第三弾!!


拍手御礼小話10

「ティファさん…この世で一番崇高なものは何だと思います?」
「え……?崇高なもの……ですか??」

いつもと変わらず大繁盛のセブンスヘブンで。
何故か神妙な面持ちをした青年が、女店主を捕まえてそう話しかけた。
周りの常連客達は、その新顔の青年…しかも結構な男前に興味津々だ。
いつものように、女店主が軽くあしらうと予想していたからだ。
ところが…。
当のティファはというと、その青年の言葉と真っ直ぐ自分を見つめてくる眼差しに、どきまぎしている。

これまで言い寄る男達に対して、そんな態度を見せた事が無い女店主のその態度に、常連客達……特に、特別な想いを寄せている若い男達は気が気ではなくなった。

『おいおいおい!!』『新顔のクセに、ティファちゃんにそんな態度をさせるとは、いい度胸じゃねぇか!!』

言葉にならない怒りを胸に、男達は闘志を燃やした。
それは看板息子と看板娘も同様で。
いつもにないティファの様子に、ハラハラしながらも口を挟まずに見守っている。
相手が、酔っ払いとかなら適当に間に入ることも可能なのだが、こうも真剣に話しかけている誠実そうな青年に、無粋な事をするのは流石に憚られたのだ。
幼いながらも、その配慮が出来るというのは流石としか言いようが無い。

そして、問題の二人はと言うと…。

「やっぱり……『優しさ』…かしら……」
考えに考えた末、ティファは青年にそう答えた。
すると、青年はティファの目を真っ直ぐ見つめたままゆっくりと首を振った。

「ええ、勿論それも大切な事だと思います。でも、最も崇高なものは『愛』です」

まさに砂を吐きそうなクサイ台詞だが、何故かその青年が口にすると妙に納得出来るから……恐ろしい。
常連客達は、冷やかすのも忘れてシーンと静まり返っている。

「あ、ああ……そうですね……」

ティファは何と答えて良いものか分からず、とりあえず当たり障りの無い言葉を口にした。
その途端。
ティファの手をガシッと握り締めると、青年は一気にティファとの距離を詰めた。
青年の顔が至近距離になった事で、ティファは思いっきり身を仰け反らせる。
しかし、青年の反対の腕がティファの背に回され、それ以上距離をおけなくしてしまった。
いつもなら張り飛ばすのだが、あまりにも青年の眼差しが真摯で…。
ティファは目を丸くするしかなかった。

「ティファさん。僕は……貴女の事を……」

店内の全員がゴクリと唾を飲み込む。
ゆっくり青年の顔がティファに近づけられる。
ティファの右手が、自然にギュッと握り締められた事に気付いたのは……。

「……そこまでだ」

殺気を抑えた低い声。
そして、ティファから一気に引き剥がす。
青年はサッと顔を強張らせると、ティファと自分の間に立ち塞がったクラウドを睨み付けた。
「何を!!」
「『何を』じゃない。俺があと一秒遅かったら、アンタは顔面手術する羽目になってたぞ」
そう言ってのけるクラウドの右手は、ティファの右腕をしっかりと押さえていた。
ティファの右手は拳が握られており、クラウドの言う通り、あと少し遅かったら青年がアッパーを喰らっていた事を如実に語っていた。
青年は一瞬怯んだが、それでも気を取り直したようにクラウドを再度睨みつける。
しかし、その青年にクラウドは呆れたような顔をした。
「アンタな…。俺の女にちょっかい出す前に、奥さんがいるだろう…?」

「「「「は!?!?」」」」

クラウドの爆弾発言に、店内にいた全員が目を剥いた。
青年は真っ青になって固まっている。
「な、ななななんでその事を!!!」
「何でって……ほら」
「「「「え!?」」」」
クラウドの指差す方を見ると…。
店のドアの前に大きなお腹を抱えた……妊婦さん。
「お、おまえ……」
「あなた……」
声を震わせ、般若の形相でゆっくりとした足取りで近付くその女性は……見ているだけで恐ろしかった。

そうして、青年は言うまでも無く強制送還。

そんなこんなで閉店後。
クラウドはムッツリとカウンターのスツールに座っていた。
ところがティファは端から見ても分かるくらいご機嫌だ。
「……あんな奴に告白されたのがそんなに嬉しいのか……!?」
イライラしながらついそう口にしてしまったクラウドに、ティファはキョトンとしたが、すぐにクスクス笑ってカウンターを出てクラウドの傍にやって来た。
「だって、そのお陰で滅多に聞けないこと聞けたんだもん」
「…何を……?」
「『俺の女』」

ボフッ!!!!!

