「…久しぶりだな」

 誰もいない教会で、クラウドはあたかも目の前に親友がいるかのように呟いた。






生きた証








 カダージュたちの戦いにより、壊れた教会はそのままなのだが荒涼とした雰囲気は微塵もなく、静かで清涼な空気が一杯に満ちていた。
 ここだけ、時が止まったように感じられる。
 クラウドはゆっくりと足を運んだ。
 ギシッ…ギシッ…と、クラウドの靴の下から床の軋む音が足音と混ざって静まり返った教会内に響く。
 クラウドの手には、一本の酒瓶。
 中身はティファ特製のカクテルだ。
 エアリスとザックスがライフストリームで再会し、今は幸せなことを祝って…と、ティファが心をこめて作ったオリジナルカクテル。
 それを、持参したワイングラスに注ぐ。
「悪いな、本当はもっと洒落たグラスが良かったんだけど、もしかしたらここに来る前に壊れるようなことがあったら大変だからさ。結構値がするんだ、他のグラス」

 そう言いながら、クラウドは2つのワイングラスにビンの中身を注いだ。
 スパークリングのカクテルなので、ワイングラスでも十分通用するだろう。
 小さな気泡がグラスを彩り、クラウドはそれをそっと教会に突き立てたバスターソードの傍に置いた。
 ゆっくりとその傍に腰を下ろすと自分のグラスにもカクテルを注ぎ、地面に置いた2つのグラスにカチン…、と軽くあわせる。

「ここに来るまで、こんなに時間がかかってしまってすまない」

 そう言って一口口に運ぶ。
 ゆっくりと喉を甘い口当たりのアルコールが流れていく。
 なんとも言いようのない、心がホッと温かくなる…、そんな気持ちが溢れてきた。

「本当は…もっと早くこうして2人にお礼を言いたかったんだけどな…」

 ゆっくりと教会を見渡す。
 地面には黄色と白の花が可憐に揺れていた。
 エアリスが愛した花。
 大切に育てた花。
 ザックスとクラウドが初めて出会った生きた花。
 ここには、エアリスの愛がいっぱいに詰まっていて、しっかりと息づいている。
 クラウドは知らず、微笑んでいた。
 傍らに親友2人が腰掛けている気配を感じる。

「ザックス…、エアリス、本当にありがとう。あんた達のお陰で俺は家に戻れたし、今、本当に幸せだ」

 グラスを見つめながら心からの感謝を口にする。
 とてもじゃないが、もしも本人が目の前にいたら口に出来ない心からの本音。
 本気の感謝。
 それを口にして、やはりクラウドはちょっと恥ずかしくなった。
 グラスから少し目を逸らせる。
 逸らせた先にあった白と黄色の花に暫し見惚れた。
 何の変哲もない花だ。
 ブランド名があるわけでもない花。
 だが、この花はクラウドやジェノバ戦役の英雄たちにとって特別な花。
 世界中を探せばきっと同じ花はあるだろう。
 だが、『ここ』にあるからこそ、特別な花、意味ある花だ。

 エアリスが愛した……花。

 その花を見つめていると、ふいに心の奥底へ押し込めていた小さな不安が頭をもたげた。

「なぁ……俺は…少しは成長出来たと思うか?」

 確かに自分は前向きになれた。
 だが、もっともっと、大きく成長しないといけないと思っている。
 自分を生かすために星に還ってしまったザックスのためにも、星を愛するが故にその身を捧げたエアリスのためにも…。

 風がそっと頬を撫でた。
 温かな風だった。
 それは、まるでエアリスの手の温もりのようだった。

「ティファも本当は来たがってたんだと思うんだけどな。いつもみたいに俺に気を使って遠慮してくれたんだ」
 フッと笑ってその時のティファを思い出す。
 カクテルを作りながら、エアリスとザックスの思い出を話していた彼女の姿を…。

『エアリス、きっと喜んでくれると思うの。今作ってるこれね、コスモキャニオンで一緒に飲んだものを思い出しながら、試行錯誤した力作だもん。でも、ザックスはどうかなぁ…。ザックスとはあまり長い時間を一緒に過ごせてなかったから、ザックスの好みのお酒がいまいち分からないのよね。クラウドは知ってる?』

