セブンスヘブン忘年会 【年忘れ大暴れ編】



 それは、深夜のセブンスヘブンの厨房で、湯気立ったカップをカウンターにコトリと差し出し、 柔らかく微笑むティファの一言から始まった。

「今年は、皆で忘年会をしようって事になったの」
「……忘年会?」

 カップに手を伸ばすクラウドは、この言葉の意味を差ほど気にも留めず、ただ話の流れに沿ってなんとなく言い返した。  

「うん、ユフィから電話があったの。ここでやろうってね?それも明日……」

 クラウドは口許までカップを運んでいた手を止め、ティファへ視線を上げた。
 明日という事は……。
 クラウドは壁に掛けられた時計をチラリと確認する。
 分かっていた事だが、時計の針は午前零時をとうに過ぎている。
 既に今日"ではないか……。
 これも分かっていた事だが、クラウドはユフィが自分に向かってニヤッと悪戯な笑みを投げる場面を想像して 頭痛を覚えた。
 思わず、カウンターに肘を着き額に手を当てる。

「……また、あいつか……」  

 クラウドは眉間に深いしわを刻み、額に当てた指の間からティファを見上げ、面倒くさそうに呟く。
 今のティファの一言が、仕事で疲れた体を尚更重くしたような気がした。
 聞かなかった事にして、さっさと二階へ上がり、シャワーを浴び、デンゼルとマリンの寝顔に癒され、レティアの小さな気配に触れて、眠ってしまいたい衝動に駆られる。

「なんだかもう、皆に連絡が行き渡ってるみたいで……」

 ティファはそんなクラウドの気持ちを悟ったのか申し訳なさそうに眉尻を下げた。
 クラウドは何かを答える代わりに静かに息を吐き、カップの熱いお茶を一啜りする。  

「……なんだこれは……」

 クラウドは眉間を寄せたまま、下げたカップを覗き込む。
 ティファはうふふと笑うと、カウンターを回りクラウドの隣に腰掛けた。
 クラウドはその怪訝な視線をティファに移す。

「……ジンジャーティーよ?クラウド、体が冷え切ってたから……」
「……ジンジャーティー?」
「……ほら、生姜って体を温めるじゃない?お砂糖とはちみつで少し甘くしたけど…… おいしくなかった?」

 あまり嬉しそうではないこの話題を切り替えるチャンスだと、ティファは思ったのだが…… 。
 その上、出されたお茶が口に合わないとなると…… 。

『大失態じゃない……?』  

「……いや、そんな事はないが……」

 大げさに思い詰めた顔をしたティファを前に、百歩譲って不思議な味がしたとも言えず、 クラウドは黙ってもう一口、口へ運んだ。
 やはり旨いとは思えるものではなかったが、しかしクラウドはふっと表情を和らげる。
 ティファはころりと表情を変え、嬉しそうにそんなクラウドを見詰めていた。
 その視線にクラウドはもう一度カップをカウンターに下ろし、ティファへ向き直る。
 そして、

「……こっちの方が温まる……」
「え……?そ、そう……?」
「……うん」 

 腰に手を回され引き寄せられたティファは、ほんのり赤く染まった頬をクラウドの肩へ預けた。

「……そっか」
「……ありがとな、ティファ」

 ティファは微かに頭を横に振り、そっとクラウドの首許へ腕を回す。
 そうして、帰宅後二度目の抱擁を交わした。

「……それで、俺に拒否権はないんだろ……?」
「……えっと……そうね……?デンゼルとマリンも喜んでるし……?」
「……明日はタイミングが悪く、早く帰れそうだ……」
「……そう、残念だわ……」

 そう皮肉染みた事を言い合って、微笑合い、その夜は明るみの空へ向かってゆくのであった。
 ただ、クラウドが若干いや、絶大な不安感を抱いたのは言うまでもない。  
 数時間後、空が薄ら明るくなる頃に仕事へ出かけるクラウドを見送り、腕まくりをするティファがいた。
 これから食材の仕込みと家事をしておかないと、仲間達がやってくる予定の正午に間に合わない。
 十時にユフィが来て参戦してくれると言っているが、何分バレットは並外れた食欲だし、それによってシドがつまみがないと言って 暴れ出しては大変だ。
 その上、それをきっかけにバレットも暴れ出す。なんて事になったら……。  

「……たっくさん、用意しとかないと……」

 ティファは目に浮かぶ光景に苦笑して、いそいそと店内に戻った。  
 朝早くから、いつも以上に慌しく動き回るティファにマリンが気付き、手伝いをすると言ってくれたのは心強い。  デンゼルも、途中で起きてきたが、流石に眠そうな目を擦りながらそれでもマリン同様手伝ってくれた。
 二人はティファの手伝いの傍ら、目覚めたレティアの世話をもしてくれ、ティファは感謝を込めて少しだけ豪華な朝食を作った。
 折角、三人で腕によりを掛けて作った料理が、満腹過ぎて食べられなくなるのは可愛そうなので少しだけ"にしたのだ。 
 朝食が終る頃、セブンスヘブンの鉄のドアが派手に開け放たれた。
 勿論、ウータイ一?の忍び、ユフィの登場である。

