「くぅ〜!」
「やっとこの日が…!!」
「「「やって来たかーー!!!」」」

 待ち焦がれていた日がやって来た!
 ウズウズする気持ちを押さえきれず、俺達は青空に向かって大きく両腕を伸ばした。



期待通り?期待以上!




「長かった…」
「ああ、長かったな…」
「一週間がこんなに長いとは思わなかったぜ…」
「「ああ…」」

 ダチ達と一緒にしみじみとこの一週間を振り返る。
 あの『勘違い野郎共』がセブンスヘブンにいきなり現れてから一週間。
 それは、我らの愛しいセブンスヘブンの女店主に無礼を働いた日でもある。
 全く、近頃の若い奴らは自分の『器』を過大評価し過ぎてやがる。

「苦節一週間。この日が来るのを『一日千秋』の思いで待ってたぜ!」
 ダチの一人がプルプル拳を振るわせた。
「まったくだ…!さぁて…たっぷり反省してもらわないとなぁ…」
 クックック…。
 人が悪い笑いを浮かべたもう一人のダチがニタァっと笑う。
 通りかかった小さい子供が、その笑い顔にびっくりして大声で泣きながら母親に抱きついた。

 …お前、その笑い顔は悪人だぜ……?
 ダチとは言え、逃げたくなるわ……。

「ま、それにしてもすげぇ人だな…」

 ざっと見回したダチが感心したような…呆れたような顔をした。
 確かに、平日のクセにありえねぇほど、観客達が詰め掛けてる。
 どうも、遠方の町や村からも観戦に来てるみたいで、闘技場の傍には観光バスらしきものも数台止まってた。

 ……おいおいおい!!
 いいのかよ、こんなんで!!

「ま、俺らも人の事言えねぇけどな」

 カラカラと笑ってダチの一人が「さ、行くぞ〜!」のほほんと俺達を促した。
 残された俺達も、
「「「ま、そうだな」」」「「「人の事、言えねぇわな…」」」「「「仕事…休んでまで来たのって俺達だけじゃないってことで!!」」」
 等々言いながら、席取りに行ってくれたダチの後を追っかけた。





 事の起こりはさっきも言ったが一週間前だ。
 いつもの様に一日の仕事を終え、セブンスヘブンで心の充電をしている俺達の目の前に突如、WROの隊員という若造達が現れた。
 ……いや、俺達の目の前……じゃなくてティファちゃんと旦那の目の前か…。
 んで、俺達みたいに興味津々に見てる客達の前でその若造達はティファちゃんに信じられない『条件』を突きつけやがった!

 いやぁ…あの時は怒りのあまり卒倒しそうになったぜ…。

 俺らだけじゃなく、ティファちゃんは同性にも絶大な人気がある。
 女だてらに酒を出す店を切り盛りして、小さい子供を二人も養ってるそれはそれはすげぇ女。
 ナイスバディーで料理が上手くて、目鼻立ちがくっきりした絶世の美女で、性格も良くて…。
 そんでもって、『ジェノバ戦役の英雄』ってんだから、天は二物も三物も与えたんだなぁ…と思っちまうような誰もが羨む女、それがティファ・ロックハートだ!

 んでもって、極めつけは彼女の恋人だな、やっぱ!
 ん〜、まぁ、それが今回のそもそもの騒動の発端みたいな感じだけどよ。
『ジェノバ戦役の英雄』のリーダーだった男。
 クラウド・ストライフ。
 女みたいな別嬪顔で、すっげー無愛想で無口で口下手で…。
 でも、心を許した相手にはとことん優しくて良い奴で。
 んでもって、頼りになって腕っ節が強い!
 そんな男を持つティファちゃんは本当に羨ましい!!と思う人間が多いだろう。
 でも、まぁ。
 彼女には彼女の苦労が日々絶えないみたいで、子供達やクラウドの旦那がヤキモキしながら見守ったりフォローしたりして、彼女を支えてる。
 そんなあったけぇ姿が見られて、元気を分けてもらえる。
 それが『セブンスヘブン』、俺達の心の憩いの場だ。

 そんなわけだから、俺達はティファちゃんもクラウドの旦那も子供達も気に入ってる。
 って言うか、この四人をどうこう言う輩には遠慮なく闇討ちさせてもらうね!
 …………って、今回の騒動の元凶である若造達には流石に出来なかったし、これまでもしたことねぇけど…。
 いや、だってよぉ!
 ムカつこうが腹が立つ野郎だろうが、WROの隊員って奴は腕っ節が立つんだよ!
 闇討ちし掛けたって、返り討ちにあうのがオチだっつうの!!
 悪いかよ、俺らには女房も子供もいるんだよ!
 返り討ちにあって監獄に入れられることになったら目も当てられないっつうの!!

