その光景は… ものすごく暖かくて、 優しくて、 そして信じられなくて… でもずっと見ていたい そんな光景だった。 オモイデ次にティファが見た光景は、暗い部屋と、でもその暗さによって一際鮮やかに光るアイスブルー。 一呼吸おいて、彼女はそれがクラウドの瞳だと認識する。 そしてここが寝室だと思い出したティファは、先程見た光景が夢だと理解すると、その夢の内容を反芻し、涙を流した。 クラウドはそんなティファを眉を寄せたまま見つめている。 気がついたのは、ふと眠りから覚醒してすぐのこと。 ちょうど向き合う形で寝ていたため、クラウドの目に飛び込んできたのは、静かに涙を流しながら寝ているティファの姿だった。 身じろぎするでもなく、声を出すわけでもなく、ただ静かに泣いているティファ。 すぐ彼の脳裏に浮かんだのは、自分が家を出ていたときの辛い思い出を夢見てるのだろうか? だった。 しかし、彼女の今までの生い立ちを思い返すと、彼女には多くの傷があり、そしてそのどれもが深い。 彼女が泣く理由は、それこそ掃いて捨てるほどあるのだ。 それなのに、一番新しく、そして深くえぐりこむような傷をつけたのは他ならぬ自分だとクラウドは理解している。 けれど彼女はいつも笑顔でいてくれるのだ。 なのに、俺は彼女になにをしてやれるのか。 泣いているティファを見て、やりきれない思いがクラウドを襲う。 無性に紅茶色の瞳が見たくなったクラウドは、その欲求に従いティファの肩を2〜3度ゆする。 すると今まで閉じていた瞼が上がり、紅茶色が覗いた。 その色に幾分ホッとしたクラウドだったが、目を覚ましても涙を流すティファに、またやりきれなさがつもる。 いったい彼女は何の夢を見ていたのだろう? 「エアリスとザックス…」 「ん?」 「エアリスとザックスがね、夢に出てきてくれたの」 上半身を起こしながらティファは話し始める。 その顔は穏やかだが、瞳からはまだ涙が流れていた。 クラウドも彼女に習い身を起こし、ティファの涙を拭う。 「そうか」 「2人でお花畑に座っててね、楽しそうに、おしゃべりしていたの。 なんの話かは聞き取れなかったけど、クラウドや私の名前は聞こえたから、多分旅の頃の話とか、クラウドの神羅兵時代の話だったのかな」 眩しそうに、夢の光景を思い出すようにティファは瞳を細くし、穏やかに話す。 「あのね、私、エアリスとの思い出を思いだそうとすると、エアリスの笑顔が最初に出てくるんだ。 けどね、いつも決まって最後に思い出すのは忘らるる都の…あの時の映像だった」 「もっと早くセフィロスの気配に気づいていたら、戦う術は持っていたのに一歩も動けなかった、何もできなかった自分がすごく悔しくて……。だから楽しい思い出はいっぱいあったのに、最後に思い出す映像が強すぎて…いつの間にか、彼女との思い出は辛さが上回っていたの」 ここで彼女は辛そうに目を閉じる。 でもすぐに瞼をあげたその瞳には、今まで以上の穏やかさがあった。 「でもね、今日見た夢で…2人がすごく楽しそうにしてるのを見て、思い出せた。 一緒に買い物に行ったり、かわいい雑貨を見て歩いたり、アイス食べたり、お互いのアイスを一口ずつ食べあったり…… 何でもないことでもエアリスと話すのが楽しかったなぁ、って」 「そういえば、2人で一緒に寝てたこともあったんだって?」 「なんで知って……エアリスから聞いたの?」 「ああ、『いいでしょー?』って自慢されたなって思い出した」 心なしか苦笑気味のクラウドを見て、ティファは旅してた頃を思い出す。 あの頃見ていたのは、先頭を歩くクラウドとその隣を歩くエアリスの、2人の後ろ姿だった。 時折、楽しそうに会話しているのを目にしては、胸に鈍い痛みを走らせていた。 