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群がる虫にはご用心




 コスタ宿泊二日目。
 今日も朝から晴天に恵まれ、クラウド達は早朝から起き出し、子供達を伴い浜辺に出ていた。
 バレットとシドは、昨日の深酒が祟り、現在ベッドで二日酔いと格闘中の為、その二人を除いたメンバーが朝の散歩と洒落込んでいる。
 ナナキは、太陽の光がまだ緩やかな現在では元気があるようで、打ち寄せる波を追いかけては引き返す、という遊びに子供達と熱中していた。

「ああやってたら、ナナキってそこらへんの犬と変わんないねぇ」
 ユフィがアイスバーを口にくわえたまま器用にしゃべる。
「ユフィ、ナナキに失礼よ」
 ティファが苦笑しながら嗜めた。
 ユフィは「へへっ」と笑って見せると、ナナキ達の所へ元気一杯に駆け出した。
「ユフィも十分、子供っぽくて年齢とは不相応だよな…」
 人の事言えないよな…。
 そう言って肩を竦めて見せるクラウドに、吹き出したティファは大きく伸びをすると、朝の新鮮な空気を吸い込んだ。
 まだ陽の光に十分暖められていない空気が、眠気の残る体に心地よく広がっていく。
 ティファは、自分を優しい眼差して見つめるクラウドに微笑んで見せると、子供達の方へゆっくりと歩いていった。
 そんな彼女の後姿に、クラウドは温かなものが胸に広がるのを感じる。
 穏やかで、それでいて凛とした空気を醸し出している彼女の隣を歩ける幸福をそっとかみ締めた。

「おーい!クラウド、ティファー!!」
「クラウドとティファもこっち来て遊ぼうよう!」
 子供達が満面の笑みで手を振る。
 その姿に、クラウドはゆるりと笑みを浮かべ、ティファに続いて子供達の方へと歩き出した。



「それで…?ま~だ治んないわけ?」
「ゔ~ん…」
「全くだらしないなぁ、そんなんで、今日の夕方に帰ることなんか出来るの?」
「あ゙あ゙…」
「父ちゃん、本当に体壊すよ…?」
 ホテルに戻ったクラウド達は、まだ二日酔いと格闘している中年組みに、呆れて溜め息をついた。
「この分じゃ、今日は二人共、帰るまでここに缶詰だな…」
 やれやれ…、頼むから夕方までにはシエラ号を操縦出来るようになってくれよ…?
 そう言いながら、子供達を振り返ってクラウドは肩を竦めた。
 デンゼルとマリンは心配そうな顔をしているが、ティファとナナキ、それにユフィは慣れっこになっている光景に苦笑している。もっとも、ユフィの場合は、苦笑というよりも悪戯っぽい笑いではあったが…。
「仕方ないから、俺達だけで朝食を食べに行くか。バレットとシド、二人は何か食べれそうか?」
「……い゙や゙、気持ちだけで良い…」
「……俺様も…。あ゙あ゙、でも何か粥みたいなのがあれば、それを買ってきてくれ…」
「…お、俺も…」
「はぁ。分かった…」
 青い顔をして枕から少し顔を上げた二人に、クラウドは額を押さえつつ溜め息を吐いた。
 そんなクラウドに、ティファとデンゼル、マリンが少し可笑しそうに微笑んでいる。
「じゃ、とっとと行こ!私お腹空いた~!」
 そう言うとユフィは二日酔いに苦しむ仲間を尻目に、元気一杯に部屋を飛び出した。
 そんな彼女を、バレットとシドが恨めしそうな溜め息で送り出す。
 クラウドとティファは、心配そうな顔をする子供達を促し、ナナキに目配せをして部屋を出た。

「それにしても、バレットとシドさ~。何か酒に弱くなったんじゃないの?やっぱあれかねぇ、年のせい!?」
 踊るような足取りで前を行くユフィが、カラカラと笑いながら言った。
「え!?二人共、前はもっと飲んでたの?」
「そうだよん!それでもって、ほとんど二日酔いになんかならなかったなぁ、ねぇ、ティファ?」
 目を丸くするデンゼルに、ユフィは手を振り振り話をする。
 ティファは、話を振られて困ったようにクラウドを見た。
 クラウドも、そんな風に話を振られて苦笑する。
「もう、父ちゃんったら…」
 いつもなら頬をパンパンに膨らませて怒るマリンも、先程のバレットの姿と今のユフィの発言から怒る気力を失くしたらしい。ガックリと肩を落としている。
 そんなマリンの頭を苦笑しながらティファが撫で、デンゼルは可笑しそうに肩を揺すって笑い転げた。

