絆 〜おまけ〜何から話せばいいのか……… メールを送ってからずっと、彼にどう伝えるべきなのかを考えていた。 けれど言いたいことがありすぎて、まとまらなくて、 なにも決められないまま、時間だけが過ぎていき、気が付くと空は茜色に差し掛かっていた。 すると、耳に聞き覚えのあるバイクの排気音が聞こえてくる。 その音は段々と大きくなってきて、すぐ近くでパタリと止まった。 ああ、彼が来た 立ち上がって後ろに視線を向けると、ゆっくりと扉が開き始めてるところだった。 そして間もなく彼の姿が目に入り、来てくれたことに私は口角を上げる。 彼も私の姿を確認して、僅かに微笑みながらこちらに歩きはじめる。 彼がこちらとの距離を少しずつ縮めてくるにつれ、私は軽く焦リ始めていた。 だって、彼に言うべき言葉がまだ決まっていなかったのだ。 さて、どう告げようか そう考えていると、彼の私を呼ぶ声が聞こえ視線を合わせる。 「病院に行ってきたんだって?」 マリンに聞いた。との言葉に頷いて肯定する。 「で、どうだったんだ?」 このセリフは……なんだろう、少し違和感があった。 正確にはセリフではなく彼の表情に。 今朝の彼の様子ならば、こんな優しい笑顔で尋ねないのでは?という疑問が浮かぶ。 まぁ、病院から真っ直ぐ家に帰らないあたり、なんでもないと結論づけられてしまったのだろうか?とも思ったが でも、それでも彼ならば「今日は一日休むこと」と言いながら眉間に眉を寄せ、お説教を口にするのではないだろうか? 「ティファ?」 返事が無い私を気遣うような声色だけれど、その表情はとても優しいもので。 やはり僅かな違和感を覚えながらも、彼のその微笑に心を決め、私はゆっくりと「あのね、」と言葉を紡ぎだす。 「風邪、じゃなかったみたい」 「ああ」 「その、驚くと思うんだけど……」 ここで私は彼の顔を直視できずに、視線を下げてしまう。 今から告げる言葉は、彼にとってはきっと予想外のことだから。 驚くだろう。 戸惑うだろう。 喜んでくれるかもしれないし、眉を寄せ、苦い表情をされるかもしれない。 どの可能性もあるのだ。 それは考えていたことだけれど、でもできれば最後の可能性は見たくない。 だから視線を逸らして、もしもの時に備えながら、ゆっくりと口を開く。 「赤ちゃん が……できたの」 しかし、彼からはなんの反応もない。 視線を上げれば彼の表情は見れるのだろうが、怖くて上げることができなかった。 でも沈黙が怖さに輪を掛けていくようで、耐え切れなくなったティファは言葉を続けていく。 「私も、そう告げられた時信じられなくて。もちろん、嬉しいんだけど……不安、とか すごく襲ってきて…」 「私の犯してしまった罪は……一生、消えない。一生、償っていくものだと 思っていたのに」 「そんな私が子供を授かっても、ちゃんと育てられるのか、とか」 「それ以前に …私が子供を産んでもいいのかな なんて思っちゃって」 「私のせいで不幸になった人はたくさんいるのに、私が幸せになっていいのかな?」 「私が幸せになるのは間違ってるんじゃないかな?」 「ティファ」 やっと、彼が言葉を発してくれたけれど、その声はとても硬いもので―――私は身を竦ませてしまう。 ますます彼の顔を見れなくなってしまったこの状況に、私は泣きたくなってきた。 するとクラウドがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえてきて、自分の足しか見えていなかった私の視界に、彼の重そうなブーツが入ってきた。 すぐそこに、手をほんの少し伸ばせば届く距離に彼がいるのに、やはりティファは視線を動かせないでいる。 「考え方を変えないか?」 「考え方?」 その言葉に思わず視線を上げた先には、彼の微笑があった。 