エアリスには適わないから―――――― クラウドは彼女に惹かれているんだから―――― そう思い込み、必死で彼への想いをひた隠しにしていた。 正確には想いを捨てようとしたのだ。何度も。 捨てた方が楽になると分かっていても、結局ティファには捨てることはできなかった。 それどころかクラウドにどんどん惹かれていって、 でも彼女のようにはなれなくて ティファに残された選択肢は、想いを隠すこと、それだけだった。 だから今のこの環境をティファは不思議に思う。 あの苦しみさえ伴うほどの想いを寄せていた彼が、自分の隣にいること。 そしてこれからも一緒だと言ってくれたこと。 あの頃の自分は夢にも思わなかっただろう。 「エアリス、言ってたよ。 同じ年頃の女の子と初めて友達になれて嬉しいって。 ティファのこともっと知って、もっと大好きになるんだって」 「そんなこと…言ってたんだ」 いきなり告げられたエアリスの自分に対する想いに、ティファは目頭を熱くする。 「すごく、嬉しいな」 心を痛めながら見ていた2人の後ろ姿。 なんの話をしているのか気になっていたその話題が、まさか自分のことだったなんて。 ティファはなんだかおかしくなってきて、クスクスと笑い出す。 「俺はエアリスが羨ましかったよ」 「、え?」 クラウドの放った言葉の意味が分からず、ティファの反応が遅れた。 「あの頃は俺に問題があったから仕方なかったんだが…。ティファはエアリスといるといつも笑顔なんだ」 「けれど俺とはろくに目を合わせないし、時々目があってもすぐに逸らされて。俺はそれが悔しくて…。だからティファと仲がいいエアリスに嫉妬していたな」 苦笑気味にそう言うクラウドは、じっと凝視してくるティファの視線に、ますます苦笑する。 ティファはクラウドの言葉が信じられなかった。 だってその感情は自分が持っていたものと同じで。 まさか同じ思いをエアリスに抱いていたなんて……… 「でも、嫉妬していたと言えば…俺はザックスにこそ嫉妬していたんだと思う」 「ザックスに?」 「ザックスが初めて声をかけてきたのは任務中だったな。 名前を聞かれたんだ。 そのときの俺はまさかソルジャーに話しかけられるなんて思ってなかったから、すごく舞い上がってた」 クラウドは遠くの物を見るように視線を目を細める。 「それから同じ田舎出身、てことで色々話すようになったんだ」 「そうだったんだ」 ティファは興味深げに聞いていた。 クラウドがザックスとのことについて語るのはあまりなかったため、はじめて聞く2人の話。 興味を持つなと言うほうが無理なのだ。 「それから一緒に訓練するようになって、人付き合いが苦手な俺をフォローしてくれて… それまで俺に良くしてくれた人はあまりいなかったから、本当に嬉しかったし、ザックスを尊敬していた」 「でも俺は一般兵で、アイツはソルジャーで…。いくら頑張ってもその差が埋まらなくて……。ザックスはいい奴だって分かってるから、尚更、嫉妬が生まれたんだ」 そしてそれが一番強くなったのはニブルヘイムの任務のときだった。 マスクで顔を隠してた俺とは違ってザックスは堂々としてるのを見て、どうして俺はソルジャーじゃないんだろう、とか ニブル山に向かうとき、案内として同行したティファとザックスが話してるのを見て、もし俺がソルジャーだったら、あの場所にいるのは俺だったんじゃないか、とか そして―――― もしティファがザックスに惹かれてしまったらどうしよう、と思っていた。 だってザックスはティファが待っていたソルジャーで、人付き合いもよくて、何もかも俺より上で。 ティファが惹かれるのも仕方ないと思っていても、どうか彼には惹かれないでくれと、そればかり考えながらニブル山に向かっていた。 「?