*注意:信じられないくらいくだらないです。オチもありません。ヒマ過ぎて、心の広い人だけ読んで下さい。苦情は勿論、なしでお願いします!(切実) 「クラウド。デンゼルとマリンがすっごく悲しんでるの、分かってる?もう何日もまともにしゃべってないから、2人がどんなに辛い思いをしてるか…。2人とも、クラウドは自分たちよりも仕事の方が大好きなんだ!ってすっごくすっごく悲しそうに言ってるのよ、この数週間毎日!少しくらいスケジュール調整出来ないの?『もしかして、また家出するためにお金貯めてるのかも…』って思われちゃっても文句言えないわよ!?」 クラウドは夜食であるポトフのウィンナーをボトリ…とスープ皿の中に落とした。 普段からもう少し…いや、なんて言うか…。 別に本気で怒ったわけじゃないんだけど…。 もうちょっとだけ、子供たちのために時間を作ってあげて欲しかっただけなんだよね。 何が何でもスケジュール調整してくれ!というわけではなく、すこ〜し配達を減らしてくれたら嬉しいなぁ、と思っただけなんだけどな…。 などなど、言いたいことは数あれど、そのひとつとして口に出来ない状態に自身を追い詰めてしまったティファは、自分の発言によって自分以上に追い詰められてしまったクラウドを前に苦笑すら浮かべることも出来ず、グルグルと堂々巡りに陥っていた。 どんよりと重苦しい空気を背負った背中がこんなにも傍にいるのに遠いのはどうしたことか。 彼の目の前に置かれている夜食が、虚しく湯気をたてなくなって暫くになる。 捨てるのは勿体なさすぎるので、今、食べないならせめて明日の朝食に(勿論、自分の)冷蔵庫へ直してしまいたい。 しかしながら、クラウドのために用意した夜食を本人の了解を得ずに冷蔵庫へ…、など出来るはずもなく、さりとて『食べないならなおしちゃうよ?』と声をかけることもはばかられた。そんな言葉をかけてみろ。 ネガティブ思考にどっぷり浸かっているクラウドをさらに追いつめる結果になるのは明らかだ。 「…クラウド…」 そっと声をかけてみる。 ピクリともしない。 先ほどからブツブツとなにやら呟いているらしきものが聞こえるが、ハッキリとした言葉としては聞こえない。 「俺って奴は…」 だの 「ちっとも成長しない…」 だの、負のループどっぷり加減が恐ろしい…。 ティファは深いため息を吐いた。 この状況を打破することは不可能に見える。 第三者なら。 そう、赤の他人ならこの状況をそのまま放置し、時間が解決してくれるのを待つ以外に打つ手はなく、且つそれ以上の最善策はないと判断するはずだ。 だがティファは違う。 ティファにはこのある意味バカバカしい以外の何者でもない状況を打破する策がある。 しかも一瞬で。 要するに、自分が言いたかった”本当のところ”を言えば良いのだ。 クラウドが悶々と悩む必要など全くないことがたった一言で分かってもらえる。 なら何故言わないのか。 言い出しにくい雰囲気をクラウドが作り上げているからか? そのせいでクラウドが話しに耳を傾けてくれそうにないからか? 違う。 勿論、それも理由としてなくはない。 だが、そんなものくらいなら、ちょっと強引にクラウドの意識を自分に向けさせて(頬を両手で挟んで自分へ向けさせるなり、肩を揺するなり)一方的に言ってしまえば良い。 だがティファはそうしない。 それは…。 (ま、良いよね。これくらい。ちょっと反省してもらわないと) ティファは意地になっていたのだ。 最近、仕事が楽しいのかクラウドの帰宅時間が遅い。 前から遅めの帰宅だったが、最近は特に酷い。 休みもこの数週間でたった一回切り…。 当然、家族団らんの時間は激減。 子供たちとの交わりは朝食時のみ。 それもこの数日はそれすらなく、朝、起きたかと思うと慌ただしく仕事へ出掛けてしまっている。 『え〜!クラウドもう出掛けたのかよ〜!』 『私、クラウドの顔、忘れそう…』 今朝。 いつもより少し早めに下りてきた子供たちのがっかりした姿が脳裏を過ぎる…。 子供たちなりに、クラウドとの時間を少しでも長くしようと頑張って早起きしたのだろう。 