透けるような青空がオレンジと紫の絵の具を溶かし込んだように変色し、太陽が遥か地平線に沈んでいく。 その雄大な光景に暫し見惚れ、仕事の疲れを忘れさせた。 「…見せてやりたいな…」 そう呟きながら、クラウドは愛車のエンジンをもう一度噴かせた。 いつでも…。その日。 クラウド・ストライフはいつものように配達の仕事で走り回っていた。 星痕症候群が治り、家に戻ってから随分経つ。 家出をしている間も仕事はこなしていたが、こんな充実感は無かったように思う。 あの頃、一体何を考えながら仕事をしていたのか、もうクラウドは思い出すことが出来ない。 何もかもが殺伐としていた。 自分の中で、確かな『コレ』といったものが無く、ただただ、依頼が来るからそれをこなすだけの毎日。 それも、自分の心臓が止まるその時まで食べていくためだけのただの『つなぎ』としてこなしていた。 本当にバカだった…と、気がついたら自嘲している。 それが最近多いことに、クラウドは今の生活がどれほど幸せなのかを噛み締めていた。 本当にバカだった。 クラウドはすっかり陽が落ちた大地を心逸る(はやる)思いで愛車を飛ばした。 こんな風に、仕事が終ってから『帰る場所』へ心飛ばせる日が来るとは…。 クラウドは自嘲とも、微笑ともつかない笑みを浮かべると、ゴーグルを外して器用に胸ポケットにしまいこみながら、アクセルを吹かせた。 無事に帰宅出来たのは、とっくに日付が変わってからだった。 既に閉店しているセブンスヘブンに小さな灯りがついている。 クラウドはそっと愛車を倉庫にしまいながらも、気持はどんどん膨らんでいくのを抑えられずにいた。 『おかえりなさい』 疲れが吹き飛ぶ笑顔が本当に存在するのだと知ったのは…。 やはり家出から帰ってからだった…。 それまでも彼女は笑顔で『おかえり』と言ってくれていたのに。 どうしてその事実にあの頃の自分は気付かなかったのだろう…と、我ながら不思議で仕方なく思っている。 しかし、最近では『気付いていなかった』からこそ、『家出』などバカな行為に走ったのだと納得している自分がいた。 クラウドは後頭部をちょっと掻きながら、そうっと店内に続くドアを押し開けた。 まず最初に無意識に目がいったのは、カウンター。 そこに突っ伏して眠っているティファに気付き、トクン…、と一つ大きく心臓が脈打った。 そっと足音を忍ばせて眠る彼女に近付く。 スー…スー…、と規則正しい寝息。 少し開いている唇。 閉じた瞼を飾っている長い睫。 スーッと通った鼻筋。 漆黒の艶やかな髪。 そのどれもがクラウドの心を魅了する。 そっと手を伸ばして、頬にかかっている髪を耳にかけてやる。 起きない…。 いつもなら、自分がどんなに気配を消しても、彼女は起きてしまうというのに…。 ふと視線をずらすと、カウンターの上に空いたグラスが乗っているのに気がついた。 どうやらクラウドが帰宅するのを待ちながら飲んでいたらしい…。 クラウドは眉間にシワを寄せた。 いつもの彼女なら、クラウドを待ちながら飲むことはない。 『なにか…あったのか…?』 胸中に不安がザーッと広がる。 会いたくて…。 本当に会いたくて、明日の帰宅予定を急遽、無理やりに『今日』に変えた。 本当なら明日帰宅した方がクラウドの健康面や仕事の都合を考えると良いのだが、一目でも良いから会いたかった。 そのせいで、明日、うんと早起きしないといけないとしても、どうしても会いたかった。 こんなに『会いたい』と、あの頃は思っただろうか…? そう自問するくらい、クラウドはティファに会いたかった。 心が渇望してやまなかった。 ― え!?今日、帰って来るの?大丈夫…?無理してない? ― 帰宅を告げた時、ティファはクラウドの心配ばかりを口にして、いつもの『子供達の様子』を話すことを忘れていた。 そのことにクラウドが気付いたのは、電話を切って暫く経ってから…。 ― 気をつけて帰ってね?帰ってきてくれるなら……嬉しい ― 最後の彼女の台詞を何度も頭の中で繰り返していて気がついたのだ。 『嬉しい…って言ってくれてたのに…』 電話を切ってから、なにかあったのかもしれない。 