「ユフィーちゃん、参上!! 皆、元気だった〜〜?」

 手にはてんこ盛りの食材と酒瓶。

「「あ! ユフィー(お)ねえちゃん! いらっしゃーーい!」」

 子供達の笑顔にユフィは満足気に店内に足を踏み入れ、二人をムギュッと抱きしめる。
 デンゼルとマリンは破顔してユフィを見上げ、ユフィも二人に弾けた笑顔を返した。

「いらっしゃい!早かったじゃないユフィ。元気そうね?」

 ティファはレティアを抱いて笑顔でユフィを迎えた。
 レティアはクリクリと忙しく瞳を動かし、ユフィに向かって両手を必死に伸ばす。

「あいあい……あ〜うう、わうわう……」
「あ! レティア、待って待って!」  

 腕から乗り出すレティアを今にも落っことしそうになり、ティファは数歩前に歩み出た。

「あいあい、レティア〜〜ちょっと待っておくれよ〜」

 ユフィはそう言いながら、客席のテーブルに荷物を無造作に並べ置き、喜色満面にレティアを振り返る。
 テーブルから酒瓶が転げ落ちそうになったのを、デンゼルが慌てて押さえつけた。
 マリンが、ふう〜と息を吐き、デンゼルに親指を立ててニコリと笑った。
 デンゼルも同じ仕草でニッと笑う。
 ユフィは二人のそんな遣り取りに気付く様子もなく、軽くなった両腕を大きく開いてレティアに見せた。

「ほ〜ら、レティアおいで〜〜 ユフィママだよぉ〜」  

 レティアはこれまた必死にユフィの袖を握り締め、早く抱けとせがむ。
 ティファからレティアを受け取り、腕に抱いたユフィは間髪置かず驚いたように目を丸くした。

「ほおお〜、重たくなったな〜レティア! 何ヶ月になるんだっけ?」
「9ヶ月よ、大きくなったでしょう?」
「早いもんだね〜〜! ん〜〜良好良好! あ〜、ますますあいつに似て来たなぁ〜〜。でも、愛想がいいのはティファに似たんだよな〜良かったね〜レティア!」 

 腕を伸ばしてレティアを掲げ、口ではそう言いながら、金色に映える癖のある柔らかな髪と、紅茶色した大きな瞳をまじまじと見て、嬉しそうに目を細めた。

「もう、ユフィってば。クラウドの前でそういう事、言わないでよ?」

 ティファは困った表情をしてはいたが、それは思わず笑いそうになったのを堪えたからだ。

「へいへーい」

 ユフィは白々しく返事をして、レティアのプクリとした頬にキスをした。
 レティアもユフィの顔に手を伸ばし、お返ししようとする。

「ああ〜〜もう! 可愛いなぁ!!」 

 ユフィの持参した食材で料理を再開し、準備が整ったのは正午のギリギリ前だった。
 ユフィは手伝いの為に他の仲間より早く参上したのか、レティアやデンゼルとマリンと遊ぶために早く参上したのか 分からない状態であったが……。

 仲間達がやってくる頃には何とか、テーブルに料理や食器類を並べる事が出来た。

「よっしゃー! これで準備OKだね!さああ、飲むぞ食うぞ〜!」
「ちょっとユフィ!皆揃ってからよ?」
「……お腹空いたんだもん……いいじゃん……ケチ」
「あ〜〜! デンゼルがつまみ食いしたー!」
「げっ! バレた……」
「こらー!二人共!」
「いいじゃんねー? デンゼルナイスッ!」
「「もう〜〜!」」
「だあ……だっだぁ〜〜あいあい……」(「ふう……どうなることやら……」か?)  

 そして、クラウドが運悪くモンスターと遭遇する事三度、不安が的中しない事を願いつつ、 フェンリルを目一杯飛ばして帰宅する頃には、早くも忘年会は最高潮に盛り上がっていた。
 クラウドの不安とは、もちろん娘のレティアの事である。  

「あいつらの手に掛かったら……」

 主にバレットとユフィの無茶振りを想像して、クラウドはフルフルと頭を振った。
 クラウドの疲労は心身共に濃い色を見せていた。

 バイクを車庫へ突っ込み、店内へ続くドアに手を掛けた時だ。

 カーッカッカッカッカーー!!
 ドッゴオオオオン!!
 ッカッカッカー

 シドのものと思われる派手な笑い声に混ざって、何やら宴会には似つかわしくない擬音がクラウドの耳を突く。

『……ドゴーンッ……? 一体何が起きている……』

 ゴゴゴゴゴゴゴ……ズダダアアアン!!  

 セブンスヘブンが……エッジの街が、揺れた気がした。

 クラウドの不安に拍車を掛けるその轟音。
 クラウドが勢いよくドアを開け、初めに目にしたもの。それは……。

「おいおい! だれだ!? 俺の可愛いマリンに酒なんぞ飲ませやがったのはあぁ〜〜!!??」
 バレットの憤怒の形相、義手から立ち上がる銃煙と高く差し上げられた左手に、

「……レティア……!」  
 クラウドは驚愕のあまり身を硬直させる。

「あれれ〜〜? そおれ、お酒らっらのかぁああ? わるいわりーねぇ〜 れっきりジュースらとおもっれ〜〜」  
 ユフィがバレットに手をヒラヒラ振りながら、顔を赤くしてヘラヘラ笑う。

「あんだとおお!? ユフィ〜〜次は外さねええ〜〜」
「ちょっと!バレット!床に穴!!ああ……壁にも……いい加減にして! ……あ!マリン!!」

 ティファが厨房から飛び出して、目を回して倒れそうになるマリンを受け止める。

「ごめんなさ〜〜い、ヒハ〜〜 ……これ、ぶろうジュースじゃなかったろ?でへへ……」 
「マリン! み……水……デンゼル!お水持ってきて!」
「ええ〜? みみず〜? みみずはほそながくってぇ、土の中にぃ……あははははっひへっく!」