それなのに、クラウドは既に朝食すら取らないで仕事へ出掛けていた。 全身で落胆する2人を見てティファの我慢も臨界点に達した。 というわけで、ティファにしては珍しいくらいのきついお説教を、帰宅直後のクラウドに下したのだ。 その結果が目の前の”生ける屍”状態である。 言い過ぎたかも…と言う気持ちはありまくりだ。 だが、どうしても今日はダメ!と意固地になり続けるティファは、ある意味、子供たちのため、というより自分の気持ちを優先させているので、デンゼルやマリンより子供じみているわけだが、そのことには気づかない。 どんよりと暗く沈むクラウドの姿に胸が痛みつつ、それでも期待してしまっている。 これで、明日からもう少し、一緒に過ごす時間が得られのでは…?と。 ようするに、子供たち云々と言い訳しつつ、ティファ自身も寂しかったわけだ、かなり。 しかし生来恥ずかしがり屋のティファはそれを自覚していない。 自覚していたら、今夜のようなことにはなっていないだろう。 「ティファ…」 どんよりと死んだような目をしたまま、クラウドが顔を上げた。 思わず『今回だけはこのまま意地を押し通す!』という決意が揺らぎそうになる。 内心、怯むティファにクラウドは縋るような目を向けた。 「俺、どうしても来週いっぱいまでは今の仕事スタイルを外せない」 悲痛な面持ちでそう告げたクラウドは、見ているだけで胸が締め付けられるようだった。 ティファの決意がさらに大きく揺らぐ。 「でも!」 ガシッ!! ティファの両肩を強く掴み、ズズイッ、と顔を寄せたクラウドの瞳が微かに潤んでいるように見えたのは気のせいだろうか? ティファの気持ちは”ぐらんぐらん”に揺れ、胸はキュンキュンと締め付けられる。 「俺はデンゼルとマリンのことを忘れたことは一瞬ですらない!」 ティファは分かってくれるよな? まるで捨てられそうになっている子犬のようなその必死な姿に、ティファの心臓(ハート)はこれ以上ないくらいガッシリと掴まれた。 自分の誇張した発言が原因だと言うのに、 「勿論よクラウド!私、クラウドがデンゼルとマリンよりも仕事を優先しているだなんて思ったことはないから」 などなど、調子の良いことを口にする。 しかし、そんなことは知らないクラウドは、ティファの言葉に愁眉を開くと心の底から嬉しそうな顔で微笑んだ。 レベル99の微笑み。 ティファの精神は会心の一撃を喰らった。 「ありがとうティファ」 ギュ〜ッ! ティファは最愛の人の温もりに包まれた。 ティファの身体は9999ヒットのダメージを受けた。 ティファは戦闘不能に陥った。 その日の夜。 久しぶりにティファはクラウドの香りに包まれて眠った。 そうして翌々週。 「…なぁ、おい。なんなんだよ、あれ…」 「「さぁ…」」 ひそひそ、こそこそ。 デンゼルとマリン、そしてバレットは眩い太陽の下で、生ける屍となっているティファに心配そう…というよりは、気味悪そうに囁き合っていた。 ビーチパラソルの下、ティファは膝を抱えて座り、ガックリとうな垂れている。 隣でクラウドが懸命に話しかけているが、全く効果がないのが遠目からも見て分かる。 常夏の海に浮き輪を浮かべ、それに掴まって海水浴を楽しもうとしている子供たちと一緒にバレットもプカプカ波間を漂いながら、心から楽しむ雰囲気ではなく憮然としている。 本当なら、とてもとても楽しい旅行になったはずなのに。 「なんでティファ、あんなに落ち込んでるんだろう…」 「折角、この旅行のためにクラウド、お仕事頑張ってくれてたのにねぇ」 「こんな調子じゃあ、折角のアイツの苦労も水の泡だな…」 3人は深い溜め息を吐いた。 クラウドがワーカホリック気味になってまで仕事をしていた理由である『コスタへの3泊4日の旅行』ををティファが知ったのは2日前。 その時はまだ、ここまで変じゃなかった…とはデンゼルとマリン談。 しかし、コスタに到着して満面の笑みで待っていたバレットを前に、 「たまには『家族』で一緒に過ごそうと思って仕事を詰め込んだんだ」 ちょっぴり照れながら真相を打ち明けられた瞬間、ティファの心にヒビが入った。 