クラウドは、そっとティファの背に腕を回して抱き上げると、器用に店内の明かりを消して寝室へと向かった。 一段、一段を慎重に上る。 腕の中で眠っているティファを起こさないように。 もう既に夢の世界を駆け回っている子供達を起こさないように。 ………バランスを崩して階段を踏み外さないように……。 階段全部を上りきり、寝室のドアを開け、ティファをベッドに横たえた時も、彼女は起きなかった…。 よほど飲んだのか…それとも疲れがたまっているのか…。 クラウドはティファの寝顔を見つめながら、胸に広がる深い不安を抱えたまま暫し座り込んでいた。 たっぷり10分ほども経ってから、ようやくノロノロと起き上がり、装備を外してシャワーを浴びに浴室へ向かう。 寝室のドアを閉める直前、眠っているティファへ視線を投げたが、起きる気配は一向になかった。 それが……クラウドにはとても寂しかった……。 軽くシャワーを…と思っていたのだが、浴槽の蓋から熱気が漏れている事に気付き、そっと蓋をどけると丁度入り頃のお湯がクラウドを待っていた。 ティファが疲れて帰って来るクラウドを思い、熱めにお湯を張ってくれたのだろう。 胸の中の不安が消し飛び、彼女への愛しさで一杯になる。 ティファの好意を無駄にすることなど到底出来ず、疲れた身体を湯に浸した。 それが…悪かったのかもしれない。 ハッと気がついたら溺れかけていた。 驚いて立ち上がると、お湯は温くなっていた。 かれこれ小一時間ほども入っていたようだ。 クラウドはうっかり溺死する寸前だったことに冷や汗を掻きながら、急いで浴槽から脱出した。 そのままの勢いで着替えを済ませ、浴室を後にしようとして…。 ― ほら、クラウド。また髪の毛濡れたまま。いくら身体が丈夫でも風邪引くわよ? ― ティファがいつも困ったように笑いながらたしなめる台詞がポン、と脳裏に浮かんでクラウドは足を止めた。 そして、鏡の中の自分に苦笑しつつドライヤーを手に取る。 「まったく…ティファは心配症なんだからなぁ…」 声に出すことで気恥ずかしさを紛らわす。 ドライヤーの音が眠っている子供達とティファを起こさないように祈りながら、手早くクラウドは髪を乾かした。 だが結局、眠っているティファのことが気になってしまって生乾きの状態で手を止めた。 「ま…、いつもよりマシだよな…」 完全に乾いていない髪の毛を手で整えながら、無理やり納得させる。 足音を殺し、速度は殺さないで寝室に戻ったクラウドを待っていたのは、装備をきちんと戻しているティファだった。 「あ、おかえりクラウド。ごめんね、私、寝ちゃってたよね」 ニッコリと笑うティファには不安に思う影はない。 クラウドはホッとしながら、そっとティファを抱きしめた。 彼女の香りを胸に吸い込みながら、 「ただいま…風呂、ありがとう…」 一言だけのそっけない言葉を口にする。 本当はもっと言いたいことがあるのに、口下手な青年にはこれが精一杯だ。 彼女はそれに対して不満など微塵も感じていない。 「ふふ、どういたしまして。良かった、気付いてくれて」 青年の背にキュッと腕を回して甘えるように頬を摺り寄せる。 そのまま暫し抱き合って……何も言わない。 数日間ぶりの再会。 数日間会えない、なんてことは別に珍しいことでもない。 仕事が立て込んでいると、どうしてもそうなる。 それはちゃんとお互いに理解している。 だが、理解しているから『会えなくても平気』というわけではない。 出来れば、毎日帰りたい。 朝、仕事に行く時はどこぞの宿屋から出るのではなく、『いってらっしゃい』と言われて仕事に行きたい。 『行ってくる』と言って、仕事に行きたい。 彼女と子供達の笑顔を毎日、少しでも良いから見たいと切に願っている。 こんな風に気持が変わる日が来るとは…。 クラウドはそっと身体を離して愛しい人の顔をマジマジと見つめた。 「なぁに、クラウド…?…なんか……恥ずかしいんだけど……」 モジモジと視線を逸らしながら、ほんのりと頬を染めるティファが本当に愛しい…そう強く思う。 「久しぶりだから…つい…」 釣られてクラウドも頬を染めた。 