 楽しそうに作っているくせに、どこか寂しそうな雰囲気を漂わせていたティファ。
 それでも、寂しそうな雰囲気に混じって、やっぱり『懐かしい』という思いを感じさせてくれたティファ。

「俺は…本当に幸せだと思う。こんなに恵まれた奴はそうはいない…よな…」

 もう一口、グラスを口に運ぶ。
 少し強い風が髪をそよがせた。
 ザックスがクシャリ、と髪を撫でたような気がした。
 クラウドはクスッと笑った。
 笑って、傍らの花に手を伸ばした。
 花びらをいとおしむように指先で撫でる。

 花の香気。
 グラスから漂う、ティファの心。
 その2つを胸に吸い込みながら至福を感じながら、心のどこかで寂しさをも感じていた。
 こうして、姿なき友に語りかけるのではなく、直接触れて、声を聞いて、笑い合って…。
 そうやって、その存在を耳と目で感じたかったと思わずにはいられない。
 だが…。

「その願いは…叶わないんだよな…」

 ポツリと呟いたその言葉が、思った以上に寂しく聞こえてクラウドは表情を崩すことはなかったものの正直ドキッとした。
 そして、誰もいないのにいつものクセでポーカーフェイスをキープしたのが可笑しくてつい笑った。

「俺は…相変わらず変化なし…ってところかな」

 サヤサヤと、花々が揺れる。
 穏やかな陽の光の下で、芳しい芳香をゆるやかに風に乗せる。
 とても荒廃したミッドガルの中とは思えない清浄な空気。
 どこまでもゆったりとした時間が流れるこの教会は、クラウドにとって安息の場所。
 ティファにとっても…、仲間たちにとっても。

「もしかして、俺以外にも誰か1人で来ることがあるのか?」

 問うてみるが応える者はない。
 しかし、クラウドはなんとなく仲間たちのうち1人くらいは単身、訪れたことがあるのではないか…と思った。
 心が疲れたとき、ここに来ると癒される。

「誰が来たんだ?」

 バスターソードの傍に置いたグラスを見つめながら微笑んでみる。
 ユフィあたりは来ていそうだ。
 あれはあれなりに繊細なようだし、なによりあれでも女だからたまに花でも見に来たい気分になることがあるだろう。
 それにナナキ。
 ナナキこそ繊細だし、世界中を旅して疲れることもあるだろうから、癒しを求めてふらりと立ち寄ったことがあるように思える。
 それと、ティファ。
 ティファは絶対に1人で来たことがあるはずだ。
 今日、ここに来ると告げた時も『一緒に行く』とは言わなかった。
 まぁ、クラウドも『一緒に行くか?』と聞かなかったのだが…。

