったんだぜ、きっと。 あんなにも間抜けな顔してたんだ、間違いないね。 だから、到底勝ち目の無い勝負を吹っかけておいて、本当に真っ向勝負なんて潔いことするかなぁ…??? めっちゃ感じ悪かったし……非常識だし……プライドだけは一人前以上みたいだったし……。 クラウドに三人がかりで対決して、あっさりと『負けました〜』なんてことにならないように何か企んでるんじゃないかな……? 俺がそう言ったら、話しを聞いていたマリンが「ん〜〜…」って首を捻った。 「でも、WROっていう大きな組織の名前を出してるんだもん。そんなに卑怯な手は使えないと思うな…」 「…まぁ、そう言われたらそうかな…。でもなぁ、あいつらめっちゃプライド高そうだったから、簡単に負けないようになにかしでかしたり、不利な条件を直前に吹っかけたりしないかなぁ……」 「『不利な条件』?」 不思議そうな顔をして見つめてくる妹に、「あ〜、まぁ、具体的にどんなものかは分かんないけど…」と言葉を濁す。 マリンは「うん……デンゼルの心配も分かるけど……」って言って、具体的な『不利な条件』はあえて追求しないでくれた。 「あ、そうだ。リーブのおじさんに聞いてみたらどうかな?」 パッと顔を輝かせて『名案だ!』と言わんばかりに胸をそらすマリンに、 「それもありかもしれないけど……どうかな……」 ちょこっと反対意見を口にしてみた。 途端に、不満そうに眉を寄せてマリンが唇を尖らせる。 「なんでよ〜?」 「いや、だってさ。色々忙しいだろうし…」 「む〜〜」 「それに、俺達にもきっと教えてもらえないと思う。だって、俺達クラウドの身内だろ?試合に関して詳しい話は口外しちゃダメ〜!とかになってないかなぁ…?」 「あ……そっか…」 俺の説明に、あっという間にシュンとなるマリンは、まるで頭から犬の耳が生えてて、力なく垂れてるみたいだ。 ……めっちゃ可愛い……。 なぁんて事を言ったら、絶対に怒るだろうから言わないけど…。 「気になるけど…仕方ないよな。観客席で一生懸命応援するくらい…かなぁ……?俺達が出来る事って…」 「…なんか、それだけってつまんないね…」 「うん……」 「………」 「………」 ちょっとだけ黙り込む。 その間も、頭の中はクラウドとティファの事で一杯だ。 もしも…。 もしも、本当にあの三バカオヤジ達が卑怯な真似をして、クラウドがヤバくなったら……!? それだけはぜ〜ったいに許せないね!! 真っ向勝負で負けたなら仕方ないけど、卑怯な手段でクラウドがやられちゃったりとかしたら、我慢できない!! 勿論、真っ向勝負でクラウドが負けるはずないけど…。 ……。 ………。 なにか…、なにかないか…? 俺達が出来る事…。 クラウドが姑息な手段でやられたりしないような…。 なにか……。 「あ、そうだ!」 ドッキーン!! 黙り込んでいたマリンが、急に大声を上げたもんだから心臓が飛び跳ねる。 「な、なんだよ…?」 バクバクと強く脈打つ胸を押さえながら、マリンにバレない様に平静を装ってみる。 ……バレたかもしれないけど…。 「あのね!あの三人のおじさん達が卑怯な真似が出来ないようにしたら良いのよ!」 「へ?」 目をキラキラとさせながらキッパリそう言ったマリンに、頭の中が『?』で埋め尽くされる。 いや、そう出来れば良いんだよ…勿論。 でもさぁ、その方法が……。 「沢山のお客さんがいたら良いのよ!そしたら、大勢の人達の前で卑怯な事は出来ないでしょう?」 「あ……」 エッヘン! まさにそう言わんばかりにマリンが胸を反らせた。 確かに…。 確かにその通りだ! 沢山の人達の目の前で、卑怯な事なんかしてみろよ。 すごい事になるよな…!? 何しろ、クラウドとティファはすっげ〜、人気者だから! 今回の試合のことも、常連さん達がすっげー怒ってたし。 でも…。 「試合の日…って確か平日だよな。仕事をお休みしてまで試合を見に来てくれるかなぁ…?」 「あ……そう言えば……」 「………」 「………」 折角のナイスアイディアだったのに…。 何となくガッカリして肩を落とす。 「でも…」 「うん?」 「言ってみるくらいは…別に良いよね?」 