「…お前、さっきからなに百面相してんだよ…」

 ダチの一人が気味悪そうに声をかけてきた。

 おっと、ちょっと夢の世界にトリップしちまってた……。
 薄気味悪そうに俺を見てくるダチ達に適当に言い繕うと、しっかりと席を確保してくれたダチの所へそそくさと移動。
 お!
 ここだと闘技場が良く見えるじゃねぇか!
 でかした、流石俺のダチだ!!


「それにても、あの三バカは逃げずにちゃんと来るんだろうなぁ…」
「来るだろ?こんだけデカイことになってるんだぜ?来なきゃ、WROの面子丸つぶれになって『英雄』といえど、リーブ局長の指導に疑問を持つ奴が出てくるだろうからな」
「でもあの三バカはリーブ局長にめちゃくちゃ不満を持ってるみたいだったけどよぉ…」
「だからこそ、こんなにバカデカイ『舞台』に立って、局長殿に異議申し立てするんだろ?『俺達の方がクラウド・ストライフよりも優秀です』ってな」
「そうそう!それと、『二階級特進した隊員達よりも』ってことを忘れちゃいけねぇな」
「忘れいでか!」
「おうよ!俺達は『ティファちゃんを陰からこっそり応援しよう』という崇高な使命を持ってる以外にも『WROのお坊ちゃん&お嬢ちゃん達を応援しよう』というもう一つの顔も持ってるんだからな!」
 ダチがそう息巻いて観客席から立ち上がる。
 隣に座っていた若い姉ちゃんが、汚いものでも見るかのような目つきで睨んできた。
 それだけではなく、隣に座っている男(…多分、姉ちゃんの恋人だな)にヒソヒソ何やら耳打ちして、二人揃って席替えしやがった。

 ………ケッ!
 これだから女って奴は…!!
 お前なんかティファちゃんの足元にも及ばねぇっつうの!!

「あの三バカがお坊ちゃん達をバカにしやがった時の悔しさ……!」
「ああ……忘れようにも無理だ……!」
「「「俺達の財布の友を〜!!」」」

 ……お前ら……。
 他に言うことはないのか?

 確かに、WROに所属してる『バルト家』と『ノーブル家』の坊ちゃんと嬢ちゃんには、給料日によくご馳走してもらってる。(いや、勿論丸々驕ってもらってるわけじゃなくて、一品とか二品とかだ!)
 家が裕福だっつうのに全然気取った所がなくて、すげぇ良い奴らなんだ。
 実家からの援助を全く受けてないみたいで、月々のWROから支給される給与だけで生活してる…って前にデンゼルが言ってたな。
 まったく…。
 大財閥の子息と令嬢として何不自由なく暮らしてたくせに、いきなり庶民の生活に飛び込んで、しっかり順応してるんだから大した奴らだぜ!
 なんで家を出たのかは聞いた事ないけど、別に家出をしてるわけでも家族と疎遠ってわけでもないらしい…。

 ま、何はともあれ、本当に凄いやつらなんだ。
 んで、その例の三バカだけど一週間前に店に現れた時、その子息のこともバカにしてがって、あまつさえダシにするみたいにリーブ局長までをもバカにしやがったんだ…!

 ……。
 ………思い出しただけで腹立ってきた……。

 フッ。
 しっかーし!
 この苛立ちもあと数十分後には解消されるはずだ!
 そう!!
 我らが英雄の手にかかって三バカが地面にひれ伏すからな!!

 フッフッフ…。
 泣いて謝っても許してやんねぇぜ!!


 旦那がな!


