グォォォオオオオオン!!!!


 ドラゴンの咆哮が岩肌にこだまする。
 標高の高い岩肌を持つニブル山。
 その中腹で、ニブルヘイムを故郷にもつ青年四人が蒼白になって固まっていた。




拝啓。過ぎ去りし日々の思い出と、これから来る未来へ…。





 それは誰が言い出したことだったか…。


 ― 惨状に見舞われた故郷の墓参りに行こう ―


 誰も異を唱えなかった。
 かつて、英雄と称えられた男の手によって、故郷は灰となった。
 その隠蔽工作を神羅が施したことを知ったのは、それから随分時間が経ってから…。
 事実を知ってから一度だけ幼馴染である四人で故郷の土を踏んだ。
 しかし、その時は『旅行客』を装って帰省したため、お墓参りはしていなかった。
 きな臭い香りがしたから、とてもじゃないが『ニブルヘイム出身者』として帰省出来なかったのだ。
 今考えたら、その時感じた『身の危険』はドンピシャであり、あの時『ニブルヘイム出身者』として帰省していたら、間違いなく殺されていただろう。
 しかも、死体はどこぞに埋められているか、沈められているか…。
 あるいは燃やされている……。
 とまあ、とんでもないことになっていたに違いない。

 だが、ようやく世の中は平和になった。
 神羅が行っていた悪事も世の人々の知る所となった。
 自分達の新しい生活も落ち着いた。

 となれば…。
 やはり、故郷に花を手向けたいと思うだろう…。

 誰が言い出したか分からないが、それでもその意見に大賛成だったし、自分達の心の奥底でずっと引っかかっていた故郷への思慕の念へ区切りをつけるためにも、『ニブルヘイム出身者』として帰省する必要があると思った。
 ゆえの……『墓参り』


 本当は…。
 自分達四人以外にも同郷の人間がいる。
 それも二人だ。

 一人は可憐な少女だった自分たちの初恋の人。
 今ではすっかり美しい女性に成長し、誰もが振り向く存在になっている。
 もう一人は、いつも小バカにした目で自分達を見下し、ちょっと視線が合っただけで喧嘩を吹っかけてくるとんでもない乱暴ものだった少年。
 酷く歪んだ性格をしていたために生涯分かりあうことはないと思っていた…大嫌いな奴。
 その少年も、今では自分達の予想を裏切り、とんでもない美青年に成長し、しかも歪みまくった性格も本当はただの『寂しがりや』で『照れ屋』だということが判明した。

 そしてなによりも信じられないのが…。


 憧れで初恋の少女とその捻くれものの少年が恋人同士になっているという事実。


 一体誰が予想できただろう?
 ありえない事が世の中には起こるものなのだなぁ〜…と、四人は呆然としたものだ。
 その信じ難い事実を漸く受け入れられるようになって暫く経った今、四人は墓参りをすることにした。
 自分達の成長を亡き家族と親族、友人達に知らせるため。
 そして何よりも…。


「ティファちゃんとクラウドが『ジェノバ戦役の英雄』なんだぜ!?」
「しかも恋人同士なんだぜ!?」
「同じ家に住んでるんだぜ!?」
「血の繋がってない子供を二人も育ててるんだぜ!?」

「「「「 信じられるか〜!?!? 」」」」

 綺麗に整えられている墓地に、四人の興奮した声が響いた。

 恐らく、誰も予想していなかっただろう二人の現在(いま)。
 クラウドが『英雄』になったということも十分驚くべき事実だが、その事実以上に『ティファと恋人』になったことのほうが、青年の幼少期を知っている自分たちにとっては驚きだと言える。
 ティファが素敵な女性になったことはある意味『予想の範疇』。
 だが、あのクラウドが!
 世の人々が認めるような大人物になったという事実は、驚愕すべきことだ。
 きっと、クラウドの母親ですらビックリするだろうと思われる成長振り。
 その成長振りは、自分達をただただビックリさせて……小さな胸の痛みと大きな喜びを与えてくれた。
 幼い頃の自分達はこう思っていた。

 この四人の内、誰かがティファと幸せになるんだろう……と。
 言い換えれば、この四人以外の男とティファが一緒になることはないということだ。
 幼馴染でありながら、恋のライバル。
 自分達四人のうち、誰がティファの心を射止めるか。
 そして、見事射止めることに成功したなら、その幼馴染を黙って祝福しよう…。

 そう、暗黙の了解が出来ていたというのに!
 まさか!!
 まさか、村で一番可能性の低くて…というよりも、眼中に無かったクラウド・ストライフがティファの心を射止めてしまうとは誰が想像出来ただろう!?
 しかも!!