「………」 マリンがちょっと首を傾げながらポツリと呟いた。 うん…そうだな…。 とりあえず、話を広めるくらいは……良いかな…? 何もしないよりは…ずっと良いよな…? 「そうだな!やってみるだけやってみようか!」 「うん!!」 マリンと一緒に勢い良くセブンスヘブンから駆け出して、とりあえず友達の集まってるであろう公園へ。 友達にクラウドと三バカオヤジの話を面白おかしく聞かせて…。 その友達が家に帰って、家族に話をするように仕向ける。 んでもって、友達に話し終ったらその足で近所の仲の良い『お馴染さん』のお店を回る。 大体がセブンスヘブンで仕入れの取引先なんだけど、他にも俺達がよく遊びに連れて行ってもらってる雑貨屋さんとか、喫茶店とか! そこで大きな声で話をしたら、その場にいる他のお客さん達の耳にも聞えるし…。 うん! 中々良い考えだよな!? 案の定、何人もの人達が『え!?今の話し、本当!?』『その話し、詳しく聞かせて頂戴!!』って声をかけてくれたしな! でも、ちょっと意外だったのが、 『あ!その話し、本当だったのね!?うちの亭主が何かわけの分からない事を口走ってるわ〜…って思ってたんだけど…』 『え〜?その話し、うちの人も言ってたのよ!まぁ、本当に本当なのね!?』 ってびっくりしてるおばさん達が結構いたことだ。 あの騒ぎの時にいた常連さんの奥さん達みたいだった。 常連さん達が、結構騒いでくれてる事が分かって、マリンと一緒に笑い合った。 もしかしたら…。 もしかしたら上手くいくかもしれない!! 「良かったら応援に来てよ!」 「クラウドだったら負けないと思うけど、やっぱりティファが『景品』になってるからさ…。励まして欲しいんだ」 俺達のお願いに、おばさん達が何度も頷いてくれたのが……嬉しかった。 そんなこんなで、試合までの一週間(正確には五日間だけ)は、こうして話しを広めて回って……あっという間に試合の日が来た。 ティファは不安とか…不満めいた事は何も言わなかった。 ただ、『クラウド、気をつけてね?』ってクラウドの心配しかしてない。 本当にティファってお人よしだよなぁ…。 自分が景品になってるって自覚ないのかなぁ…? まぁ、自分の事ばっかり心配するティファって『ティファ』じゃないよな…うん。 人の事ばっかり気にかけて、自分は後回しにする。 それが『ティファ』だから! ま、そういうわけだから、ティファが自分の事を疎かにする分、俺とマリンとクラウドが気にかけてたらいっか!! 「よっし、頑張るぞ!!」 「……何を頑張るの…?」 思わず口から出た気合の言葉に、クラウドとティファ、そしてマリンがびっくりして俺を見る。 ………。 うっわ〜〜!! は、恥ずかしい!!! 「い、いや……ク、クラウドの応援を…」 「あ、そっか」 「フフ…デンゼルったら」 「ああ…ありがとう」 しどろもどろに言い訳をする。 三人はあっさりと納得してくれた。 はぁ……。 本当に良かったよ、三人が素直で優しい人間で……。 「じゃあ…行って来る」 「「「行ってらっしゃい!!!」」」 試合をするクラウドは、俺達と分かれて闘技場の『選手控え室』に向かって行った。 小さくなっていく背中を見てると……なんかちょっぴり……不安になる。 勿論、クラウドが負けるはずない! 負けるはずないけど……でも……。 怪我とか……したら……どうしよう……。 あんだけ大口叩く奴らだから、そこそこ腕は立つんだろうな…きっと。 もしも…クラウドが怪我したら……それも大怪我とかしたら……。 「大丈夫よ」 ポン…と頭に手を置かれて見上げると、ティファがニッコリと微笑みながら俺とマリンを見下ろしていた。 隣に立つマリンの頭にも、ティファの綺麗な手が置かれている。 マリンも俺と同じ様にびっくりした顔でティファを見上げているのが視界の端に映った。 「大丈夫。二人共、心配なんかしなくてもクラウドは負けないわ」 ティファのあったかい言葉に、沈みそうになってた気持ちがグンと持ち上がる。 自然に顔が緩んで、笑顔になれる。 マリンもそうだ。 いつもの明るい笑顔になってる。 