クラウド??」 「本当……良かった」 「何が?」 「ティファが取られなくて」 いまいちよく分からないティファは首を傾げるが、クラウドは顔に笑みを浮かべたまま、そんなティファを見つめている。 どうやらクラウドに続きを話す気がないと悟ったティファは、話題にあがった人物を思い浮かべた。 「ザックスに、私もう一度会いたいなぁ」 「っ、なんで?」 もしかしたら声が裏返ったかもしれない。 それ程クラウドは動揺していた。 「私が彼に言った最後の言葉がね、キライ、だったの。ザックスはなにも悪くないのに、子供な私は彼に八つ当たりしちゃって…」 キライよ、神羅もソルジャーあなたも みんなキライよ! 「だから謝りたいなぁって」 「そうか……でもザックスは気にしてないと思うけどな」 「かもしれないけど、でもちゃんと謝りたいの。 キライなんかじゃないよ、って。好きだったよ、って」 クラウドの眉がピクリと動いたことに、ティファは気づかず話し続ける。 「そう、伝えたいんだ」 おそらくザックスのことを思い浮かべているのだろう。 ティファはどこか宙を見て微笑んでいる。 その様子を面白くない表情で見ていたクラウドの中に、嫉妬心が生まれたのを彼は気づいた。 「……ティファ、その『大好き』って、どういう意味?」 「へ??」 クラウドの声質から、彼が多少なりとも苛立っているのは分かったが、その理由に頭が追いつかず、ティファは間の抜けた声を出してしまった。 「だから、ザックスに『大好き』って伝えるんだろ? それはどういう意味かって聞いてる」 「あっ、や、違うのっ!!友達としてっていうか、深い意味はなくてっ!!」 クラウドが言わんとしている意味をやっと理解したティファは、顔を赤くし必死で弁解する。 その姿にクラウドの中にあった嫉妬心は多少なりとも落ち着いたが、まだ面白くない。 どこの世界に愛しい女性の口から他の男が好きと言われて笑っていられる男がいるのか。 たとえそれが親友であっても。 いや、ティファが惹かれるかもと危惧していた人物だからこそ、だ。 「じゃあ深い意味ってどんな意味?」 「ク、クラウド、どうしたの?」 やけに強い光を放っているクラウドの瞳に、ティファは彼がやはり怒っているのだと理解するが、逆になぜそんなに怒るのだろう?と不思議に思っていた。 ティファの中のザックスのイメージは、優しくて明るい、兄のような存在だった。 初めて会ったときから、お兄ちゃんがいたらこんな感じかなぁ?という印象が強くて恋愛感情は抱いたことがない。 必然的にさっきの『大好き』も身内に対するそれだった。 (だってあの時はクラウドが来てくれるのかとばっかり思ってたから、クラウドどうしたのかな?ってそればっかりだったし… ザックスと話してたのだってクラウドの話題ばかりで……… あれ?つまり…えーと………) カ――――――――――――ッ (私って、ずーっとクラウドのこと考えてたんだ) 今更ながら当時の自分を思い返し、恥ずかしさで顔が赤くなるのを自覚したティファは、クラウドの顔を見れずに俯いてしまう。 そんな彼女の様子にクラウドはますます面白くなくなってきて、眉間にシワが集まり始めたが、俯いてるティファはそれに気づかない。 「ザックスとのこと思い出して顔赤くしてるのか?」 「ちっ違っ!これはクラウドのっ、」 「俺?俺がなに?」 クラウドは何故自分の名前が出てきたのか不思議で続きを促したが、彼女は口を開かない。 どうやら黙秘を続けるらしい。 そんな彼女にクラウドの中に蓄積した嫉妬は、舌打ちという形で表に出た。 ティファがその音を耳に拾った直後、彼女の視界は逆転し、背中にはシーツの感触が 両肩には力強い手の感触が…。 