設定。 クラウド・ストライフ ==== 高校一年生。 ティファ・ロックハート === 高校一年生。 エアリス・ゲインズブール == 高校三年生。 ザックス・フェア ====== 大学一年生。 セフィロス ========= 学園理事長代理。(ルーファウスの腹違いの兄で、妾の子供) ルーファウス ======== 学園理事長。(セフィロスの腹違いの弟で、正妻の子供) 宝条 ============ 大学の科学教師。 リーブ・トゥエスティ ==== ミッドガル警察本部部長でクラウドとザックスの父親の友人。 ルクレツィア・クレシェント = 高校の科学教師。 ヴィンセント・バレンタイン = 高校の数学教師。 バレット・ウォーレス ==== 高校の体育教師。 シド・ハイウィンド ===== 高校の地理教師。 シャルア・ルーイ ===== クラウドとティファの担任教師。 シェルク・ルーイ ===== 中学三年生。(ユフィと同じクラス) ユフィ・キサラギ ====== 中学三年生。 ナナキ =========== キサラギ家のペット。 場所。 ミッドガルという巨大な都市にいくつもある街の一つである『エッジ』。 *完璧に見事なまでのパラレルな捏造設定ですので、苦手な方は回れ右でお願いします<(_ _)> Happy school Life 2星空の下で意中の相手とダンスをすると、生涯その人と結ばれる…。 その素晴らしくロマンティック且つ、ありえないジンクスを持つ『エッジ学園』での『後夜祭』。 その日が近づくにつれ、学園の一日の始まりは…。 「お〜…」 「流石だよなぁ…」 「なんか…羨ましいのを通り越して、同情するわ…俺」 「「「 俺も〜… 」」」 「はぁ…凄いわねぇ…」 「やっぱりねぇ…」 「『女冥利に尽きる』って言いたいところだけど…」 「「「 これじゃあねぇ…… 」」」 複数の生徒達の感嘆とも呆れともとれる言葉で始まる。 不機嫌そうな顔をしているクラウド・ストライフと、困った顔をしているティファ・ロックハート。 この二人の目の前には下駄箱があり、足元には下駄箱からあふれ出た沢山のラブレターが散乱している。 クラウドはティファの足元にあるそれらの存在ゆえに、いつもの無愛想な顔を不機嫌一色に染め上げ、自身の足元に散らばっているラブレターには欠片ほども関心が向かない。 一方、ティファは純粋に自分宛のそれらを前にして非常に困っていた。 困っている…。 そう、困っているのだ。 彼らは自分を知ってるらしいが、大半が自分の知らない男子生徒からのもの。 一体どうしたらいいのだろう…? 捨ててしまうのはなんだか非常に申し訳ない気がする。 だが、一人としてティファはその気持ちに応えるつもりはない。 今のところ…。 チラリ…と、少し離れたところで嫌々、仕方なく足元の大量の『それ』を拾っている幼馴染を見る。 彼は非常に女子に人気が高い。 それを改めて痛感させられるような大量のラブレター。 あの中には、自分が彼に宛てた物は入っていない。 今のところ、入れる予定も……ない。 だが、この自分の足元に散乱している『それら』の中に、もしかしたら彼からのものが……? ……。 ………などという、乙女チックな淡い期待はとっくの昔に捨て去っていた。 「凄いわねぇ、相変わらず」 クラスメートが苦笑しながら拾うのを手伝ってくれる。 ティファは困ったように曖昧な返事を返しながら、もう一度チラリ…と幼馴染を見た。 彼は既に全ての『それら』を回収し終えて、さっさと教室に向かっている。 その背が他の生徒達に紛れてすぐに見えなくなった。 ティファは溜め息を吐いた。 別に、ティファとクラウドはただの幼馴染だ。 幼馴染。 これが非常にネックとなっている。 小さい頃から何の気なしに遊んでいただけ。 それがいつの間にか、淡い恋心へと変わり、いつの間にか心の中は彼のことでいっぱいになっている。 そう…。 クラウドだけ。 心を捧げたいのはクラウドだけ。 だけど…。 「『クラウド、どうしてなにも言ってくれないの?』ってところかなぁ?」 クラスメートの女子が悪戯っぽく覗き込んだ。 ボンッ!! 音を立てるような勢いでティファは真っ赤になった。 「な、なな、そんなことはなにも思ってないから、何言ってるのよ…、あは、あはははは」 引き攣った笑みに、女生徒は肩を震わせて笑った。 