「クラウドの奴、すごくイイ男になっててさぁ…」
「母ちゃん、トーモの言う通りなんだ。ほんっとうに『あのクラウドか!?』って俺、目を疑ったもんよ」
「そうそう!俺もビックリ!ユウの奴、あんぐり口開けて固まったんだぜ」
「お前…そう言うダッチだって口をパカーッと開けてたじゃねぇか!」
「てか、俺達全員口が開きっぱなしだったっつうの」
「「「 ジョー!ソレを言うな!! 」」」

 四人の若者の笑い声が、いつもは寂しい墓地に響く。

 ニブルヘイムを故郷とする人間がどれくらい残っているのか、四人は分からなかった。
 元々、ニブルヘイムに根を下ろして生きる若者は少ない。
 皆、ある程度成長するとちっぽけな村を捨てて町に繰り出してしまう。

 つまらない人生を送りたくない。
 自分はこんな小さな村で納まるような人間じゃない。
 自分の力を試したい。
 もっと刺激のある生活を送りたい。
 有名になりたい。
 強くなりたい。

 村を出て行く理由は様々だ。
 だが、それでも村を出て行った若者達のうち、半分は数年したら戻ってくるパターンが多かった。
 やはり、故郷というのは早々簡単に捨てられるものではない。
 自分達も村を出た時には、数年後にはここに戻ってくるのだろう…なんて漠然と感じていた。

 だがそれも…。

 あの忌まわしい事件から不可能になった。
 ニブルヘイムはパッと見た限り、完全に元通りの姿に戻っている。
 しかし、違う。
 一瞬でもニブルヘイムを心から故郷だと感じた人間には分かる、違和感。
 その違和感は言いようのない寂寥感を感じさせ、二度とニブルヘイムに住みたい、とは思わせなかった。

 いや、少なくともこの四人には…であるが…。
 ザッと軽く村の中を見て回った四人にとって、大きな喜びだったのは、懐かしい顔がチラホラあったことだ。
 向こうも自分たちの帰郷を心から喜んでくれた。
 今ではまがいものの故郷となってしまったここで、それでも『故郷だから』と言って、戻って来た。
 かつての故郷を蘇えらせるべく、頑張ってくれている同郷の顔。
 だがしかし、
「お前達も帰ってこないか?」
 との言葉に、四人は複雑な顔をして…。

 結局首を横に振った。

 自分達が過ごした幼少時代の思い出が沢山詰まったはずの故郷には、もうその影がない。
 神羅によって塗り替えられた偽りの村に、愛着は沸かなかったし、かつての故郷を取り戻そうというガッツも沸いてこなかった。

 自分達は既に、他の場所を『故郷』としてしまっているから…。

 数少ない同郷の男は、ちょっと寂しそうに笑ったがそれでも、
「ま、いつでも戻ってこいよ。ここはまがいものが多いけど、それでも故郷には間違いないし、俺達もいるからさ」
 そう言って、足にしっかとしがみ付いている我が子を抱き上げて微笑んだ。



「それにしても、アイツがオヤジかぁ…」
「俺達よりも四つくらいしか違わないよな?」
「ジョーは二十三歳だからそうだけど、俺は二十一歳だからまだだっつうの」
「ダッチは細かいな〜。そんなんだと女にモテないぜ?」
「うるせぃ!良いんだよ別に!まだ新しい恋を探す気になれないんだから!!」
「「「 ……… 」」」

 からかわれて思わず大きな声を上げてしまい、青年はハッと口を覆った。
 それぞれが非常に複雑な顔をしている。
 自分達にとって、初恋の人は本当に大切な少女だった。
 かけがえのない存在だった。
 故郷がヤバイ事になっていると耳にしたとき、真っ先に思い浮かんだのは家族の顔と少女。

 恐らく、惨劇に巻き込まれてもうこの世にはいない、そう思っていた。
 それが…だ。
 まさか『英雄』の一人として生き残っていたとは!
 しかも!!