「「クラウド!!」」 放心状態のティファを尻目に子供たちは感動して目を輝かせた。 そんなマリンとデンゼルに、クラウドは茶目っ気を織り交ぜた目で微笑みながら、 「いつも俺を支えてくれている『大切な家族』にお礼がしたくなったんだ」 そう言って、マリンの頭をポンポンと優しく叩いた。 その心温まる美しい家族の姿は、道行く人たちの微笑を誘い…。 ティファは止めを刺された。 「なぁ、ティファ…」 「……」 「…怒ってる…のか?」 「……」 「その…ごめん。勝手に計画立てたりして…」 「……」 「本当に悪かった、反省してる」 「……」 「…ティファ?」 「……」 「……(そ、そんなに怒ってるのか?)」 「……」 「……(オロオロオロオロ)」 「……」 「……(半泣き)」 クラウドがオロオロしている気配をダイレクトに感じながら、ティファはどうしてもどうしても、顔を上げられなかった。 あぁ、出来ることなら2週間前に戻りたい! 戻って、バカな自分を蹴り上げて殴り飛ばし、ファイナルヘブンをかましてやりたい!! それが出来るならなんだって差し出すのに!! などと激しく自分を呪っていたりする。 ちょっとだけ意地悪をしたくなったあのときの自分をいっそのこと、殺してしまいたい。 だが、当然のことなれどそんなことが叶うはずもない。 ただひたすら自己嫌悪の底なし沼にどっぷりはまり込み、ウジウジと済んでしまったことを気に病む。 (2週間前のクラウド、ごめんなさい。ほんっとうにごめんなさい。2週間前の私の言ったこと、ウソだから!怒ってくれて良いの!むしろ、『このうそつき女!』って罵って!!) ぐるんぐるん、バカなことが頭を回る。 あぁぁあ、ほんっとうに意地悪なんかするんじゃなかった!! ティファの心の声が聞こえるはずもないクラウドは、膝を抱えてうな垂れているティファの隣で膝立ち状態で途方にくれていたが、やがてガックリとクラウドまでもがうな垂れた。 「ごめん…本当に。俺の独りよがりだった…」 その言葉を残して力なく立ち上がると、トボトボ砂浜を歩き去ってしまった。 ティファは自分の傍からクラウドの気配が遠くなるのを感じ、ギュギューッ!と心臓が締め付けられた。 今すぐ追いかけて、『実はあのとき言ったことは大げさに言っちゃっただけなの!』と、告白して謝るべきだと分かっている。 しかしどうしても怖くて出来ない。 顔すら上げられない。 臆病過ぎる自分に本気で泣きそうになったその時。 ティファの耳にはしゃいだ女の声が飛び込んできた。 「ねぇねぇ、ちょっと!」 「うん、カッコいいよね〜!」 「少し愁いを帯びた眼差しが素敵過ぎ〜!」 「1人っぽいわよね?」 「うん、1人よね」 「もしかして、彼女にフラれたとか?」 「うっそ、あんなにカッコいいのに?」 「でも、なんか寂しそうな顔してるじゃない。きっと、失恋旅行なのよ〜」 「そうかも!『別れた彼女を吹っ切るための旅行』!うん、彼の雰囲気ってまさにそれよね!!」 「わわっ!なら、アタシ、声かけちゃお!」 「あ〜、ちょっと抜け駆けなし!!」 「私が先に見つけたのに〜!」 「ダメダメ、恋は先手必勝!友達でもライバルなんだから」 「キャ〜ッ、恋だなんて〜♪でも、確かにあのルックスなら”一目惚れ”ってありなレベルよね!」 「ありよね〜!」 「それじゃあ、とりあえず最初は皆で声をかけちゃおうよ」 「あ、賛成!」 「そんでもって、誰と恋に落ちても文句言いっこなしってことで〜」 「「「 そこの金髪のお兄さ〜ん。一緒に遊びませんか〜? 」」」 ガバッ! 顔を上げると、ビーチから少し離れたところでクラウドが4人の女に囲まれていた。 しかも、全員とても可愛いという恐ろしい事態だ。 肝心のクラウドの表情は…。 困惑、動揺、そして……『大至急、SOS要請』。 しかし、ティファの目には……『まんざらでもない顔』として映った。 ティファの全身に雷が落ちた。 ティファの死んでいた心にアレイズがかかった。 ティファは立ち上がった。 * 「「「……あ…」」」 波に揺られながら、デンゼル、マリン、そしてバレットは同時に声を上げた。 