「……お前、さっきから不気味なんだが……」

 おっと…。
 またまた自分の世界にトリップしちまった…。
 ダチ達のジト目が痛いぜ…。

「あ〜っと、悪い悪い。一週間前の事を思い出したらつい…な」

 苦笑する俺に、ダチ達はすんなりと納得した。
「おうよ!俺もその事を思い出すと今でも腸煮えくり返るっつうの!」
「そうそう!ティファちゃんにあんな条件出しただけでなく、クラウドの旦那までバカにしやがって…」
「そればかりか、ライ坊ちゃんとリト坊ちゃんまでバカに……」
「あまつさえ、シュリのアニキまで!」
「「「お前……『アニキ』…って…」
 フルフルと震えるダチに苦笑する。

 そう。
 シュリっていうのは坊ちゃん達の上司の兄ちゃんで、すげぇ奴なんだ!
 歳は坊ちゃん達よりも一つか二つ下だって聞いたことがあるけど…。
 これがまた、クラウドの旦那みたいに無愛想で無口でよぉ…。
 でも、筋はビシッと通す男気に溢れた良い男でな!
 将来は絶対に大物になるね!

 それからも色々その一週間前に起こった出来事からセブンスヘブンの素晴らしさ、果てはセブンスヘブンにやって来る他の見知った客達の話にまで花を咲かせていた。
 そうこうするうちに、英雄の一人がマイク片手にノリノリで司会を始め、『理不尽で思い上がった試合』が始まった。


 ……だけど!!


「「「「「坊ちゃん!?」」」」」
「アニキ!?」


 いやぁ…。
 びっくりしたのなんの!!
 俺達のお気に入りの人間が旦那の外にも闘技場に出てくるとは思わなかったからよ!
 しかもシュリのニイサンは旦那と一騎打ちだとよ!
 ありえねぇだろ!?
 観客席の最前列に座ってるティファちゃんと子供達が呆気にとられている横顔が見える。
 闘技場の真ん中で苦虫噛み潰した顔のシュリのニイサンと何やら宥めているらしいライ坊ちゃん、そんでもってライ坊ちゃんに何かを諭しているらしいリト坊ちゃんがいる。
 その三人の後ろでは…。
「あの野郎共…!」
「ムカツクな…」
「「「「おう」」」」
「クラウドの旦那が情けをかけるようなら俺は旦那を許せん…!」
「「「「おお!!」」」」

 ニタニタと嫌味ったらしく笑う今回の元凶共に俺達の怒りが頂点に達する。

 フッ…。
 その余裕のムカツク笑みも、あと数十分さ!
 どうやら三バカはセットで旦那のお仕置きを受けるみたいだしな!
 オマケにシュリのニイサンと坊ちゃんズの試合の後で出番らしいから、それまでの二試合で己の思い違いをたっぷりとかみ締めるといいさ!


「お前…また悪い顔になってるぞ……」


 ダチの怯えた声は、俺には届かなかった…。

 そして…。
 試合は期待通りだった!
 いや、期待以上か!?

 シュリのニイサンは俺達の予想以上に強かった!
 旦那と一対一で試合だなんてリーブの局長も何を考えてるのやら…とか思ったが、びっくりだぜ!
 まさか、あそこまで強いとはなぁ…!!
 あの…ジェノバ戦役と言われる闘いの中、シュリのニイサンが『英雄達』と一緒にいなかった…っていうのが驚かれるくらいの腕前だった!
 ま、流石に旦那に勝つことは出来なかったけど、それでも良いところまで行ったと思うぜ?
 その証拠に、ニイサンが退場する時は姉ちゃん達の(あの方向からすると、WROの隊員達だろうな…)黄色い声援が惜しみなくかけられた。

 ……いやぁ……。
 顔も良い、腕っ節も良い、性格も良い、なんて『ジェノバ戦役の英雄』の専売特許かと思ったけど、そうじゃないんだな…。

 旦那がニイサンと微笑みながら握手を交わしてるシーンは、目頭が熱くなったぜ!
 感動もんだ!
 これぞ、男の『ロマン』ってやつだろ!?

「「うぅ…」」「「よ、良かった…」」「「二人共、サイコーだ!!」」「「ああ、本当に…!」」

 俺達が涙を流さんばかりに拍手を送ってる周りでは、同じ様に感動した面持ちで必死に手を叩く人達。


 ……俺達は今、一つになってる…!!


 いやぁ、まさにこれが一体感!て奴だな。
 ニイサンと旦那に惜しみない拍手を送りつつ、俺達は満ち足りた気持ちを味わった。


 んで。
 当然次の第二試合だが。

「「「うおぉぉ!!」」」「「「坊ちゃーーん!!!」」」
「「「「「「頑張れーーー!!!!」」」」」」

 声を枯らして俺達は心から応援した。
 いや、勿論旦那のことも応援したぜ?
 だが、旦那はティファちゃん達が応援してるからな、俺達がその分応援してやらないとな!