「やっぱ……キツイよなぁ…」
「…トーモ……泣くな…」
「泣いてねぇよ!ってか、ユウこそ泣きそうじゃねぇか!!」

 ギャンギャン言い合いながら、胸にチリリ…と走る痛みの原因は、漆黒の黒髪を風になびかせ凛と立つ美しい女性の傍らにそっと立っている……金髪・碧眼の美青年の存在。

 お似合いだった…。
 もう、ほんっとうにお似合いだった。
 ヤキモチを妬きながらも、認めずにはいられないほどお似合いの二人。
 お互いがお互いを大事にしているのだということがヒシヒシと伝わってきて……切なかった。
 彼女の隣に立つのは自分達の中の誰かだと勝手に思い込んでいたものだから、尚更真実を受け入れて二人を祝福するのには時間がかかった。

 …と言うか。
 未だに消化不良な想いがあって、祝福の言葉を二人に述べていない。

「俺……心、狭い…」
「…大丈夫、ジョー。俺もだ」
「…ダッチ……」

 ウルウルと目を潤ませてガシッ!と抱き合う青年二人。
 はたから見たらかなり気色悪い。
 と言うか、『そっち系』の人かと思われても仕方ない光景。
 その二人を残り二人の青年が、これまた泣きそうな顔で見つめているから…尚のこと気色悪い。


「ま、まぁ、アレだな!折角だからちょっと散歩しようぜ!」
 湿っぽくなった空気を振り払うように、青年が晴天に向かって腕を上げた。

 かくして。
 墓参りを済ませた四人は、懐かしいニブル山に足を踏み入れたわけだが…。




 グォォォォオオオオンッ!!!!




「「「「 ヒィィイイイイッ!! 」」」」

 突然目の前に『落下』してきたドラゴンに腰を抜かした。
 ワイワイと楽しく話しながら足取り軽くゴツゴツした岩肌の山道を登っていたので、ドラゴンの存在には全く気付かなかった。
 当然だが、四人は戦闘に関してずぶの素人。
 護身用のナイフ一本、持ち歩いていない。
 そんな四人に獰猛なドラゴンが唾液を垂らしながら牙をぎらつかせて咆哮を上げる。
 これはもう…。
 死ぬ以外に道が無いんじゃないのか!?という絶体絶命のピンチ。
 四人は密かに思った。


『『『『 死ぬ前に…もう一目ティファを見たかった… 』』』』


 捨てきれない恋心。
 忘れられない幼少期の思い出。
 憧れの少女と過ごした輝かしい日々。


 それらが青年達の脳内をすさまじいスピードで駆け巡る。
 恐怖のあまり目を閉じることすら出来ない。
 重量感溢れるモンスターが、太い尾を振り上げる。


 あぁ…。
 あと数秒で俺達、全員死ぬんだな…。


 恐怖でガチガチに固まっているくせに、どこか冷静な自分がいて醒めた目で現状を把握する。


 苦しくなかったら良いのに…。
 その前に、失神出来たら良いのに…。
 気を失っている間に済んだら、苦しくもなんとも無いだろうに…。
 いやいや、もしも失神している間に死んだら、アレか?死んだことに気付かないで地縛霊とかになっちゃうのか!?


 などとバカなことを考えている間にも、野太い尾が自分達に向かって振り下ろされる。
 腰がすっかり抜けていて地べたにへたり込んでいるため、もう絶対に逃げられない。

 死がそこまで迫って……。
 と…。



 ガッ!!!!

「「「「 へ…!? 」」」」

 グルルルルルル……!!

 ギリギリギリギリ…。


 鈍い音。
 それと同時に自分達の目の前に緑色のドラゴン以外の別のものが視界に割って入った。
 いや、先ほどのドラゴン同様、『降って』きた。
 ドラゴンの緑色の尾が、その割ってきた人物によって阻まれている。

 ポカン…とその背を見上げる。

 漆黒の服を身に纏い、痩身な体躯からは想像も出来ない程の力を持っているその青年。
 ドラゴンの尾を手にしている巨大な剣で防ぎながら、真っ直ぐ獰猛なモンスターを睨みつけている紺碧の瞳。
 癖のある金髪をツンツンと立てて、微塵も怯む事無く自分達を死神から救ってくれた…幼馴染の青年。

「「「「 ク、クラウドー!? 」」」」

 思わず上がった素っ頓狂な声に、クラウドは眉間にシワを寄せて溜め息を吐いた。

「大丈夫みたいだな」

「あ、あぁ…っと」
「えぇ…っと…」
「あの…」
「なんでここに…?」

 落ち着いた声音は優しく、信じ難い安心感をもたらせた。
 先ほどまでの絶望は欠片もない。
 青年達は自分達が毛嫌いしていた少年の成長した後姿に、ただただ驚くばかりだ。
 そこへ。

「ダッチ、ジョー、ユウ、トーモ!」

「「「「 ティ、ティファ!?!? 」」」」

 軽やかなステップで、山道を駆け上ってきた女性は、自分達が今も心を奪われている幼馴染。
 いつもは明るい笑顔で彩られているその顔(かんばせ)も、今はキリリと引き締められ、茶色の目には『英雄』の光が宿っていた。

