君の傍にいることが幸せで
貴方の腕に包まれる事が幸せで
愛しくてたまらない君にキスをする
愛しくてたまらない貴方にキスをする


そして永久の誓いを


俺はもう君を離さない
私はもう貴方から離れない





【The other promise】





薬品の匂いと花の甘い匂いが混ざり合う白い部屋。毎日のように花が窓際に飾られ、部屋の主はわざわざこんなことしなくてもと遠慮していたが元々暖かく主を見守ってきただけにからかいつつも毎日飾っていく。

白く暖かい色の床に痩せた細い足を伸ばす。そっと乗せられた肌色の塊は床の感触を鈍い感覚で受け取った。
足を伸ばした部屋の主は嘆息した。
足の感覚があまりない。怪我の所為か長い間動かなかったからか、元の感覚を取り戻すには時間がかかりそうだ。
自分の細く弱々しい腕もまた、昔のようにはまだ動かない。
こちらは火傷の引き攣った痕がまだ薄く残り、動かす度に痛みを訴える。
暫くは酷なリハビリ生活を余儀なくされるのだろう。

どちらも異世界で受けた代償だ。

主は諦めたように足をベッドに戻して横になった。ただ足を動かすだけで疲労で睡魔が波となって、主は目を閉じた。

沈むように眠る……



部屋の主――クラウド・ストライフは今まで、今現在自分が暮らす世界とは違う世界にいた。自らの世界含め様々な世界の断片が世界を作り出す世界で、その世界に存在する神によって召喚された。
何度も何度も輪廻とは名ばかりの記憶修正によって戦い続ける。

計13回にも及んだ戦いは結果的に混沌を司る神が勝利したが、神が死ぬというイレギュラーによって輪廻から全員開放された。

クラウドにとって予想していたことが起きたのは元の世界へと帰還するときだった。
そしてそのときの傷は蝕み続けている。今も精神と身体、両方を。


足を腕を、黒い鎖が絡み付く。花畑が一瞬で荒廃し闇へと変わり、鎖に吊り上げられたクラウドは四肢にかかる引き裂かれるような痛みに苦悶の声を上げた。
憎悪に似た声を聞いたのはその時だった。



――輪廻する世界から逃がしはしない……愚かな男よ――



舐めるように炎が身体を焼き、呻いた。もがくように身体を捻るが鎖は絡み付くまま。余計に絞まる。



――他の奴らには逃げられたが……貴様は我の裁きを受けねばならぬ――


――地獄の業火に焼かれろ……二度と帰らせはせぬ……!――


闇の中に浮かび上がったのは白銀の鱗を身に纏った龍。神龍と呼ばれるものであった。龍の息吹がヒリヒリと身体に痛みを植え付けていく。
――助かろうと、思ったつもりはなかった。
どういう理由であれ、俺がしたのは自己満足の為の行動であった事は否定しない。

全ては彼女の。
自分に光を、全てを与えてくれた彼女が、苦しむ姿を見たくなかったというだけ。

罰なら受けるつもりでいた。
罪から逃れられるほど、神は甘くないこともクラウドは理解していた。
クラウドは四肢の抵抗を止める。そうすることで熱を帯び赤く変わった鎖に締め付けられる。
負の感情が彼の身体を炎となって襲い掛かった。
輪廻する世界で力を失い消えていった負の情念が、自分のものではないありとあらゆる感情が、一気に弱くなった精神に押し寄せ悲鳴が上がる。


「ガッ……う、あ……ああッ!!」


苦痛の叫び、怨嗟の声、全てを憎む声が食らいつくそうと身体を貫いていく。
汚れ濁った狂気に全てが黒に塗り染められる。


(壊れる……壊れてしまう!)


周りに縋るべき者もない煉獄の世界の中でクラウドは身をよじった。
神龍が高笑いする声が聞こえる。それが愛しい彼女の嗤い声に聞こえて来てしまう。彼女でない、となんど言い聞かせてみてもひび割れる精神では理解できなくて。
腕が胸が背中が足が頭が引き裂かれる痛みと、業火に生きたまま焼かれる苦痛が、焼けただれる異臭が、弱りきった精神を焼き、狂う。


絶望の淵に立つクラウドの前に、悪夢は止めを刺す。


見開かれ渇いた目の先にいたその人物を見て、クラウドは息を呑んだ。
スラリと細い華奢な姿。美しく黒々と艶のある髪と整った顔。見間違うことなんてアリエナイ。

彼女の赤み掛かった茶色の瞳から、透明な雫が流れ落ちる。悲しげに寄せられた眉と引き結ばれ弧を描く唇。
ヒューッ、ヒューッとクラウドの喉の奥から息が溢れる。



『クラウド……』





『貴方なんて、いなければよかったのに』






その言葉に、何かが崩れ落ちた。渇いた頬に何かが伝い落ちる。鎖が巻き付き、燃えるように消えた愛しい者の姿にココロが限界を越える。


(痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい助けて痛いなんでどうして俺は俺は痛いなんで苦しい壊れる狂うヤメテイヤダイカナイデクルシイイタイイヤダカエシテハナシテ)


(俺は、オ、レハ……)



「あああああああああああああああああああぁぁぁぁッ!!」



焼け付く
壊される 壊れ、る



――……ド…………!?