「うん。二人は笑顔が一番!さ、行こっか?バレットとシドが席を取っててくれてるはずだから」 「「うん!!」」 ティファを真ん中に、俺達三人は手を繋いで闘技場へと足を踏み入れた。 「おお……!!」 「まぁ……!!」 「すっご〜い……!!!」 闘技場の観客席を目にした俺達は、その客入りに目を丸くした。 まさか…。 まさか、このバカデカイ闘技場のだだっ広い観客席がお客さん達で埋まるとは!! 今日は平日なのに…!! すっげ〜〜!!!! その凄い人数のお客さん達の中に、俺達が声をかけて回ったおばさんやおじさん達の顔が混ざってる。 「やったね、デンゼル!!」 小声でマリンが嬉しそうに声をかけてきた。 俺もめちゃくちゃ嬉しくなって「うん!やったな!!」って笑い声を上げた。 バレットのオッサンとシドのオッサンを探してキョロキョロしてたティファが、不思議そうに俺達を見下ろしたけど、マリンと顔を見合わせて笑うだけ…。 このことは、ティファには内緒だからな。 「へんな子達ね」 クスリ…と笑ってティファがクシャクシャと俺とマリンの頭を撫でてくる。 この手が大好きなんだ。 母さんみたいで…さ。 温かい気持ちになれるんだ。 「おおい、こっちだこっち〜!!」 バカデカイ声でバレットのオッサンがうんと前の方から手を振ってるのが見えた。 隣には赤い獣のナナキと、真っ赤なマントを羽織ったヴィンセントの兄ちゃん。 その反対隣には、トレードマークとも言えるタバコをくわえたシドのオッサン。 「あ、あそこね」 ティファがニッコリと手を振り返して俺達を促した。 通路には座れないお客さんが立見を決め込んでいて、結構な混雑振りだ。 その中を、ティファが俺とマリンを庇うようにしてオッサン達のところまで誘導してくれる。 席に辿り着くまでに、沢山の人達の視線がティファに注がれて、ひそひそと小声で会話してる。 『あれが……今回の『景品』ですって…!』 『まぁ…!お気の毒に……』 『でも大丈夫よ、クラウドさんが負けるはずないでしょう?』 『でも、それとこれとは別でしょう…?だって、やっぱり『景品』だなんて、まるで『もの』扱いじゃあないですか…』 『まぁ、そうかもしれないけど……』 『それに……』 最後の『それに…』って台詞が気になったけど、席に向かって急いでたから結局何が『それに…』なのかは聞き取れなかった。 「おう!遅かったじゃねぇか」 「ごめんなさいね。ちょっと家を出るのが遅くなって」 シドのオッサンが軽く手を上げて出迎えてくれた。 その隣のバレットのオッサンは、「マリ〜ン!良く来たな〜!!」と、デレデレしながらマリンを抱き上げてる。 マリンも嬉しそうに笑ってるけど……周りから見たら……ぜんっぜん似合わないんだよなぁ…この親子。 巨漢で強面のオッサンと、可愛いマリン。 本当に……不似合いな二人だ…。 ま、それでもマリンもオッサンも幸せそうだし、いっか…! 「デンゼル、クラウドはどんな感じだった?」 ナナキが俺の脚に身体を摺り寄せながら声をかけてきた。 ナナキの毛がくすぐったい。 毛並みを撫でながら、 「ん〜…。いつもと全然変わらないな〜。特に気負う…って事もないし…。油断してる…ってわけでもないし…」 「そっか…。良かった、ちょっと安心したかな」 ホッと息を吐いたナナキに、ティファがちょっぴり悪戯っぽく笑う。 「あら、そんなにクラウドは頼りない?」 ナナキは困ったように前足で頭を掻きながら、 「普段はそんな事ないんだけど……」 と、言いにくそうに言葉を濁らせた。 「ティファ、お前が絡んでいるのだから、あまり平静でいられないのではないかと心配してたんだ」 ナナキが上手く言えなかった事を、ヴィンセントの兄ちゃんが代弁してくれた。 その言葉に、ティファが薄っすらと赤くなる。 本当に……相変わらずだよなぁ……ティファは。 これくらいで照れてどうするんだよ……。 クラウドもティファも、すっげー照れ屋だから、これから先が心配だなぁ……。 それからは、試合が始まるまで約三十分ほど時間があったけど、皆と話をしてたらあっという間にその時が来た。 「さぁて、やって参りました!!