『くっさ〜!!』 デンゼルは目の前の客から漂う香水の匂いに、思わず顰め面になりかけ、慌てて顔の筋肉を引き締めた。 なにごとも限度でしょう…?高そうなスーツを着て、己の存在を誇示するかのようにカウンターのスツールに座っている客がいる。 グレーを基調としたそのスーツは、店の照明を受けてキラキラと輝いていることから、スパンコールのような素材が使用されているのだと分かった。 だが…。 はっきり言おう。 彼のその存在はセブンスヘブンのような『庶民向け』の店には不似合い極まりなかった。 いかにも『僕、お金持ちです!』と言わんばかりの仕草もそう。 何故かこれっぽっちも『気品』というものを感じない。 青年を守るべく後ろに控えている黒スーツのボディガードの存在も。 他の客達との差を見せ付けようとしている腹が見え見えだ。 そのために『懐の小さい小者(こもの)』というイメージを与えてしまう。 おまけに…。 青年自身は『似合っている!』と思っているであろうその高級スーツも、彼が着ているせいだろうか…。 とっても……ニセモノちっくに見えるのは何故だろう……。 ニヤニヤとしまりのない口元と目元は、終始、セブンスヘブンの店長へと注がれている。 無遠慮にもほどがある。 だが、彼にそれを諭す人間は残念ながら存在しなかった。 客達には分かっていたのだ。 ティファがこの青年をま〜ったく! これっぽっちも歯牙にかけていないことを。 自分に注がれているヤラシイ目つきも、サラリ、と右から左に受け流している。 青年が自分に非常に興味を持っていることを知ってて尚、ティファは彼を必要最小限にしか接しないという徹底振りだった。 だから、客達は何も言わない。 下手に口出ししようものなら、用心棒として同行している青年のSPが黙っていないだろうことは目に見えていた。 そうなると、必然的にティファに迷惑がかかる。 出来れば、速やかにティファの手でたたき出してもらいたいのだが、それも如何せん、『店長』と言う肩書きを持つが故にそれもままならない。 まだ青年は、『営業妨害』をしでかしていないのだから…。 『『『『 いっそ、酔って暴れてくれたらラクなのになぁ… 』』』』 そう思う常連客達の気持ちなどお構いナシ。 そんな迷惑極まりない、厚顔無恥な青年の登場は、実は今夜が初!!だったりする。 それなのに、もう既にこの店の常連客達と、不定期にたま〜にしか来ない客達の意見が暗黙の内に一致していることが既に青年の存在の異様さを物語っていると言っても良いだろう…。 当然、目的はティファだ、今さら確認するまでもない。 それを実にわざとらしく、もったいぶった態度で示している青年に、ティファは完璧な無視を押し通した。 ティファ自身、彼が何か言ってくれたら、それをバシーッと断って一件落着するのに…と、内心で溜め息を吐いていたりする。 だがまぁ、この青年の強かさ…なのだろうか…。 彼はティファに何も『それらしいこと』は言ってこない。 例えば、『愛人になれ』とか『用心棒に是非』とかの類を…だ。 そう話を持ちかけてくれた方がいっそ、解決は早いだろう…。 だが、この妙にずれた青年の場合は…。 「ティファさん、貴女の作る料理は我が家が召抱えている料理長の上をはるかにいく腕前…、大変素晴らしい!」 「このような小さな店では貴女の才能は活かしきれないでしょうに…」 「あぁ、それでも貴女は、世の中の人達にひと時の温もりを与えるためにあえて、このような道を選ばれたんですね」 「なんて素敵な方なんでしょう。本当に貴女は女性の鑑です」 「あぁ、本当にこのステーキのソースは素晴らしい。素材の味が生きている」 とまぁ、こういう具合に実にそつなく褒めている。 まったくもって、困った客なのだ。 他の客達に絡むことなど論外!と言わんばかりの彼の『戦法』は、『一般庶民なんぞ鼻先で笑うしか価値のない存在』という大前提があってのものなのかもしれない。 いや、事実そうなのだろう。 他の客達をチラリ…とたまに流し目で見るその目は完全に『小バカ』にしていたし、客達が思わずカッとなって腰を上げかけても、青年はサラリ、とその不快&怒気の気配をスルーして、またもやティファへデレデレした視線を流しているのだ。 客達が怒って文句を言うタイミングがない。 『これも計算だったらすごいよなぁ…』 と、デンゼルは思った。 