「む〜〜…」

 ショートカットの黒髪が陽の光を受け、キラキラと輝いている。
 その艶やかな髪を風に好きなようになぶらせながら、年若い女性が大岩の上で胡坐をかいていた。

 整った顔(かんばせ)には似合わない不機嫌極まりない表情を刻み込みながら、女性は天を仰いだ。
 どこまでも憎らしいほど澄み渡った青空が広がっている。
 遥か遠くには白いモッコリとした雲が浮かんでいるが、彼女の頭上には燦々と照り注ぐ陽光のみがあった。


「なんで…」


 震える手で懐を探る。
 取り出した小さな『ソレ』を握り締める。


「なんで……誰も『かけて』来ないんだーーーー!!!!!」


 彼女の虚しい声が、澄んだ青空に吸い込まれていった……。





Happy Birthday To Lady






「…で?」
「『で?』じゃない!何なのさ、遊びに来たら悪いわけ!?」
 全くもって、興味のなさそうな顔をし、且つ、鬱陶しいと顔にデカデカと書いている仲間に、ユフィは不機嫌をそのままぶつけるように噛み付いた。
 金髪・碧眼の青年は、さも『うんざりだ』と言わんばかりに溜め息を吐いた。
「ティファなら今、買い物に出掛けてて留守だ。デンゼルとマリンも遊びに行っている」
「見りゃ、分かるっつうの!」
「そして、俺は今から仕事だ」
「行ってくりゃ良いじゃん!」
「お前、帰れ」

 はぁ…。

 再び溜め息を吐き出したクラウドに、ユフィは柳眉を逆立てた。

「帰れ!?帰れって言った、今!?」
 ダンッ!!

 テーブルを激しく叩き、勢い良く立ち上がる。
 憤激するユフィとは対照的に、クラウドはどこまでも落ち着いていた。
 いや、ユフィに対して興味がない、というのがありありと浮かんでいる。
 ユフィは小刻みに震えながらかつてのリーダーを見下ろした。
 目だけで殺しそうな迫力も、クラウドには通用しないらしい。

「分かった、帰るよ!!」

 叩きつける様に言葉を吐き出し、苛立ちを露わに店のドアを乱暴に開け、出て行った…。

「ったく…いきなり来るなよな、毎回毎回…」

 呆れ返ったその台詞は、ウータイの忍に聞かれることは無かった。


 *


「なんなのさ、なんなのさ!!」
 腹立ち紛れにズンズン歩く。
 途中でジェラート、クレープ、アイスティー、フライドポテト、フランクフルトを次々に買い込んで頬張りながら街を歩く。
 鬼のような形相に、各店の店員がギョッとしながら、おずおずと注文の品を渡すその様にも…腹が立った。
 ひったくるようにしてそれらを買い込み、食べ歩きながら次の店、次の店…と、足を止めてひたすらやけ食いをする。
 そうしてひたすら行儀の悪いことをしつつ歩き、ユフィはエッジの記念碑前に辿り着いていた。
 そこに設けられているベンチへドッカ!と腰を下ろすと、治まらない腹の虫を宥めるように、残っていたアイスティーをグイッと飲み干した。
 冷たいもの、熱いもの、脂っこいもの等々を急に胃に入れたものだから、胃が妙に重い。
 だがそれ以上に、胸の中が虚しさで一杯だった…。

「なにさ!」

 ブンッ!
 紙コップをクシャクシャに握りつぶして丸め、少し離れた所にあるゴミ箱目掛けて投げる。
 ありえない速度でそのゴミは見事に目標地点へと投入された。
 同じベンチに座っていたカップルがビックリして目を丸くしている。
 それにすら気づかず、ユフィはイライラと足を組んだ。
 組んだ足の上に片肘を着き、頬杖をする。
 短パンから覗く見事な脚線を惜しげもなく広げて座っている様は……うら若き乙女がする格好ではない。
 もしも、この場に仲間がいたら鋭いツッコミを入れてやめさせるだろう…。
 だが…ユフィは一人だった。
 たった一人で、エッジの記念碑前のベンチに座っている。
 暫くイライラと街行く人達を見るとはなしに見ているうちに、苛立っていた気持ちが徐々に冷えてきた。
 同時に、自分が堪らなく惨めな存在に思えてくる。

