alcool




先ほどから、左斜め後ろの席より注がれる絶対零度の眼差しに、男性陣は竦みあがっていた。
 唯一のびのびとしているのは、その原因たる彼女だけ。

 そう、ティファはかなり飲んでいた。

 ここは、この辺りの街では規模の大きい方の宿屋だった。一階の酒場は大衆食堂的な雰囲気で、店の雑踏たるは騒がしいを通り越して、騒々しいくらいだ。隣の人と話をするのにも大声が必要なくらい、ある意味、活気のある店内。皆、陽気に寛いでいる。
 ある一つのテーブルを除いては。

「…ティファさん、もう、そこらでよしといたほうが、いいんとちゃいます??」

 おそるおそる、ケット・シーが言った。
 しかし、

「どおして!? だいじょうぶだよ。まだいけるよー!!」

 普段は止めに入る方の立場なティファが、こうも酔っ払ってしまうと、皆、免疫がない為か、どうしたら良いのか分からない。

「でもなぁ、嬢ちゃん、」

 なんと、シドもまだシラフだった。

「はいっ シドも飲んでー!!」

 ジョッキを勧められて、しかし断れないシド。目線でバレットに助けを求める。

「…ティファ。その辺にしとけよ、な??」

 そう言って、バレットはティファからグラスを取ったが、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とまた取り返されてしまった。
 困り果てたバレットがため息をついていると、レッド13がつんつんとつついた。

「どうした??」

「バレット…あんまり刺激しない方が、良いと思うよオイラ…」

 促されて後ろを振り向く。
 …と、バッチリ目が合ってしまって、真っ青な顔で前を向いたバレットに、ティファ以外、皆つられて青くなった。


((((何でティファ、こっちのテーブルに居るんだよぅぅぅ))))

 全員の心の叫びは一致していた。
そう、このテーブルにはティファ、バレット、シド、レッド13、ケット・シーの5人。
 店が混んでいた為、クラウド、エアリス、ユフィ、ヴィンセント達とは離れて座ったのだ。
 皆、ティファはクラウド達と同じテーブルだと思っていた。
 しかし、何があったかは分からないが、ティファはケット・シーの後ろに隠れてついてきていたのだ。

 そのため、後ろのテーブルから、常に監視の目を向けられることとなる。


 ティファに何があったか聞こうにも、少しでも優しく近づくと、異様なプレーッシャーが背後から圧し掛かるし、挙句、ティファは酒を水のように飲むしで、皆、生きた心地がしなかった。



「あれ?? もうお酒ないよー。すみませーん」

 ティファが声を張り上げる。大きく手を振って、ピョコピョコと身体をのりだした。

「ティファ」

 と、静かな声がした。振っていたティファの手は捕まえられている。

 テーブルの全員の目が、その声の持ち主に一斉に向けられた。
 いつのまにか、クラウドがティファの後ろに立っていた。

「…もう、今日は終わりだよな??」

 テーブルにつく全員を見渡して、有無を言わせぬ彼の声色に、男性陣は立ち上がった。

「あぁ!! そうだな。もう寝るぞっ皆」
(部屋で飲みなおすぜ、ったくよぅ)

「そうだね。オイラもう眠くって」
(早く部屋にもどりたい…)

「ほな、いきますか」
(逃げるが勝ち)

「バレット、エアリスを頼む。あっちで潰れているんだ」

「お、おぅ 分かった。運ぶぜ!!」
(ということは…)


「ティファは俺が連れて行く」


((((よっしゃ!!! 早くこの場から立ち去ろう!!!!))))


