アイスブルーいつもいつも、武器を持ち歩く人間など、そういるものではない。 ちょっとした軽い買い物に出掛けるだけなら、尚更、武器を持って行く理由などがない。 もしも、いつも武器を携帯している人間がいるとするならば、その人間はかなり『特殊』な身の上なのだろうし、そういう『特殊』な人間はそうそういるはずがない。 と、クラウドはそう思うことにより、自分は『特殊』な人間ではないのだから、今、この場で『バスターソード』を持ってきていないということの説明を自分自身にしている真っ最中だった。 と言うよりも、自己弁護…と言うか、言い訳…と言うか…。 『なんだってこんな時に限って…』 置かれている現状に心底腹が立つ。 自分は『英雄』と世の人から称賛されているが、なんのことはない、『ただの人間』なのだ。 それなのに、どうしてこうも『ただの人間』には訪れないであろう『事故』や『事件』が自分の身の回りで起きるのだろう? 生れ落ちた星が悪かった…と言えばそれまでだが、そう言ってしまうとなんだか自分が酷く『運命』とかそういう『他力本願』的な考えみたいなものを肯定してしまうようで…イヤな気分になる。 それに、まぁ、悪いことばかりではないことも事実なわけで…。 と言うよりも、非常に恵まれている、と感じているので、やはり『生まれた星の下が悪かった』と言ってしまうと、彼女や子供達、更には仲間達への侮辱であるように感じられるので、慌てて否定するしかない。 ということは、やはりただ単に『運がない』と言ってしまうわけになり、堂々巡りの矛盾したことを意味もなく考えてしまう。 『くそっ!』 クラウドは苛立ちを隠そうともせず、走る足に力を込めた。 今日は久しぶりの休日。 仕事が丸々一日ない日は、実に久方振り。 当然、子供達やティファはこの日をとても楽しみにしており、家族で一日まったりと過ごせる時間を数日前から待ちわびていた。 本当は、どこかにキャンプでも行ければ…とクラウドは思っていたのだが、 『たまには、家でのんびりするのも良いんじゃない?』 とのティファの意見に、素直に頷いた。 それも良い、と思った。 本当に、一日家でゴロゴロしたり、ティファや子供達と一緒に朝・昼・晩ご飯を食べたり、他愛のない話をしたり…。 そういう時間がここのところ全くなかったので、ティファのアイディアはとても魅力的だった。 子供達も賛成した。 デンゼルとマリンは、交代でフェンリルに乗せてもらう以外は、特にクラウドへのリクエストはなかった。 『クラウド、一日中一緒って良いよな〜』 『クラウド、その日はずーっとのんびりしようね。お店も勿論お休みするし』 嬉しそうにそう言って見上げてきた子供達が愛しい…。 クラウドは頬を緩めると、子供達の頭をそれぞれ数回撫でた…。 それが二日前。 待ちに待ったそのお休みである『今日』。 どうしてクラウドは一人で『こんな所』にいるのかと言えば、非常に日常的で全くもって、特別でも何でもない理由。 ティファのお使い。 本日の食事はティファが腕によりをかけて三食作ってくれることになっていた。 クラウドが休みだから…という理由で、クラウドが喜ぶものを沢山作ってあげたい。 そのティファの気持ちがクラウドにはこの上もなく幸せで…。 だからこそ、 『新鮮な食材を使って料理をしたいの』 そう言って、わざと前日から野菜や果物を揃えることをしなかったティファに代わり、クラウドは市場への買い物を申し出たのだ。 ティファは最初、自分の目で見て食材を選びたい、と言ったが、結局はクラウドにお使いをお願いすることにした。 最初は野菜の名前すら知らなかったクラウドが、こうして自らお使いを申し出るまでに成長したことが嬉しかったし、軽いお使いくらいさせてもらいたい、というクラウドの気持ちがとても有り難かった。 