「なにさ…」

 先ほどと同じ台詞。
 だが、その台詞には全く力がなかった。

 溢れかえっている人達は、何かしらの目的がある人達ばかりに見えた。
 今から買い物へ行こうとしている人。
 恋人と楽しそうに笑っている人。
 はしゃぐ子供達に振り回されつつも幸せそうな人。

 どの人達も、自分とは違って『なにか』があった。
 それが…酷く残酷に思える。
 ユフィは自分がどうしてエッジに来てしまったのかを考え、しょんぼりと肩を落とした。

 今日は…自分の誕生日だ。
 別に祝ってくれる人がいないわけではない。
 むしろ、実父や故郷の人々などは、一種のお祭りのように盛り上がり、祝おうとしてくれた。
 そう…、祝おうとしてくれたのだ。
 だが、それら全部を断り、半ば強引にこの地にやって来た。
 もっと…、もっと他の人に祝って欲しかったから…。

 仲間。

 背中を預けて戦えた仲間。
 その仲間達に、誰よりも祝って欲しかった。
 なのに…。

「……薄情者ばっか…」

 グシッ。
 鼻を啜りながらこぼれた本音。
 今日が近付くのを一週間前から楽しみにしていた。
 仲間達がどんな言葉をくれるのか…それを想像して。
 別にプレゼントは期待していない。
 もとより、そのような気配りが出来るのは同性のティファくらいだろう。
 もしかしたら、ナナキも何か用意してくれるかもしれない。
 だが、他の仲間達には全く期待出来なかった。
 だから、『祝いの言葉』だけでも良い…、仲間達から欲しかったのだ。
 それも、『携帯』からではなく、出来れば直接顔を合わせて。

 それなのに…。

 一番最初に向かったのがこの街。
 この街をどうして一番最初に選んだのか。
 それは、一番祝ってくれる可能性が高くて、且つ、一番祝って欲しい仲間がいたから。
 同性の『彼女』に祝って欲しかった。

 ― 『綺麗になったわね、ユフィ』 ―

 そう言ってくれるんじゃないだろうか…?
 そんな淡い期待を胸に抱え、この街に来るまでの間、乗り物酔いに耐え抜いた。

 だが。

 急に来たから…だろう。
 彼女はいなかった。
 そして、彼女の伴侶に手ひどく追い返されて…。

「薄情者」

 またこぼす。

 直接顔を合わせて祝いの言葉を言ってもらいたかったが、それが無理なら携帯越しでも良いから声を聞かせて欲しかった。
 仲間達は星の各所に散っているのだから、全員が自分に会いに来るのは無理だと分かっている。
 だから、大半の仲間は『携帯』越しのお祝いになるだろう…と思っていた。
 だが…。

「…薄情者…」

 まさか、一人もかけてこないとは。
 いつしかユフィは、強めに吹く風から身を守るように、ベンチの上で両膝を抱え、小さく座り込んでいた。
 11月も半ばを過ぎると風が冷たい。
 こんなに晴れているのに、どこか寂しい空をぼんやりと見上げる。
 薄い水色の空には、いつの間にか薄っすらと西の空に茜がかってきていた…。

 秋の空は…日が暮れるのが早い。

「…サイアクじゃん…」

 なんて惨めな誕生日だろう…?
 大人しくウータイにいれば良かった。
 そうすれば父親を始め、ウータイ中の人間が盛大且つ賑やかに、楽しく祝ってくれたのに。

「あ〜あ…」

 クラウドのすげない態度に上っていた血も、今ではすっかり冷め切っていた。
『腹立ち』から『惨めさ』に感情が見事に摩り替わっている。

 よくよく考えれば分かることだ。
 仲間達には仲間達のそれぞれの生活がある。
 自分だってそうではないか。
 日頃はウータイの忍としてこれでも忙しく働いている。
 ましてや、ティファやクラウドの忙しさはどうだ?
 今日、急にセブンスヘブンを訪れ、彼がいたということは、本当なら奇跡に近いんだろう。
 クラウドも…本当に忙しいのだ…。
 それなのに、たかだが『自分の誕生日』くらいで押しかけ、あまつさえ逆切れをかまして飛び出してくるとは…。

「ははは…全く、ダメだ〜ね〜、これじゃ…」

 力なく笑ってポスン…と膝に額を落とす。
 あまりにも子供過ぎる自分に苦笑しか浮かばない。

「…帰ろ…」

 ベンチに座った時の勢いなど微塵もない。
 力なくユフィは空を仰ぐとノロノロと立ち上がった。
 ヒョロリ…と影が細長く地面に伸びる。
 その様までもが、うすら寂しくて…。

 ユフィはブブンッ!と頭を振ると、自分の中にまだ残っている『未練』を振り切るようにして顔をしゃんと上げた。

 こんな風にイジイジするのは自分らしくない!