 脱兎のごとく逃げ出した男達を、ティファはただぼんやりと見ていた。

 ティファが呼んでしまった店員を、体裁よくあしらうと、クラウドはティファの腕を掴んだまま、彼女の隣に腰を下ろした。

ただ無言で座る。


 目の前を慌しく店員がジョッキを片手に右往左往。
 行き交う人々。
 ぶつかる食器の音。

 ピーク時よりは幾分客は減ったが、まだ十分ざわついている店内。
 ちらほら帰り支度しているグループも見えるが、きっとこの店は夜中まで賑わっているのだろう。
 その中で、お互い違う方に顔を向けて座る二人。


 ティファがグラスの中に残った氷をカランとならした。
 それが合図のように、クラウドが口をひらいた。

「…ティファ、どうして避けるんだ」
「さけてないよ」

「避けてるだろ」
「さけてないってば」

 クラウドはため息をつく。
 酔っているんだろうが、このままじゃ堂々巡りだ。
 原因は自分なのだろうか??
 思い当たる限りで、何かなかったか、とにかく自分の頭の中をひっかきまわした。

「クラウド、どうして怒ってるの??」

 ポツンとティファが言った。アルコールのせいか、少し舌足らずに聞こえるのが、彼女を普段より子供っぽくしていた。

「怒ってないよ」
「嘘!! だって、ご飯食べてる間、こわい顔でみてたもん」
「それは!! …ティファを見てたんじゃない」

 ふーん、とティファは椅子に寄りかかった。
「そうだよね。自意識過剰だった」

「〜〜〜っ。…一体どうしたいんだ、ティファ」

「クラウド、あつい」

 そう言って、ティファは捕まれていた腕を振った。
 クラウドは、あぁ。と言って力を緩めたが、そのまま手を滑らせて、今度は指を絡めた。

 改めて繋がれた手。
 しかし、ティファは振りほどこうとはしなかった。
「…似合ってたよ。」

 突然、クラウドが言った。

「???」
「服。この前買った服、着て見せてくれただろ??」

「…どうしてあの時いってくれなかったの??」

「…皆の前で言えるかよ」
「エアリスには言ったくせに??」
「エアリスは別に普通だろ?? ティファには言えない」
「どうして??」
「顔に出るから」

 ぷぅ、とティファは膨れた。

「あたしの顔があかくなるから?? クラウドに関係ないでしょ」
「…俺が顔に出るって話だ」

 しかし、酔ったティファはイマイチ理解していないらしい。膨れたまんまの顔をしていたが、突如として目がとろんとしだした。

「!? ティファ?? ここで寝るなよ!?」

 慌ててクラウドはティファの前にまわった。彼女の腕を自分の首に絡ませて、抱き上げる。

「ほら、ちゃんとつかまれって」

「………。」

「ティファ!! ………ティファ、重い」

 ピクンと彼女の身体が反応した。

「どうせ私はエアリスと違って、背もでかいし、筋肉質でおもいですよーだ。下ろしてっ。歩ける」

「…どうしてそこでエアリスが出てくるんだ??」

 ため息交じりに言ったクラウド。しかし、彼はティファを下ろさなかった。



 一旦フロントに行って、何やら交渉をするクラウドに抱かれたまま、ティファは大人しくしていた。

 彼は鍵を受け取り、歩き出す。

「…クラウド、こっちじゃないよ」
「知ってる」

 なんとなく、夕方に手配した部屋とは逆方向だと、ティファは分かったが、そんなことは、もうどうでも良かった。
 なんだか身体がフワフワして、暖かい。
 クラウドの首筋に顔を埋め、彼の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、とても幸せな気持ちになった。



 個室の部屋に入り、クラウドが扉を閉めた時、ティファはきゅうっとクラウドにしがみついた。
「…着いたぞ、ティファ」
「クラウド…」
「ん??」

「…甘えたかった、の…」

 消え入るくらいの彼女の小さな声に、クラウドは自分が耳まで赤くなったのを自覚した。

「ティファ…。

 ………ティファ??」

 しかし、返ってきたのは彼女の安らかな寝息。
 愕然とするクラウド。

「…ここまで言っておいて、、、嘘だろ。。。」


******************************


「ティファって、クラウドの事気がついてないのかな…??」

 もう眠っていたのかと思われていたレッド13が、ぼそっと言った。

「何をだ??」
「まぁな、そうだろうな」

 不思議そうに顔を上げたバレットと、同時に、赤ら顔のシドが饒舌に話し出した。
 回りには酒瓶が何本も転がっている。

「女ってやつは、いろいろと関連付けたがるからな。あの時はこうだった、とか、過去の事まで持ち出してよ。男なんて、そん時の勢いってもんもあるのに、だ。…本当に大切にしてるかなんて、日頃からじっくり見てりゃ分かるもんなのにな。
 …ま、そこは男と女の考え方の違いってヤツだ」