はにかみながら、お使いメモを渡して、 『じゃあ…お願いね?』 上目遣いで頬を赤くしたティファに、クラウドは胸がポッ……と温かくなったものだ。 子供達はクラウドについて行こうとしたが、結局は家に残ってティファと一緒に昼食と夕食の下ごしらえをすることにした。 自分達がついていくことが、逆に『クラウドを信用していない』と受け止められたら大変だ!と思ったのかもしれないし、純粋にティファの手伝いをしたかったのかもしれない。 クラウドは、家で待っている家族を思い浮かべながら、忌々しそうに『前方』を睨み付けた。 『敵』は6人。 所持していると思われる武器は『銃』。 火薬の匂いがかすかに鼻腔をついた。 独特の油の匂い。 バレットとヴィンセントを思い出させる。 折角ティファのお使いを無事に果たせたというのに…。 クラウドは市場の中にある一軒の八百屋に託している買い物類を思い出しながら、さっさと目の前の状況を片付けるべく跳躍した。 前々からリーブよりもたされていた情報。 復興目まぐるしいエッジで密やかに増殖している『裏社会』。 次々と新しいビルや店が建つエッジには、出稼ぎにやって来る人間が多い。 その人々に紛れて、『麻薬』『臓器売買』『人身売買』などを生業としている犯罪者がその数を急激に増やしつつある…と言うのだ。 WROは『星の害となるありとあらゆるものと戦う』組織。 人間同士の闘争に介入することもあるし、『事件』や『事故』への対応をすることもある。 しかし、そう言った『人間同士』の問題は、神羅時代から培われている『警察』が取り扱うのが主流だ。 警察では対処のしようがない『モンスター』等の問題を請け負うのがWROという組織。 そのWROの頂点に立ち、真っ直ぐに…、曲がらず成長出来るよう尽力しているリーブは、各大陸のモンスターや世界情勢等の情報を常に収集している。 そのリーブから聞かされた不穏な話し。 エッジに住んでいるクラウドと、その家族を案じたリーブからの情報だ。 クラウドは感謝しつつ、その話を頭の中に置いてそれとなく日々警戒していた。 その結果が…。 「相手は一人。だが油断するな」 『闇』に身を置いている人間の独特な陰惨な気。 発せられている殺気と闘気は、素人のものではない。 着地した地面が、昨日の雨でぬかるんでいたが、転倒するという失態を犯さず、クラウドは再び前へ跳躍した。 空気を裂く音が耳元を掠める。 パシュッ!という音。 サイレンサーをつけている銃なのだろう。 相手がこういう『不測の事態』に対して常に警戒している玄人であることが分かる。 パシュッ、パシュッ、パシュッ! 何度もクラウド目掛けて弾が飛ぶ。 それを恐れる事無く、クラウドはまだ建設中のビルの中を進んだ。 特に策も何も無い。 走りながらむき出しの鉄骨に向かって跳躍し、敵の頭上目掛けて飛び降りる。 武器がないので、素手での格闘。 相手は強い。 それが6人もいる。 だが、それがどうしたと言うのだ? クラウドにとって、恐れるほどのことではない。 クラウドが恐れていることは、今のところ目の前の敵ではなく…。 このまま貴重な一日が潰れたらどうしよう!? その一つだけ。 クラウドにとってはたった一人で玄人を相手にしているという現状よりも、貴重な家族との時間が無くなるかもしれない、という事の方が一大事だった。 クラウドの攻撃をかわした男が、舌打ちをしながら銃を向ける。 至近距離で発砲されたら、いくらクラウドでもかわせない。 当然、そんな無様な末路を甘んじて受けるはずもなく、クラウドは身体を反転させるように身を大きく反らせながら、渾身の力を込めて蹴りを繰り出した。 