「ところで、バレットとシドに何か食べれそうなものがあるかな?」
 食堂に着いたナナキが、メニューを覗き込みながらティファを見上げた。
 ティファも、ナナキに困った様に笑って見せると、一通りメニューを読み上げる。
 しかし、その中で二人が食べれそうなものはスープ類しかなかった。
 恐らく、胃が弱っている二人には、パンは良くないだろう。
「う~ん、このコーンポタージュくらいかしらねぇ…」
「きっとそれだけじゃ、お腹空いちゃうだろうね」
「そうね…」
「でも、お腹空くくらい元気になったら、その時は自分達で何か食べに来させたら良いじゃん!」
 頭を悩ませるティファとナナキに、サラダを頬張りながらユフィが闊達に言い切った。
 ……確かに……。
「ま、それもそうだな。それじゃ、コーンポタージュを持ち帰り出来るかどうか聞いてみるか」
 クラウドがバターロールを口に運びながら言うと、ティファとナナキも「それもそうね」「だね」と頷いて食事を始めた。

 ホテルの食事は、美味しかった。
 勿論、ティファの手料理には負けるよな…。
 と、思ったのはクラウドのみならず、子供達、それに旅の間、ティファの手料理を毎日の様に食べていたユフィ、ナナキの感想だった。
 その事を子供達とユフィが口にすると、漆黒の髪を持つ彼女は、頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
 そんな心温まる光景を、彼らの周りのテーブルに着いていた客達が、陶酔した眼差しで食い入るように見つめていた事に気付いたのは、無論、クラウドとユフィ、そしてナナキだった。
 静かに彼らへ威嚇の視線を突き刺しつつ、クラウドは憮然とした面持ちでスープを口に運び、ユフィとナナキがそれを見て、必死に笑いを堪えるのであった。

 朝食後。
 幸いにもコーンポタージュを持ち帰れるとの事で、一行はコーンポタージュを手にして、二日酔いと戦う二人の待つ部屋へと向かった。
 その途中、廊下で若いカップルがベタベタしながら通り過ぎたのだが、すれ違う瞬間、カップルは目をまん丸にして五人と一頭を凝視した。
「……どうしたのかな、あの人達?」
 デンゼルが不思議そうに振り返りながらクラウドの手を握った。
「ん?」
 クラウドが振り返ると、まだカップルはこちらを見つめている。
 その姿は、お世辞にも素敵な二人組みとは言い難く、クラウドは肩を竦めて顔を戻した。
「さぁ?」
「ナナキが珍しかったのかしらね?」
「……おいら、それ違うと思うけど…」
 ティファの一言に、ナナキがボソッと呟く。
 マリンとユフィは、ナナキの一言に顔を見合わせ、クスクスと笑い合った。
「全く、二人共無自覚なんだからなぁ」
「「???」」
 ユフィの呆れたような言葉に、クラウドとティファは首を傾げ、顔を見合わせた。
「ま、それがクラウドとティファの良い所だよな?」
「うん、そうだね」
「「???」」
 笑い合うデンゼルとナナキに、クラウドとティファはますます頭を捻るのであった。

 やがて一行は、二日酔いと戦う中年二人組みにスープを差し入れすると、「「俺達の分まで遊んで来~い」」という言葉に送り出され、浜辺にやって来た。
 すでに太陽はその本領を発揮し、白い砂浜に惜しみなく光と熱を注いでいる。
 砂浜には、既に多くの人で賑わっていた。
 ナナキは、昨日よろしくパラソルの影にうずくまり、前足に顔を埋めた。
「ナナキ、辛いならシドやバレット達とホテルにいても良いんだぞ?」
 心配して声を掛けたクラウドに、ナナキはだるそうに顔を上げると、
「良いんだ。ここなら、皆の楽しそうな顔を見る事が出来るから…」
と言って、隻眼を細めた。
 クラウドは、フッと笑みを浮かべると、黙ってナナキの毛並みを優しく撫でた。
 そんな光景に、ティファは幸せそうに頬を緩める。
 子供達とユフィは、既に海に入って水をかけ合っていた。
 浅瀬でキャーキャーはしゃぐ元気な笑い声が、砂浜に響く。
「今日はユフィはナンパされに行かないんだな」
 パラソルの影に腰を落ち着け、傍らに座るティファに声を掛けた。
「うん、そうみたいね」
 ティファの視線の先では、楽しそうに笑っている子供達とウータイのお元気娘の姿がある。
 時折、人が通り過ぎては自分達のパラソルを覗き、惚けたような視線を投げかけてくるのだが、クラウドもティファも、一緒にいるナナキが珍しいのだと思い込んでいる為、特に気にもしなかった。