ああ、と頷いたクラウドは私の手を取り、優しく握り締める。 「俺は今の生活がとても幸せなものだと思ってるんだ。家に帰るとティファがいて、デンゼルやマリンがいる。 仕事が早く終わった日の、4人で食べる夕食とか 他愛ない会話ややりとりに幸せを感じている」 その言葉に、ティファは瞳を大きく見開いた。 彼が言った幸せは、日常生活のそこかしこで起こっていることだ。 でも彼はそれが幸せだと言う。 そしてそれはティファ本人もそう思っていたはずのことで。 ティファは、自分がすでに幸せを手に入れていたことを失念していた。 忘れていたわけではないが、いつの間にかその幸せが当たり前になっていたことに衝撃が走る。 「他人ならただの日常だと思うかもしれないが……俺にとって今の生活は幸せそのものなんだ」 「罪を忘れないことは大切だ。 償っていくという決意も、行動も。 けれどそれに捕らわれてティファが不幸になっても、なんの解決にもならない」 経験者が言ってるんだ、説得力あるだろう? ニヤリと笑いながらどこか皮肉気な彼の言葉に呆気に取られてしまった。 けれど段々とおかしさが込み上げてきて、頬が緩んでくる。 やばい、耐えられそうに無い。 「ごっ、ごめ …っふふ、」 笑い出してしまった自分を彼は怒るでもなく、優しい瞳で見ていたから思わず涙が滲んできた。 「俺たちが幸せになることに否定的な感情を持つ人も、確かにいるだろう」 「けれど今の生活に1人加わるくらいの幸せは許してもらえると思うんだ」 その言葉に、ティファはクラウドが授かった命を受け入れてくれるのだと理解する。 同時に言い表せない喜びの感情が体の中で渦巻いて、溢れ出た感情は涙となって零れ落ちた。 泣いている顔を見られたくなかったが、両手は彼に繋がれたままだったため、ティファは頭をクラウドの鎖骨あたりに軽く押し付けた。 するとクラウドの両手はティファの手を離し、かわりに彼女の体を抱きしめる。 そして呟くように優しく、彼は己の一番素直な気持ちを言葉に乗せた。 「それになにより」 「俺はティファとの間に確かな繋がりが持てて、嬉しいんだ」 「これから―――これからも、一緒に幸せになろう」 ティファは懸命に首を縦に振る。 言葉にできない嬉しさを彼に伝えるために。 それは正確にクラウドへと伝わり、彼は彼女を抱きしめる両腕に力を込めた。 〜END〜 はい〜〜ご要望のあった「絆」のその後を書いちゃいました!(爆) 個人的にもすっごく不完全燃焼だったので、その後をオマケとして書いてしまおう!!という突発的(すぎる)行動! ど、どうだったでしょうか!? 糖度、増してますかね??(ドキドキ) 少しでもマナフィッシュさんに喜んでもらえたら嬉しいです! マナフィッシュさんさえよかったらこちらも貰ってやってくださいませvvv ではでは〜〜(・∀・)/ とりあえず2人の絡みがかけて満足な舞々でした(爆) 感想 もう、もう、もう〜〜!! ど、どうしましょう!? こんな素敵なオマケまで書いてもらっちゃって、私、もういつ死んでもいい!!(真顔) いやほんっとうにもう、嬉しすぎて感想が言葉で表せられない!! この胸掻っ捌いて見せることが一番手っ取り早いですよ!!(← グロイから) ティファの不安と期待の入り乱れた心情。 クラウドが到着したことで期待よりも不安が強くなるティファを、これまらクラウドが優しく包み込んでくれる…。 これ以上の素敵な2人の姿があろうはずもない!!(断言) 舞々さん、ほんっとうにありがとうございました!! 私の稚拙な言葉じゃ、この感動と感謝は伝えられません!! 本当に本当にありがとうございましたー!! 素敵な小説&イラストが拝める舞々さんの運営される『wild flowers』さんはこちらです♪ |