 ティファはデンゼルの様子に愕然として、項垂れる。

「おうおう!水ならこっこにあるぜぇ〜〜ほらよっと……ありゃ・・・」

 シドは水の入ったグラスをティファに渡そうとして、床に蹴躓く。
 頭から水を被ったティファは、ヒャーーっと声を上げ震え上がった。

「シド! 何するのよ!……しかもこれ、焼酎じゃない!?」
「うへっへ!すまんなティファ!俺様……ナイスコントロぉぉぉルルルルぅぅぅ」←若本風
「……あ……あれ? レティアはどこ?」

 ティファは焼酎の滴る頭を左右に振って、必死に辺りを見回す。

「……ヒ……ヒハ…… あ、あそこ……とーちゃんのぉ……」  

 マリンがふわふわと指差す方向を見上げたティファは、目を見開いた。

「ええええええ!? ババ、バレット!! レティアを降ろして!!その義手も下げて!!」
「いいんだよ……ティファ……あたしもね〜このおっさんとはいつか決着を付けたいと思ってたんだ」

 何やらしっかりとした口調で、わけの分からないことを言うユフィをスツールへ押さえつけ、いまだ、憤怒の形相でユフィの後頭部を睨むバレットの手を慎重に下ろしたティファは、 いよいよ、バレットの手の先でケタケタ笑っているレティアに手を伸ばした。
 しかし、バレットの興奮は治まらず「うおおおおお」と雄叫びを上げる。
 その拍子に手からレティアが離れた。

「おいおい! バレット落ち着けってんだ。ティファも座って飲め飲め〜〜〜カッカッカ!」

 シドに首根っこを掴まれて引き摺られたティファの伸ばした手は、レティアに届く筈もなく……。


「あああああ! レティア〜〜〜!」

 レティアが楽しげに笑い声を上げながら落下していくのが、ティファの見開かれた目にスローモーションで映る。
 丸い小さな背中が、床に打ち付けられるのを見たくないと咄嗟に目を瞑りかけたその時。
 黒い手がスッとレティアに差し出されたのを見た。

「……おい、レティアを殺す気か……?」
「……クラウドッ!!」

 冷たく光る碧い眼をバレットに向け、レティアを片腕に抱き上げたクラウドは、まるでピンチの時に現れる戦隊ヒーローさながらティファの見開かれた瞳に映し出された。 

「おうおうおう!クラウド、遅かったじゃねえか〜!こっち来て、つまみでも食えや」
「ぐおおおお!クラウド!ユフィの奴がマリンに酒飲ませやがった!!」
「おっきゃえり〜〜! クラウドぉ! 酒がたりないんらよおお??」
「……くらうろ…… お……かえり……な……zzZZZ……」
「クラウド!! ミミズ!! ミミズ持ってきてくれよ!」

 一斉に浴びせられる言葉の攻撃にクラウドは顔を顰め、ため息混じりにティファを見下ろした。
 床に這い蹲ったままのティファはクラウドを見上げ、満面に引き攣った微笑みを浮かべる。
 クラウドは、目を閉じこの現実をなんとか頭から押し退けようとしたが、それはレティアが伸ばした両手に、頬をペチペチと叩かれた事によって失敗に終った。

 「……」
 「とーた……ちった、ちった……」
 「……何だ?レティア」
 「父様、頬が冷たいよ」と言っているのだろうか。

 クラウドはレティアの両手にそっと自分の手を重ね、目を細める。
 温かい小さなレティアの手に、疲労を感じていた心身がスッと軽くなる。

「……ただいま、レティア (ありがとうな……)」
「だぁた、あうあう……」(「気にするな」とでも言っているのか?)  ……これで見事に現実逃避出来たのではないだろうか?  

 ティファも立ち上がり、クラウドに優しく微笑み頬を寄せた。
 二人はレティアを包むように軽く抱擁する。

「……おかえりなさい」
「……ただいま」

 しかし、

「おうおうおうおう!!熱いね〜〜お二人さん! いつまでもらっぶらっぶううう!!」
 ユフィの野次で、瞬間的に現実に戻されるのであった。  

 相変わらずの騒々しさの中、クラウドはレティアを抱いてカウンター席についた。
 テーブル席とは打って変わって落ち着いた雰囲気にクラウドはホッと息を吐く。
 マリンを寝室に運んだティファが戻って来て、厨房へ立つ。

「……やっぱり私は、ここが一番……」
 些か疲れた顔をしたティファが、タオルの掛かった首を少し傾けてニコッと笑う。

「……ああ、そこが安全だ……」
 クラウドは思わず苦笑を漏らす。

「今日は、早いお帰りなんですか? お疲れ様です」

 そう声を掛けてきたのは、隣席のWROの局長リーブだ。  

「ああ……、今日に限ってな……運が悪い……」

 クラウドはティファが差し出したグラスを受け取りながら呟く。

「はははは、そうですか。私も今日は暇が取れましてね。お邪魔させて頂いてますよ?」
 と、リーブは楽しそうに声を上げて笑いながら、クラウドのグラスに酒を注いだ。
 横にはちょこんとケット・シーがクラウドに向かって手を振りながら座っている。
 クラウドはそれに手を振って答えるべきか否か一瞬迷ったが、結局はぎこちなく頷きカウンターに視線を戻した。
 リーブからクスッと静かな鼻息が聞こえた。

