その日、朝からどうも彼の様子がおかしかったのは、私の気のせいではないはず…。
ラブレター(ティファ視点)
朝食の時は特に何ともなかったと思う。
子供達と普通に会話を交えて朝食を食べていたわ、うん。その時の内容は、配達の仕事が午後からだから、午前中の空いている時間にフェンリルの調整をする、ってデンゼルと楽しそうに笑っていたもの。
男の子とってどうしてバイクとか車といった乗り物が好きなのかしら。もちろん、女の人でも好きと言うは人はいるけど、圧倒的に男性の方が多いと思うのよね。
…って、今はそんな話してる場合じゃないわ。
そう、朝食中は何ともなかったのよ、これは確かなはず。
でも、何かのきっかけで急に彼が私の目を気にするように、チラチラ盗み見るようになっていた。
その事に気がついたのは、朝食の後片付けが終わって、彼がフェンリルの調整から戻って…それから……。
はぁ、駄目。何にもそれらしい事、思いつかない。
彼が何か私に対して気にするような事…、それも盗み見て様子を窺う眼差しを向けるような事…って、一体何があるのかしら?
彼が私に隠れてする事って、大体が私を驚かせて喜ばせようとする事…なのよね。
でも、その時の彼って、凄くキラキラした子供の様な目をしてて、悪戯っぽい表情をしてて、そんな表情に胸がキュンってしてしまう。でも、いつも彼は、私が知らない振りをしている事に、全く気付かないのよ…バレバレなのにね。
それで、いざその時が来たら、驚いた振りして見せる私に、本当に嬉しそうな顔してくれる。
そんな彼が、本当に愛おしくて、私は幸せと同時にこう思ってしまうの。
お願いだから、もう少し上手に隠し事してくれないかしら…って。
だって、彼が隠し事をしているって、知ってるのに知らない振りをして、『わー!吃驚しちゃうじゃない!!でも嬉しい、有難う!』って驚く振りする私って、彼の事を騙してる事に入ってる気がするの。
もちろん!!彼が隠し事が上手なら、それはそれですごく不安になってしまうんだけど…。
ああ、私って本当に我が儘なんだから…。
…って、また話が脱線してるわ!
だから、本当に何なのかしら?
きっと今回の隠し事は私が喜ぶような事じゃない気がする…って言うか確実に不愉快になる事なんだと思う。
だって、彼ったらいつもの様なキラキラした目も、悪戯っぽい子供のような無邪気さが欠片もないんだもの。
う〜ん、彼が私に隠し事。
それも私が不愉快になるような隠し事。(かもしれない)
それって一体…何?
今は子供達も遊びに出てるから、こっそり聞く事も出来ないし…。
「ティファ、さっきから何百面相してるんだ?」
「え!?」
考えに没頭するあまり、彼が目の前に立っている事に全く気が付かなかった。
「え、えと、別に大した事じゃないんだけど」
動揺しすぎて、あはははは、と乾いた笑いをしてしまう。
これじゃあ、『大した事考えてました!』って言ってるようなものじゃない!
ああ、私のバカ……。きっとクラウドは、『何考えてたんだ?』って聞いてくるわ!
何て答えたら良いのよ!?
ところが、クラウドは私の予想に反して「そうか、具合でも悪いのかと思った」と言って、あっさり引き下がってしまった。
………おかしい。
………絶対、変!!
普段の彼なら、面白がってからかったり、考え事を聞きだそうとするはずなのに、…何、そのあっさりとした態度、あっさりとした引き際は!?
疑問で頭が一杯の私を、彼がテーブルの向こうから新聞越しにチラッと盗み見てきた。
しっかり視線は合ったはず…なのに、慌てて新聞に視線を戻して、読んでいる振りをしている。
そう、あくまで『新聞を読んでいる振り』なのよね。
だって、視線が一つのところで止まってるんだもの。
新聞なんか読んでない、絶対読んでない!
気にしているのは、唯一つ。
私の行動…!?
一体私が何かしたのかしら。
おかしいわね。彼を怒らせるような何かをしたっけ?
思い出せないし、第一彼は私に対して怒っている様子じゃない。
あーー!!もう!!!一体何なのよ!!!!
理由が分からなくて段々苛々してきちゃった。
もういいわ。
きっと、聞いても教えてくれないだろうし。
それに、彼はもうすぐ仕事に出る時間になってしまうし…。
そこで私はハッとして時計を見た。そして吃驚する。
「クラウド!!配達に出る時間とっくに過ぎてる!!!」
「え!?」
私の大声に、吃驚して彼は新聞から顔を出し、そして時計を見て青くなった。
何と30分も出発時間を過ぎている!