二人揃って顔を赤らめ、視線を逸らす。 くすぐったいような…。 恥ずかしいような…。 それでいて、心がホッコリと温かくなる空気。 これ以上、居心地の良い場所はないと本気でそう思える。 そこまで考え、クラウドは後頭部を掻きながらベッドに移動した。 ティファもその後に続く。 二人してベッドに腰を下ろし、クラウドは膝の上で軽く組んだ手を見ながらティファが話してくれる子供達の様子やセブンスヘブンの常連から聞いた面白い話に時折相槌を打った。 話をしている間、ティファの視線が時々チラチラと自分に向けられるのを感じつつ、クラウドはとうとう最後までティファの顔を見ることが出来なかった。 話を聞いている間に、ティファがカウンターで眠っている様子を思い出したのだ。 忘れていた不安が胸を覆う…。 「……でね……クラウド?聞いてる?」 ティファの問いかけに、クラウドは少しだけビクッとしながら、咄嗟に「聞いてる」とウソをついた。 もっとも、ティファにはバレバレだったようで、彼女の微笑みが少しだけ翳ったことにクラウドは気がついた。 「ごめんね。疲れてるのに長話しちゃって。もう寝ましょう。明日、早いんでしょう?」 あ、明日じゃなくてもう『今日』だね…。 軽く笑いながらそう言ってベッドに潜り込もうと身体を反転させたティファに、クラウドは堪らず、 「なにか…あったのか…?」 「え……?」 「ティファが俺を待たないで飲むことなんか……その……家出から帰った直後くらい…だったから……」 言いにくそうに…だが、最後までクラウドは口にすることが出来た。 前なら絶対に途中で『いや、やっぱり…いい…』と言って、自己完結させてしまっていただろう。 その点を考えると大きな進歩ではないだろうか…? ティファはクラウドの顔をマジマジと見つめ、次いで軽く吹き出した。 クラウドは目を逸らさないで肩を揺すって笑っているティファをジッと見た。 彼女がごまかすために笑っているのではないか…。 本当に『可笑しくて』笑っているのか…。 それを見極めるために……。 「ごめんね、クラウド。なにかあったのかも…って気にして、それでぎこちなかったの?」 「………ああ」 「ふふ……嬉しい…」 素直に頷いたクラウドに、彼女は本当に嬉しそうに……花が咲くような笑顔を見せた。 そして、そのまま甘えるようにクラウドの肩に頭を乗せ、そっとその背に腕を回した。 いつになく甘えた様子のティファに、クラウドの胸から不安が消える。 「えっとね……なにかあったのか…って言われると……」 「…言われると?」 「ん〜…と…ね。あった……って言うべきかも…」 「そうなのか?」 「うん……あった…かな…」 「なにがあったんだ?」 「うん……あのね…」 ― 『ティファさん…、クラウドさんのどこが好き…?』 ― 唐突過ぎるその質問は、ティファの思考を真っ白にした。 ただただビックリして、挑むような目で自分を見てくる女性を見つめ返す。 豊かなブロンドの髪をフワフワとウェーブさせ、パッチリメイクをばっちり施した…若い女性。 服装は…このご時勢を考えると奮発してそろえたものだろう、キャミソールのワンピースも、そこからのぞく綺麗な足も、足元を彩っているビーズが沢山施されたサンダルも、非常に可愛いものばかりだ。 この女性にはとても似合っている。 だが正直、この店にはちょっと不似合いな感じがしないでもない…。 なにしろ、恋人とお洒落にデート…という感じの店ではないのだから…。 「えっと……その……」 「どのくらい好きですか?」 「どのくらい…って…あの…」 「私、貴女に負けないくらい、『彼』を愛しています!」 「へ!?あ、愛って…」 キッパリ、はっきり言い切った女性の台詞に、無責任な客達が一斉に黄色い声を上げた。 子供達は何事か!?と、ギョッとした顔でティファを振り向く。 肝心のティファは、女性に宣戦布告されたというのに、ポカ〜〜ン…と目をまん丸にするばかり…。 だが、キッパリはっきり言い切った直後、彼女はハッと我に返ったような顔をして、 「きゃっ!!ま、間違えた!!違うの、私が言ってるのはクラウドさんじゃなくて『あの人』のことで!