 しっかしまぁ…。
 シュリのニイサンの戦いぶりも初めて見たけど、坊ちゃん達が戦うのも考えてみたら初めてだ。
 二人共、ほんっとうにすげぇ!
 マジでお坊ちゃんなのかよ!?って思うくらい、戦い振りが洗練されてたな。
 なんつうの?こう、『スマートに綺麗に闘う』ってんじゃないんだ。
 前線で『泥まみれになっても作戦を成功させる為に戦う』って感じだった。
 俺らはそれまで、無意識の内に坊ちゃん二人を『金持ちらしくスマートにこなす』奴だと思ってたんだな…。
 全然自覚なかったけど…。
 でも、二人は闘技場の中を、これでもか!ってくらい駆けずり回って、旦那の攻撃をかわして、旦那に攻撃して…。
 すごく…カッコよかった!
 観客席の最前列で子供達と他の英雄達が総立ちになって応援してる。
 勿論、我らが憧れのティファちゃんも!
 当然、旦那の応援なんだろうが、時々「お兄ちゃん、危ない!」「いいぞ、リト兄ちゃん!」という声が歓声に混じって聞えてくるから、その時々に応じて、素直に応援してるんだなぁ…と思ったな。
 本当に、子供達は素直で可愛いぜ!


『超究武神覇斬』


 後から聞いたこの旦那の必殺技で坊ちゃん達が闘技場に倒れた時も、俺達は何と言って良いのか分からない『興奮状態』に陥っていた。
 こう…。
 なんつうのか…。
 とにかく、凄く感動したんだ。
 二人共、逃げる事無く最後まで旦那に挑んだ。
 旦那も二人の心意気に応えるように全力で応戦した。
 それがすごく伝わってよ。
 こう、胸が締め付けられるような……苦しいような……それでいて満足…というか満ち足りた気持ちになってさ。

 俺達は総立ちで目一杯拍手を送った。

 坊ちゃん達が起き上がってヨロヨロしながら、それでも輝かしい笑みを浮かべて旦那と握手したその光景は、シュリのニイサンの時に感じた感動をそのまま甦らせてくれた。
 もう、胸が一杯ってこのことだろうな…!
 ダチの何人かが涙を拭ってる。
 そうでないダチ達も目を潤ませてる。
 俺は前者だ。
 だけど、恥ずかしいとは思わないぜ?
 感動したんだから素直にそんな自分を曝け出して何が悪い!(いや、これは開き直りかもしれないが…)

 本当に……感動した!
 良かった!
 他の観客達も総立ちで割れんばかりの拍手を送ってる。
 主賓席を見ると、リーブ局長も興奮しきりに手を撃ち叩いてるのが見えた。

 少なくとも、この場にいる人間が『二階級特進』とそれを判断し、実行させた『WROの局長』に対して反対することはないだろう…。
 よしよし!
 これで、ティファちゃんと旦那がとやかく言われる項目が一つ減ったな!
 うん?何が『項目』かって?
 そりゃ、あれだ。
 ティファちゃんもクラウドの旦那もそれはそれはモテるんだ!
 アレだな。
 羨ましく思う…って域を超えて同情しちまうぜ…。
 二人が人気者で、且つ俺達に優しくしてくれて…っていうシチュエーションは美味しいんだがちょっとなぁ…。
 気の毒に思えるな。
 特に、クラウドの旦那は仕事の都合でしょっちゅう家を空けるからなぁ…。
 その間に変な虫がティファちゃんに纏わり着いてないか不安だと思うぜ…ほんと…。
 まぁ、その旦那が不在の間は俺達みたいに『妻子持ち』でティファちゃんと旦那を応援してる『常連客』とデンゼルとマリンとでそっとフォローしてるわけだが…。
 それでもやっぱ、フォローしきれない場面も多々あるわけだ。
 そう言う時は本人達に頑張ってもらうしかないわけだけど、この『試合』がきっと二人にとって良い結果をもたらしてくれるだろう!
 だってよぉ。
 第二試合が終って、坊ちゃん達と握手し終わった旦那がさぁ…。
 これ以上ないくらい、甘い笑みを浮かべて観客席のティファちゃんと微笑み合ってたんだから!
 これだけメロメロ、アマアマな二人を見せ付けられて、尚且つちょっかい出そうって奴がいたら、いっそお目にかかりたいね。
 くぅ…。
 見た事ないくらい『女の顔』をしてるティファちゃんは、悶絶するほど『良い女』だった。
 勿論、旦那もな!