ティファが人間離れしたスピードで女達に囲まれているクラウド目掛けて突進し、これまた人間業とは思えない華麗な回し蹴りをクラウドにヒットさせた時など、子供たちは息を呑んで固まった。 バレットなどは慌てすぎてもう少しで足を攣らせるところだった。 しかしその後、なんとか起き上がったクラウドが興奮しきりのティファを宥め、すかし、最終的にはめいっぱい抱きしめたときには、穴が開くのでは?!と心配するほど子供たちは浮き輪をギューッと握り締めた。 そうして、何を口にしたのか分からないが兎にも角にもティファを落ち着かせることに成功したクラウドは、あろうことか自分をナンパした女たちをはじめ、観光客の面前で熱いチューをかますと、うっとりしたティファの肩を抱いたままいずこかへ去ってしまった。 一部始終を見ていた3人は、なんとかかんとか、ほとぼりが冷めたらしいことにホォッ…と全身から安堵の息を吐き出した。 「やれやれ、まったくお前らも苦労するなぁ…」 バレットが子供たちの頭を順番に撫でる。 少々力が入りすぎて波に沈みそうになるが、2人ともおっかなびっくり、浮き輪のお陰で沈まずに済んだ。 「それにしても、すごい勢いでティファ走ってったから、てっきりナンパのお姉さんたちをぶっ飛ばすのかと思ったけど、そうしなくてほんっとうに良かった…。俺、ちょっとビビッタ」 「バカね、デンゼル。そんなことティファがするわけないじゃない…って言いたいけど、今日のティファ、おかしかったから私もビクビクしちゃった」 「それにしても、どこ行ったんだろうなぁ、2人とも」 「さぁ…でも、まぁ二人一緒だから良いんじゃない?最近、クラウドと2人きりになる時間が全然なかったみたいだし」 「だよなぁ。ティファもさぁ、もう少し自分に素直になったらいいと思わないか?あんなギリギリいっぱいになるまで我慢して、見ててこっちがしんどいよ」 「デンゼル…、あのティファがそんなこと出来ると思う?」 「…まぁ、無理だよなあ」 「クラウドももう少しグイグイ引っ張ってくれたら良いんだけど、それもちょっとねぇ」 「マリン、クラウドがそんなこと、出来ると思うか?」 「うん、無理だよね」 「「 俺(わたし)たちがしっかりしないと! 」」 決意も固く、重々しく頷きあったデンゼルとマリンは、唖然として口を開けているバレットに目を向けた。 「「 わたし(俺)たちとクラウドたち、今夜は部屋、別々だよね? 」」 バレットはビシリッ!と固まると、そのまま引き攣った笑みを浮かべて小さく何度も頷いた。 (クラウド…、ティファ…!!お前ら、普段からどんな風にこんな子供に気を使わせてるんだ!?!?) バレットは心の中で叫びながら急に太陽が翳ったように感じた。 無論、それはただの心理性のもので(ようするに気のせい)、空はどこまでも青く、絶好の海水浴日和だった。 その翌日。 子供たちの希望通り、2部屋別々で休んだクラウドとティファは、傍目から見ていても砂を吐きそうになるほど甘々な雰囲気を垂れ流していた。 バレットは終始、胸焼けを起こしていたわけだが、デンゼルとマリンは至極嬉しそうに胸を撫でおろし、心置きなくこの旅行を楽しんだ。 「あ〜、良かった。俺、ホッとした〜」 「うん!でも、こうなる前に普段からもうちょっとお互いに甘えてたら良いのにね〜」 「まあ、2人には無理だろ。これからも俺達がフォローしてやらないと」 「うん、そうだね。出来る人が頑張ってフォローしたら良いんだし」 (デンゼル…!マリン!!) 子供たちのそんなやり取りにバレットは心の中で涙を流した。 そして、甲斐甲斐しい子供たちにソフトクリームを驕ってやりながら、本当にこのままクラウドたちに子供たちを託して良いものかどうか悩んだりするのだが、まぁ、それはそれとして今日もコスタは平和である。 あとがき 意味?オチ? そんなもの、この話にはありません!!(どキッパリ) なんとなく、何も考えずにアフォな話しが書きたくなっただけです!(真顔) あぁ、ごめんなさい、すいません!!(脱兎) |