いやいや、クラウドさんが魅力がないって言うんじゃなくて、私は『彼』がクラウドさんと比べると魅力的…じゃなくては、ええっと、それで、『彼』はクラウドさんには貴女がいるのに私はクラウドさんが貴女のことをしっかり掴まえてないから私が『彼』にフラれてしまって……あぁぁぁぁあああ!!」 もう…訳が分からない…。 耳や首まで真っ赤にしてオロオロとするその女性に、ティファ達には痛いほど事情が飲み込めた。 彼女は、ティファに心奪われた男性に想いを寄せ、告白してキッパリとフラれたのだろう。 それも、『ティファを想っているからキミとは付き合えない』等々、ティファの名前を出したようだ。 フラれた彼女は、ティファにクラウドのどこが好きかを聞き出し、自分の中でケリを付けたいのか、それともその男にもう一度アタックするのか…。 そこら辺は不可解だが、それでも彼女がこうして今晩セブンスヘブンに来たのは、恋敵をしっかりと見極めるためと言えよう。 ティファは考えた。 考え込むティファを、客と子供達が興味津々で見つめている。 一部の客は、心底面白くなさそうな顔つきで、憂鬱そうにグラスを呷った。 肝心の女性は、真っ赤になってブツブツと何やら口の中で繰り返している。 恐らく余りの恥ずかしさに、今の状況が把握出来ていない…所謂『ショート』してしまったのだろう…。 「クラウドの好きなところ…」 ポツリ…。 口にしてティファはカーッと頬に血が上るのを抑えきれず、思わず両手で頬を押さえた。 その初々しい仕草に、数名の客達が鼻の下を伸ばす。 数名が忌々しそうに自棄酒を呷る。 大半の客達が冷やかすように口笛を吹く。 そんな喧騒の中、ティファは考えた。 沢山の人が自分を見ていることはしっかりと意識している。 本当なら、こんな見世物みたいに皆の前で言うべきことではない…とも思う。 しかし、恐らく決死の覚悟で来たであろうこの女性の事を考えると、無下にあしらうことも…憚られる。 『クラウドの…好きなところ…』 まず、無愛想に引き結ばれた口元が浮かんだ。 近所の人や、常連客が彼に笑いかけ、話しかける時、その口元には滅多に笑みが浮かぶことはない。 しかし、子供達やティファが彼の名を呼ぶと…。 ―『……なんだ?ティファ』 ― 紺碧の瞳は細められ、優しい光を灯す…。 口元には淡い笑み。 金の髪をツンツンに立たせて陽の光の下を歩くその姿は、本当に素敵で…。 ハッ! ティファは自身に注がれる好奇の視線に夢から現実の世界に舞い戻った。 傍にいた常連客が、「お、やっと戻って来たのか〜?」と、からかい半分に声をかける。 ティファはフルフルと軽く頭を振り、取り繕うように笑って見せた。 その笑顔がいつもよりもぎこちなかったのは、気のせいではないだろう…。 「えっとね…。そりゃ、クラウドは無愛想で口下手だけど…」 動揺していた女性は、ティファがクラウドの事を思い出している間に己を取り戻したようだ。 真っ直ぐに…、何かを祈るような目で食い入るようにティファを見つめている。 その眼光の真っ直ぐさにティファは内心でたじろぎながら、そわそわと視線を宙に彷徨わせた。 「あんまり表情が無いから分かりにくいかもしれないけど…、あれで結構繊細だし……、優しいし……」 しどろもどろ、口にする。 女性だけではなく、店内の全員が全身を耳にしてティファの言葉を聞いている。 ティファの緊張がピークに達する。 「あぁ〜…それからぁ……不器用であんまり…その…嬉しいとか…哀しいとか…分かりにくいかもしれないけど……え〜〜っと……」 ピークに達した緊張は、言葉を口にすれば口にするほど逆に冷静さを呼び戻してきた。 不器用、無愛想、口下手、感情表現が乏しい……。 どれも間違いではない…。 本当は繊細、優しい、悲しみを感じる感情は人一倍強い……。 これも間違いではない…。 だけど…。 「なんか……口では言いにくいな」 シーン。 先ほどまでの喧騒がウソのように、ティファの最後の一言で店内に静寂が訪れた。 女性はティファの一言にキョトンとしている。 子供達も首を捻りながら顔を見合わせた。 