耳元で囁かれたその言葉に。
クラウドは一気に真っ赤になった。
そんな彼を、ティファは頬を染めて嬉しそうに見つめているのだった。

今夜もセブンスヘブンは……ラブラブモードvvv



拍手御礼小話11

 『彼のどこが好き?』
 『彼の全部が好き』

よく映画やドラマ、小説で交わされるやり取り。
何を言ってるのかしらね…。
そう思っていたけど、実際、心から愛しいと思える人にめぐり合って…。
その人と共に時間を過ごせるようになった今…。
その映画やドラマ、小説のやり取りに共感出来てしまうから……本当に不思議。

私は…。
あなたが愛しい…。

ぶっきらぼうなところも…。
照れ屋なところも…。
生真面目なところも…。
口下手なところも…。
本当はすごく…すごく優しいところも…。
あなたのクセのある金髪も…。
魔晄に侵された証である紺碧の瞳も…。
子供達にかける優しい声音も…。

そして…。

私にしか見せない微笑みも…。

あなたの全部が愛しくてたまらない。
あなたの全てを独り占めしたくなる…。

ふふ…。
でも、恥ずかしいからこれは内緒。
もしかしたら、勘の良い子供達にはバレてるかもしれないけど…。
それでも内緒。
あなたには絶対に言わないわ。
だって、私の本心を知ったとき、あなたは『可能性の翼』を自ら折ってしまうでしょう?
きっと、あなたは『私』という『枷』によって、世界に向けて飛び立たねばならない日に、諦めてしまうでしょう?

あなたは…優し過ぎる人だから…。

いつかあなたが私の前から消えるその日まで。
私はあなたの傍にいるわ。

そして…。
あなたが世界に向けて飛び立たなくてはならない日がやって来たら…。
私も一緒に羽ばたけるように…私は翼を鍛えておくの…。
どうかお願い。
その日は私も一緒に連れて行って。

あなたと一緒に…。
どこまでも…。
どこまでも…飛んで行きたいから…。

だから……。

今日と言う日を一生懸命生きてみせる。

あなたの隣で飛べるように…。



拍手御礼小話12

 どうして彼女は俺なんかの傍にいてくれるんだろう…?
 どう考えても俺に彼女を繋ぎとめられるだけのものはないのに…。

 美人で明るくて性格良くて。
 おまけに料理の腕は天下一品で、気配り最高、まさに『良妻賢母』な彼女が…どうして俺の傍に???

 俺が必死になって彼女を繋ぎ止めるべく努力をした結果、彼女が傍にいてくれている……というなら、少しは俺自身にも誇れるものがあるんだろうけど、そうじゃないんだからなぁ…。

 彼女は彼女の意思で俺の傍にいてくれている。
 それとも子供達がいるから…?
 俺をほったらかしにするのが『仲間として』不安だから?
 だから俺の傍にいてくれてるんだろうか……。

 でも。
 そうじゃないと…。
 彼女は彼女自身の意志で…。
 彼女の心の赴くままに俺の傍にいてくれているんだと…ほんの少しで良いから自惚れさせて欲しい…。
 彼女が…本当に愛しいから…。
 この心を……この想いを未だにはっきりと伝えられていない俺だけど。
 だけどいつか…。
 いつの日にか必ず『証(あかし)』をキミに贈る、
 だからどうかそれまで…。
 あと少しだけ、この『まどろみ』に甘えさせて欲しい。

 必ず…。
 必ずキミに『誓う』から。
 誰よりも愛しいキミに。

 だから。
 どうかもう少しだけ……。

 このままで…。



拍手御礼小話13

よくよく考えてみたことがある。
彼に『好き』とか『愛してる』って何回言ってもらったかなって。
どうしてそんな事を考えるようになったかと言うと、今日お店に来てくれた女性のお客さんの一言。
新婚さんという彼女は、結婚してから一ヶ月であるというのに『彼からの愛を感じなくなった〜!!』と号泣しながらお酒を煽っていた。
話を聞いてみると、結婚前は一日に何回も『愛してる』と囁いてくれたのに、今ではそれがないらしい…。
『…飽きちゃったのかな……』
力なく…涙を流しながら呟いた彼女は本当に可哀想で。
出来れば力になってあげたいんだけど、それは…ちょっと私には無理みたいで…。
だからせめて…と思って最後のグラスはオマケしてあげた。