「早く早く!!」
「あ、ああ、すまない」
彼にゴーグルとフェンリルのキーをカウンターから放り投げる。彼は慌てて椅子から立ち上がりざまに、空中でそれらを上手に受け取ると、そのまま扉へと走っていった。彼の後を追う様にして、私も急いで外へと飛び出す。
外に出てすぐ、慌て過ぎて、つんのめるように転倒しかけた私を、彼がギリギリで受け止めてくれる。
「ごめんなさい、慌て過ぎちゃった」
「いや、良いんだ、気にするな。それに、ボーっとして遅刻した俺の方が悪いんだし」
「ううん、それ言うなら私だって考え事してて、時間に気付かなかったんだし」
「………あのさ、ティファ…」
「え?何、忘れ物!?」
急いで身体を起こして店の方へ足を向けた私を、クラウドは慌てて腕を掴んで引き止めた。
「い、いや、そうじゃないんだ。ただ、ちょっと、その、気になる事が…」
すごく言いにくそうに彼が口を開く。
もしかして、さっきから私の事を盗み見ていた事に関係がある話!?
ああ、すごく聞きたい!!でも…!!!
「クラウド、今はそんな事よりも早く仕事に行かなきゃ!!」
私は心を鬼にして、クラウドの何か言いたげな顔に気付かない振りをし、「クラウドが仕事から帰って聞くわ!!」と、彼の背中を押してフェンリルへと追いやった。
彼は最後まで何か言いたげな顔のまま、フェンリルを走らせて行ってしまった。
はぁ、と私は溜め息をついた。
結局、彼は一体何を気にしてたんだろう。
折角彼の方から何か話そうとしてくれたっていうのに…。
彼が仕事から帰って、話す気がなくなってたら、それこそ私が気になって仕方ないじゃない。
何だか、とっても疲れた気分がするわ。
足取りも重く、私は店の中へ戻って行った。
彼独りがいなくなっただけで、店内がやけに広く感じてしまう。
それが、沈んだ心を益々重くしていく。
…少し早いけど、セブンスヘブンの開店準備でもして、体を動かそうかな。気分転換になるかもしれないし。
そう思って、カウンターに向かっていく途中、彼が座っていた席にふと目に付く物が飛び込んできた。
それは、先程彼が持っていた新聞で、その新聞の間から何やら封筒らしき物が覗いている。
「?」
小首を傾げつつ、封筒を手に取ると、その表には≪ティファ・ロックハート様へ≫とあった。
差出人は………常連客の一人の名前が書いてあった。
私は、それを見てクラウドの謎の行動が一気に解決してしまった。
封筒は私宛の為、封は切っていなかったが、普通の茶封筒とは明らかに違うので、彼がどんなに戸惑っていたのか今なら分かる。
要するに、これは私宛の『ラブレター』で、たまたま新聞を取った彼が、郵便受けからこの封筒を取る羽目になり、それで私とこの常連さんとの関係が気になったってわけね。
私は、改めて彼の行動を思い起こして、思わず吹き出した。
そして、同時にとても嬉しくて仕方がなくなる。
だって、彼が私を信じてくれているって事と、私を好きでいてくれているって事が改めて分かっちゃったんだもの!
普通の夫婦や恋人なら、『この手紙の差出人とお前の関係は何だ?』って、ストレートで聞いてきたり、変に勘ぐって探偵とかに調査依頼したり…、ようするに『疑いの目』で見るでしょ?
でも、彼は決してそんな目で私を見てなかった。
それは私の事を信じているって事。
でも、チラチラ見ていたのは、私の事は信じているけど、でもやっぱり気になるって事で、つまり…ヤキモチ。
きっと、私のこの考えは間違ってないと思う。
そして、その事が、この上なく私を幸せにしてくれる。
それにしても、本当に彼って不器用なんだから。
でも、そんな彼も含めて私は彼を誰よりも愛してるんだから!!
私は踊りだしそうな気分で、携帯を取り出すと彼にメールを送った。
【私が心から想っている人は、ニブルヘイムで一番の捻くれ者、セブンスヘブンで一番不器用な人よ】
しばらくして彼からの返信にはこうあった。
【俺が心から想っている人は、ニブルヘイム出身で一番の料理上手、セブンスヘブンで一番の恥ずかしがりや】
もう、本当に今すぐにでも彼に抱きつきたい気分だわ!!
でも恥ずかしいからきっと無理だけど…。
でもきっと、帰ったらクラウドの方から抱きしめてくれるんだろうな…、なんて事を考えて、一人で笑い出しそうになるのを必死に堪えながら、私は身も心も軽く、セブンスヘブンの開店準備にとりかかった。
あとがき
ええっと、クラティサイトであるからには、たまにはクラティにニヤニヤする話を、と思って
書いてみました!いかがだったでしょうか(汗)
きっと、彼は帰宅したら、常連客の前でティファを抱きしめた事と思います。
ええ、もちろんティファは真っ赤になるわけですが、クラウドは、
ラブレターを出した相手への牽制も兼ねて、必ずハグするでしょう!!
って言うか、すみません。全てマナフィッシュの妄想です。

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