「ティファは…気を使いすぎるからな。おおかた、俺が1人でここに来て、何かグチグチと愚痴をこぼせるように、って思ってくれたんだろう」

 風が、『その通り』と言わんばかりに髪を少し強く撫でた。
 目を細めてその風をやり過ごす。

「ティファは…何回くらいここに来た?」

 そよ…、と風が優しく花を揺らす。
 まるで、『さぁ、当ててみて?』と言っているようだ。

「何回か来てるだろうに、ティファ言ってくれないんだ。相変わらず、気を使いすぎる。どうしたもんかな…」
『さぁ、それこそクラウドが考えてあげなくちゃダメなんじゃない?』
「そうなんだろうけど、これがかなり難しい」
『おいおい、なに弱気発言してるんだよ。ここで根性見せなきゃ男じゃないぞ?』
「簡単に言うけど、俺にとってはかなりハードルが高い問題なんだよ」
『まったく…、本当に心配ねぇ』
「まったくな…」
『他人事みたいに言うなよ、お前のことだろ?』
「まぁな」
『大丈夫かよ…。まったくコイツったら…。エアリス、どうする?』
『どうするって言われてもねぇ。簡単にお説教とか指導が出来る状況にないしね〜』
『はぁ。お前は本当に困ったちゃんだな。お前は俺の生きた証なんだぞ?この俺の!それなのに、そんな弱々でどうすんだよ、カッコ悪いじゃねぇか』
『ザックス、論点がズレてるわ。ザックスの評価がカッコイイとかはどうでも良いんだけど、ティファが不幸になるかもしれないってところは容認出来ないわね』
『うぉ〜い!俺のことはどうでも良いのか!?ちょっと薄情すぎやしないか!?』
『お黙りザックス。私達は星に還って穏やかな時間を約束されてるの。でも、ティファはこれからまだまだ頑張って山あり谷ありの人生を生きていかなくちゃダメなのよ!?それなのに、パートナーがこんなんじゃあ、ティファは近い将来、不幸になっちゃうじゃない!』
『おいおい、ティファはそんなヤワじゃないだろ?仮に、クラウドがへなちょこでもティファならなんとかしてくれるって』
『ダメよ!もうそろそろ『頑張って働いて尽くす女』から、『パートナーを大切に守りながら、そして大切に守られながら一緒に幸せを掴み取れる女』になってもらいたいんだから!』
『う…。まぁそうかもしれないけど…。じゃなくて!いいかクラウド。俺達はご覧の通り、お前がしっかりしてくれないと約束されているはずの穏やかな時間を星の中で過ごせないんだぞ?この重大問題をどう考えてるんだ!?』
『ハッ!そうよ、その通りだわ。クラウド、自分を許すことには成功したんだから、後は過去をバネにして前進あるのみよ!そしたら絶対にティファは幸せになれる!』

「…ハハハ、2人とも相変わらずだな」
『『笑い事じゃなーい!!』』

 相変わらず、クラウドは教会に1人きり。
 周りに誰もいない。
 だけど、いつしか2人の声が本当に聞こえる気がしていた。
 目の前で、渋面面をしながらも楽しそうに漫才をしている…そんな幸せな姿が見えるようだ。

(本当に俺は…幸せ者だ…)

 自分勝手な妄想だと思われても構わない。
 今、ここに2人はいてくれて、変わらぬ愛情を向けてくれていると確信している。
 いつまでも見守ってくれている…。

「俺は…もっと頑張らないとな」

 残っていたカクテルをグッと飲み干し、天井を見上げるように両手を地につけた。
 壊れた天井の隙間から惜しみなく陽の光が注いでいる。
 なんとなく、頑張ったら頑張った分だけ形になってくれそうな、そんな気がした。

 クラウドはゆっくりと立ち上がった。
 地面に置いた2つのグラスを見下ろして笑みを浮かべる。

「また来る。その時までゆっくり飲んでくれ」

 ゆったりとした仕草でバスターソードに背を向けた。

『クラウド、飲酒運転よ』
『お前…もう少しここで酔いをさましてから帰った方が良いんじゃないか?』

 心配そうな親友の声が聞こえてクラウドはフッと息を洩らして笑った。

「ご心配なく。この程度でじゃ酔わないし事故も起こさない」
『事故を起こした人はみんな、そんなこと言うのよ!』
『お前ね、もう少し周りの人間の気持ちになれよ…』

 親友の呆れた姿が目に浮かぶ。
 クラウドはザックスを感じながら口元に意地悪っぽい笑みを模った。

「俺達はジェノバ細胞のお陰で人一倍、酔いにくい。そうだろ?」
『う……そう……だったかも…』
『ザーーックス!!このバカ!!!認めてどうするのよ!!』
『イタタタタ、仕方ないだろう、本当のことなんだし、バレバレなウソついても仕方ない…ってイタタタタタ!』
『バカバカザックス、大バカ者ー!』