「四人とも、早くこっちへ!」

 放心状態の四人を岩肌に押し付けるようにして、ドラゴンから遠ざけようとする。
 青年達はハッと我に返ると、慌てて転げるように駆け出した。
 その背後からはドラゴンの苛立った唸り声が重量感たっぷりに響いてくる。
 腹の底にまで響いてくるその唸り声に、背筋が凍りつく。
 思わず振り返った『ダッチ』と呼ばれた青年が、ヒッ!と息を飲んだ。

「お、おい!!クラウド、逃げろ!!!!」
「「「 え!? 」」」

 幼馴染の悲鳴に残り三人が振り返る。
 そして、ダッチと同じ様に悲鳴を上げた。


 樹齢何千年という大樹ほどもある尾が振り上げられ、クラウド目掛けて振り下ろされたのだ。
 思わず眼を瞑りそうになるが、完全に瞑る前に尾が振り下ろされた。
 地面が割れ、はぜた石が周りに散る。
 クラウドは素晴らしい跳躍にてドラゴンの頭上に飛び上がっており無傷。
 青年達は再びポカン…と口を開けた。

「クラウドは大丈夫。それよりももう少し離れて。火を噴かれたらここでも危ないから」

 落ち着いた声のティファに、青年達は信じられない思いで彼女へガバッと振り向いた。
 対するティファは声だけでなく表情も落ち着いている。
 クラウドの勝利を確信しているその顔に、青年達は再びノロノロと歩きながらクラウドへ視線を戻した。


 ゴォォオオオッ!!


 ドラゴンの裂けた口から火炎が吐き出される。
 四人は肝を冷やしたが、的になっているクラウドは実に冷静だった。
 一気にドラゴンの懐に飛び込んで火炎を避けると、大剣を深々とドラゴンの身体に突き立てた。
 ドラゴンの表皮は硬いくらい、青年達は知っている。
 それなのに、クラウドの剣はその知識を覆してしまうほど、あっさりドラゴンの身体に飲み込まれた。

 耳を劈く(つんざく)ようなドラゴンの悲鳴が山を振るわせる。
 激痛から激しく身を捩るドラゴンに、クラウドが弾き飛ばされてしまいそうになる。
 しかし、これまた紙一重で避けると、軽やかに後方へ下がって今度はしっかりと上体を屈め、躊躇う事無く突進した。


 繰り出された斬戟の大技を喰らい、ドラゴンは断末魔の叫びを上げて斃れた。





「クラウド…」
「お前…」
「本当に…」
「英雄だったんだなぁ…」

 ドラゴンをあっさりと斃し、駆け寄ったティファに柔らかな笑みを浮かべてみせたクラウドに暫し見惚れていた四人は、自分達へと視線をよこした青年にハタッ…、と我に返った。
 そうして、口を開いて出てきた第一声がこれ。

 対するクラウドは、実にイヤそうに眉間にシワを寄せると、
「『英雄』って呼ぶのはやめてくれ」
 溜め息を吐いた。

「それにしても、どうして四人ともこんなところに?危ないじゃない」

 クラウドにそっと寄り添うように立っていたティファが、苦笑いを浮かべている。
 青年達はティファとクラウドのその距離にチクリ…、と胸が痛むのを感じながらも、ただの散歩に来たのだと話した。

「……ここが危険な場所だっていうのは、子供の頃から散々言われてたのにか…?」

 呆れたように見やるクラウドに、四人はむ〜っ!と膨れっ面をしたり、バツの悪そうな顔をする。

「そうだよ!」
「悪かったな〜」
「いや…そうなんだけど…」
「ちょっと思い出に浸ろうかと思ったんだ」

「思い出に浸ってる間に死んでたぞ…」

 はぁ…。

 またもや吐かれた溜め息に、グッ…、と言葉を無くす。
 ぐうの音も出ない四人に、彼らの憧れである女性はクスクスと笑いながら、そっとクラウドの腕へ手を添えた。
「まぁ良いじゃない、助かったんだから」
 ニッコリと微笑むティファに、クラウドはやんわりと目元を和らげる。