 そんな二人をまざまざと見せつけられた俺達は、心の底からホッとした。
 これ以上無いくらい満足した。

「今夜はセブンスヘブンは休みだろうからどっか余所に飲みに行くか〜?」
「「「「「おお、賛成〜〜!!」」」」」

 ダチ達が満面の笑みで俺の提案に賛成する。
 意気揚々と引き上げようとした時、司会を務めてるジェノバ戦役のネエチャンの声が『第三試合』を告げた。


「「「「「「第三試合…?…………!?あ………!!」」」」」」


 すっかり忘れてた!
 あまりにも第一試合と第二試合が良すぎて!!
 満足し切ってたからすっかり…!!
 そうだった、俺達の今日の目的は『勘違いしたWROの隊員三人の無様な姿を見ること』だった!!
 おお……本気で忘れてた……。
 いやぁ…なんかここまで満足しちまったから、逆に無様な試合を見て落胆したくないしなぁ…。
 いやいや、でも!
 この馬鹿げたお祭り騒ぎを引き起こした元凶のバカ共達がどうなるのかを見届けるのも、俺達の義務…かな?
 だが、俺達は何故か正直言うと、第三試合を見る気には全くなれなかった!
 こう…あれだ。
 第三試合を見たら後悔する……。
 そんな気がして仕方なかったんだ。
 本来の俺達の目的は、三バカがクラウドの旦那にコテンパンにやられて涙ながらに反省する。
 そういうシーンを見るはずだったんだよ。
 それなのに、今はこれっぽっちもそんな気になれない。
 むしろ、『あ〜、あの三人?あんな野郎共ほっとけばいいさ〜』ってな感じだ。
 そう!
 第一・第二試合で俺達は心満たされたんだ。
 だから、あの三人に対して『寛大な』心を持つことが出来たんだろうな、うん!
 しっかしまぁ、そんな俺達の『慈悲の心』なんか知るはずもない周りの観客達と司会のジェノバ戦役の英雄は、こぞって第三試合を煽るような言葉や歓声を上げている。
 観客席最前列のティファちゃんと子供達、それに闘技場にいる旦那がえらく気難しい顔をしてたが……まぁ……。


 仕方ないよな……?


 そうこうするうちに、例の三バカが現れた。
 観客席に座っている観客達が総立ちになって拍手と声援を送ってる。
 その期待に満ち溢れた表情からは、第一・第二試合以上のものを三バカに求めているのが明らかで……。


「身から出た錆…とは言え…」
「ちと気の毒…かな…?」
「真っ青な顔しちまって……」
「あの真ん中の野郎なんか、そのまま失神するんじゃないのか?」
「「「「あ〜…本当だ……」」」」


 まったく、呆れるぜ。
 あんだけ大口叩いておきながら実力は坊ちゃん達やシュリのニイサン達の半分もないじゃねぇか……。
 しかも、戦いに赴く気概…っつうか……なんつうか……。
 男気ってもんをこれっぽっちも感じられねぇ……。

 あっという間に一人目がやられた瞬間、闘技場に寒々しい空気が流れた気がしたのは俺だけじゃねぇはずだ。
 あんだけ盛り上がった闘技場が…。
 あんだけ皆と一体感になった気がした瞬間が…。
 全部嘘だったんじゃないか?って思うくらいの……クールダウン。


「「「「「「バカだなぁ……」」」」」」


 しみじみとそう呟いた俺達の目の前で、あっという間に最後の三バカ隊員が闘技場の土の上にひっくり返った。



「ま、これでティファちゃんと旦那の事をとやかく言う輩はいなくなるだろう…」
「そだな!」
「でも…いつまでもつかねぇ…」
「……そだな…」
「それでも、やっぱりカッコよかったよな!」
「「「「ああ、ほんとにな!」」」」