ほとんどの生徒が、ティファの恋心を知っている。 それに、クラウドも…間違いなく…。 だが、当人達は見事なまでに鈍感で、自分に少しでも好意を持ってくれている、と気づいていない…。 なんとまぁ…見ていて歯がゆくなるような…それでいて、高みの見物させてもらった方が楽しいような。 そんな二人なのだ、この二人は。 引き攣った笑いを浮かべているティファの肩を、クラスメートはポンポンと叩いて、 「ま、そういうことにしておいてあげるよ、今のところは」 ティファに反論の言葉を言わせないまま、教室へと促した。 その頃、教室に着いたばかりのクラウドはいつものように不機嫌そうに自分の席に腰を下ろしたところだった。 数名のクラスメート(男子)が、これまたいつものようにふざけながら、親しみを込めて話しかける。 話題はやはり…。 「相変わらずだなぁ…お前のモテ度の高さは」 「……なんだよ、それ」 「そのラブレターの数に決まってるだろ?」 不機嫌を隠そうともしない彼に、級友達はケラケラ笑った。 彼の気性にはもうすっかり慣れている。 そして、クラウドの机の脇に置かれたラブレターの入った紙袋を見てからかう彼らには、嫉妬というものが全くなかった。 それがクラウドにとってはありがたい。 これまでも、やれ『バレンタインデー』だ、『誕生日』だ、『クリスマス』だ、各行事になると、色々と自分の身辺はこのようにうるさくなった。 その度に、心無い同年代の同性から嫉妬やねたみをたっぷり込めて、嫌味をたらたら言われたり、わざと聴こえるように陰口を言われたりしたものだ。 だから、クラウドはこのクラスメート達の存在を本当にありがたいと思っていた。 思っているだけで態度に出せないのがこの青年の欠点なのだが…。 そして逆に、クラスメートの男子達も、この偏屈な青年をたいそう気に入っていた。 なにしろ、普通ここまでモテたら、『天狗』になったり、周りの男子生徒をちょっぴり見下したりするだろうに、クラウドにはその枠には全く当てはまらない。 逆に、心の底から迷惑がっている。 同姓としては実に羨ましい境遇なのに、これっぽっちも喜んでいない。 そういうちょっと『ズレた』ところが、クラウド・ストライフに対して好感を抱く要因となっていた。 純粋にクラウド・ストライフという青年を気に入っている。 まぁもっとも、クラスメートの男子生徒全員がそういうわけではないのだが…。 「それにしてもクラウド、この中に好みの女の子はいないのか?」 「……読んでない」 本心から興味なさそうに呟いたクラウドに、男子生徒達が一斉にブーイングを飛ばした。 「お前、読んでやれよせめて!」 「人として恥ずかしくないのか!?」 「真心込めて書いてくれた乙女の気持ちを少しは汲んでやれ!」 クラウドは形の良い眉を不快気に寄せると、プイッ!とそっぽを向いた。 「知りもしない人間からの手紙なんか気味悪くて読めない」 「「「 お前なー!! 」」」 と、丁度その時、ティファも級友達に囲まれながら入ってきた。 その手にはやはりラブレターの詰まった紙袋。 窓ガラス越しにティファが入ってきたのを見たクラウドは、彼女が抱えているものの正体にすぐ気づくと、ますます不快気な顔をした。 クラウドを囲んでいる男子生徒達もティファが入ってきたことに気づいて気軽に声をかける。 男子生徒達に声をかけられ、ティファもいつものように気さくに応えた。 いつもと変わらないのに、いつもと違うのは二人の持っている『紙袋』という余計な贈り物と、二人が互いに不満と不安に感じている互いの存在。 『『 こんなに気になってるのは…(私)(俺)だけ…? 』』 あぁ、この二人が読心術を持っていれば良かったのに…。 だが、この二人の見事なまでのすれ違いに、別に読心術を持っているわけでもないクラウドとティファの級友達はちゃんと気づいていた。 そうして、心の中で苦笑する。 互いに思い合っているくせに、互いに相手の気持ちが伝わっていないことのもどかしさ! まるで少女マンガのようだ…。 ………アホくさい……。 だが! 『『『『 これがまた面白いんだよねぇ 』』』』 アホくさいのに面白い! だから今日も級友達は温かい眼差しでクラウドとティファのすれ違いを見守っているのだ。 