「レティアさん、お元気に育っておられますね。何よりな事です」

 クラウドの片膝の上で、機嫌良くチョコボのぬいぐるみを手の中で転がすレティアを見て、笑みを深める。

「……ああ……、色々、世話になってすまない」

 クラウドは片腕にすっぽりと納まっているレティアを見下ろす。
 その表情は持ち前の無表情だったが、どことなく柔らかさを感じリーブは胸を温めた。

「いえいえ、何をおっしゃいますか」

 リーブの表情はどこまでも和やかで優しく、人の良さが滲み出ている。
 この男が、世界を動かす中心に居るなどとは、想像し難いものがある。
 いや、だからこそ星の再生、星に害をなすものと戦うという偉業を成し続ける事が出来るのだろう。
 厚情深く、道義心の強い人間だからこそ。
 クラウドは隣席で気さくに笑っている男に、生涯頭が上がる事はないだろうと、静かに笑みを零した。

「クッラウド〜〜、おいらの事忘れてないよね?」

 突然、クラウドの脇の下からズボっと赤毛の獣が顔を出した。
 クラウドは、ドキリとしてガタッとスツールを鳴らす。

「……レッド…… お前も酔ってるのか……?」
「酔ってないよ?おいら……だっておいら、誇り高き勇敢なセトの息子だから!」
「そ……そうか……」
「うん!」

 脇の下からクラウドの顔を見上げ、ブンブンと得意げに頭を振って答えるナナキの鼻面は赤いといえば赤いが、 元から赤いのでよく分からない。
 そして、レティアにスンスンと鼻先を向ける。
 レティアはチョコボのぬいぐるみから手を放し、目を光らせてナナキの鼻をペチペチと叩いた。
 クラウドは落っこちそうになるチョコボを、片手で素早くキャッチした。

「はぁ〜、おいらやっとレティアに触れたよ……。チャンスがなかったんだー あっちが、あんな状態だったし……」

 レティアに叩かれ、顔を上下させながらナナキは嬉しそうに言う。
 クラウドは、ナナキを脇に挟み、レティアを片膝に抱いたまま、チラリと後ろを見遣る。
 後ろでは、更にヒートアップしたバレットが酒を呷り料理を食らい、腹踊りを始めたユフィがテーブルにぶつかって食器を落とし、飲み屋にでも来たかのようにジョッキを掲げ注文するシドに、デンゼルがふら付きながら対応している。
 そして、いつの間にかティファが滅茶苦茶な店内を少しでも綺麗にしようと、奮闘していた。
 一足先に、いや、まだ夕方とも言えない時間に就寝に着いたマリンが羨ましくもあるその光景に、クラウドはせめて見なかった事にしょうと思い目を瞑る。
 しかし、そうもさせてくれない大音響が店内を震撼させているのだが。  
 そういえば…… クラウドは店内を素早く見回しその姿が確認出来ないと、カウンターの隅に目を遣った。
 そこには、誰よりも何時(なんどき)よりも気配を消し去り、黙々とグラスを口へ運んでいる真紅の古マントを纏った男がいた。
 その男はクラウドの呆然とした視線に気付くと、深く息を吐き出した。

「……かかわらない方が身の為だ……クラウド」
「……ヴィンセント…… 分かっている……」

 そう答えたクラウドだったが、「どっちにだ……?」と心の中で問う。
 だがこの場合は後ろの連中には"という事だと判断し、立ち上がろうとした。
 しかし、ヴィンセントはしきりに小刻みに頭を横に振る。
 来るなという事か……いや、立ち上がるなという事だろう…… 。
 少しでも目立つ行動を起こせば、後ろの連中の的になる。

 クラウドは、半分浮かせた腰をゆっくりと下ろした。
 しかし、デンゼルだけはあの場から助けてやりたい。
 デンゼルも多少なりともアルコールを飲んだに違いない。
 少し、休憩させなければ……。

『でも……』

 あの場に足を突っ込む勇気がどうしても沸いてこなかった。  

『デンゼル……もう少し、待ってくれ……』

 待たせてどうにか状況が変わる見込みなど有りもしないが…… 。
 そこでティファが動いた。
 フラフラしながらティファの元へ注文を告げに来るデンゼルの肩を掴み、カウンター席へ連れて来たのだ。

「……クラウド……デンゼルが……大丈夫かしら……」  
「クラウド〜〜、おかえり〜〜 えへへへへへ……ジョッキおかわ……りぃ〜」

 デンゼルはヘラヘラと力なく笑い、ゴツッとカウンターに額を打ちつけた。

「……デンゼル、大丈夫か……?」

 クラウドが声を掛けるも、デンゼルは一瞬で寝入ってしまったようだ。

「デンゼル君……ナイスファイトでしたよ」  

 リーブが苦笑して、デンゼルの後頭部をポンと叩いた。
 クラウドは立ち上がり、ティファへレティアを渡す。
 ナナキはようやっとクラウドの脇から開放された気分で、ブルルンと首と、後ろ立ちしていた足を振り回した。

「お願いね、クラウド……」
「ああ……」

 クラウドはデンゼルを抱き上げ、二階へと上がって行った。
 と、その隙にとでも言いたげにユフィがティファの傍へやって来て、レティアが手にぶら下げていたチョコボのぬいぐるみを目元まで持ち上げてニヤリと笑う。