イヤな音と一瞬だけ上がった苦悶の呻き。 蹴り飛ばしたわけではなく、蹴りつけた勢いを殺さずに男の頭を地面に踏みつける。 もしかしたら頬骨が折れたかもしれない。 いや、最悪、頚椎に損傷を負ったかもしれない。 だが、そんなことを気にする必要があろうはずもなく、その暇もなかった。 クラウドはそのまま後方へ宙返りしつつ、相次ぐ攻撃をかわしながら出来かけの壁に身を隠した。 すぐさま敵の死角をついて左へ疾風の如く移動する。 バスターソードでの戦いを得意としているクラウドだが、体術もある程度は心得ている。 ティファほど華麗に戦うことは出来ないが、それでも今、戦局を切り開くだけの力は充分だ。 それが敵にも分かっている。 だからこそ、決して侮った攻撃をしてこない。 自分達の人数が多いことによる慢心を感じさせない。 それだけクラウドの実力を見抜いているのだ。 相手の力量を見抜ける力を持っているということ…。 クラウドは苛立ちをそのまま力に変えて、残り5人の敵へ攻撃を仕掛けた。 敵がクラウドの存在を感じて振り返る。 もうその時には、クラウドの攻撃範囲内だった。 疾風の如く、絶えることなく跳躍と疾走を続け、敵をかく乱した結果だ。 浅黒い肌をした男が驚愕の顔をして銃を向けようとしたところで、その男は意識を飛ばした。 クラウドの拳が鳩尾にクリーンヒットする。 一切手加減しないその力。 胃壁が破れたらしい。 苦しみ、のた打ち回る男の痛みは想像を絶するものであるはずだった。 そう、戦力としては役に立たないほどの…。 残り4人。 仲間が苦悶の呻きと、胃液を吐く不快な音が建設中のビルに不気味に響く。 だが、残り4人は誰も闘志を手放さなかった。 実に冷静に行動へ移す。 クラウドが一人一人への攻撃していることに、散っていた敵は仲間が2人、敗北した時点で集まっていた。 背合わせにして立つ。 それぞれ銃を構え、どこからクラウドが攻撃を仕掛けても迅速に対応が出来るように円陣を組んだ。 男達は一言も話さない。 全身でクラウドの気配を探る。 目をぎらつかせて一瞬も気を抜かない。 建設中であるが故に、天井からは中途半端に陽の光が差し込んで、奇妙な明暗を作り出していた。 そのビルの中、クラウドの気配は一箇所に止まることがなかった。 敵はクラウドの狙いを正確に悟っていた。 自分達をかく乱させて、誤射するのを待っている。 そして、その一瞬の隙を突いて…、あるいは弾が切れたその瞬間に攻撃を仕掛けてくるつもりなのだ…と。 だから、決して気を抜かず、弾の無駄遣いはしない。 ビリビリと張り詰めた緊張感に耐えられるだけの肝の太さ。 クラウドは、敵の手強さを前に苛立ちが増すかと思いきや、妙なことに、感心していた。 ここまで冷静に対処が出来る人間がいるとは…。 しかも、彼らは今までクラウドが警察やWROに突き出した『小者』たちとは違う。 大物だ! 敵の力量を甘く見る事無く、自分達の力を過信することもない。 冷静に判断し、完全に自分達の身を曝して、銃を構えているのは実に見事。 クラウドが武器を持っていないということをちゃんと分かっているからこそ出来る円陣。 だが…。 『悪いが、それも無駄だ』 クラウドは唇を片方持ち上げ、ニッと笑った。 ビュッビュッ!! 2人の男が突然の攻撃に吹き飛ばされるようにして、立っていた位置から離れた所へ倒れる。 残された2人は、攻撃された方へ一斉に銃を向け、躊躇わずに発砲。 だが、そこには既にクラウドの姿は無い。 唖然とした2人の視界に、クラウドの姿が一瞬だけ映る。 カンッカンッカンッ! 発砲した弾が、クラウドには命中せずに鉄骨に当たる。 