 ポカスカとエアリスがザックスを殴っている光景が目に浮かぶ。
 クラウドはその幻影を惜しむようにゆっくりと背を向け、教会のドアに向かった。

「今度はちゃんとティファやデンゼル、マリンと一緒に来る。その時、また色々話をしてやってくれ」

 壊れかけている教会のドアを慎重に押し開けながらそう言い残し、クラウドは心の中で明るく元気な友人へひとときの別れを告げた…。


 *


 穏やかな流れの中、深緑の瞳を思案気に揺らめかせながらエアリスは溜め息をついた。
「ねぇ、本当に大丈夫かしら…」
「ま、大丈夫じゃねぇの?あれなりに成長してるみたいだし」
「そうかしら…。確かに『あのとき』はもう大丈夫だと思ったんだけど…」
「まぁなあ。星痕症候群が折角治って、家族のところに戻れたときは『これでもう心配なし』って思ったもんだけど…。でもさ。アイツもいい歳だし、大丈夫だって……多分」
 傍らに立つザックスは、困ったような苦笑のような笑みを浮かべている。
 エアリスに負けず劣らず心配そうだが、言葉では彼女に反対するかのような台詞を言ってのけた。

 …かなり不安ではあるが…。

「クラウド、もう1人じゃないって分かってくれてるみたいだけど、それが『=(イコール)自分も幸せになっていい』ってなってないみたいじゃない?本当にもう…分かってないんだから…」

 ほとほと困りきったように溜め息をつくエアリスに、ザックスは内心大いに賛成だった。
 だが、コレまでにも星の緩やかな流れの中でひたすら『大丈夫、アイツはやれる奴だ』と言ってきた手前、俺も心配だ…とは真っ向から言えず、口をモゴモゴさせるに止まる…。
 エアリスの言うことは至極ごもっとも。
 クラウドは自分が幸せになることにかなり消極的だ。
 ティファといい勝負だろう…。

「ティファもクラウドも幸せになって欲しいのに…」

 微笑にちょっぴり悲しみを織り交ぜたエアリスの表情に、ザックスは魂を鷲づかみにされた。

 確かにその通りだ…と思う。
 クラウドもティファも、自分のことは二の次で周りの人達を最優先に考える。
 その対象となっているのは現時点ではデンゼルとマリンなのだが、将来2人が成長して大人になり、独立したとき、クラウドとティファは果たして『2人だけ』の幸せな時間を作り出すことが出来るだろうか?

(か、かなり怪しい…)

 ザックスもエアリスも、子を持つ前に若くしてその人生を終えたというのに、なんだか大きな子供を持った気分だ。
 せめて『兄』でいたかった…と一瞬、思考がわき道にそれる…。

 しかし…。
 たった今、フェンリルのエンジンを噴かせて教会を去ったクラウドの姿を思い出す。
 少しだけ広くなった背中。
 ゆったりとして前を見られるようになった瞳。
 1人、この教会に逃げ込んだ頃とは雲泥の差。

「ま、なるようになるさ。あいつならなんとかギリギリセーフラインを保ってくれるって」
「ギリギリセーフラインだけなわけ〜…?」

 エアリスは不満げにザックスを見上げた。
 ザックスは先ほどまで同じように不安そうだった表情を引っ込め、いつもの陽気な青年になっている。
 エアリスの怪訝そうな顔を見てツ…と手を伸ばす。

「大丈夫、大丈夫。人生山あり谷あり。順風満帆なだけの人生じゃあ、あいつにもティファにも味気ない」

 愛しい人の頬を指先だけで撫でる。
 深緑の瞳が戸惑ったように…、それでいて甘やかに揺れる。
 ザックスは微笑んだ。
 クラウドが先ほど見せてくれたゆったりとした微笑みを思い出して、ザックスは自身の笑みが深くなるのを感じた。

「確かにまだまだだけど、大丈夫だろ。自分も幸せになって良いってちゃんと分かってるさ」

 そっとエアリスを抱き寄せる。
 身体はないが魂同士の存在ゆえ、ちゃんと柔らかさ、温もり、香りを感じられる。
 本当なら生きているときにもっともっと、したかったことだ…。
 突っぱねることもなく、エアリスは素直にザックスの腕に身をゆだねた。
 頬をピットリと胸にくっつけると、ザックスの喉のくぼみに丁度頭が納まる。