先ほどから数人の客達が腹立ちまぎれに腰を上げかけては、舌打ちをしつつ席に着くのを何度か見ていた看板息子は、客達がどうして金持ちの青年に突っかかっていけないのか、との理由を良く分かっていた。 ティファの前で短気な自分を曝け出したくない、という男心と、相手が自分達を完全に蔑んではいるものの、だからといって、特に不愉快な絡み方をされたわけではないので、あっさりと視線を逸らされてしまったら、絡むチャンスがないというものだ。 『なんか…人を小バカにするのも大概にしろよなぁ…この兄ちゃん…いや…おっちゃんの方が似合ってるかも…』 デンゼルは、実に冷静に客達と新顔の青年の間を分析していた。 青年は恐らく『半分は計算』で『半分は天然』だ。 客達を小バカにして、その反応を楽しみつつ、すぐに飽きてしまって興味がティファに移る。 そうして、飽きるほどティファを『観賞』して、ふとした時にまた客をからかいたくなって、満足いく顔(ようするにメッチャ不機嫌、且つ、怒った顔)を客達が見せてくれたら興味がティファに移る…。 その繰り返しなのだ。 なんつう性格の悪い…! マリンはデンゼルとほぼ同じ見解だった。 そして、小声で客達に、 『皆さん、気にしないで…』 困ったように微笑を浮かべた。 その一言があるのと無いのとでは全く違う! イライラとしていた気持ちが、スーッと溶けていく…。 「おうよ、ありがとな」 「本当にマリンちゃんはサイコーだな!」 「将来が楽しみだなぁ!絶対にティファちゃん並みのベッピンさんになるぜ!」 可愛い看板娘の細やかな心遣いに、客達は嬉しそうにそのお下げ頭を軽く撫でた。 『お、マリン、ナイスフォロー♪』 丁度会計の客がいたため、そちらの応対をしていたデンゼルは、流石はマリン!と、内心で拍手喝采だった。 だが…。 だからと言って、不愉快な青年の態度が変わったわけではない。 依然として、無遠慮にティファを観賞している。 それはもう、視線だけで穴が開きそうなほどだ。 デンゼルはふと時計を見た。 もうそろそろ、自分達子供は休む時間。 店にはまだ結構な客が残っている。 いつもなら、この客数でもティファは大丈夫!と言い張って、自分達を寝室に追いやってしまうのだが、今夜は…どうしたら良いんだろう。 いつも素直に子供部屋でぐっすりと眠ってしまうのだが…。 正直、そろそろ眠い。 身体は休息を求めている。 だが!! 今夜はいつもみたいに眠るわけにはいかない。 その気持ちはマリンも同様だった。 ティファがあと数分で、自分たちに子供部屋へ行くよう促すだろう。 だが、断固として反対するつもりだった。 新顔の青年の後ろに控えているSPは、青年が店に入ってから一口も飲み食いしていない。 恐らく、任務中には飲食の類は一切しないのだろう。 それだけ、彼らが任務に忠実で、腕がたつことを現している。 いくらティファでも、そんな危険人物が何人もいたら、果たして太刀打ち出来るだろうか…。 いやいや、ティファが負けるはずはない。 だが、他の客達に迷惑がかかるのは目に見えている。 この非常識な金持ちは、もしかしたらマリンとデンゼルが店内で仕事をしているからこそ、『もっと非常識』なことをするのを我慢していたかもしれないではないか…。 ならば、ティファが完全に店を閉めるまで一緒に頑張っていた方が……。 と、思っていたのに…。 「デンゼル、マリン、今日はもういいわ」 案の定、予想通りの言葉。 いつもの様に、ティファは微笑みながら子供達の前でしゃがみ込んで目線を同じにする。 そうして、嬉しそうな顔をして、 「今夜も本当にありがとう。とっても助かったわ」 「ティファ、俺、まだ大丈夫!」 「ティファ、私も!!」 額にキスをしようとしたティファに、デンゼルとマリンは思わず身を捩ってそれを避け、声をハモらせて断固拒否した。 しかし、ティファだって簡単に引き下がらない。 目を丸くして二人の顔をマジマジと見つめ、次いで苦笑を浮かべた。 「大丈夫よ。だって、見たところそんなになにか癖があるって訳じゃないもの」 「「 そんなこと思うのはティファだけだよ 」」 見事に声が揃う。 小さな肩に力を入れる子供達に、ティファは益々苦笑した。 「大丈夫よ。安心して眠ってて。もしも何か困ったことがあったら、1階から叫ぶから」 少しおどけてそう言うティファに、子供達は『『うそばっかり』』と内心で溜め息を吐いた。 だが、ティファの目は真剣で、これ以上何を言っても無駄だと察せずにはいられない。 