 そう言い聞かせて飛空挺の定期便に乗るべく歩き出した。


 *


「……なんかさぁ…おかしくない…?」

 耳障りなエンジン音。
 揺れる機体。
 もうそれだけでユフィは乗り物酔い状態だった。
 まだ離陸してからほんの10分ほどしか経っていない。
 それなのに、顔が青ざめ、額に汗が浮かんでいる。
 パイロットはユフィの問いかけに気づいていないのか、真っ直ぐ前だけを向いて操縦していた。
 乗客は……ユフィただ一人。
 さして広くもない飛空挺だが、流石にパイロットと副操縦士とユフィの三人しかいなければ、広く感じてしょうがない。
 その広い空間がこれまたイヤだった。
 シエラ号のような巨大な飛空挺ならデッキに出て風に当たることも出来たのだが、旅客機がそんな大きいはずがない。
 という訳で、ユフィは仕方なく、シートにズッシリと身を沈めてひたすらウータイを目指すべく腹を括っていた…のだが…。

 何かが…おかしい気がする。
 そう…何か…。

 乗り物酔いで目がしょぼしょぼする。
 窓の外を眺めても、定まらない視界に乗り物酔いが増強しそうだ。
 だが…。

「ちょっと…やっぱりこれ、変じゃん!?」

 シートベルトを外し、中腰になる。
 ユフィの気のせいではなかった。
 飛空挺は……エッジ上空を旋回しているだけではないか!

「 ! 」

 ハッ!と気づいたユフィが立ち上がる。
 しかし…。


「申し訳ありません。上司命令ですので、暫くの間、ご辛抱を」


 自分の額にピタリ…と照準を合わせている銃を前に、ユフィは固まった…。
 副操縦士を睨みつける。
 壮年の男性は、生真面目な顔をして…どこか困ったような雰囲気を醸し出していた。
 同じくパイロットも…。
 微かに肩に緊張からか力が入っている。
 二人共、自分に対して敵意が感じられない。

「……わ〜ったわよ」

 腹を括ると、ユフィはシートにどっかりと腰を下ろした。
 副操縦士がホッと安堵の溜め息を吐いたことに内心首を傾げる。

 とりあえず、彼等は自分を今すぐ殺すとか、そういうつもりはないらしい…。

 乗り物酔いが酷い状態でもあることだし、ユフィは飛空挺が地面に降り立つのを待つことにした…。
 やがて…。


「…ゲゲッ!」


 目の前に大きな飛空挺が現れた。
 その圧巻される機体にはポカン…と口が開く。
 しかも…。

「え…え!?ちょ、ちょっと待って!!」

 航行中の巨大飛空挺に、旅客機はパクリ…と食べられるかのように突入してしまった。
 一気に暗くなる視界。
 巨大飛空挺に無事降り立った感触。
 大きく機体が揺れてユフィは『グエッ…』と、思わず口元を覆った。
 グルグルと目が回るのは、急に暗くなった視界と揺れる機体の二重奏ゆえか…。
 シートにへばりつくようにして唸っているユフィを、いつの間にか操縦席を立っていたパイロット、そして銃を構えていた副操縦士二人がそっと抱えるようにして支え、飛空挺から連れ出した。
 その僅かな間、ユフィはと言えば、
「うえぇ〜…お願い、ちょっと休憩…」
 と言ったきり、言葉にならない状態だった。

 しかしそれも…。


 パンパンパンッ!!!