仲間達が次々と倒されていく中、とうとう男達は焦りを感じ始めた。 自分達の攻撃をかわし、疾風のような速さで移動を繰り返すクラウドの体力と、先ほど2人が倒されたその『手段』に心底自分達が相手をしている人間の強さを思い知らされた。 仰向けにそれぞれ倒れている仲間をチラリ、と見る。 拳大ほどもあるコンクリートの破片が、その顔面にめり込んでいた。 かろうじて微かに息をしている。 鼻と口から鮮血が流れており、その呼吸は浅い。 残った2人はサッと目を合わせた。 そして、躊躇いなく駆け出した。 逃げることを選んだのだ。 このままでは自分達も捕まることは必至。 ならば、味方を見殺しにして自分達は逃げる。 無事に逃げおおせたら、また後日改めて再戦したら良い。 あるいは、自分達の『敵』であるこの金髪・碧眼の男の『大切なもの』を人質にとるというのも上策だ。 建設中であるので、本来『壁』であるはずの部分にはまだコンクリートがない。 ようするにどこからでも逃げ出すことが出来る。 背後を警戒しつつ、男達は銃を構えた。 構えた先にいたのはクラウドではない。 地面で苦しんでいる…、あるいは失神している仲間達。 口封じだ。 「おい、仲間をなんだと思ってる」 「「 ! 」」 トリガーを引こうとしたその刹那。 男達は悲鳴を上げる暇もなく、クラウドからの攻撃を喰らって横様に吹っ飛んだ。 男の一人の脇腹を強かに蹴りつけたのだ。 蹴り飛ばされた男は、並んで疾走していた仲間にもろにぶつかり、もんどりうって中途半端に出来かけている壁へと衝突する。 低く呻きながら、男がヨロヨロと立ち上がった。 脇腹を蹴り飛ばされた男が覆いかぶさるようにして失神している。 忌々しそうにその最後の仲間を床に転がすと、腰へ手を回した。 クラウドの瞳が冷たく光る。 男の手にはオーソドックスな『バタフライナイフ』が握られていた。 よく磨きこんでいるのだろう、陽光をギラリ…と反射させる。 男は無駄なしゃべりは一切しなかった。 気合の類も全くなく、クラウドの目を真っ直ぐ睨みながら一気に間合いに踏み込んできた。 クラウドは身体を逸らしてその攻撃を避ける。 避けながら、ナイフを突き出したために伸びきっている腕を掴み上げようとした。 だが、ナイフを握っていない方の手で阻まれ、横様に切りつけられそうになって後方へ軽くジャンプする。 男は引き寄せられるように前進し、再度ナイフを繰り出した。 それを今度は足で蹴り上げ、武器を奪おうとする。 失敗。 男はクラウドの攻撃を読んでいたかのようにサッと腕を引っ込めると、逆にクラウドの足首を掴み上げた。 「チッ」 クラウドは小さく舌打ちをした。 男が足首を掴んだ手に力を込め、思い切り振り回す。 いや、振り回そうとした。 その直前にクラウドは思い切り両手で地面を押し上げ、掴まれていない方の足で男の顎を蹴り上げた。 男の手がクラウドの足首を離す。 同時に、クラウドは華麗に後方宙返りをしながら、蹴り飛ばした男の真上まで跳躍した。 男の黄色く濁った目が、痛みと驚愕に見開かれる。 その目に、クラウドの冷たい魔晄の瞳が一杯に映った。 「寝てろ」 それが、男の聞いた最初で最後のクラウドの声だった。 * 「クラウド、怒ってるわけじゃないのよ?ただ、どうしてこんなに時間がかかったのかって聞いてるだけなの…」 困ったように首を傾けて顔を覗き込んでくるティファに、クラウドは目を逸らしたまま、 「……本当に……悪かった……」 先ほどからの台詞を繰り返した。 デンゼルとマリンの溜め息が聞えて、思わず首を竦める。 クラウドが買い物に出掛けたのはまだ太陽が真上にも来ていない時間だった。 それなのに。 