「シドが語る、か」
 突然、ヴィンセントが相槌をうった。

「うっせい。酔ってるんでぃ」
 シドの顔が赤いのはアルコールのせいだけではなさそうだ。

 レッドは目をまんまるにしている。
(知らなかった…。4本足もそうなのかな??)

「だから、何の話だ??」
 しかし、バレットの問いに答える者は、誰も居なかった。
 部屋の隅に置かれた機械仕掛けの縫ぐるみに、一瞬、電源が入ったようだったが、思い直したかのようにまた待機モードになったことに、気がつく者も居なかった。


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「ま、ぶし…」

 開けっ放しのカーテンから燦々と、朝特有の白い太陽の光が降り注いでいた。
 刺すようなその光に、ティファは顔を背ける。と、途端に視界に入ったのは、色素の薄い端正な顔。

「!!!」

 ギョっとして、ティファは身を反らした。しかし、回されていた腕に、容易に捕らえられる。
 そのまま暫く身体が固まったが、どうやらクラウドはまだ夢の中のようだった。

 そうっと彼の腕の中から逃げ出す。

 着の身着のまま、簡単にまとめてあった荷物を見つけ、外されていたブレイシーズを肩にかけなおした時、後ろから声がかかった。

「…ティファ?? 起きたのか??」

「…う、うん ごめんね?? 皆が起きだす前に部屋に戻るね。
 あ、あと、有難う。クラウド、きっと運んでくれたんだよね?? 私、昨日の記憶なくって…。」

「…全然??」

「…う゛。…うん。ジョッキ5杯目ぐらいまではなんとか…。。。」

 うな垂れるティファ。
 しかし、ティファ以上にショックを受けていたのはクラウドだった。

「俺と話した事も??」

「…??? クラウドとテーブル違かったよね??」

 もうクラウドは言葉が出てこなかった。

「………寝る」
「う、うん。本当にゴメンね。じゃ」

 足早に部屋を出て行ってしまった、いつものティファ。
 クラウドは一人、まだぬくもりの残るシーツの中で、昨日のティファに想いを馳せた。

(わがままなティファ、可愛いかったんだけどな…)


 恨めしいくらいの清々しい朝日。
 昨日の事は、自分の胸に留めておこう。
 そうクラウドは思った。



―…fin.



あとがき

か〜わ〜ゆ〜い〜〜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+(← 変態出現)

なぁんて可愛いクラティですか〜!!てか、ティファが可愛い〜!!ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃
そして、お預け状態のクラウドに合掌!O(-人-)O
うん、仕方ないよ、ティファだもん、許してあげないとね〜♪
きっとそのうち、いいことしてくれるよ、ティファだったら(殴!!)ヽ(*・ω・)┌┛)゚ロ゚)ゲシッ!ゥハ。

はい、ごめんなさい調子こきました。
にしても、本編でこういうシーンがあったら良かったのに〜+:。(´ω`*)゚.+:。ポッ
本編ってほんっとうにこう、妄想が働きますよね!
旅の途中で仲間たちに隠れて行われる情ジ(蹴!)

はい、どうもアカン。
頭の中が妄想爆裂モードに突入してしまいました。
それも全部、`fさんの素敵過ぎるお話しのせいでsu(← はい、自重します!!)

本当に本当に`fさん、このたびは10万ヒットおめでとうございます♪
そして、素敵なお話しをありがとうございました!!
遅ればせながら、この場をお借りしてお祝いと御礼をば〜☆

`fさんの素敵小説はこちらからどうぞ〜vv