「ああ、そうだ。ナナキ、カキ氷食べるか?」
「え!?食べる食べる!!」
 ふと思いついたように、クラウドが声をかけると、ナナキはパッと顔を上げて嬉しそうに目をパチクリと開けた。
「じゃあ、買ってくる。ティファは何かいるものあるか?」
「え?う~ん、じゃあ私もナナキと同じもので…。て言うか私も一緒に…」
「いや、それじゃあナナキが一人になるからな。すぐそこだし」
 腰を浮かせかけたティファを押し止めると、クラウドはパラソルから足早に歩いていった。
 遠くなるクラウドの金髪が、陽の光に晒されてキラキラと光っている。
「おいらは別に一人でも良かったのにねぇ…」
 苦笑するナナキに、ティファが「ごめんなさい」と小さく謝った。
 ほんのりと顔を赤らめるティファに、嬉しそうに尻尾をパタパタと振る。
「ううん!おいら、クラウドとティファが幸せそうで、本当に嬉しいんだ」
「……ありがとう」
 隻眼の優しい友人に、ティファは目を細めてそっと手を差し伸べた。
 と、その時…。
「よ!彼女、一人?」
 どこにでもいそうな若い男が声を掛けてきた。
 顔を上げたティファを見て、口笛を吹く。
「うお!可愛いじゃん!!」
「勿体無いなぁ。こんなに美人を一人きりにするなんて!」
「そうそう!悪い虫がついたら大変じゃん!」
「だからさ、俺達と一緒に遊ぼうぜ!そうすれば、変な奴に絡まれずに済むし!!」
 自分達こそが悪い虫という意識は無いらしい…。
 ヘラヘラ笑う男達に、ティファは顔をしかめた。
 年齢は自分やクラウドと同じ頃だろう。
 それなのに、しまりの無い表情、たるみきった体躯、誠意とはかけ離れた雰囲気を醸し出す目の前の男達は、その全てが彼とは雲泥の差。
 ティファは、溜め息を吐いた。
 自分もやはり、クラウドに付いて行けば良かった…。そう思わずにはいられない。
「なぁなぁ!そんな暗い溜め息ついてないでさ。俺達、金も持ってるし、絶対に退屈させないって!」
 そう言って、一人がティファへ手を伸ばした。
 ティファがその手を払いのけようとしたその瞬間。

「駄目だよ、ティファは先約があるんだから」
 それまで黙って事の成り行きを見ていたナナキが口を挟んだ。
 すると…。
「うお!?」
「しゃ、しゃべった!?」
「ひっ!!」
「な、ななな…!?」
 当然の反応。
 男達は半分腰を抜かしてナナキを凝視した。
 そんな情けない男達をナナキは、隻眼を細めて睨みつけると、
「おいら、お腹空いてるからあんた達をおやつにしちゃおうかな…」
と言うなり、口をパカッと開けて見せた。
 眩しい陽の光に、ナナキの牙が白く輝く…。


「ん?」
「何、あれ?」
「あ、俺達のパラソルじゃない?」
「「あ、本当だ」」
 浅瀬で水遊びをしていたユフィとデンゼルとマリンは、
「ヒェ~!!」
「い、命ばかりはお助け~!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!!!」
という叫び声に顔を上げ、顔を砂浜に向けた。
 何故か自分達のパラソルから、転がるようにして逃げる若い男達のみっともない姿があり、三人は首を傾げて顔を見合わせた。


