ねぇ、私はあなたの力に、『支えになる存在』になれてるのかな?


仮面

 
 きっと、そんな質問をしたら、あなたは「俺の事が信じられないのか?」って、凄く悲しそうな顔をするんだろうね。

 でも、違うの。

 あなたを『信じられない』んじゃなくて、『私に自信がない』の。

 確かに、私達は『幼馴染』で、互いに背中を預けた『戦友』で、他の人よりもうんと密接な関係にあると思ってる。

 でもね、違うの。

 私が本当に望んだ『関係』は、たった一つなの。

 あなたにとって『唯一』の存在になりたいの。

 ちゃんと分ってる。

 あなたが『他人』に見せる『顔』と、私にしか見せない『顔』があるってこと。

 私にだけ見せてくれる『あなた』がちゃんといるって、知ってるのに…ね。

 それでも…、それでも私は不安になるの。

 他の人にこんなこと言ったら「馬鹿だなぁ」って、呆れられる事もちゃんと分ってるわ。

 そう、あなたにとって、きっと私は『特別』な存在なんだと思う。

 でも、どうしてなんだろうね。

 最近、私は『不安』になる時が増えたのだから。

 あなたが私達の、私の元へ戻ってくれた時は、ただただ嬉しくて、毎日が本当に幸せで、不安なんて感じる暇もないくらい、私の中はあなたの事で一杯だったのに。

 それなのに…。

 最近、一つの可能性がある事に気付いてしまった。
 
 そう。

 いつか、あなたが私以外の別の人に『惹かれる』かもしれないって事。

 あなたは、とっても責任感の強い、優しい人だから、そんな『女性』にこれから先、もし出逢ったとしたら、きっとその『想い』を押し殺して、私達『家族』と共に生きる事を選んでくれるでしょう?。

 きっと、自分の『想い』を隠し通して、『家族』としての『仮面』を被り続けるのでしょう?

 あなたなら、きっとそういう生き方を選択してしまうのよね。

 でも、そうなった時、きっと私達にはあなたの『苦悩』が分ってしまうわ。

 人の心を読む事に長けているマリンはもちろん、あなたをヒーローとして敬愛しているデンゼルも、あなたの心の変化に敏感に気付いてしまうでしょう。

 そして、私も…。

 私があなたの心の変化に気付かないはずなんてないわ。

 だって、あなたは私にとって『唯一』の存在なんだから。

 そんなあなたの『心の動き』は、『読もう』と思わなくても『感じてしまう』んですもの。

 エアリスとザックスが、あなたを私の元に再び返してくれた時から、私はずっと、あなたの心の中に『私』がちゃんといるって、感じているの。

 もちろん、今もそうよ。

 だから、こんなに毎日幸せで、こんなに世界が綺麗に見えて、こんなに『私』が『私』であると、確固たるものを感じる事が出来るの。

 そう、あなたがいるから、『私』でいられるのよ。

 あなたは『私』の存在理由そのもの。

 だから、あなたが何も言わずに出て行った時、私は『壊れて』しまいそうだった。

 もし、もう少しあなたの『帰還』が遅かったら、完全に『私』は壊れてしまってたでしょう。

 そう。もう二度と修復出来ないくらいに、跡形もなく…。

 そうなる前に、エアリスとザックスが私の元へと帰してくれた。

 本当に、エアリスとザックスにはいくら感謝しても全然足りないわ。



 戻ってからのあなたは、家を出た事で、とても後悔しているのよね

 ちゃんと分ってるよ。

 どうしたら、家を出た事を、家族の元を離れた事を償えるのかって、そう悩んでいる事もちゃんと分ってるわ。

 ねぇ。マリンもデンゼルも私も、あなたからの『償い』なんて欲しいわけじゃないのよ。

 たった一つで良いの。

 お願い。もう二度と置いて行かないで。

 どこへ行くにしても、決して行ったきりにならないで。

 必ず、私達の所へ戻って来て。
 
 うん。分ってるよ。

 必ず戻ってきてくれるって。
 
 それなのに、どうしてなんだろうね。

 やっぱり私は不安になるの。
 
 今の私は、幸福な毎日を送っている『現実』を、心のどこかで『夢』なんじゃないかと恐れている。

 ああ、本当に私はどうしようもないわね。

 彼に『ズルズル』って言っておきながら、結局私のほうが『ズルズル』なんだもの。

 ふふ、おかしくて笑っちゃうわ。

 自分が滑稽で、そんな自分に嫌悪感が沸々と湧いてくる私は、何て醜いのかしら。

 こんなに醜い私は、あなたには相応しくないのかもしれない。

 ううん。きっと相応しくないんだわ。

 それでも、もう駄目ね。

 あなたのいない生活なんて、あなたのいない人生なんて私の選択肢の中には存在しないのよ。

 だからお願い。

 他の女性(ひと)には見せないで。
 
 私にだけ、あなたの『顔』を見せていて。

 あなたの本当の『顔』を見ていられるのは私だけ…、そう信じさせて。

 あなたの本当の『顔』を見ることが出来るのは、私だけなんだと自惚れる事を許して。

 ああ、でも。

 あなたは自分で自覚していないけど、本当にとても素敵な男性(ひと)だから、他の女性(ひと)があなたを奪ってしまうかもしれない。

 だから、あなたが他の女性(ひと)に奪われないよう、私は『仮面』を被るの。

 あなたの前で、こんなに醜い私を見せずに済むよう、精一杯の笑顔を創るの。

 そう、それはあなたにしか見せない『笑顔の仮面』。





あとがき

はい。ちょっとシリアス路線で暗めに書いてみました。
ティファにとって、クラウドは唯一の存在なんですよね。
クラウドにとっても、ティファは唯一の存在なんですが、何分
照れ屋&無口&無表情なキャラなので、分りやすくティファに想いを伝えられずにいる
って、そうマナフィッシュは思ってます。
そこで、今回のようなポエム調の物が出来上がりました(汗)
いまだに≪DC≫でティファが≪ロックハート≫なのに納得がいかないマナフィッシュは、
きっと、奥手な二人の故にこういうすれ違い、勘違いの結果、≪ロックハート≫に治まっている
と、勝手に解釈してみました(ああ、石投げないで下さい 汗)
最後まで読んでくださり、有難うございました。