それが…悪かったみたい。
彼女はもう限界だったのに、最後の余分なグラスのアルコールで、すっかり泥酔。
ソファーの上でノックダウン。
申し訳ないと思いつつ、彼女の携帯を拝借。
『ダーリン♪』の表示名に手を合わせながら電話を鳴らす。
願いは叶った。
『ダーリン♪』はご主人の携帯だった。
もしもこれで違う人がでたりしたら……と内心ヒヤヒヤものだった。

何度も頭を下げて彼女をおぶって帰っていく新婚さんは、やっぱりどう考えても愛し合ってる様にしか見えない。

「良いなぁ」

知らず知らずのうちに漏れた本音。
そうして、冒頭に戻る。

「クラウド…照れ屋だからなぁ……」
カラン…。
グラスを回すと、中の氷が音を立てた。
閉店後の店内。
一人で飲む酒は……今は寂しい…。
彼は今夜も遅い。
浮気をしているとは思わない。
仕事は本当に忙しそうだから。
でも、それでも…。
せめて顔を見られる時間が少ない私に……どうか……。
「愛の言葉…欲しいなぁ…」

「……愛してるよ、ティファ」

突然背中からかけられた声に、ティファはギョッとして身を捻った。
真っ赤な顔をしながらも、真っ直ぐ見つめてるクラウドの姿に、自分の独り言が見事に聞かれていた事を知る。
顔から火が出る程恥ずかしい。
しかし、それでも…。

「あ、ありがとう……」

感謝の言葉を口にする。
というか、それ以外で何を言えば良いのかわらかない。

「ティファも…言って欲しい」
「え?」
「…その…俺のこと……想ってくれてる……んだよな…?」

不安そうな彼の顔に、温かなものが胸に広がる。
そしてふと気付いた。
自分こそ、クラウドに『愛の言葉』を口にしたことが少ないという事実に。

「愛してる…。この星で生きてる人達の中でも…星に還ってしまった人達の中でもクラウドが一番愛しいよ」

照れ臭さ100%な二人だが、それでもこの瞬間は、世界で一番幸せ者だろう。
全ての恋人達に星の祝福を…。




拍手御礼小話14

彼女には白い服も似合うと思う。
いつも俺と似たような黒い服を身につけている彼女。
ファッションのことなんかさっぱり分からないけど、それでも街を歩く女性達が色鮮やかな服を着て歩いているのが最近良く目に付くようになった…気がする。
星痕症候群が蔓延している時は、どことなく暗めな服を身につけている人が多かったけど…。
やっぱりこれも良いことなんだろうな。

そう思うと同時に、彼女がいつまで経っても黒い服で過ごしているのが…ちょっと、気になりだした。

久々に街を歩いて散策していると、余計にそう思う。
いっつも愛車であっという間に街を抜け出てしまうからなぁ…。
ふと、一軒の店の前で足が止まる。
ショーウィンドーに飾られた…真っ白いワンピース。
胸元がクロスになっていて…良く分からないがちょっと……いや、かなりセクシーな服…になるんだろうな。
アレか?
あのワンピースの下にキャミ…なんとか…を着るわけか???
でも、あのマネキン、何も下に着てないな。
ってことは、あれだけで済ませてしまうのだろうか……。

……。
………。

却下!!!
あんな服を彼女が着たら、抜群のプロポーションが強調されて、余計な虫が群がるじゃないか!!
ただでさえ、今の地味な黒い服でも彼女に引き寄せられてるアフォが多いというのに!!!!