 帰る道すがら。
 俺達は今日の試合について花を咲かせた。
 特に最後の試合は想像通りとは言え、あまりにもカッコ悪すぎる三人の隊員にリーブ局長がどんな罰を下すのか興味が湧く。
 ……ちょっとだけな。
 今回の一件で自分の不甲斐なさと思い違いを骨身に染みさせたであろうあの三人が、これから良い風に変わってくれたら…と思うが……難しいだろうな。
 人間、自尊心が高い奴ほど、己を否定するような結末には耐えられないからな。
 あの三人はまさにその例だろ?
 どんなに旦那とティファちゃん、リーブ局長にニイサンと坊ちゃん達が思い知らせたって、グダグダ言い訳して『自分達は悪くない』みたいなことを言うんだぜ、きっと。
 ま、そんな戯言に誰か付き合ってくれるのか…見ものだけどな。

「それにしても…」
「カッコよかったなぁ…」
 しみじみとダチがこぼす。
 そのうっとりとした横顔に俺も心から賛成だ。

『『『『どこで人生間違えたんだろう…』』』』

 俺を含めた他のダチ達がそう思った事はまず間違いない。
 本当に……俺の人生どこで間違ったんだろう…?
 もっとガキの頃から鍛錬してたら、クラウドの旦那みたいに強くなって、ティファちゃんみたいなイイ女をゲット出来たかもしれねぇのに…!
「惜しいことをしたよなぁ…」
「ま、クラウドの旦那みたいにティファちゃんと…って美味しいことになってるとはかぎらねぇけどな」
「それでも、今の俺よりも絶対に恵まれた生活をしてるはずさ!」
「「「あ〜、お前んとこはかみさんが怖いからなぁ…」」」

 声を合わせて思わず同情しちまった俺達に、ダチがイヤそうな顔をして口を開こうとした。
 その時。

 ピピピ…ピピピ…。
 ピッピッピッピ……ピッピッピッピ……。
 ピ〜ヒョロロロロ…ピ〜ヒョロロロロ…。

 携帯の着信音が鳴り響いた。
 しかも。
 三台分。

「「「ゲッ!」」」

 ダチ二人と同時にギョッとした俺は声を上げる。
 慌ててポケット、カバンを漁り、それぞれ「「「ピッ!」」」と軽い音を立てて携帯に出る。
 耳に携帯を当てると、案の定かみんさんだった。
 仕事を休んだことに対して角を生やしたかみさんのお小言が脳天を突き抜ける。

「わ、悪かった。帰ってから事情をちゃんと…」

 しどろもどろになってそう言う俺に、
『当然よ!ちゃんとした理由じゃなかったら…離婚だからね!!』
 怒り狂ったかみさんの言葉。

 ……それは困る。
 いくら、容姿や性格や器量や度胸や腕っ節や……あ〜、その他諸々、ティファちゃんと比べて『月とすっぽん』なかみさんでも……それでも!

「わりぃ。かみさんが『離婚だ〜!』とか怒ってるから帰るわ」

 途端にブーイングの嵐を起こすダチ達に手を振りながら、足早に帰路に着く。
 その俺のすぐ後を電話があったダチ達が追っかけてくる。
 どの顔もちょっと焦ってるが…やっぱ。

「「「かみさんが俺にとっては一番だからな」」」

 ちょっと照れ臭いが、そう言うと俺達はそれぞれ自分の家に向かって別れた。



 クラウドの旦那の見せた甘やかな顔。
 あの表情を俺がかみさんにも見せてやれるか自信はないが、それでも俺にとっては大事なかみさんだからな。


 さぁて。
 どうやって機嫌をとるかなぁ〜。
 やっぱ、見てきたことをそのまま話して聞かせるのが一番かな?


 ウキウキと弾む胸を押さえもせず。
 明るい月夜を見上げて笑った。



「早く、二人共ケジメを付けろよ〜!」



 なぁんて、余計なことを口にしながら。



 T・J・シン様の99699番キリリクで『英雄シリーズの常連客視点』でした♪
 かなり……あれですね。
 常連客ばっかでしたね。
 クラティ要素……皆無……(おおう… 汗)。
 いやもう…どうやって書いて良いのかさっぱりで……(ダク汗)。
 常連客ってこれまでも沢山登場させてきたので(しかも、いずれも名無しちゃん♪)どのキャラで書いたら良いのか悩んだのですが、思い切って登場させたことのないキャラにしました(笑)。

 常連客がいくらティファに想いを寄せても所詮、報われない想いですし、それを書くとまたまたメッチャ暗くなるのでやめました(苦笑)

 T・J・シン様、お待たせして申し訳ないです。
 こんなお話しですが……。
 宜しければ貰ってやって下さいませm(__)m