「星痕症候群が治った子供たちに囲まれてたときも良い顔してたけど、さっきの顔も中々だっただろ?」

 心配で仕方なかったのは、やはり『親心』『兄心』『姉心』からだ。
 親友として、仲間としても心配になるのだろうが、それ以上の感情をクラウドとティファに持っている。
 だからこそ、時折この教会を訪れるユフィやナナキ、リーブのことはクラウドとティファ以上に心配せずに済んでいるのだろうから…。

「見守ってやるしか出来ないけど、たまにはこうして弱音を吐きに来られる場所を俺達が守ってやってたらそれだけで十分さ、あの2人は」
「……うん、そうだね」

 ザックスの温もりに包まれたからだろうか、それとも本当に大丈夫だという言葉を噛み締めているのだろうか。
 エアリスはもう不満そうな声はしていなかった。
 2人して抱き合いながら微笑みを交わし、教会のドアを見やった。
 きっと、今頃はエッジの入り口に到着している頃だろう。
 クラウドのスピード狂は今に始まったことではない。

「あ〜あ、それにしても俺もフェンリルみたいなカッコ良いバイクに乗ってみたかった」
「ふふ、きっと似合ってたと思うわ」
「だろだろ!?俺もそう思うんだよなぁ。そんでもって、エアリスを後ろに乗っけて世界を走ってみたかった。そしたら、飛空挺で空を駆けるよりも世界を感じられただろうに…、残念だ」
「私もちょっと残念ね。でも…良いの。これで良いの」

 腕を回して愛しい人の背中へ手を添える。
 ちゃんとそれに応えて腕に力を込めてくれたザックスにエアリスは満足そうに微笑んだ。

「お褒めに預かり身に余る光栄」
「許してつかわす、存分に甘えるが良い」

 おどけた口調で言葉を交わし、2人は声を上げて笑った。

「ザックスの『生きた証』も中々のものよ」
「だろ?何しろ、俺様の『生きた証』だからな。これからもどんどん成長してくれるさ」
「楽しみね」
「あぁ」

 きっとクラウドは心も軽くなって店のドアを開けるだろう。
 クラウドのすっきりした顔を見て、ティファも喜ぶはずだ。
 今はまだ、『その程度!?』と周りから言われるような小さな幸せで良い。
 少しずつ積み上げて、いつの日か大きな幸せになってくれたら…。
 大きな幸せを自ら掴み取っていく気持ちになってくれるのも、そう遠い将来のことではないかもしれない。

 教会の天井から差し込む陽の光は実体を持たない2人をすり抜けて地面に落ちるはずなのに、今、2人はこの世界で誰よりも幸せな光を身にまとって輝いていた。
 儀式のように唇を合わせ、微笑み合って手を繋ぐ。

「じゃあ、ティファの心を頂戴しますか」
「そうね。ティファの料理ってほんっとうに美味しいのよねぇ。ザックスは食べたことないでしょ?勿体無いことしたわね」
「本当に残念だ。今度クラウドの夢の中で『ティファのカクテルと手料理!』って言っておかないとな」

 クスクス笑いながら地面に置かれているグラスに手を伸ばす。
 手に取った後、地面には変わらずグラスが残されていたが、2人の手にもちゃんとカクテルの入ったグラスが握られていた。

「じゃあ…」
「乾杯!」

 チン。
 軽くグラスを合わせ、口をつける。
 その美味しさに感動した2人が目を丸くして破顔して…。

 そうして穏やかな陽の光と風に溶け込むようにして2人は消えた。
 次に現れるとき、きっと2人の前にはザックスの『生きた証』が大切な家族を連れて幸せに微笑んでいるだろう。
 その日まであとちょっと。

 地面に残された『空のグラス』が、陽の光を受けて輝いていた…。




 あとがき

 ザクエアって話をまともに書いたことがないなぁ…と思ったのが始まりだったはずのこのお話し。
 クラティと違い、別の意味で恥ずかしくなるのは何ででしょう(苦笑)。
 しかも、なんかザクエアって言うよりもクラウドの保護者2人…って話しになったしなぁ。
 次はガッツリとしたザクエアを書いてみたいです!('◇')ゞ