帰宅した今、太陽は空に鮮やかなオレンジ色を放ちながら、まさにその役目を終えて沈もうとしている。 テーブルの上には、家族と一緒に食べるはずだった昼食がすっかり冷め切った状態でチン…と寂しそうに置かれていた。 いつもなら大人顔負けの寛大さで許してくれる子供達も、今日だけは違った。 「俺達、何度も電話したのにさぁ…」 「そうだよ。八百屋のおじさんに携帯預けてどっかに行っちゃうし!」 「俺達、どんだけ心配したのか分かってんのかよ!」 「もう、なにかあったんでしょう?教えてくれても良いじゃない!」 きつく眉根を寄せて怒る子供達を前に、クラウドはグーの音も出ない。 本当は全てを打ち明けたかった。 だが、ティファには話せても、まだ幼い子供達には話せない内容なのだ…、今回の事件は。 だから。 「本当に悪かった…」 肩を落として項垂れるだけしか出来ない。 何か適当なことを言って、形だけでも納得させてやれたら良いだろうに、残念ながらクラウドにそれは出来ない。 滅法強いくせに、話術という人間の素晴らしい特技を彼はほとんど育てずに今日まで来ている。 だから、何か適当に…と思っても、何を適当に話したら良いのかさっぱり分からない。 特に、今日みたいに前々からとても楽しみにしていた特別な日をダメにされたことによる子供達の怒りと、自身が感じている落胆により、更にその『短所』が浮き彫りになっている状態だった。 「もう良い!」 「クラウドのバカ!」 止める間もなく、子供達は捨て台詞を吐いて二階の子供部屋へと駆け上がってしまった…。 深い溜め息を吐きながら、ソファーにどっかりと座り込んだクラウドに、ティファは眉尻を下げながら二階を見上げた。 次いで、ソファーで心なしか小さくなっているクラウドを見る。 と…。 その茶色の瞳がクラウドの首筋で止まった。 「クラウド……それ…」 「え…?」 そっと手を伸ばす。 触れた指先に、チリッ!とした軽い痛みが走った。 「あ…」 先ほどまでなにも気づかなかったが、格闘の最中にいつの間にか傷を負ったらしい。 まぁ、傷と言ってもかすり傷なのだが…。 「…誰と戦ったの?」 そっと横に座って頬に触れたティファにクラウドは軽く目を見開いた。 ティファは片眉を上げ、わざと呆れたような顔をした。 「バレてないとでも思ったの?なにか事件に巻き込まれたか…、それとも『何かを見つけて』事前に防いだか…どっちかでしょう?」 優しく頬を撫でながら可笑しそうにそう言ったティファに、クラウドは困ったように笑った。 「全く…ティファはなんでもお見通しだな…」 「ふふ、そうでしょ?」 笑いながらクラウドの髪を梳く。 まるで、叱られて泣きべそをかいている子供をあやすように…。 クラウドは目を閉じて大きく息を吐き出した。 そのままティファの肩に額を乗せる。 「市場に最近出来た駄菓子屋があっただろ…?」 「うん」 「あの駄菓子屋、子供専門の闇市だった…」 ティファは息を止めた。 ショックで目を見開く。 クラウドはティファから数センチ離れると、その目を真っ直ぐ見つめた。 「デンゼルとマリンがすごく喜んでたから…、だからどんな店かな…って思ってさ。お使いの後で覗いてみたんだ」 店に一足入ってすぐに『違和感』に気づいた。 店を営んでいるという中年の男は、お菓子を前に目を輝かしている子供達へ柔和な笑みを浮かべていた。 だが。 それがまがいものであるとすぐに気づいた。 長年培ってきた『戦士としての勘』。 クラウドは、中年の男に気づかれないよう、店の中へ視線を走らせ…見つけた。 お菓子を陳列している店員の男が、さり気なく子供達へ『何か』を渡しているのを。 一見、『お菓子のおまけ』に見える『それ』は、間違いなく発信機だった。 