「ふふ〜ん、クラウドってば、すっかり親父してんだな〜」
「ふふ。 これ、チョコボファームに配達がある度、お土産に買ってくるのよ?」

 ティファは、ユフィに掴まれた腕をそのままにチョコボのぬいぐるみを上下に楽しそうに振るレティアを穏やかに見詰める。

「ああ〜〜そうらしいね〜〜?」

 ユフィの顔に悪戯な笑みが広がる。

「……あら? 知ってたのユフィ?」

 ティファは少し驚いたような笑みをユフィに向けた。

「ふっふっふ…… まあ〜、ティファも一杯やりなよ。あたしが持ってきたウータイの地酒、うまいよ〜?」

 ユフィがテーブルへ飛びつくようにして(実際はバレットが空けた床の穴を飛び越えるのに失敗して、 慌ててテーブルの端にしがみ付いた)酒の入ったグラスを取り、ティファに押し付ける。
 ティファは、強引に渡されたそれを片手に受け取り、小首を傾げた。

「もう〜、ユフィってば、飲みすぎじゃない?すごく酔ってるわよ?」
「だははははは! だいっじょーぶ、だいじょーぶ!」

 仰け反って大声で笑うユフィに、ティファは引き攣った笑みを浮かべ、仲間達はその声に反応してユフィを振り返る。
 ユフィは皆の視線が集まったところで、得意げに両手を上げて更なる注目を求めた。

「あたしさーー知ってるんだぁ!」

 仲間達がなんだなんだとユフィへ身を返す。

「何をかって!? それは、クラウドがなんでファームに行く度、チョコボのぬいぐるみを買って来るのかをさ!!」
「……いやだから、土産なんだろ? 何言ってんだおめーは……」
「完全に酔ってるじゃねぇか! くだらねえーーー!!」
「……ユフィ? 大丈夫?」
「やっぱりヴィンセントの言うとおり、かかわらない方がいいよね」
「……好きにするがいい」
「ははははは、楽しいですね?」

 仲間に馬鹿にされ、ユフィは一瞬ムゥッと口を尖らすが、すぐに得意げな笑みに戻る。

「ファームの! 売店の! 女の子は!十代の!ぴっちぴちの! きゃわいいギャルである!!」
「ほう……」
「ああ〜?」
「……え?」
「その子が四本足ならちょっと気になる」
「……」
「ははははは」

 ユフィはどうだとばかりに仲間を見下ろし、先を続ける。

「そのギャル! クラウドの事が! まあ〜、なんでか分かんないけど! 超好みなんだって!」
「はん!俺様の方が男前だってんだ!」
「げえ?」
「……!」
「クラウドが四本足ならねー、でも男だしなー」
「……」
「ほほほほーう」
「えっへん! それで、クラウドが配達に来る日はー、目一杯オシャレして、スタンバッてるんだー!」
「クラウドだって、男じゃーん? 可愛くって、小柄で、華奢な女の子に〜、何か進められたら〜〜」
「……ふふふふふ…… つい釣られて買っちゃうよな〜〜? これ、ユフィちゃんの卓越した情報収集術の賜物〜!」

「……ユフィ……」
「……へ?」

 とても女性の喉から出たとは思えないほど凄みを利かせた地を這うような低声に、ユフィの勢いは一瞬で消し飛んだ。 

 レティアを片腕に抱いたままのティファが俯いて戦慄いている。
 手には空になったグラスを今にも割りそうな力で握り締め…… ユフィは顔色を変え後ずさる。
 ティファの本気の恐ろしさは四年程前、旅を共にしていた者なら重々承知の上だ。
 ティファは怒りに顔を赤く染め、空(くう)を睨む。
 ユフィの額に、嫌な汗が滲み出た。
 仲間達は、我知らずとユフィにクルリ背を向け、それぞれ大人しくグラスを手にした。
 みな酔ってはいても、事の重大さには気付いているらしい。 

「だ……だははは…… ティファ? 落ち着いて…… いや、なんてゆ〜か……じょ、ジョークだって……へへ……」

 ユフィは両手を顔の前で広げ、何か言おうと口を開くティファに向かって「ちがう、ちがうんだって」と振りまくる。
 しかし、ユフィの必死の防御?の前で、ティファはキュッと口を結ぶとレティアの頭をそっと撫でて、カウンターに腰を下ろしてしまった。  

「……ありゃ?……ティ……ティファ?」

 拍子抜けしたユフィが、恐る恐る後ろから声を掛ける。
 ティファからの返事はない。
 その代わり何やらぶつぶつと独り言を言い始めていた。
 ユフィは行き場を失ったように、その場でキョロキョロと辺りを見回し、脱力して項垂れる。
 とそこへ、キツイ口調のティファの声。ユフィは飛び上がるほど驚いた。

「ユフィ!」
「は、はい!」
「さっきの持ってきて?」
「さ……さっきのって?」
「お酒よ!」
「あ、はい! ウータイの地酒だね! ちょいとお待ちを!」

 ピューとすっ飛んで、酒瓶を持って来てティファのグラスに急いで注ぐ。
 焦って手元が震え、なみなみと注いでしまった酒を、ティファは物ともせず一気に喉へと流し込んだ。

『ひぃぃぃぃぃぃ……』

 声には出さず、静かにその光景にたじろいだユフィは、またもやピューと元居た席に戻っていった。
 テーブル席ではバレットとシドに渋い顔をされる。
「……あほか、おめーは? ティファを怒らせてどうする」
「うおおおお! ユフィ、何がどうなってこうなったぁぁ!?」
「……ああー、失敗した……酔ってたんだよぉ……許してよぉ……がっくし……」

 カウンター席では、リーブがティファをなんとか落ち着けようと、必死のフォローをするも、ティファの「ほっといて」の一言で撃沈し、ケット・シーに慰められていた。
 ナナキはここぞとばかりに自分は獣だという態度で、
『……だから、おいらには何も振ってくれないでね』
 と  床に丸くなって、寝たふりを始める。
 ヴィンセントは
『……クラウドはまだか?
』と心の中で呟き、やはり黙々とグラスを口に運んでいた。