「で?クラウドがいなくなってすぐにあのバカ達が来たってわけ?」
 パラソルに戻って、ティファから事情を聞いた三人は揃ってお腹を抱えて笑い転げた。
「ナナキ、お手柄お手柄!」
「うん、本当に!!クラウドが戻ってきたら、教えてあげなくちゃ!!」
「へへへ」
 子供達に体を撫でられ、照れ臭そうに笑うナナキに、ティファは笑っていいものなのか悩みつつも、結局苦笑を漏らす。
「それにしても、クラウド遅いね」
 マリンがふと顔を上げて出店のある方を窺う。
「うん、そうねぇ」
 ティファもそれに釣られてそちらの方へ視線を移した。
 パラソルからさほど離れていない所に、カキ氷の出店がある。
 それにしては、少々遅いのではないだろうか…?
「ああ、もしかして、逆ナンとかされてたりして~!」
 ユフィが悪戯っぽく笑うのを見て、ティファは顔をしかめたが、デンゼルとマリンはキョトンとしてユフィを見上げた。
「「逆ナンって何?」」
「ん~?逆ナンって知らない?」
「「知らない」」
 声を揃え、全く同じ様に顔をプルプルと振る子供達を見て、ユフィは顔をクシャッと緩めると、突然子供達をギューッと抱き締めた。
「うう~ん!可愛い!!」
「うえ!?」
「く、苦しいよ…」
 キャーキャーとユフィ達がじゃれ合う間も、クラウドの姿は視界に入ってこない。
 ティファは少々気になってきた。
 たった今、ユフィが口にした『逆ナン』の可能性に思い至ったのだ。
 確かに、あれだけの容姿、醸し出している尋常ならざる寡黙で大人の雰囲気…。
 同じ年頃の男性で、あそこまで魅力的な人はそうはいない…!!

「わ、私、ちょっと見てくるわ…」
 キョトンとする皆を残し、ティファは足早に出店へ向けて歩き出した。
 背後から、ユフィの笑い声が聞えた気がしたが、そんな事に構っていられる心境ではない。
 途中、何人かの男性に声をかけられた気がしたが、それにも完全にスルーすると、ティファはさほど時間を掛けずに目的の出店へ辿り着いた。
 しかし…。
「……いない…」
 周りをぐるりと見渡してみるが、クラウドの姿はどこにも見当たらない。
「………」
 ティファは、嫌な予感が胸に湧いてくるのを抑えながら、足早に周辺を歩き出した。
 すると、出店から少し離れたところに何やら人だかりが出来ている。
 何気なく、その人だかりを覗いたティファは、目を丸くした。
 人だかりの中央に、クラウドがいたのだ。
 それも、なかなか美人な若い女性二人に挟まれて…。
「な、何やってるの!?」
「あ、ティファ!!」
 思わず素っ頓狂な声を上げたティファに、クラウドは困りきった表情からパッと顔を輝かせた。(しかし、クラウドの無表情な顔からその変化を性格に見て取ったのはティファだけだった)
 クラウドは逃げるようにして人だかりを押しのけ、ティファの元まで足早にやって来ると、そのままの勢いでティファの手を取り、猛然と駆け出した。
「え、え!?」
 びっくりし、全く状況を把握出来ないティファを引きずるようにして駆けるクラウドと、引きずられるティファの背に、「あ~!!」「ちょっと待って~!!」と言う、先程の女性と思しき甲高い声が投げつけられる。
 しかし、当然そんな静止の言葉など聞くはずも無い。
 無言のまま猛然と走り続け、ついには自分達のパラソルまで追い越し、呆気に取られるユフィ達を尻目に二人はホテルのロビーまで戻ってしまった。