皆様お待ちかね、『ジェノバ戦役の英雄のリーダー 対 実力派WRO隊員』との『手合わせ試合』で〜〜っす!!!!」 何故かユフィ姉ちゃんの声が、闘技場一杯に広がって、俺とマリン、それにティファは目を丸くした。 そんな俺達に、 「あ〜、言ってなかったか?ユフィが司会を務める事になったんだ」 「あいつ、リーブにめっちゃ頼み込んでたな…」 遠い目をしてシドとバレットのオッサン達が教えてくれた。 あ〜…そうなんだ。 うん、何となく分かるかな。 だって、こういう『お祭りごと』が大好きだもんなぁ……ユフィの姉ちゃん……。 とか思ってたら、闘技場の重い扉が開いて……。 「「「え!?」」」 見覚えのある…三人の兄ちゃん達に、ティファもマリンも…そして俺も目を丸くした。 だってさぁ…。 なんで『兄ちゃん達』が『三バカオヤジ』と一緒に出て来るんだよ!! あ…。 さっき、耳にした『それに…』って……このことだったのか!? 「あ〜…もしかして…とばっちりがいっちゃったのかしら……」 ティファが気の毒そうにポソッと呟いた。 『とばっちり』って……やっぱりあの『三バカオヤジ』達のせいか……? ゆ、許せん!! マリンも俺と同じ意見みたいで、キラキラと輝くその目は怒りで揺らいでいる。 何が何でも、あの『三バカオヤジ』達にはキッツーーイお仕置きをしてもらわないとな、クラウドに!! 観客席のあちらこちらから、「旦那〜!!頑張れ〜〜!!」「キャー!!クラウドさ〜ん!!」という黄色い歓声が上がる。 俺達もそれに負けじと「クラウドー!頑張ってー!!」「クラウドー!出来ればライ兄ちゃんに怪我させないでくれよー!」「あ、本当だ!!リトお兄ちゃんもライ兄ちゃんも頑張ってねぇ!」「シュリ兄ちゃんも頑張れー!!」などなど、一生懸命声を張り上げた。 「はい、ではここで試合前に簡単な説明を行いま〜す!」 ユフィの言葉に、会場の歓声が少しだけ静まる。 「え〜、ご覧の通り、クラウドの対戦者は計6名。一回戦はクラウド対シュリ中佐のガチンコ対決です!」 「「「「「……………え!?」」」」」 ユフィ姉ちゃんの爆弾宣言に会場は水を打ったように静まり返った。 いや、そうだろう? だって、まさか……。 「シュリ君とクラウドが……一対一で……!?」 ティファが呆然として呟いてたけど、俺も全く同意見。 シュリ兄ちゃん………骨は拾ってやるからな……。 これ以上はないってくらい、渋い顔で立ってるシュリ兄ちゃんに心から同情した。 隣に立ってるライ兄ちゃんと、リト兄ちゃんが何やら話しかけたり肩に手を置いたりしてるのが見える。 勿論、何を言ってるのかまでは……分からないけど…。 でも、何か一生懸命慰めようとしてるらしいライ兄ちゃんに比べて、リト兄ちゃんがどこか諦めたように見えるのは……何で? そんな三人の兄ちゃん達の後ろでは、例の三バカオヤジがむかつく笑いでニヤニヤと兄ちゃん達とクラウドを見ているのが見えた。 ムッカーーー!!!! くっそーー!! クラウド、コテンパンのギッタギタにしてやれ!! 「そして、その次の第二回戦はクラウド対ノーブル准尉&バルト准尉〜!!」 ユフィ姉ちゃんの言葉に、どこからか「「「「「キャーーー!!!」」」」」という女性の黄色い歓声が上がった。 途端、三バカオヤジの顔が歪む。 「……ライ兄ちゃんとリト兄ちゃんって人気者なんだな」 「うん。でも、二人共それどころじゃないみたいだね…」 「……そうね」 「気の毒になぁ…」 「まぁ、若い頃の苦労は買ってでもしろって言うし…良い経験だろう……多分」 「…シド〜。おいら、なんかそれ違うと思うな」 「………哀れな…」 「はい、そして残ります最後の試合、第三回戦はクラウド対残りの三名でっす!!」 「「「おい!!」」」 ユフィ姉ちゃんの最後の説明に、三バカオヤジは目を剥いた。 「何で俺らだけ名前を割愛してんだよ!!」「この贔屓野郎!!」「お前も金持ちだからって差別すんのか!?」 「うるっさい!!仕方ないじゃん、ここに名前が無いんだから!!!」 キーーーーーーン……。 マイクで声量が倍以上になった怒声に思わず耳を塞ぐ。 