「……ね、レティア……分かってくれる?この気持ち……」
「あいあい〜?」
「うん……ありがと…… どうせあたしなんて…… 小柄でも華奢でもなく、誰かに守ってもらわなくたって…… 十分強いし……可愛くもないわよ……」
「いあいあ〜? だあだ〜だ あぶぁぶぁ……」
「……いいのよレティア…… 分かってるもの、クラウドだってきっと……」
「あいや〜〜」   

 こんな状況の中、クラウドはと言うと……。

 下りる階段の途中で、手に掛けた背中の大剣を引き抜きそうになるのをグッと堪えていた。
 その怒りの反面、今更どんな顔をして店内に戻ればいいのか分からず、足は意志とは逆に前に出ない。
 いや、そ知らぬふりで戻ればいいのだ。何も聞いてはいなかったと。
 しかし、聞き捨てならないユフィの発言を前に平然としていられるだろうか。  

「誰が……釣られて買うだと……?」

 呟いてみると、余計に怒りが込み上げてくる。
 しかも、謂れのない情報とやらに、何故こんなに考え込まなくてはならない。
 堂々と、出て行けばいいのだ。
 だが、疑い掛かっていれば、それを嘘だと言ったところで言い訳がましく取られるのが世の常だ。  

「……やってくれるな……ユフィ……」

 クラウドは大剣から手を落とし、更に深いため息を落とした。
 もう、寝たふりを決め込むしかない……。
 そう、決めかけた瞬間、またもやユフィの問題発言が耳に届く。
 クラウドは、階段に掛けた足を、ピタリと止めた。


「にしてもさぁ〜? クラウドがいっくら頑張って親父してもさー、結局は娘って、お嫁に行っちゃうんだよな〜」


 ユフィがクックックッと喉を鳴らす音が聞こえたような気がした。

「…………」

 クラウドはピクリと眉を顰める。
 楽しげに、いや、最早酔いに任せて行くところまで行くつもりなのだろうか。  

「……それとも殺されたいのか……?」  

 書き手に合わせるクラウドだったが、その表情は怒りとは違った複雑な心境を物語っていた。  

「まあー確かにそうだな。俺様のガキは男だからよ、そんな心配はいらねえが〜」

 シドが頷いている様子が目に浮かぶ。

「おうおうおうおう〜〜! 絶対嫁には出さんぞおお! マリン!!  分かる! お前の気持ちは分かる! クラウドよおお!」

 自分の事と重ね合わせたバレットの悲しげな表情も目に浮かぶ。
 気付けばクラウドは、バレットに共感していたが……

『そうだ……マリン……レティア…… 俺は二人分なのか……』

 これは、バレットより自分の方が辛いと認めざるを得ない。

『いや……しかし…… それが幸せだと言うなら俺は……』  

 すっかり、ユフィの話に流され落ち込んでしまったクラウドだった。
 が、次の瞬間には、自分でも気が付かないほどの速さで、かつ見事なコントロールで大剣をぶん投げる事になる。


「ま〜でも、心配はいらないって! レティアはあたしが貰うんだからさ! 正確にはあたしの甥っ子! 年はちょい離れてるけどさ〜! 小さい頃から修行積んで 年齢にしては十分な腕っ節なんだ〜〜!あ、そうそう、それにお・と・こ・ま・え! 血筋だね〜あはは!」
「あああ!? おめーそんな事考えてやがんのか? 残念だがな、レティアは俺様のとこに嫁に来るんでい! 正確には俺様の息子のところ、だがな!」
「はあ〜?シド、あんたこそどんだけ図々しいんだろうねぇ〜! もう決めてんの! これだけは譲れないよ!?」
「なんだと!? 年なら俺様のガキの方が相応だろうがよ! それにうちのは頭脳明晰だってんだ!」

 ……ザシュッ!!  

「「「……どわおおっっ!!??」」」 

 テーブルのど真ん中に突き刺さった大剣。
 空の平皿が綺麗に真っ二つに割れ、刃の両面に反射して見事に二枚の皿が再生されている。
 この席の三名はゴクリと喉をならし、青ざめた顔でそれに見入った。
 ユフィが硬直状態で身震いし、引き攣った口で上擦った声を漏らす。

「あ……あははははは……割れたのが皿で良かったよ……まったく……」
「お……おおう……」

 シドも目元を引き攣らせながら、ぎこちなく頷く。

「……お、俺は関係ねえんだぞ……?」  

 バレットはその巨漢を出来るだけ縮こませた。   

「……話は終ったか?」

 後ろから今まで聞いた事があっただろうか?多分ない。
 ドライアイスを更に冷却させガチンゴチンの超級ドライアイス。 
 耳を掠っただけで全身が凍り付き、正確に聞き取ったならば全身大火傷してしまう程の殺気を含んだ声。
 恐らくそれを放った主の表情は、想像しただけで絶命してしまうだろう。
 三人は声を失くし、決してクラウドを振り返ろう(見よう)とはしなかった。
 しかし、クラウドの冷声は続く。

