第六弾!!




拍手御礼小話26話


『大好き』って言葉に含まれている想いはとても複雑。
そして…。
『大好き』って言葉に含まれている想いはとても単純。
『大好き』だから、自分だけを見て欲しい。
『大好き』だから、自分だけを愛して欲しい。

でもね。

そんなアナタだからこそ俺(私)が好きになった。
だから、自分しか見てくれない…、思いやってくれない『アナタ』は俺(私)が好きになった『アナタ』ではない。
誰にでも優しいアナタだからこそ。
誰にでも救いの手を差し伸べ、ある時はその身を盾とすることも厭わない『アナタ』だからこそ、好きになった。
そして、その気持ちは日々強くなっていく。
深くなっていく。

あぁ…。
そうなんだ…。

俺(私)が求めている『アナタ』は、そんな素晴らしい人でいて欲しいと心から願う。
そして、そんな『アナタ』の一番に俺(私)はなりたい。

弱い人達の前に凛と立ち、強者から守ろうとする『アナタ』だからこそ俺は(私は)アイシテイル。

そう、『大好き』なんかとっくに超えている。

アイシテイル、アイシテイル、アイシテイル!

そんな愛しい『アナタ』の一番でいれるよう、だからこそ俺は(私は)頑張る。
隣に立つにふさわしい人間となれるように頑張る。
精一杯、全身全霊賭けて!!
『アナタ』に守られるだけではなく、一緒に戦える存在になりたいから。

だから…。

どうか、その日までその心の中に誰も『特別』な人を住まわせないで。


「じゃ、ティファ…、行ってくる」

愛しい人の声に送られて仕事に出かけられる幸福を、これからも手にしていくために…。

「行ってらっしゃい、クラウド。気をつけて…早く帰ってきて…」

最愛の人を送り出せる至福をこれからも抱き続けられる場所にいられるように…。


『『 さぁ、今日も一日頑張ろう!!』』







拍手御礼小話第27話


ピリリ…ピリリ…。
丁度、荷物の受け渡しの時に電話が鳴った。
依頼主の前で電話を取るのはいくらなんでも非常識。
マナーモードにしなかったこちらのミス。
だから、
『クラウドさん、電話、出ても構いませんよ?』
温和な微笑を浮かべた初老の女性に、クラウドは深く頭を下げて、マナーモードにしていなかったことをお詫びし、そうして彼女との仕事をバッチリ終えるまでは、絶対に電話に出なかった。

だが…。

女性宅を後にして、愛車にまたがるまで電話を触らなかったクラウドは、先ほどの着信が子供達からのもので目を丸くした。
ここ最近、クラウドがちゃんと早く帰宅するから子供たちのほうからの連絡はあまりなくなってきていた。
それなのに…。

なんとなくいやな予感がこみ上げる。
クラウドはすぐに子供達へ電話をかけて…。
子供達からの情報を耳に受けたその瞬間。

「……すぐ戻る!!」

ブツッ!
荒々しく携帯を切ると、あとはもうエンジンをフル稼働させて、轟音を立て愛車をエッジに向けてひた走った。
まさに風と一体になったかのようなその走りっぷり。

そして、その危険な走りはセブンスヘブンにつくまで緩まることなく、アッという間にセブンスヘブンへご帰還。
愛車から文字通り、飛び降りたクラウドの凄まじいまでの形相。
セブンスヘブンにそろそろ並ぼうとしていた客達が、ギョッと飛びのき、恐ろしいことがこれから始まる…と察知した。
せざるを得ない!!
「「「 ……帰ろうか 」」」
そう英断した直後。

「ぎゃーーーーー!!すいません、すいません、すいませーーん!!!!」

誰かの悲鳴。

バタンッ!!
激しく開けられたドア。
小太りの男が般若の形相のクラウドに腰ベルトを掴み上げられ、まるでUFOキャッチャーで吊り上げられた景品のように宙吊りされているではないか!!
そして、その高さを充分生かしてそのまま…手を……離し……。

フギャッ!!

なんとも情けない叫び声をあげて、男が大地にのびる。

「二度とティファに近づくな」

絶対零度の言葉。
震え上がるその声音だが、それは小太りの男に向けられていただけで、馴染み客達はその被害にあっていない。
だから、逆にその言葉だけで、並ぼうとしていた客は事態を把握した。

「「「 …まだいたんだ、ティファちゃん狙ってるバカなお金持ちの坊ちゃん 」」」
「「「 …学習しろよ…、お前ら…揃いも揃ってバカばっかかよ… 」」」

常連客達は重い溜め息を吐き出しつつ、今夜の店での食事を諦めた。

あ〜あ。
バカ1人のせいで、美味しい料理がだめになった〜…。

そう呟きながら、彼らが去った後。(当然だが、クラウドはもう既に家の中)
まだ若い小太りの男は……。

「うぅ……酷い……誰も助けてくれないなんて……」

そう嘆きながら、携帯で自分の車に迎えに来るよう命令し、とぼとぼと背を向けた。
その背中には哀愁が漂っている。
漂っているのだが…。

「「「「「「 本当に学習しろよ… 」」」」」」」

セブンスヘブンの店主に惚れてはいけない。
それが、その店の規律である。
だが、それ以上に。

クラウド、頼むから大人になれ、やきもちを焼くな、
そして、恋人がナンパされて困っている、という子供達の情報入手直後から仕事を放棄するな、仕事しろクラウド!!