まぁ、そんな心温かい連中だけではなく、純粋にクラウドとティファがモテルことに嫉妬心を燃やしている生徒も沢山いる。 だが幸いなことに、同じクラスにはいない。 だからこそ、クラウドとティファは大量のラブレターでからかわれることはあっても、『嫌味』を言われたりすることもなく高校生活を楽しむことが出来るのだ。 その幸運に果たして気づいているのかいないのか…。 「…皆、授業開始のベルはとっくに鳴っている」 赤いマントを羽織った漆黒の衣服の美青年が黒いオーラをまとって教壇の前に立っていた。 生徒達はピタリ、と会話をやめると、ギギギギギ……と首をオイルの切れたからくり人形のようなぎこちない動きで教壇を見た。 バッ!! ガサガサガサガサ……ガタンガタン! ババババッ! ビシーッ!と全生徒が自分の机に着席し、数学の教科書を机の上に揃えたのに所有した時間は僅か数秒。 ただの人間でしかない生徒がここまで恐れている数学教師。 ある意味、非常に貴重な存在である。 「では始める。昨日出した宿題を持って来い。後で私が採点する」 先ほどまでの浮かれていた空気はどこへやら。 まるで死刑判決を受けた囚人のような心地で、生徒はピーンと張り詰めた空気の中、胃弱の者は胃を押さえつつ、この拷問のような授業を受けるのだった。 席の後ろから前に宿題の用紙が順繰りに送られ、最前列に座っている生徒が集まったものを持って教壇に向かう。 どの顔も緊張している。 だが、たった一人だけ緊張していない者がいた。 それは…このクラスでも美少女と騒がれている女生徒だった。 「はい、ヴィンセント先生、これで全部です」 彼女はニッコリと微笑みながらヴィンセントに手渡す。 ヴィンセントはそれを、実に無表情なまま、 「ごくろう」 との一言だけで受け取った。 その時、その女生徒はジーッ…とヴィンセントを見つめた。 ……明らかにヴィンセントを狙っている!! 彼女は確かに可愛い。 可愛いが、自分の容姿に自信過剰なところがあり、女生徒達の間ではすこぶる人気が悪い。 だから…。 「授業を始める。言いたいことがあるなら終わってからにしろ」 一蹴。 それでも女生徒は『終わってからにしろ』との言葉に、 「は〜い、じゃあ先生、授業終わったらお時間下さいね♪」 シナを作りながら自分の席へと戻っていった。 猫なで声! それをまさか本当に聞くことができるとは!! 生徒達はちょっとずれた感動を味わっていた。 それくらい、作った微笑みと甘い声音。 クラウドの隣の席に前の席に座っている級友がこっそり後ろに座っているクラウドに、 「すっげ〜、あれが『猫なで声』かぁ…。俺、『猫なで声』って生で聞いた事なかったからちょっと感動…」 「…俺も初めて聞いた」 「なんかこう…気持ち悪いもんなんだなぁ」 「あぁ…女って怖ぇ……」 「本当に、『女は魔性』とも言うしな。俺はともかく、クラウドは変な女に目をつけられないようにしろよ?」 「ああいう女には興味がないから大丈夫だろ?」 「何言ってんだよ。お前が興味なくても向こうがクラウドに興味を持ったらヤバいだろうが」 「なんでそうなる。俺は相手が女でもおかしなことしてきたら容赦しない」 「だからち〜が〜うっつうの!お前じゃなくて、お前の好きな子が狙われるって言ってんの」 がったん!!! 突然上がった大きな物音に、いつの間にか女生徒とのやり取りを終えていたヴィンセントの紅玉の瞳がスーッと細められる。 そして。 パンパンッ!! 上がったのは二発の銃声。 生徒達が引きまくったのは言うまでもない。 「私の授業で私語をするな」 「「 ………はい、すいません… 」」 見事、クラウドとクラウドの前の席の生徒の机には、黒い煙を細く立ち上らせながらめり込んだ銃弾が…。 恐らく火薬の量をうんと減らしているのだろう。 出なければ、机くらい簡単に貫通するはずだ。 クラウドと前の席に座っている生徒はシュン…と小さくなって数学の授業では絶対に私語をしない、不真面目な態度はとらない!と固く誓ったのだった…。 * 「ふ〜ん、それで危うく銃殺されるところだったの」 昼休みの屋上にて。 ティファとクラウドは級友達と一緒に昼食を広げていた。 二人の間には数人の級友達が入っており、その距離が切ない。 