「……ユフィ……」

 ユフィは聞こえないふりを決め込もうとしたが、見事に肩が跳ね上がる。

「〜〜〜〜…………」

 言葉を失くしたユフィはただ、まずいと身を強張らせるばかりだ。
 クラウドはユフィの硬くなった背中に冷たい視線を突き刺す。

「さっきから……聞き捨てならないんだが……」

 クラウドが先を口にしようとした時だった。
 今までカウンターですっかり自暴自棄の世界に酔い痴れていたティファが、勢いよく立ち上がり弾みでスツールをひっくり返したのも気にせず、ダンッダンッ!と両足を床に打ち付けて広げクラウドの前に立ちはだかった。
 クラウドは遮られた視界にゆっくりとティファを映す。

「……クラウド」
「……ティファ……?」
「……最低よ……」
「待ってくれ、ティファ……誤解だ……」
「問答無用よ!!」

 涙目のティファが、 【Yeah!】【Yeah!】【Yeah!】【Yeah!】【Yeah!】【Yeah!】【Yeah!】 の構えに拳を握り、足をジリジリとずらす。

「……お前……酔ってる……」

 クラウドが、数歩後ずさりながらティファの様子を探る。


「ハアーーアアア!!」


 ティファの全身から迸る気合を受け、クラウドは流石にそれはやばいと思った。
 仲間達も立ち上がり、どうしたものかとティファのリミット発動ギリギリの後姿と、それをどう止めようか……いや、防ごうか、迷いに迷っているクラウドの姿を交互に忙しく目を配らせる。

「おいおいおい! やめろ! 店が壊れちまうぜ! ティファ落ち着けってんだ!!」

 シドが先陣切って叫ぶ。

「レレ……レティアの前だよ!! ティファ! 正気に戻ってよ!」

 ユフィが頭を掻き毟り混乱する。 

「うおおおおおおおお」
「…………」

 興奮絶頂のバレットが無駄に発砲しそうになるのを、 スッと割って入って来たヴィンセントが黙ってバレットの義手を押し下げる。
 ナナキは恐怖のあまり、立ち上がれず伏せ状態のまま前足で目隠しをした。
 そして、レティアを預けられていたリーブはこそっと素早く立ち上がり、 店の扉へと身を返して、レティアを守るように身を屈め小走りで出口へと向かう。

 この銘々の行動はどれも刹那の行動で、ティファが気合の掛け声を上げている間の動きだ。
 クラウドはこれまで戦ったモンスターの中でもティファが一番怖いと思った。

 ……もとい。
 これまで戦ったどのモンスターより、今目の前に立つ妻に恐怖を感じていた。
 ティファに反撃が出来る筈もなく、回避する事が出来たとしても多大な被害をもたらす事は間違いない。  

「ま……待て、ティファ……あれはユフィが勝手に言った事だ……」
「べに……かに……ぶ……だい……せが……」
「……は?」
「だから……これ以上!! 店を壊さないで!!って言ってんの!!!」
「そ…………そっちなのか!!??」   

 ティファは叫びながら、思わず声を上げたクラウドの懐に飛び込んだ。
 クラウドは衝撃のあまり、ストップの時間魔法に掛かったかのように固まっている。
 ティファの連続攻撃(掌打ラッシュ)がクラウドの顔面を襲い掛かる。
 身動き出来ないクラウドが、目を見開いたままそれをまともに食らってしまうと思われた瞬間。
 ティファが突如クラウドの視界から消えた。
 その代わりにクラウドの目に映ったのは……  ニコニコと嬉しそうに、一歩、二歩……三歩、フラフラと覚束ない足取りで歩み寄り、 クラウドの足をギュッと握り締めるレティアの姿だった。

 クラウドの瞳孔が最大に見開かれる。

「……レティア! 今はまずい……!」
「ああああ! レティアさん!!あきまへん!」

 レティアを抱いていたはずのリーブも叫ぶ。
 正確には、ケット・シーが叫んでいた。
 レティアを抱いて店を出ようとしたリーブだったが、ケット・シーをカウンターに置き忘れていた事に気付き、 意識をそちらへ集中させた瞬間、レティアがリーブの体を滑り降りたのだ。

「あああ〜、勘弁してえな……」

 ケット・シーは両手で頭を耳ごと抱え込んだ。

『もうあかん!!』

 そう思い、目を硬く瞑ったケット・シーだったが……  何だか喉をギュッと絞られて出たようなおかしな声が聞こえ、恐る恐る目を開いた。

 目下では仲間達が折り重なってティファを押さえつけている。

「み……皆さん! セーーフですやん!」  

 ケット・シーは歓喜の声を上げた。
 しかし、床でペシャンコになっているティファの拳は、それでも勢いを無くす事はなく、行き場を失ったリミット状態の力がバシーーーッと音を上げると共に閃光を走らせる。
 床を、窓を、天井を、そしてレティアを抱き上げようと屈んだクラウドの頭上擦れ擦れを通って、後方の壁を打ち貫いた。
 レティアを抱いて上体を起こしたクラウドの頬に、冷やりとした汗が流れた。
 そして、暫し静寂が店内を覆う。
 数秒後、ガラガラと崩壊寸前の音を立てているセブンスヘブンを呆けた顔で見渡す一同。
 すっかり、力の抜けたティファが仲間の下からクラウドを見上げる。

「……これ以上、店を壊さないでくれ……」

 クラウドが呟いた。

「ああ……クラウド……レティアが……初め……て歩い……た……の……」

 そう言い残し、床に頭を打ちつけて意識を手放すティファだった。
 クラウドはレティアを見詰め、そっと柔らかな金糸の髪に頬を埋める。  

「……助かった……レティア……ありがとな……」
「あちゃあちゃ……だあだあ、ぶぶ〜」(それより歩けた事を褒めろと言っているのか?)