 心臓が口から飛び出るのではないか!?と思われるほどの大音響。
 ビックリして思わずパイロットと副操縦士を盾に押し出す。


「「「「「 お誕生日おめでとう!! 」」」」」


 パッ!とライトが点く。
 ギュッと眼を瞑ったのも一瞬、耳慣れたその大合唱に目を見開くと…。


「あ…」


 ヒラヒラと無数に降りかかる紙ふぶき。
 そして…。

 にこやかに微笑んでいる仲間達。
 その手にあるのは、綺麗にラッピングされた箱や可愛い袋。
 そして、飛空挺の内壁一面には、折り紙で作られた飾り輪のリース。


 ― ユフィ、お誕生日おめでとう!! ―


 真っ白の布にデカデカと歪(いびつ)に書かれたその文字の周りには、恐らく子供達が描いたのだろう、ユフィの似顔絵とマテリアの絵がキラキラと照明を受けて輝いていた。

 あまりのことに呆然とするユフィに、副操縦士とパイロットが一人の男性に敬礼をしているのが見えた。

「リーブ…」
「ははは、どうですか、サプライズパーティーへの招待は?少しは楽しんで頂けましたか?」

 にこやかに微笑む紳士、リーブ・トゥエスティ。
 WROの局長だ。

 あぁ…そうか…、とユフィは納得した。
 二人の誘拐犯の正体は、なんてことはない、WROの隊員だ。
 しかもかなり上のランクを持つ隊員だろう。
 そつのない身のこなしは、いくらユフィが乗り物酔い真っ只中だとは言え、見事なものだった。
 隙を見せずにここまで連れて来るのは…至難の業だったろうに…。

 その誘拐を命令された隊員二人は、ユフィの視線に気付いてビシッ!と敬礼している。
 緊張したその表情からも、ユフィが爆発しないか心配しているのが窺えた。

「ま〜ったく、なんだっておめぇは大人しくしてねぇんだ?」
「ふふ、仕方ないよ。だってユフィだもん」

 呆れた口調でガシガシと頭を掻いているシエラ号の艦長を見る。
 彼の手には大きなチョコボのぬいぐるみがあった。
 そして、彼の足元にいる赤い獣。
 隻眼の仲間は、首に何やら小さい箱をくくりつけている。

「本当なら、ウータイで落ち合うことになっていたはずだが…?」
「しゃあねぇだろ。コイツ、ほんっとうに落ち着きないから一人で飛び出しやがったんだと。ユフィのオヤジがぼやいてたぜ」
「そうなんですよねぇ。まぁ、こういうとき、何らかの組織の力を持っていると本当に助かりますねぇ」
「「 リーブ… 」」

 寡黙なガンマンと、片腕が義手の仲間がこれまた呆れた顔をする。
 ヴィンセントは小さな箱、バレットは…なんだかあまり中身が見たくない様な袋を申し訳程度にラッピングしているものを持っていた。
 リーブは特に何も持っていないが、この場合、WROの力を駆使してここまで連れて来てくれたのが既にプレゼントだろう。
 きっと、ユフィの携帯を走査したに違いない…。
 そうして、旅客気をまるまる一台、チャーターしてしまったのだ…。

「本当にもう、ユフィったら」
 クスクス。

 笑いながら優しく見つめる茶色の瞳。
 彼女の手はそれぞれ子供達の背に添えられている。
 恐らく、彼女のプレゼントはここではなく『食堂』にあるのだろう。

「ユフィ姉ちゃん、少しは大人になれよなあ」
「お姉ちゃん、お誕生日、本当におめでとう!」

 子供達の手にはそれぞれ小さな箱があった。
 恐らく、自分達でラッピングしたのだろう。
 一生懸命、悪戦苦闘した跡が見える。

「はぁ…本当にお前は…、いつもいつも、いきなり来るな。こっちにはこっちの準備があるんだぞ…?」

 盛大な溜め息を吐いたかつての旅の…リーダー。
 呆れた口調の中に、若干『焦り』というか、『申し訳なさそうな色』というか、『言い訳』というか…、そう言った複雑な色が感じられるのは…きっと……。

「クラウド、『帰れ』って言ったこと、ちょっとは反省してんの?」

 ニシシ、と笑う。
 碧眼がピクリ…と細められ、
「馬鹿言うな」
「あ、図星?」
「違う」
「へっへ〜、なんか慌ててやんの」
「慌ててない」

 コツン。
 男性にしては華奢な腕が伸びて、ユフィの額を軽く小突いた。

 ニシシ、ともう一度笑う。
 なんだか胸がポカポカ、むずむずする。
 妙に目元がユラユラとして……涙が浮かんでいる気がする。

 グシッ…、と鼻を啜るユフィに仲間達が目元をやんわりと緩めた。


「さぁ、パーティーの始まりよ!」


 ティファの声に、一斉に歓声が上がる。
 ナナキと子供達が嬉しそうに駆け寄り、ユフィの背を押したり手を引いたり…、ユフィはもみくちゃにされた。
 ティファがギュッと抱きしめて、
「本当に、お誕生日おめでとう」
 そう耳元で囁いてくれた。
 ユフィの目尻で止まっていた涙が一滴だけこぼれる。