だが、その二人の距離感を縮めるかのように、二つ上の学年のエアリスが美味しそうにティファの弁当からから揚げをつまんで食べていた。 クラウドにザックスからの言伝を伝えに来たのだ。 その際、屋上で盛り上がっていた話題に自然と参加することとなった。 クラウドは苦虫を噛み潰したような、不本意極まりない顔をしてそっぽを向いていた。 「どこの世界に生徒を銃殺しようとする教師がいるんだよ…」 「あら、ここにいるじゃない」 むくれたように呟くクラウドに、エアリスは一刀両断、ズパッ!と言い切った。 苦笑や哄笑が上がる。 ティファは無論、『苦笑組み』だ。 クラウドと一緒に銃殺されそうになった男子生徒は何故か『哄笑組み』だった。 「それにしても、その女生徒も無謀よねぇ」 「そうかしら、彼女、見た目だけはすっごく可愛いから案外いけるかもよ?」 『見た目』という部分を強調して、ティファの友達がそう言うと、エアリスはカラカラと笑った。 「無理無理。バレンタイン先生はクレシェント先生にぞっこんだもん」 「「「 え!?科学教師の!? 」」」 エアリスの言葉に、級友達ばかりでなく、クラウドとティファも目を丸くした。 今年高校生になったばかりのクラウド達にとって驚くべき事実だった。 エアリスは笑った。 「そう。皆、入学してもう半年以上も経つのに知らなかったの?」 皆が揃って首を振る。 エアリスは面白そうに後輩達を見た。 「バレンタイン先生がクレシェント先生に想いを寄せてるのは結構有名だと思ってたんだけどなぁ」 「「「 へぇ!あのむっつり先生が! 」」」 声をはもらせた後輩達に、「そんな言葉がバレたら本当に銃殺されるわよ」と言い残し、エアリスは弁当を分けてくれたティファに手を振りながら屋上を後にした。 ドアの向こうに消える前、 『あ、ザックス?クラウドにはちゃんと伝えたよ。でもわざわざ私に言付けなくても本人に直接メールしたら良いじゃない?』 という声が聞こえてきた。 『…絶対にエアリスの声が聞きたかっただけだ…』 クラウドは実に正確に先輩でもあり、親友でもある青年の心情を見抜いたのだった。 「それにしても、今日から本腰入れて剣術の稽古かぁ…」 「すごいよね、ストライフ君!」 「あたし、絶対に試合、応援行くからね!!」 エアリスが去ったと同時に、クラウドは一緒に弁当を食べていた女生徒達に半ば包囲された。 ティファと一緒に食べていた女生徒達だ。 ティファが澄ました顔をしながら、チラリ…と視線を送った気がしたが、クラウドにはそれが確かには分からなかった。 困ったように、 「あぁ…まぁ…」 と適当な言葉でその場を濁している。 ティファと仲良くしていることを知っているので、無下に扱うわけにもいかない。 クラウドのその心境を知ってか知らずか、クラウドの級友である男子生徒達はそそ〜っとその場を少しだけ遠巻きにしてニヤニヤと笑っている。 時折、ティファに視線を流して様子を見ているらしい様が憎らしい…。 クラウドが困っている姿と、ティファが澄ました表情を作っているのがおかしいらしい。 誰も助け舟を出そうとはしない。 まぁ、この場合、どうやって助け舟を出したら良いのか分からない…というのもあるのだろうが…。 クラウドにとって、このティファの女友達は本当にどう接して良いのか分からない未知の存在だった。 無下に扱ってティファに嫌われるのはいただけない。 さりとて、下手に優しくしすぎてティファに『彼女に気があるのかしら…?』と勘違いされるのはもっとイヤだ。 だからひたすら、 「まぁ…適当に(応援)頼む」 くらいしか言えない。 女生徒達はティファの友人であると共に、クラウドを純粋に想っているライバルみたいなものでもあった。 ティファも好きだけどクラウドも諦められない…という何とも複雑な乙女心を持っている。 多感なこの年代。 クラウドもティファも、互いにその多感な季節を同じ空気を吸いながら、戸惑いつつ日々、成長しようと周りを見ながら…、自身の心を見つめながら、時には失敗をして反省して生活していた。 そして、その貴重な時期を、彼らはこのエッジ学園で心身の成長のために学ぶのだった。 いつか、大きく成長して世に羽ばたくために。 「あ、予鈴」 「じゃ、戻ろっか」 微かにほろ苦い想いを抱えながら、クラウドとティファは級友達に囲まれつつ学び舎に戻るのだった。 |