 それより、ティファを助けた方がええんちゃうやろか?とケット・シーは思った。  
 その後、レティアの初よちよち歩きを仲間達は大いに喜びあい、しぶとく宴会は続行された。
 だが、悲しいほど滅茶苦茶になった店内のソファーでは、ティファが額に濡れタオルを乗せ横になっている。
 その傍らに座り、介抱するクラウドとユフィの姿がある。

「ごめんなさい……クラウド……私ったら……」

 真っ青な顔で申し訳なさそうに誤るティファに、クラウドもすまなさそうに首を振った。

「……いや……。……ティファ……あれは誤解だからな……」
「うん……うん……。私悪酔いしちゃって……本当にごめんなさい……」
「あいっちゃ、あいう〜だっだ」

 クラウドの膝の上から手を伸ばし、ティファの頬を撫でるレティアの姿に、二人は見詰め合って苦笑を零した。

「ティファには合わなかったのかねぇ、ウータイ自慢の地酒【あまもり】……かなりキツメの酒だからなぁ〜 いや〜それにしても、どうなる事かと思ったねえ!」

 ユフィが、ホッとしてにこやかに笑う。
 仲間のほぼ全員から、思いっきりつっこみを受けたのは言う間でもない。

 それにしても、ティファの閃光が天井を突き破った時、二階で眠っていたデンゼルとマリンに当たらなかった事だけは 不幸中の幸いと言えよう。
 しかも、未だ二人はぐっすり眠っているようだ。
 出来ればこのまま、店の修復が終るまで眠っていて欲しいものだとティファは心から思った。  

 盛大な忘年会が繰り広げられたセブンスヘブンがなんとか元の姿を取り戻し、仲間達が去った数日後。
 クラウドは愛車に跨り、冷たく澄んだ星空を見上げていた。

 もうすぐ、一年が終る。
 振り返れば激動の一年。
 辛い事もあった。
 しかし、最大の喜びを感じる事が出来た一年でもある。

 大切なものに囲まれ、笑い合い、時には騒ぎ、ぶつかり合い、そうして何気ない毎日を生きていく。
 それが、幸せというものかもしれない。

 来年はどんな事が待っているのだろうか。
 それは知る由もないが。

「なんとかやっていけるさ……」

 家族、仲間がいれば。

 クラウドは一人、夜空に向かってふっと笑みを零した。
 そして、ポケットの携帯を一本の着信音が震わせる。

『もしも〜し、ユフィちゃんだよ! いやあ! この間は楽しかったよ〜! ありがとね〜♪ で、次は新年会なんだけ……』

 携帯は無言のまま一瞬で切れたという……  やっぱり暫くは静かに過ごしたい。

 と、深く深く心に感じ、今一度、星が流れる空を見上げたクラウドであった。  完   



マナフィッシュ様へ  

 メロビューです。マナさん、いつもお世話になっております!  
 大忘年会、読んで頂いてありがとうございます〜!下手なお話ですが、いかがでしたでしょうか?
 本当は、お見せするのが恥かしいくらいですが、日頃の感謝を込めまして、お歳暮といっては、大したものじゃございませんがどうぞお納めくださいませ?w  
 本当にありがとうございます!!  
 そしてこの度、メロビューの空が三周年を迎える事が出来ました。
 とは言ってもノロノロ更新で実績は殆どありませんが^^;
 でも、私がサイトを立ち上げるきっかけを下さったマナさんには、感謝の気持ちで一杯です!!
 メロビューの空での更新は今、ほぼストップ状態ですが、 M&Mとして、合作に取り組んで頑張っております^^
 はっ!ご存知でしたねww いつも相方のももたんがお世話になっております┌○ はははw   なにとぞこれからも、メロビューをM&Mをよろしくお願い致します!   それでは、短いですがこれにて失礼いたしますー!   


 メロ様三周年だそうで、おめでとうございますーーーぱちぱちぱち〜〜〜 (o´ェ`ノノ゙☆パチパチパチパチ  
 素晴らしいです!これからも素敵なお話を書き続けてくださいませーーー  
 ももはいつでも縁の下の・・どっこいしょーで持ち上げておりますーー(たまに逃走するが・・・・)
 ってそれはMMだった・・・・・「メロビューの空」様ほんにおめでとがんす!!!  
 めでてーなーこれからもがんばるっぺーーー!!ふぁいとー!!  
 ・・・なんか力の抜けるコメントで申し訳ありません。                          
  MOMO〜(*・ω・)*_ _))ペコリン  
 ・・・・だめか?まじめに言ったほうがよいのか?
 ・・・・えーこのたびは・・・   

「 もうええわーー!」

 ふう……  


 感想

 メロさん、このたびは3周年、おめでとうございます〜( ゚Д゚ノノ"☆パチパチパチパチ
 うおおう、もうそんなになるんですね!?
 なんだかすっごくすっごく時間経つの早いんですけど!?Σ(|||▽||| )

 とっても楽しい楽しいお話をありがとうございました!!
 うは〜、もう皆楽しそうだ〜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+
 是非ともこれは参加しなくてはry
 はい、すいません、調子乗りました。
 にしても、どのキャラもとても良い味が出てますよね〜♪
 うん、シドもバレットも『まんま』って感じでし、ユフィって本当に『ああいう奴』ですよε-(´o`;A
 本当に素敵で楽しいお話でした!!
 ありがとうございます〜ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃

 メロ様の運営される素敵小説サイト様『メロビューの空』、そうして相方である上記の感想をお書きのMOMOTAN様は素敵イラスト&MADサイト様『MOMOTAN_ROOM』へ是非遊びに行って見て下さいませ〜vv