「ヘヘッ!ありがとう!」


 花が咲くような…笑顔。
 最後まで呆れ顔だったヴィンセントの顔にも笑みが浮かぶ。

 豪勢な料理、それぞれが用意してくれた誕生日プレゼント。
 何よりも、仲間達が誰も忘れず、しかも『サプライズ・パーティー』を準備してくれていたこと。
 それが…本当に嬉しかった。
 バレットの袋から出てきたのは…、コレル酒を元としたカクテルだった。
 意外と普通のプレゼントに、ホッと胸を撫で下ろしたのはユフィだけではなかった…。
 ヴィンセントは…なんと携帯のストラップ!
 これには皆が驚いた。
 しかも、幸せを呼ぶ『四葉のクローバー』がモチーフとなっているとても可愛い代物だった。
「どうしたの、ヴィンセント!?あんたがこんなに可愛いものを選ぶなんて!!」
「………返せ」

 シドからのプレゼントも驚くものだった。
 なんと…ブレスレットだ。
 それもブルートパーズがアクセントとして埋め込まれている可愛い代物!
「これ、シエラさんにお願いして買ってもらったの?」
「馬鹿言うな!一緒に選んだんだよ!!」
 イヤなら返せ!!

 そう喚くシドに、「一度もらったものはアタシんだ〜」と、ヒラリ、と見事な宙返りで持ってその手を逃れた。

 ナナキからは、サンゴを基調としたペンダントだった。
「へへ。オイラの手作りなんだ〜」
 得意そうに胸を張る隻眼の獣に、仲間達の称賛の拍手が起こる。

「えっと…」
「あの…」

 子供達がおずおずと差し出したもの。
 それは、ビーズで出来た指輪。
 真っ赤になって恥ずかしそうにしながら、
「あの、ごめんね。あんまり上手くできなくて…」
「俺もマリンも、お小遣いから材料買って一生懸命作ったんだけど…」
 どこかションボリとしているのは、大人達のプレゼントと自分達のものを比べてしまったからだろう。
 ユフィはなんの躊躇いもなく、それら二つを指に嵌めた。
「どう?似合うっしょ?」

 子供達の顔が輝く。
 ユフィは二人を抱きしめた。

「ありがとう!もうサイッコー!!」
「「 へへ! 」」

 笑うユフィと笑う子供達に、仲間達が釣られて笑い声を大きくする。

 とても幸せな…幸せな誕生日。
 その最後を飾った大きな喜びは…。


「どう?似合う?」


 ティファとクラウドが二人セットで用意したスカイブルーのワンピース。
 いくつも縫い返しとプリーツが入っているそのワンピースをユフィは一目で気に入った。
 闊達なユフィにはピッタリなデザイン。
 早速着てみたユフィに、場がドッと盛り上がった。

「これで少しはレディーに近づけるか〜?」

 シドの冷やかしにも、ユフィはいつものようにつっかかりながら…笑った。

「アタシは充分レディーだっつうの!」

 仲間達が一斉に吹き出したり、首を横に振る。
 それすらも…嬉しい。



「ありがとう…」



 ありがとう。
 ありがとう。

 生まれて来れて、本当に幸せ。

 ありがとう。
 ありがとう。

 これからもずっと…仲間…だよね…?



 ― おめでとう、ユフィ ―
 ― ハッピーバースディ トゥ レディー ―



 微かに聞えてきたその男女の声。
 ユフィは一瞬だけハッ…と止まったが、すぐにニッカリといつもの笑みを浮かべた。



「ありがとう!」



 窓から見える綺羅星が一層綺麗に輝いた。




 あとがき

 本当に、この手の話ししか思い浮かばなくてユフィに申し訳ないくらいです…。
 でも、本当にユフィ、生まれてきてくれてありがとう!
 大好きです!!