温もりをくれる手


『その手』は、父さんの手でも、母さんの手でもなく、『あの時』俺を温めてくれた。

星痕症候群で倒れた俺を、クラウドは拾ってくれて、このセブンスヘブンに連れて来てくれた。
それだけでも、奇跡だと思うんだ。
あのまま、野垂れ死んでても全然不思議じゃないのにさ。

セブンスヘブンで目が覚めた直後の俺は、今振り返っても本当に可愛げのない子供だったと思う。
よくもティファやマリンが俺を追い出さなかったなぁ、ってしみじみ感謝してしまう。
照れ臭いから、いまだに感謝の言葉を言ってないけど…。
でも、本当にティファやマリン、もちろんクラウドにはすっごく感謝してるんだ!

だから、せめて行動で感謝を示そうと、俺に出来る事は何でもやってるし、これからも何でもするつもりだ。

あの時、捻くれた態度を取り続けていた俺を、そっと温めてくれたのは、ティファやマリン、クラウドだった。

星痕症候群で高熱を出した時、そっと額に手を置いて案じてくれた優しい手。

セブンスヘブンで洗い物や掃除を終えた時に、そっと頭を撫でてくれるご褒美と感謝を表した手。

店に来た荒くれ者から、身を挺し、大きく広げて俺を守ってくれた手。

そして、何と言ってもその後、その荒くれ者達を店から叩き出した力強い手。


そんな『手』に温められて、俺の凍った心がゆっくりと溶けていった…。


だから、俺もそんな『手』を持てる様になりたいんだ。


セブンスヘブンに辿り着くまでにも、沢山の人の『手』が俺の命を支えてくれてた。
その人達の大半は、もう星に還ってしまったけど…。

でも、いつか俺も星に還った時に、堂々と胸を張れる様な、そんな『手』を持った男になっていたいんだ。


なぁ、マリンはどう思う?

俺も、ティファやクラウド、マリンみたいに、誰かにとって『温もりをくれる手』を持つ事が出来るかな?

でも、きっとこんな質問したら『バカね。デンゼルならなれるに決まってるよ!』って言ってくれるんだろうな。
マリンは優しくて強いから。
俺よりも年下なのにさ…。
だから、時々俺よりも年上じゃないかって思う発言する度に、物凄く焦っちゃうんだ。
だって、俺の方が年上で、しかも男なのにさ。
何だか、ティファだけでなくマリンにまで世話になりっぱなしだなんて、格好悪いじゃん?
だから、そんな時は、つい突っかかった言い方したり、むくれたりしちゃうんだよな。

それでその時は決まって、『俺って、本当に格好悪い』って物凄く情けなくなっちゃうんだ。

でも、やっぱり恥ずかしいし、何だか負けを認めるみたいで悔しいから、素直に謝れないんだけど…。

でも、本当は心の中では沢山謝ってるんだ。
きっと、マリンもティファも、そしてクラウドもその事を分かってくれてるんだろうな…。

だって、いっつもマリンと喧嘩した後は、必ずティファかクラウドが、そっと俺の頭を撫でてくれたり、肩をポンポン叩いたりしてくれるんだもん。

その時の『手』の温もりで、気が付けばいつの間にか仲直りをして、一緒に遊んだり、店の手伝いをする事が出来るんだ。


どうして、セブンスヘブンの家族は、こんなに俺に『温もり』をくれるんだろう…?

誰かに聞いてみたい気もするけど、でもその気持ちと同じ位、そっと心の中に宝物として仕舞っておきたい気持ちもするんだ。

何だか変だろう?
だって、全然違う気持ちなのに、同じ位にそう思っちゃうんだからさ。


うん、そうじゃないな。
『誰かに聞いてみたい気がする』んじゃなくて、きっと『皆に自慢したい』んだよな。


『今の俺の家族は世界一だ』って、皆に自慢したいんだ。


でも、この気持ちは俺にとって、とってもとっても大事な『宝物』だから、『自慢したい』けど、『内緒にしたい』気持ちもあるんだよな。

だって、こんなにも凄い『宝物』なんだから、知ったら誰かが盗っちゃうかもしれないじゃないか…?

俺にとって、ティファもクラウドも、そしてマリンも大事な大事な『宝物』なんだ。

誰にも盗られたくないんだ。

でも、きっとこんな事を話したりしたら、皆呆れてしまうだろう?