だけど……。

……めちゃくちゃ似合いそうだ……。
どうしようか…。
いつも頑張ってくれている彼女に…なにか御礼をしたいし…。
なによりも俺が見てみた……いやいや、ダメだ!!
こんなセクシーなワンピースを着たら余計な虫が(以下省略)


「ありがとうございました〜!」

……俺はアホだ……。
丁寧に包装された箱を手に、溜め息を吐く。
それでいて、もう頭の中では彼女の喜ぶ顔を想像していたりして……。

……本気でアホだ……。
どうやって渡そう……。

悶々と考えながら歩いていると、あっという間に自宅に到着。
笑顔で出迎えてくれた彼女に、グルグル考えていた台詞の一つも言えないまま、
「ティファ…これ…」
仏頂面で手渡し、キョトンとする彼女の視線に耐え切れずにそのまま二階に直行。


コンコンコン。
ドッキーーーン!!!!

「は、はい…どうぞ…」
…おい、『はい、どうぞ』って病院か!?
って言うか、声裏返ってるし。

「あの…クラウド……」

おずおずと事務所に入ってきた彼女へ躊躇いながら視線を流す。
視界一杯に広がった彼女の姿に、心臓が止まった。

「………!!!」
「ど、どうかな…?」
「………」
「お、おかしい?」
「………」
「クラウド…?」
「………ティファ…」
「え?」
「頼むから、俺以外の前でその服は着ないでくれ!!」
「え、え???」

ヤバすぎるだろう!?
こんなに清楚で可憐で抜群のプロポーションが強調された服は!!!!
でも…。

中々俺もやるじゃないか…。
ナイスな選択だ、うん。

今度は他の服も買ってみようかな……。


クラウドの脳内は、今日もティファで一杯だ!!(← アフォです)




拍手御礼小話15


荷物の配達。

一言で片付けられるこの仕事だが、想像以上に他人の人生を垣間見ることの出来る仕事だ。
そしてその度に、俺は自分がどれだけ恵まれているのか……しみじみと感じる…。

今日も。

『あら、ありがとう!まぁ…アナタ、うちの人(夫)よりもうんと素敵ね♪ちょっとお茶してらっしゃいよ』
『よぉ、旦那!配達すまないなぁ。ったく、俺んとこのせがれも旦那のとこみたく良い子だったらなぁ…。いい年してるくせにお使い一つ出来なくて、結局旦那に世話になるしよぉ』
『お、サンキュ!助かった〜!これが無かったらうちのカミさん、機嫌悪くなるんだよぉ。まったく、女ってなんであんなに気性の浮き沈みが激しいのかねぇ……。おりょ?ティファちゃんとマリンちゃんはそうじゃないのかい?羨ましいねぇ…、俺なんかいつ家を追い出されないかヒヤヒヤしながら仕事してるよ…。はぁ、俺もティファちゃんやマリンちゃんみたいなカミさんが良かったよ…』

………。
…………。

ティファとマリン、そしてデンゼルが良く出来た人間だって頭で分かってても、こうしてリアルに伝えられるとより一層深みを感じる……。
一度は家を…家族を捨てた俺を温かく迎えてくれた家族。
大事にしようと強く思うよ…本当に。

「旦那〜、ティファちゃんと子供達によろしくな!」
「ああ」

人懐っこい笑顔で手を振ってくれる数少ない常連客に、自分で分かるほどの無愛想な顔と声で返す。

……ダメじゃん…俺!!
こんなんだからいっつもティファや子供達に心配されるんだよ!

『クラウド、本当に接客業大丈夫…?』
『クラウド…、辛くなったら相手を殴り飛ばす前に帰って来いよ?俺達、愚痴くらいしか聞けないけど、それでもきっとストレス発散にはなるからさ』
『クラウド。大丈夫。アナタなら絶対に乗り越えてくれるわ!』

……。
本当に……頑張れ、俺!!
今度こそ、大事な人達を守る為に…強くなれ!!


ピピピピ…ピピピピ…。
ピッ。

「もしもし…俺だ」
『クラウド、お疲れ様。今日、帰って来られるんだよね?』
「ああ。予定通りだ。夕飯時には帰れるよ」
『ふふ、待ってるわ』
「ああ…」
『……』
「……ティファ…」
『ん?』
「……その…」
『なに?』

ドキドキドキドキ…。

「いや、やっぱり帰ってから言うよ」
『?…ふふ、変なクラウド』

ピ…。

くそっ!
本当に俺って奴は…。
でも帰ったら今度こそ言おう。


「いつも幸せをありがとう。ティファのお蔭で幸せだ」


……本当に言える…かな……?


どこまでもヘタレですいません(土下座)