拍手御礼小話28話

小さい頃、思い描いていた『幸せな人生』というものをふと思い出した。
誰よりも強くなって、村のみんなを見返して。
世界中の人達の憧れになって。
そして…。

彼女の笑顔を独り占めできる…そんな人生。

それこそが強い憧れだった。
自慢げに自分を見つめてくれる母の眼差しも、『幸せな人生』として欠かせないものだった。
しかし、実際自分が手にしているものは?

そっと隣を見る。
まだぐっすりと眠っているらしい彼女は、小さな寝息を立てていた。
温かな色合いを持つ瞳は長い睫毛に彩られた瞼の奥に隠れている。

そろそろと手を伸ばし、指先だけで白い頬に触れる。
少し身じろぎしたが、彼女は瞼をフルリ…と振るわせただけでより一層深く寝入った。
その際、クラウドの方へ身を摺り寄せ、頬をピットリと胸元にくっつけた。
安心そうに微笑みすら浮かべたティファは完全に無意識。
クラウドは軽く目を見開き、次いでこの上もなく幸せそうに目を細めた。
それは誰も見たことがない彼の本当の素顔の1つ。
甘やかで艶めいている魔晄の瞳は誰も知らない。
ティファ以外は誰も…。
クラウド本人でさえ、自分がそんなにもとろけそうなまなざしを向けていることを知らない。

『これで良い』
心の底からそう思う。

過去、自分が思い描いた理想像とは程遠い。
≪英雄≫と人から呼ばれるようになったが、それは憧れていた呼称からはかけ離れていた。
自分にとっても仲間にとっても…、そして隣で眠る彼女にとっても、その呼称は重い枷となっている。

『これが良い』
たとえ、背負うものが想像だにしなかった重い枷だろうが、この腕の中で眠る彼女を見つめることが出来る。
それだけで『これが良い』と思える。

遠い昔、思い描いた。
≪世界中の人々の憧憬と賞賛の眼差し≫
≪彼女の陶酔とした笑顔≫
それらとは全く違う生活を送っている。
思い憧れた生活と比べると、なんとも地味で質素な生活。
だが、この生活こそが…。

「俺は……『これが良い』」

ゆるりとティファを抱きしめ、頭のてっぺんにキスを落として目を閉じた。
早すぎる目覚めは、すぐに温かくて心地良い眠りへと誘ってくれる。

きっと、この次目を覚ますのは、彼女の明るい声と笑顔に包まれてるだろう。

これ以上ない至福に包まれながら、クラウドは幸せな眠りに意識をゆだねた。
クラウドの予想が見事当たり、
「おはよう、クラウド。朝よ」
彼女と、可愛い子供達の笑顔によって一日の始まりを迎えるようになるまであと少し。




拍手御礼小話29話


別にどうだって良いわよ、好きにしたら良いわ!
どうせ私たち、クラウドが言うとおり『家族』なだけ。
『恋人』でも、ましてや『夫婦』じゃないんだから『恋愛云々』に一々口出しすることないわよね。
『兄妹』だって立派な家族なんだし!
クラウドにとって、私は『妹』、えぇ、そうよ!
だから、恋人として大切なことは何にも言ってくれないんだわ。
良いわよ、クラウドから言い出しにくいならキッパリと私からフッてあげる。


『私よりも素敵な人はそれこそ溢れんばかりにいるんだし。こんな話しをするなんてそれこそ今さらよね』

『遠慮しないで幸せになって。私はすぐに素敵な人を捕まえるから』

『大丈夫、子供たちのことも認めてくれない人を好きになったりしないから安心して』

『そりゃ、最初は子供たちも寂しがると思うけど、別に『二度と会うな』なんて酷いこと言うつもりはサラサラないから、好きなときに会いに来たら良いわ』

『だから、サヨナラ!』


ここ数日、ずーっと頭の中ではグルグルとシミュレーションを行っている。
完璧だわ、これで問題なし。
クラウドもスッキリ私から離れられるし、私も次の出会いに賭けられるし、万々歳じゃない!
そう…万々歳よ!
そ、そりゃ、私はまだクラウドのことが好きだけど…でも!
未練たらしくいつまでもズルズル引きずってたらダメ、お互いのためにも、子供たちのためにも!
何より、前を向いて生きるために、子供の頃からの想いはもう綺麗サッパリ、けじめをつけるんだから。


「ティファ」

きた!
一週間もろくすっぽ連絡くれなかった最低な男(ひと)が帰ってきた。
なによ、そのそわそわした顔。
心配しないで、怒ってないわ。
ちゃんと子供たちから予定が遅れてるって毎日聞いてるもの。
私と直接話しをしたくなかったってだけでしょ?
良いわよ、大丈夫。
もうクラウドのことなんか…!