この美人な母親代わりはそれはそれは、頑固者なのだ。 二人は渋々、ティファにお休みのキスをして2階に向かった。 階段の入り口でちょっと振り返る。 ティファと常連客達が、 「ご苦労さん!」 「お休み〜」 と、笑顔で手を振っている。 その背後で…。 金持ちの青年がいやらしく笑っているのが見えた。 プッチーン!! それまで懸命に我慢していた子供達は、とうとう我慢の限界に達した。 堪えきれずに思い切り顔を顰め、苛立ちを現すように階段を乱暴に駆け上がる。 ほどなくして子供部屋のドアが乱暴に閉められる音がして、大人達は苦笑を交し合った。 「あらあら、ごめんなさい、何だか二人共、今日は機嫌が悪くて」 子供達の気持ちを有り難く思いながらも、『店長』として客達に頭を下げる。 客達は微笑みながら…、あるいは苦笑しながらティファに軽く手を振った。 「良いって、良いって」 「デン坊もマリンちゃんも、ティファちゃんが心配なのさ〜」 「珍しいもの見れたから得した気分だしな」 などなど。 子供達を擁護するように言葉をかける。 ティファは客達の気遣いを有り難く感じながら顔を上げた。 途端、今夜の元凶の元である青年とバチッ!!と視線が合った。 ティファは後悔した。 『なんで反対方向に顔を向けなかったのかしら…、ティファ、一生の不覚よ…』 引き攣りそうになる笑顔を何とか保ち、ソロ〜リ…、と身体の向きを変える。 そのまま、そそくさとカウンターに戻って、極力青年の方を見ないようにして料理を作り始めた。 しかし、それは非常に難しいことだった。 なにしろ、青年が腰をかけているスツールは、カウンターのど真ん中だったからだ。 来店した時、青年は確かに端から二番目のスツールに座っていた。 それが、客達が次々と入れ替わる中、スツールが空くたびに、徐々に青年は席を移動していたのだ。 青年が移動していることに気づいたのは、ほんっとうに先ほどだった。 何しろ、青年の料理やグラスがそっくりそのまま、綺麗に横へ移動していたので席をずれていたとは気づかなかったのだ。 ティファや子供達に気づかれないように自分の皿やグラスをそっくりそのまま移動させたSPの手腕に舌を巻く。 同時にこう思わずにはいられない。 なんたる執念、というか『こすい』人間なのだろう……。 ティファはげんなりした。 青年の香水は、カウンターで料理をしているティファにとって半ば拷問のようなものだ。 だが、一体なんと言えばいい? 『貴方には似合わない香りですね』 などと、バカ正直に言えるものか…。 『匂いがキツイお客様は、当店ではお断りしています』 んなアホな…。 そんな店があるなど聞いた事ないし、そんな規約、セブンスヘブンにはない。 『あまりジロジロ見ないでくれます?仕事に支障が出てしまいますので』 …無理だ。 そもそも、カウンターで料理を作っているのは、作っている過程を見てもらうことが一種の『余興』のようになってくれたら、という意図もこめているのだから、『見られてて支障が出る』など、言えるはずもない。 困った…。 とてつもなく困った。 いっそのこと、子供達にいてもらった方が、まだ何かと気が紛れて良かったのに…。 などなどつい考えてしまって、慌てて頭を振る。 そんな情けないことでどうする! 自分はこれでも『店長』なのだ。 それ以前に、子供達の『母親代わり』なのだ。 しっかりしなくては! だが…。 プ〜〜〜ン…。 青年がスツールにはまっている尻をモゾモゾと動かした。 またもや、空いたスツールへ移動しているらしい。 その小さな身動きで、香水の匂いが強烈に香ってきた。 ティファは一瞬、味見をしているスープの味が全く分からなくなった。 それと同時に失神しそうになる。 料理の上手な彼女は嗅覚が人よりも優れている。 味覚もまた然り。 というわけで…。 『…死、死にそう…』 子供達以上に実は限界だったりする。 よくよく見れば、いつもはもう少し長居するはずの客が、もう既に店にいないことにようやく気がついた。 彼らは、チビチビと酒を飲み、ティファの手料理をじっくりと味わって楽しむのが一日の疲れが取れる秘訣だ、と語っている人達だった。 実に有り難いお客様。 そのお客様が、口を最速に動かして飲み込んでいた姿を思い出した。 『あ〜……気がつかなかったわ…』 どうやら、青年の香水に注意力がやられていたらしい。 想像以上の破壊力を持つ青年の香り。 