エッジに闇組織が増殖している、とリーブから報告を受けた際、チラリ、と見せられたものと酷似していた。 お菓子のキャラクターバッジを嬉しそうに胸につける子供達へ笑いかけた店員の笑顔は毒々しく、クラウドの全身を一気に怒りが駆け巡った。 そうして、クラウドは八百屋に戻り、買った物を一時預かってもらったのだ…。 その買い物の袋の中に、うっかり携帯まで紛れていたのは、財布と一緒にポケットのものをその袋の中に慌てて入れたから。 尾行する際、小銭がジャラジャラ鳴ってはすぐにばれてしまう。 だからポケットの中を空にしたのだ。 「そう…、そうだったの…クラウド」 「でも、だからと言って今日一日を無駄にした言い訳にはならないよな…」 情けなさそうに笑うクラウドに、ティファはゆっくり頭を振った。 「クラウドが気づいてくれなかったら、犠牲になっていた子供達は増えていたはずよ。それに、その犠牲の中にデンゼルとマリンが入っていたかもしれない」 言って、ティファはブルッ…と身を震わせた。 想像してゾッとしたのだろう。 「でも、クラウドが今日、その事に気付いてくれたから、警察とWROが協力して組織を追うことが出来てるんでしょう?」 「……」 「ね、だったら良いじゃない?むしろ、私は……」 言葉を切って、両手でそっとクラウドの頬を挟む。 紺碧の瞳が躊躇いがちに揺れている。 ティファは微笑んだ。 「そんなクラウドをとても誇りに思うわ…。心から」 ティファの言葉に、ほんのりと頬を赤らめながらクラウドもぎこちなく微笑んだ。 「……うん」 軽く頷きながら『ありがとう』も言えず、ただ『うん』とだけ口にしたクラウドに、ティファは笑みを深くしながらそっとキスを贈った。 結局。 子供達は夕飯まで降りてこなかった。 しかし、クラウドが申し訳なさそうに夕飯が出来上がったことを伝えに来たことで、怒りは収まったらしい。 クラウドが自分達に話さないのは、信じていないからではなくて、『大切に思ってくれている』からだと分かってるから…。 「もう、今度はちゃんとゆっくり過ごすんだぞ!?」 「本当よ。今度は皆で買い物に行こうよ、そうしたら何かあっても今日みたいに無駄な心配しなくて済むもん」 わざと唇を尖らせた2人に、クラウドは苦笑しながらもう一度謝った。 その最後の謝罪の言葉に、ニッコリ笑った子供達は、クラウドに両手を上げて『抱っこ』をせがむ。 片腕ずつで子供達を抱き上げたクラウドは、腕の中の重みと温もりが無事であったことを心から感謝した。 その日の夕飯は、特に美味しかった。 後日。 デンゼルとマリンは、お気に入りだった駄菓子屋が潰れてしまったことを友達から聞いた。 帰宅してガッカリしながら話した2人に、ティファはたいそう複雑な顔をしながら、 「また別のお菓子屋さんが出来るわよ」 そう言って慰めた。 更に後日、エッジの機関紙では大々的に『子供の拉致、売買組織壊滅』についての記事が載った。 街は大変な騒ぎとなった。 そんな騒ぎの中、主犯とされている男の最後の言葉に街の人達は首を傾げた。 ― 『アイスブルーの目、これ以上に恐ろしいものを感じたことはない』 ― 真相を知っているティファは、その一言にクスッと笑みをこぼした。 今日も復興の街、エッジには子供達の元気な笑い声が響いている。 あとがき クラウドをカッコよく書こう、第二弾。(← 爆笑) はい、ダメでした…(おおう…)。 やっぱり戦闘シーン以外はダメ…。 なんで!? やっぱりACの頃の影響が…(((゜□゜;)))(いつまで引きずってるんだろう…私) はい、ありきたりネタでごめんなさい。 お暇つぶしになれば嬉しいです(^^;) |