「酔ってるのか?」

なぁにが『酔ってるのか?』よ!
悪い!?
イライラしながらお酒飲んだら悪いって言うの!?


「ティファ…飲みすぎだ…」

だ〜れ〜の〜、せいだと思ってるわけ!?


「あ〜…その……、俺のせい……だよな……すまない」

う〜る〜さ〜い〜!
今更謝られたって知らないんだから!
私、明日には子供たち連れて出て行ってやるんだから!!


「その……、予定が遅れたのは…本当はさ…」

かんけ〜ないでしょ、もう他人なんだから!
子供たちとはずっとこれから先も『家族』かもしれないけど、私とは金輪際、真っ赤な他人なんだから〜!


「これ…受け取ってくれないか…」

え…?


「愛してる、結婚して欲しい」

……ウソ……。


「おい、ティファ?って…、お、おい!しっかりしろ!!」

…ダメ、気分悪い…。
クラウド…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

今度からお酒はほどほどにします。




拍手御礼小話30話


もしも、あの時お前と出会わなかったら今頃どうなってただろう?
きっと、俺はそれなりに楽しく過ごして別の道を選んで生きていたと思う。
勿論、お前と出会ったことが俺の人生の事実としてあるわけだから、
お前と出会わなかったと仮定してみてたとして、それが不幸なのかはたまた意外と幸福に過ごしていたのか、
それはもう分からない。

だけど1つだけ分かる。
俺はきっと、今以上に満足出来てはいないだろう。

そりゃ、お前と出会わなかったとしたらそれなりに上手に色々と立ち回ったに違いない。
怒るなよ?俺はお前と違って社交的だからさ。
きっと、1人でカプセル浸けにされて、1人で脱出して、1人で逃避行していたはずだ。
その行き着く先はもしかしたら花を愛する彼女との人生だったかもしれない…。

…。
いや、そんなことを考えても仕方ない。
過去は変えられない。
『もしも』
なんてことを考えるのは不毛だ。
それに、俺や彼女がこうなってしまったことでお前が一番傷ついているんだから。
目の前で近しい人間がむざむざ死んでいくのを見ているしかなかったお前の痛みはどれほどのものだっただろう?
俺なら気が狂うね。
お前が俺で、俺がお前だったら、きっと俺は発狂している。
まぁ、お前もある意味『発狂した』からこそ、ジェノバ細胞に記憶のすり替えをされたんだろうけど、
それが結果的にお前が人間でいられるように守ってくれたことになる。
生きた屍になっていたのも数日だったしな。
勿論、お前やお前を傍でずっと看病していた幼馴染の彼女にとって、その数日は地獄のように光の見えない日々だった。

それを俺はずっと見ていたから良く分かる。
彼女は…本当に強くて弱かった。
お前は知ってるか?
返事を返してくれないお前に声をかけて、お前の虚ろな瞳に必死になって笑いかけて、
そうして、お前が目を閉じ、眠ったのを見計らって泣くんだ。
胸が掻き毟られるようなその姿に、俺はリボンを贈った彼女と同じでお前に腹が立った。
彼女は親友の悲しみ、疲れ果てた姿に流れるはずのない涙を流していた。

『本当にバカ!こんなにこの子を悲しませるなんて許さない!!』

そう言って、俺に肩を抱かれて泣いた彼女の言葉が胸に痛かった。
彼女が俺以上にお前に惹かれていくのを見ているのはやっぱキツイものがあったけど、
こうして命半ばにお前の目の前で散ってしまったのを見たのはもっとキツかった。
だけどさ、まさかそれ以上にキツイと感じることがあるとはな。
虚ろな目をして、言葉にならない声を上げて苦しむあいつと、そんなお前を懸命に看病する幼馴染の姿。
その光景に何も出来ないことがこんなに苦しい。
だから、ようやっと自分を取り戻して『生』の世界に戻る2人を見送れて本当に嬉しかったんだぜ?

なのに、お前、何してんだよ。

大切なはずのものに背を向けて…。
自分の幸福に背を向けて…。
自分の存在理由にすら背を向けて、愛する人たちの存在からも背を向けて…。
なぁ、そんなに苦しかったのか?
俺たちが目の前で散ったことがそんなに苦しかったのか?
『見殺しにした』だなんて、勘違いするくらいに辛かったのか?
バカだなぁ、そんなわけないだろ?
俺は俺の命を生きた。
俺の人生を走ったんだ。
彼女もそうだ。
彼女も彼女自身の人生を走って走って、全うしたんだ。
俺も彼女も満足してるんだ。

だから…。

「もう…忘れるなよ?」

万感の思いを込めてお前にもう1度この言葉を。

― お前が俺の生きた証だ ―

さぁ、これからが本当のお前のための人生だ。
最後まで走って見せろ。

そうして、走って走って、走り終わったらさ、迎えに行ってやるよ。

その時まで、花を愛する彼女と一緒に見ててやるからさ。