頭がツーン…とする。 いつもなら、子供達が仕事を終えてから言い寄ってくる若い男性客も、クラウドが帰って来るのを待っているファンの女性達も、 『『『『 もうダメだ!! 』』』』 と言わんばかりに、早々に席を立っている。 ティファの仕事は、料理作りから会計にかかりきりになるのにそう時間はかからなかった。 その間も、青年はニヤニヤとしまりのない顔でティファを見つめている。 残りの客が減っていくのも嬉しくて仕方ないらしい。 ティファを少しでも独占出来るのだから、そりゃ嬉しいだろう…。 男性客達は忌々しそうに青年を睨みつけ、その報復としてSPにサングラス越しに殺気を放たれてスゴスゴと退散した。 女性客達の方は、実に残念そうにしながらも、 「クラウドさんによろしくお伝え下さい」 「それにしても……今晩ばかりはティファさんに同情しますわ…」 予想外の優しい言葉を残して去っていった。 いつもはライバル視満載の女性客達からの思わぬ言葉に、ティファはこの元凶を少しだけ感謝した。 だが、ほんっとうに、ほんっとうに少しだけだ。 もう…彼女の嗅覚も限界だった。 『彼以外のお客様が帰ったら店を閉めよう!』 固く心に誓った。 恐らく、青年は客が自分だけになったら(SPは除外)、猛烈なモーションをかけて来る。 その気迫がビリビリと伝わってくる。 だが、そんなものにまで付き合う気はティファにはサラサラ無かった。 それでなくても今夜は充分とんでもない目に合っているのに。 子供達まで巻き込んで!! ティファは、わざと青年には近付かないで、テーブル席で食事をしている客へ明るく話し掛けた。 幸い、気心の知れた常連客だ。 中年のその男性達は、真っ黒に日焼けした顔にニッカリと笑みを浮かべつつも、 「やっぱそろそろ今夜は帰るわ」 「久しぶりにクラウドの旦那と話したかったけどなぁ…」 「いつもの『セブンスヘブンの匂い』じゃないから、俺達にはちと毒だ」 カラカラと笑いながら、客達は「よっこいせ」と腰を上げた。 その際、ティファの耳元で口を寄せ、 『俺等、帰ったら即行で店を閉めなよ?でないと、あの客、絶対に変な『お願い』してくるだろうから、聞く耳持つなよな』 『そうそう、ティファちゃんは人が良いから、もしかしたら泣き落としとかするかもしれないけど…』 『絶対に聞く耳持つなよな』 コソコソっと有り難い耳打ちをしてくれたのだった。 そうして。 その最後の客達が気残りそうに…心配そうな顔をしてドアの向こうへとその姿を消した。 『さぁ、ティファ、今よ!』 意を決して『閉店です』と声をかけようと振り返った。 が!! チリンチリン……。 新たな来客を知らせるドアベルの音。 ティファは今日の運の悪さを呪いたくなった。 正直我慢も限界だ。 たった今、来てくれた客には申し訳ないが……。 『八つ当たり……させてもらいます……』 そう思ってしまう時点で、彼女の精神はかなりやられている。 鬼のような形相でティファはドアを振り返り…。 目をまん丸に見開いた。 一方、来店したばかりの客も、ティファの形相にビクーッ!!と身を反らせたまま硬直している。 カウンターのスツールで、ティファを一人占め出来る!と、見た目にもウキウキしていた青年もまた、ポカン…としている。 SP達は、チラっと互いに目配せし、自分の主の前に盾となる忠義振りを見せる。 そんな一見、コメディのような雰囲気になったセブンスヘブンだったが、いち早く立ち直ったのは…。 「ユフィ!ビックリするじゃない」 嬉しそうな声を上げたセブンスヘブンの店長だった。 黒髪、大きな瞳、まだ幼さが若干残る闊達な女性は、ティファが嬉しそうな顔をしたことによりようやくいつもの茶目っ気たっぷりな表情を取り戻した。 わざと拗ねたような顔をする。 「もう、びっくりするじゃん!なにかあったのかと…」 そう言いながら嬉しそうに仲間に近付いたユフィの顔は嬉しそうな顔。 それが…。 「うっわ!くっさーーー!!!!なにこの匂い!!!!」 ユフィの長所でもあり、短所でもある『バカ正直』『歯に衣着せぬ物言い』が思いっきり発揮され、そのままユフィはスツールでポカン…としている青年を大きな目で素早く見た。 猫のような漆黒の大きな瞳で見つめられ、思わず青年の胸が高鳴る。 しかし、そのトキメキは、 「アンタか!なにこのクッサイ匂い!!サイッテー!!ってか、自分に似合ってると思ってるの、その格好。