「ど、どうし、たの?」
 ゼイゼイ、と息切れしながら、切れ切れに問いかけるティファに、両膝に手をついて喘いでいたクラウドは、バツの悪そうな顔を向けた。
「あ、ああ…、実はな…。彼女達が柄の悪い男達に絡まれてたから、間に入ったんだが……」
「だが…?」
「どういうわけか、柄の悪い男達を追い払った後、彼女達が言い合いを始めてな…」
「え?何で?」
 クラウドの話に首を傾げる。
 助けてもらって、何故言い合いをするんだろう…。
「そ、それが…」
「それが?」
 どこまでも無垢な瞳で自分を見つめるティファに、クラウドは躊躇った。
 しかし、躊躇っていても何の解決にもならないだろうし、黙っていたらそれはそれで、後々彼女と気まずい事になりかねる。
 クラウドは、大きく深呼吸をすると、意を決して口を開いた。
「その、自分達を助けてくれたお礼を是非させてくれ…って言ってさ。俺が必要ない、って答えたら、どうもその、俺の言い方が…、何て言うか…、彼女達の興味を引いたみたいで…」
「はい?」
「その、それで、どうしても!!ってしつこくてさ。逃げようとしたら、『女にここまで言わせといて逃げるなんて酷い!』って一人が言ったんだ。そしたら…」
「…そしたら…?」
「……もう一人が『そんな事言うなんて、恩人に対して非常識だ』って反論したんだ」
「……それで言い合いが始まったの…?」
「……ああ…」
 何ともコメントのしようの無い話に、ティファは呆れかえってしまった。
 クラウドは、そんなティファの顔を恐る恐る窺っている。
「それで、あんなに人だかりが出来たって言うのね?」
 苦笑するティファに、クラウドはホッとすると、頭を掻きながら頷いた。
「ああもう、本当に恥ずかしかった…。人だかりは出来るし、彼女達は俺の事そっちのけで言い合ってるのかと思ったら、逃げようとする度に物凄い目で睨んでくるし…。お陰でいい見世物になってしまったよ…」
 本当、ティファが来てくれて助かった…。
 大きな溜め息を吐くクラウドに、ティファは吹き出した。
「もう、あんまり帰ってこないから心配しちゃった!」
「ああ、本当にごめん」
 涙を拭き拭き、笑うティファに、クラウドも釣られて笑みをこぼす。
「結局カキ氷買えなかったしな。ナナキに悪いことをした。ああ、そうだ。ホテルの売店でアイスを買うか」
 そう言うと、クラウドは手を差し出した。
 ティファは目を丸くしてその手を見つめる。
 クラウドは、少々頬を染めながら、驚いているティファの手をサッと取ると、キュッと握り締めて売店へ向けて歩き出した。
 決して目を合わせ様としないクラウドの赤くなった横顔に、ティファは満面の笑みを咲かせた。
 そんな二人の姿を、ホテルのロビーにいる人々は、羨望や嫉妬、様々な視線を投げかけるのであった。
 その事に、当然、自分達の気持ちで手一杯の二人が気付くはずも無い。



 やがて、パラソルに戻った二人は、一連の出来事を話して聞かせ、ユフィと子供達、そしてナナキはお腹を抱えて笑い転げるのであった。



 そして、夕暮れ。
 何とか無事に二日酔いに勝利した中年二人組みを乗せ、シエラ号はエッジに向けて飛行していた。
 シエラ号の一室では、遊び疲れた子供達と、乗り物酔いと戦うクラウドが横になっていた。
「クラウド、外の空気を吸った方が楽になるんじゃないかしら…?」
「ああ、いや。風に今は当たりたくない気分なんだ…」
 心持ちげっそりとしているクラウドを、心配そうにティファが濡れタオルを額に乗せてくれる。
「ああ、相変わらずお互い辛いよね…ウップ…」
「ユフィ、あなたも良いの?外の風に当たらなくて」
「ああ、なんだか、私も今は当たりたくない気分なんだ~。昼間遊びすぎたせいか、体がだるくてさ~。もう少ししたら眠れそうなんだけど…。この乗り物酔いさえなければ…ウェ~」
 同じく、乗り物酔いで青い顔をしているユフィの額にも、濡れタオルを乗せつつ声をかける。
「それにしてもさ。やっぱり楽しかったよねぇ」
 床に寝そべっているナナキがウトウトしながらポツリと言った。
「うん!本当に楽しかったわ」
 子供達の髪を梳きながら、ティファは微笑んだ。
「やっぱり、また皆で来たいよねぇ…ウップ」
「ああ、そうだな。でも、これからは前もって連絡をくれ…」
 か細い声でクラウドがユフィに答える。
 ユフィは、「そんなこと、私に出来ると思う~…ウエェ…」などなどからかい口調で言うものの、その言葉には嬉しさが滲み出ていた。
 ティファもナナキも、そんな二人のやり取りに目を細め、笑みをこぼした。



 夕暮れに雲が真っ赤に染め上げられる中、シエラ号は幸福に包まれ、穏やかに空を走って行くのだった。


あとがき

はい、またまたタイトルとズレた話になってしまって、何ともはや…(汗)。
本当は、もっとクラウドが女性に追い掛け回されて、ヤキモチティファを…!とか思ったのですが、酔っ払い二人組みが登場してしまい、上手くいかなかったですね(苦笑)。
でも、いつかはそんなクラティを書くかも…です(笑)

お付き合い下さり、有難うございました!!