そして唇には、ひどく乱暴で情熱的なクラウドの唇の感触が伝わる。 そこでティファはクラウドに押し倒されたのだと気づいた。 「俺はさ、ティファのことになると心が狭くなるんだ。 だから他の男を好きとか聞きたくないし、顔を赤くしてほしくない」 独占欲と呼ばれるそれを口に出したクラウドは、こんなかっこ悪いこと言いたくなかったんだ、などと言っている。 その顔は不貞腐れていて、でもその顔がかわいくて、愛しくて、ティファは彼の顔を両手で挟み軽く触れるだけの可愛らしいキスを送った。 「私ね、ずーっとクラウドのこと想ってたんだなぁって改めて自覚したら恥ずかしくなっちゃって…… えと、つまり、顔が赤いのはそういうことなの!!」 赤い顔で必死に伝えてくれる彼女はとても可愛くて、しかもその顔で言ってくれた内容はクラウドを浮き立たせるには充分な効果があった。 「本当に?」 「こ、こんな嘘はつかないよ」 「やばいな」 やばいくらい嬉しい。 いつの間にかクラウドの中にあった嫉妬は消え失せていて、案外俺も簡単だな、と自嘲したクラウドだったが、今はそれよりも目の前の彼女が愛しくて仕方ない。 今度はその想いを伝えるように、優しく、でも情熱的なキスを彼女に送る。 たっぷりと彼女の口内を味わい唇を離すと、彼女の息はあがっていた。 その様子があまりに扇情的で、クラウドは無意識にティファの腰辺りまで手を下げ、彼女の纏っている寝着から手を差し込んだ・・・ ガタンッ!! いきなりティファのドレッサーにあった花瓶が倒れて、驚いた2人は音のした方を同時に見る。 そこには倒れた花瓶に、滴り落ちている水、そして―――――― 教会で紡いできたエアリスの花がこちらを見ていた。 今は冬だ。 窓は開けてないし、部屋のドアもきちんと閉じている。 では、何故……… 顔を見合わせるクラウドとティファ。 「……エアリス、……かな?」 「案外、ザックスかもな」 「2人一緒だったりして」 「ありえる」 クスクスと笑うティファに、どこか不満気そうなクラウド そんな2人を花達は静かに見守っていた。 『だって……ねぇ?』 『俺たちのこと話してたのに、最後はノロケって…なぁ』 『失礼しちゃう、よね』 『全くだ』 どこまでも暖かい2人の気配が一瞬だけ寝室に舞い込み、花達を揺らしてすぐに消えていった。 あとがき マナフィッシュ様〜!! お待たせいたしました! 相互リンク記念、ということでリクを頂いたにも関わらず、素晴らしいリク内容とはかけ離れた文になっちゃったことをまずお詫びしなくては!! すみません、あの…少しでも気に入っていただけると嬉しいのですが…… 気に入っていただけることろがあるのかしら?(大問題) こ、これに懲りずに末永く舞々と仲良くしてくださいーー!!(>_<) こんな駄文ですが、いつもお優しいマナフィッシュ様に捧げます!! あ、返品可ですので!! 遠慮なくどうぞ!! 舞々でした!! 感想&御礼vv 舞々様ーー。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 こんな素敵なお話を本当にありがとうございますー!!(感涙)。 本当に嬉しいですよぉ(/▽\)きゃー♪ ラブラブクラティ、最高ですよね(*´∇`*) そして、こんな素敵なお話を下さる太っ腹な舞々様に惚れ直します〜vv 舞々様の運営される素敵サイト様は、『wild flowers』です。 携帯サイト様ですよ〜♪ 皆様もぜひ遊びに行ってくださいませ。 素敵なクラティ、ザクエア、エアティのお話が拝めます〜★.。・:*:・゜'☆ヽ(´▽`*)人(*´▽`)人(´▽`*)人(*´▽`)ノ★.。・:*:・゜'☆ 舞々様、本当に本当にありがとうございました!! 家宝にします〜vv |