『バカね!デンゼルを置いてどこかに行くわけないじゃない!?』
『そんな心配必要ないのよ?だって、私達は血の繋がりは無いけど、家族なんだもの』
『……すまなかった。これからは、どこに行くにしても必ず帰って来る』

聞かなくても、こんな三人の声が聞こえる気がするよ。


こんな事を考えてるなんて、ティファやクラウドはとにかく、マリンに知られるわけには絶対に行かない!
これ以上、情けない年上の男なんて、見せられないんだから!


今までは、散々俺が守られてきた。
だからこれからは、ティファやクラウド、マリンに少しでも頼ってもらえるように、うんと頑張るんだ。
そして、セブンスヘブンの家族を、俺がこれからは守れるようになるんだ。


そしたら、俺も星に還った時、先に星に還った父さんや母さんに、堂々と胸を張って会う事が出来るんだから。


そして何より、『家族』が大好きだから、喜ぶ顔を沢山見たい。


洗い物を片付けた俺の頭を、優しく撫でてくれるティファの『手』が好きだ。

酔っ払いに絡まれそうになった俺を、身を挺して大きく広げて守ってくれた、ティファの『手』が好きだ。

いつも、美味しいご飯を作ってくれるティファの『手』が好きだ。

仕事から帰って疲れてるのに、出迎えた俺の頭を優しくポンポン叩いてくれるクラウドの『手』が好きだ。

誰も乗りこなせないようなバイクを、軽々操るクラウドの『手』が好きだ。

自分の背丈ほどもある大きな武器を扱い、モンスターから沢山の『大切な物』を守るクラウドの『手』が好きだ。

小さいのに、一生懸命注文の品を運ぶマリンの『手』が好きだ。

何でも一生懸命やろうとする、マリンの『手』が好きだ。

そして、捻くれ者だったの俺の手をぎゅっと握ってくれた、マリンの『手』が大好きだ!


だから、この温かい小さな手をずっと握っていられるように、温もりが消えそうな時には俺が温める事が出来るように…!!

俺が『温もりを与える事の出来る手』であるよう、一生懸命頑張るよ。


俺がそういう存在になれた時、やっと俺はマリンと同格になれるんだと思う。
今は、やっぱりマリンの方が、沢山の温もりを俺に与えてくれているから…。
俺は、まだまだマリンに温もりを分けてあげるほどの力が無いから…。


うん。きっとこの事を話しても皆呆れた顔して、俺に微笑みかけてくれるんだろ?
『バカね!デンゼルったら。ちゃんとデンゼルも家族の支えになってるよ』
『デンゼルは謙虚なのね。でも、本当にデンゼルは私達を支えてくれてるのよ?だからそんな風に思わなくても良いのよ?』
『デンゼル…、もし今ティファとマリンだけが店の中にいると思うと、心配で配達の仕事に出かけられなくなる。それくらい、デンゼルがいると安心できるんだ。だから、そんな風に自分を無力だなんて思う必要は無い』

うん。きっと三人はこう言ってくれるだろう?
ちゃんと分かってるよ。
だって、俺達は『家族』なんだから。


皆が、『温もりのある手』で俺を家族に迎え入れてくれたんだから。


だから、俺は今、こんなに毎日が幸せなんだ。


だから、俺も『家族の為』に頑張るんだ!


きっと、いつか俺は俺自身が気付かないうちに、誰かに『温もりのある手』で凍った心を溶かせる様になってると思う。


だって、俺の周りには沢山の『先生』がいるんだから。


ティファ、クラウド、そしてマリン。


『家族』として時を重ねていくと、きっと俺もそういう風になれると思う。



そして、そんな『温もりをもつ手』を持つ人が『家族』として、俺の傍にいてくれる。

本当に、俺は世界一の幸せものだよ!!


だから、心配しないで……


いつか会う時には、堂々と胸を張って会えるように頑張るから……。


その時まで、どうか安らかに眠っていてね。


父さん……母さん……。

あとがき

何となくデンゼルの話が書きたくなりました。
彼は本当に恵まれた子供だと思ってます。そして、その
恵まれた事を彼自身は、心から感謝しているのですが、シャイな性格
をしていて、なかなか言葉に出来ずにいる。そんなイメージがマナフィッシュは
持っています。そして、マリンに密かに初恋めいたものも抱いているのでは!?
とか考えちゃんですよね。だって、ティファは店があるから、デンゼルの
看病を主に、マリンがしてたっぽいし……。

きっと、デンゼルは本当の意味で強い男になるでしょう!
だって、あの家族に迎えられ、あの家族になり、
笑顔を取り戻したのですから!

最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。