ナナキなんか、耳が特に良いからこれには参ったみたいで床で悶絶してるよ…。 「はいはい!時間もないし…。第一回戦、クラウド対シュリ、試合開始!!」 カーン!! 勝手に試合開始宣言を行い、手元にあったゴングがユフィの手によって鳴らされた。 「「「「「「おい!!」」」」」」 「めちゃくちゃな奴だな…」 「本当に…」 「まぁ、あれがユフィお姉ちゃんだよね」 「確かに…」 「デンゼル、マリン……」 ティファが苦笑しつつ、俺とマリンの頭をかる〜くこづく。 そして。 試合が始まった。 試合は本当に凄かった。 クラウドが強いのは当然だけど、こうして間近でクラウドが戦ってるところって…そう言えば初めて見るんだよな。 それに驚いたのが、兄ちゃん達の強さ!! 何度もクラウドがやられるんじゃないか…!?ってドキドキ、ハラハラする場面があった。 最終的にはクラウドが勝ったんだけど、それでもほんっとうに三人共すっげー強くて…カッコ良くて!! 俺、クラウドに憧れて、クラウドみたいになりたい…って思ってるんだけど、俺がクラウドみたいになれるよりも、三人がクラウドみたいに強くてカッコ良くて、頼りがいがある男になる方が……うんと可能性が高いし、そうなるまでの時間が短いんだなぁ……って思って……ちょっと……何だか……複雑な気持ちがした。 まぁ……仕方ないんだけど。 それでもさ。 ま、いっか!!って思えたんだ。 だって、三人とも、やっぱりクラウドとは違うけどカッコ良かったし、強かったし!! それに、クラウドも三人をこう……認めてる?って言うのか……うん。 嬉しそうだったから…。 そんなクラウドを見るのもやっぱり初めてだったから。 すごく……すごく嬉しくなった。 ティファとマリンも嬉しそうだった。 特に…ティファが。 いつもは恥ずかしがるくせに、リト兄ちゃんとライ兄ちゃんの試合が終った後、周りの目なんか全然気にならないみたいに、クラウドとジーッと見つめ合っちゃってさ!! 本当に…クラウドしか見えてない…そんなティファを見て、マリンと一緒に「良かったな」「うん、良かったね」って満足したんだ。 やっぱり、ティファにも幸せになって欲しいから…。 今でも十分、ティファは幸せだとは思ってるよ。 でも、そうじゃなくて…。 ちゃんと『結婚』してさ。 クラウドと固い絆で結ばれました…って証が欲しいんだよな、俺もマリンも。 でないと、なんか…俺とマリンに遠慮してるから結婚に踏み切れないんじゃないか…って変に心配になってくるし。 でもクラウドしか見えてないティファを見て…安心した。 きっと、そのうち……な? その時が来たら、うんとお祝いしてやるんだ!! 三バカオヤジ達に感謝する事と言ったら、ティファのこういう姿を見ることが出来たくらいだな。 そうして。 無事に試合は終った。 本当に…本当に有意義なものだったと思う。 クラウドも……ティファにも……。 それに、マリンと俺にも…な。 「良かったね。ティファとクラウドが大切に想い合ってることが分かったし!」 寝る前に、マリンがそう眠そうな声で話しかけてきた。 「うん……本当に…」 「これからも……今日みたいに……素直な二人だと……良いのにね……」 「………うん……」 「………本当に……良かった……」 最後のほうは、寝息と混じって小声になってるマリンに、俺もつられるようにして眠りに付いた。 翌日はきっと、ティファが嬉しそうな顔で張り切って作った朝食を…。 クラウドと一緒に家族揃って囲む事が出来るだろう。 それは…。 眠りにつく直前に見た、俺の……幸せな予想。 あとがき はい。お待たせしました!! 95859番キリリク小説です!! 英雄達のリーダーで子供達視点のお話し……とのリクエストでしたが……(汗)。 どうにも最後がまとまりきらなくて。 ちょっと中途半端な感じで終ってしまいましたね……(苦笑) 本当にいつもいつも……ゴメンナサイm(__;)m こ、こんな作品で申し訳ないのですが、T・J・シン様、お受け取り…下さいますでしょうか……(ビクビク)。 リクエスト、本当にありがとうございました!!(脱兎) |