ダッサーー!!あ〜〜、折角のセブンスヘブンの良い匂いがアンタのせいで台無しじゃん!!う〜わ〜〜、全部がダメダメ、香水のつけ方も、スーツの選び方もサイアク!金持ちなのをひけらかしたいんだろうけど、はっきり言って、そんなビシッと決めた格好で『庶民の店』にくるなんて、すっげ〜バカのすることってきづかないわけ!?ほんっとうにカッコ悪〜〜!!」 矢継ぎ早に飛び出すユフィの毒舌を前に、あっという間にズタボロにされた。 何かを反論しようと口を開くが、それを言わせる前にユフィはジトーッとした目でSP達を見た。 「アンタ達もさぁ…命令だから仕方なくこんなところで、そんな格好のままガードしてるんだろうけど、正直に言う事も必要なんじゃん…?なんかめっちゃ浮いててカッコ悪さに拍車がついてる…」 SP達はたじろいだ。 どうやら彼らも思い切り気にしていたらしい。 それまで、鉄の塊のように客達の非難する目、興味津々な目、胡散臭そうな目等々に耐えてきた彼らが、どことなく小さくなったようにティファには見えた。 SPに精神的大ダメージを容赦せずに与えたユフィは、今度はティファを見た。 思わず半歩、後ずさる。 「ティファ…アンタもさぁ、店長なんだから、注意したら良いじゃん…」 「ユフィ…でもね…」 苦笑を浮かべ、口元を少し引き攣らせながら今夜の苦労を語ろうとしたティファに、ユフィは全身で溜め息を吐いた。 「そりゃさ、ティファは『店長』として我慢してたんだろうけど、その我慢を店に来てくれたお客さんに強要するってのも大問題じゃない?」 ドーーーン!!!! ユフィの言葉がティファの心にグサーッ!!と突き刺さった。 言葉もなくし、カチン…と固まったティファを若干哀れみの眼差しで見つめ、ユフィはすぐにスツールへと視線を戻した。 「アンタ、さっさと帰りな!クッサイんだから!!もうね、アタシは乗り物酔いも我慢してここにきたのに、アンタの香水で更に気分悪くなった。あ、そうそう、そこのボディガードのアンタ達、換気するから窓開けるの手伝って!!」 パパパパッ!と指示をして、自らテキパキと窓を開け始める。 しかし、ユフィの強烈なキャラを前に、呆然と立ち尽くすばかりで誰も動こうとしない。 ユフィはギロリ…と睨みまわした。 「早くする!!!臭くて死にそうだっつうの!!!!!」 活発でまだ幼さの若干残るユフィ。 だが、やはり『腐ってもジェノバ戦役の英雄』。 SPは勿論、青年までもがビクーーッ!!と縮こまると、慌てふためいて窓を開け始めた。 そうして、その日の災厄は、突如舞い込んだ嵐によって終わりを迎えた。 長旅の疲れと予想しなかった『災難』によって不機嫌マックスのユフィに、青年とSP達はセブンスヘブンからたたき出された。 その背中に、 「アンタの体型にそのスーツってめっちゃ笑っちゃうくらい似合ってないから、もう少しセンス磨くんだね。はっきり言って、見苦しくて周りの人間には『公害』だから」 ユフィの捨て台詞が青年の辛うじて残っていた自尊心と心を粉砕したのだった…。 * 「ユフィ…」 「なにさ」 「もう少し…言い方とか…」 「なに言ってんのさ!あんな奴に言い方考えろ?バカじゃない、なに考えてるのさ、他のお客さんのこと考えたら、ティファはもっと早くに毅然と接しないと!」 「う……ま、まぁ…そうなんだけど…」 「あいつのセンスのなさにはビックリだね。香水の付けかたとか尋常じゃないし、頭おかしいんじゃない?あ、おかしいんだ、絶対に!」 「ユフィ…」 「『なにごとも限度』って言葉、知らないのかねぇ、はぁ、やだやだ」 『………ユフィ、その言葉はユフィにも当てはまると思う…』 青年に容赦のない言葉の攻撃を与えた仲間を前に、ティファはそう思った。 『クラウド…早く帰ってきて…』 クラウドがティファの願いを叶えたのは、ティファが止めるのを聞かず、大酒を飲んだユフィがベロンベロンに酔っ払い、ティファに介抱をしてもらっている真っ最中だった。 『本当にもう………なにごとも限度でしょう…!?』 ユフィにその言葉を織り交ぜたお説教をティファが与えるのは、翌日、お日様が高くなった頃だった…。 あとがき なんとなく、アフォな話を書きたくなりました。 いや、マナフィッシュの職場に香水きつい『男性職員』がいるんで…つい…(笑) だって、『彼』がどこをどう歩いたのか分かるくらい香水が……。 本当に……『限度』だと思います!! |