そんな中、ティファ一人が「うん…やっぱり言葉には…出来ないね」と、納得したように繰り返している。 そして、まだ怪訝そうな顔をして軽く小首を傾げている女性に、ティファはニッコリと笑って見せた。 「クラウドのどこが好きなのか言葉にするのはちょっとむずかしいな。だって、クラウドの長所も短所もやっぱりクラウドだし、そんなクラウドに気が付いたら惹かれてたわけだし、好きなところを言ってもなんだか『惹かれた裏づけ』してるみたいな感じがしてウソ臭い感じになっちゃうし…」 「それにね…」 「クラウドのことをどれくらい好きか…って質問だけど、気が付いたらずっとクラウドの事を考えてるくらいにクラウドのことを想ってる…」 「っていう答えでも…良いかな…?」 恐る恐る言ったティファは、感動した女性に思い切り抱きつかれた…。 「………」 「それでね…、その……話しが異様に盛り上がっちゃったんだけど、一人のお客さんがね、その…」 「……うん?」 「あの…怒らないでね?クラウドが家出をしている時のことを持ち出した人がいて…」 「………」 「あ、ごめんね?私や子供達はもう全然気にしてないし、今の生活が本当に幸せだって思ってるの。そのこともちゃんとそのお客さんに言ったのよ?でもね…」 「……うん、怒ってない」 「うん…その……あのね。思ったの…」 「なにを?」 「クラウドが…その、家を出てた時の私って何を思ってたのかな…って…どんなだったかな…って…」 「……それで、酒を飲んだのか…?」 ちょっとビックリして聞くと、ティファは恥ずかしそうに項垂れた。 「う…ん…。私…その、今だから言うけど、あの頃はよく寝る前に飲んでたの…」 「…ティファ…」 「あはは、だからお酒を飲んだらその時の気持ちに近いものを感じられるかなぁ…?とか思って飲んでみたんだけど」 クスクスっと笑いながら、ティファは甘えるようにクラウドの首に腕を回した。 黙ってその華奢な身体を受け止めながら、クラウドは内心ビクビクしながら次の言葉を待った。 ティファは焦らさなかった…。 「なんか全然ダメなの。やっぱり今の幸せな気持ちがいっぱいで」 耳にティファの言葉がスーッと入る。 心の底まで温もりが染み渡る…。 「あぁ、やっぱり私は幸せだなぁ…って思っちゃうの。毎日ちゃんと電話してくれるし、子供達や私の心配ばっかりしてくれるし、それに……」 「私の事…愛してくれてる…って感じられるもの…」 ギュッと細い身体を抱きしめると、彼女もそれに応えるようにして回した腕に力を込めた。 「ティファ……酔ってる?」 「うん……ちょっと……」 「そ…か…」 「ふふ、たまには……良いよね?」 「毎日でも良いぞ?」 「ふふ、ダ〜メ、勿体無いもん」 「勿体無いのか?」 「うん。こんなに幸せだと怖くなるもん」 「どうして?」 「だって…夢見てるみたいじゃない…?」 「それを言うなら、今まさに俺はそういう心地だな…」 「ふふ…夢…だったり…して…」 「ティファ?」 「でも……夢じゃ……ない………」 「ティファ…?……」 クラウドはそっとティファをベッドに横にすると、規則正しい寝息を立て始めた彼女にそっとシーツをかけ、自身もその隣に潜り込んだ。 緩く彼女の身体に腕を回す。 ― 気が付いたらずっとクラウドの事を考えてるくらいにクラウドのことを想ってる… ― 「……それは俺もだ…」 幸せそうな寝顔の天女に、クラウドは至福に包まれながら目を閉じた。 彼女はいつもこの上ない幸福を与えてくれる…と、幸せを噛み締めながら…。 「朝、目が覚めたら……お礼……言わないとな…」 最高の言葉をくれた最高の女性(ひと)に最高の一言を贈ろう。 ― いつでもキミを想っている ― あとがき なんとなく、ほんのり幸せな二人が書きたくなりました♪ 実際、美麗CGでこんなやり取りがあったら悶え死にます!! はぁ…本当にこんなアマアマな二人を見たいもんです〜(遠い目) あ、ちなみに翌朝、クラウドはお約束のように寝坊をして、甘い言葉を囁くことなど全く出来ずに依頼主に謝罪の電話をかけることになります。 お付き合い下さってありがとうございました。 |