 自然、微笑み合う形になった二人に、四人の胸がまたチリリ…、と痛んだ。
 なんともお似合いな二人。
 余人が入り込む隙など微塵もない…二人の距離。

 青年達はそっと目を合わせると、互いの失恋を慰めるように苦い苦い笑みを浮かべた。



「んで?なんでクラウドとティファはここに来たんだ?」

 下山途中。
 前を歩くティファ、そして自分達の背後を守るようにして後ろから歩いてくるクラウドに話しかける。

「私達も皆と一緒。お墓参りに来たの」
 クルリ、と振り向きながらティファが笑顔で答える。

「そうしたら、ニブル山にあんた達が向かった…って教えてくれた人がいてな。山から凄い殺気がしたから、慌てて駆けつけたんだ」
 渋面にしか見えないクラウドが淡々とティファの後を次いで答えた。
 男性にしては整いすぎのその顔が渋い表情に見えるが、今ではその表情が一種の照れ隠しだと分かっているため、青年達は腹も立たない。

「へぇ〜!流石だな!殺気なんか感じたんだ!」
「俺、全然わかんなかったぞ?」
「あ、俺も〜!」

 足元の石に躓かないよう気をつけながらも、その足取りは軽い青年達は、どことなくはしゃぐように軽口を叩く。
 クラウドの眉間のシワが少し深くなった。

「…まったく…」

 また溜め息。
 しかし、バカにしたような溜め息ではない。
 呆れているかもしれないが、それは自分達が助かったから、という安堵感とない交ぜになっている温かいもの。
 それを感じることが出来るのは、やはり自分達自身が『大人』になったからだろう。

 つくづく勿体無い事をした…と思う。
 もっと、小さい頃からクラウドを見ていれば良かった。
 もっともっと、自分達から話しかければ良かった。
 そうしたら、今のように自分達の間に薄い膜のような壁が存在することも無かっただろう。
 だがしかし。
 その薄い膜が消えるのはそう遠くないかもしれない。


「そうだ。さっきの技、なんていうんだ?」
「 ? 」

『ジョー』と呼ばれた青年がクラウドを振り返る。
 クラウドはキョトンとした。
 その小首を傾げてキョトンとするクラウドの姿に、青年達の胸がズキューンッ!!と撃ち抜かれた。


『『『『 は、反則だろ!? 』』』』


 バクバクと心臓が激しく鼓動を刻む。
 ツンと澄ました顔を見慣れている青年達にとって、無防備にキョトンと首を傾げて不思議そうな顔をしたクラウドはまさに衝撃、ビックリ大賞ものの『可愛さ』だった。


「『超級武神覇斬』のことじゃない?」
 ティファが微笑みながら代わりに答えた。
 クラウドが「ああ、そのことか」と一つ頷いて、青年達を見る。

「 ? なんだ、どうした?」

「い、いや…」
「なんでもない」
「本当に…気にしないで」
「………(言葉にならない)」

 赤い顔をして胸を押さえている幼馴染達に、クラウドが心配そうに眉根を寄せた。
 その表情がまた…。


「「「「 グハッ! 」」」」

「は!?おい、大丈夫か!?」
「ちょっと…四人とも、どうしたの!?」

 膝を着いて胸を押さえたり、明後日の方向を向いて深呼吸する怪しさ満載の幼馴染達に、『英雄』という肩書きを持つ二人はオロオロとするばかりだった。


 そんなこんなで、六人が無事にデンゼルとマリンが待つ村に下りてきたのは随分時間が経ってから…。


 子供達を交えて、計八名で再びお墓参りをした四人は、それぞれ神妙な面持ちで目を閉じ…。

『母ちゃん…』
『見てたか…?』
『あのクラウドが…』
『あんなにやさぐれてたクラウドが…』


『『『『 悩殺もので、めちゃくちゃカッコ良くなってただろ〜!?反則だと思わねぇか〜!?!? 』』』』


 神妙な態度からはとんと想像出来ないほど、ズレた報告をしていたりして…。


『『『『 でも…、これからもっとコイツと仲良くなりたいんだよなぁ… 』』』』


 本人には絶対に口が裂けても言えないことを願っていたりする。



 甘美な思い出はこれからも大切にして…。
 これからやって来る(かもしれない)、新しい友情の待つ未来へ向かって。
 子供の頃は出来なかった、『真正面からの男の戦い』をするために。


 いざ、尋常に勝負!



 あとがき

 某ユーザー様より名づけてもらった四人組み。
 いつかは登場させたいなぁ…と思いつつ、名づけられてからかなり時間を経っての登場です(笑)
 今回、ちょこっとだけこの四人組の登場を待ってます〜♪という他の方からのご意見がありまして、『ハッ!そうだ、名前付けてもらったんだから〜!!』ということになりました。

 はい、いかがでしたでしょうか…。
 どんどん幼馴染の四人組が怪しい方向へと流れていってますね…。
 もうマナフィッシュの書く話しってなんでこう…ちょっと違う世界の住人予備軍が多いのか…(汗)。

 はい、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです♪