悪夢に溺れ、悲鳴と共に暴れる。身体がボロボロで、動けば悪化するだけの身ながらも狂気と恐怖は身体に染み付いて離れてはくれない。
胸が張り裂けるように痛くて、息が出来ないくらいに苦しい。
夢から覚めている筈なのに。
暗闇の中の君の声が、心配して触れるその手が――怖い。

付き添って一緒に眠ってくれている彼女すら目に入らず。


「う……ッ……あああ……ああああぁぁッ」

「クラウド! 大丈夫だよ……私はここにいるよっ」


伸ばされた手を、強く払う。
一瞬だけ、不安そうに見るティファの顔が歪み、笑っているように見えて、痛みが増す。


信じ、られない。


帰ってきた時のあの至福が、感じることが出来ないくらい、痛い。


「ぐあああああっ…………なせっ、離せぇッ」

「クラウド……クラウド……」

「嫌だ……嫌だああああぁぁ!!」

「大丈夫だよ……クラウドっ」

「はぁっ、はぁっ…………うあああああああぁぁ!!」



「クラウド!」



そっと感じる温もり。窒息してしまいそうな感情の渦に呑まれて、それでも彼女の――ティファの温もりがじんわりと強張る身体を包む。

ハッ……、と荒い息を吐き、クラウドはギュッとティファの身体を抱きしめた。滝のように汗が流れ落ちて動揺を抑えきれない肩が腕が、震える。
怖くなって、立ちすくむ時はいつもティファがいて仲間がいた。仲間とティファが支えてくれて自分は今を生きているのに、悪夢が見せた幻覚が離れない。


「……ッ、ティファ」

「なぁに? クラウド」

「……ティファは……ティファは……ううッ……クッ」

「大丈夫……私は此処にいるから……ずっと傍に……」


ティファが優しく背中をさする。胸元に寄せた頭を撫でられ、恥ずかしい思いよりも先に、荒れた感情の波が引いていく。


「……俺」

「何も言わないで」

「…………ティファ?」

「クラウドが帰ってきて、私も見たの……」

「……それ、は…………ぐっ」


思い出すだけで精神が大きく乱れ、苦しみに身を捩るクラウドを抱きしめたまま、ティファは呟いた。


「アレが……クラウドが苦しむ原因なんでしょ?……熱くて苦しくて……痛い」

「…………ッ、あぁ」

「まだ……怖い? ……私達、戻ってきたんだよ?」


クラウドは首を振る。
ただ――


「……怖い、んだ。…………が、いな、くなる……ことが」

「私、クラウドの傍にいるよ?」

「違う……違うんだ」

「……?」

「怖い……ティファが、約束してくれても……、信じきれない俺がいる……」


囚われて、クラウドというものがいなくなって、ティファが傷つかないなら、いくらでも耐えられた。いくらでも業火に焼かれていられた。
それでも、悪夢が見せたのは彼女が泣いていた姿。
『いなくなればいい』といいながらまるでそれは彼女が代わりに消えると言わんばかりの姿。
ただ彼女が苦しむところを、傷つくところを見たくないだけだったのに。


「私は……クラウドがいない世界はいやよ。……だから傍にいるよ?」

「…………」

「……クラウド……今、急に信じなくていいの。弱くなったココロってね、急に言われても信じられないから。……私が一番知ってる…………昔の、何も信じられないままクラウドを壊してしまった時みたいに」

「……ティ、ファ」

「……だから、今はこうさせてね……」


不安がる子供をあやすように抱きしめられる。
信じてとも言わずにただ温もりに包むティファ。その事実だけで嬉しい。
痛みは酷いのに、その痛みが癒される。


ティファ……!


涙の味がするキスは、それでもとても甘かった。




□アトガキ□
という名前の言い訳。

です。
やっと終わりましたチャット企画。年越すかなぁと思っていたら意外にも越さなかったという真実。

そして謝罪をひとつ、主人公に←

ごめんねクラウド。
ほんと悪気はなかったんだ。ちょっとドSの気がでたんだよ……セフィロスが来たんだよ……多分←

だって虐めたくなるんだってクラは!!
鬼畜ですもん俺。
アレ、そういえばクラウドサイドって毎回絶叫してないかい(ジュルリ)

ハッΣ(´Д`)
こんな俺得小説ですがチャットメンバーの皆様、煮るなり焼くなりしてくださいませ。

そういえば誰か気付くかなぁとおもったのですが、
このシリーズの始まりと終わりは形式が大体同じなんですよね
『輝く〜』は二人の決意と思い。『The other〜』は……なんだろ。

どちらも最後はキスで終わりますよね〜( ̄ー ̄)

それでは、良い年を!


 感想

…もう、もう〜〜!!(大号泣!)
言葉で感想なんかとてもじゃないけど表現できない!!

ク、クラウド……。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。
どんだけティファのことを愛してたんだ!!
クラウドとティファ、お互いの愛がもう痛いくらいに伝わってきて!!
しかもクラウド、超痛いよ…(号泣)
もう、めっちゃ読んでて胸が痛かったデス…o(;△;)o
ティファを帰すため、ティファの幸せのため、進んでその身を差し出した彼の肉体的、精神的苦痛も痛いけど、心の底から願って願って、ようやっと帰って来たのに、それを信じられない自分が苦しい…って!!
どんだけ切ないの〜!?
しかも、ゲームではマジでそうなりそうだ〜!!とかとか、妄想が拍車をかけております!!

もう、もう、ほんっとうに麗音さん、愛してry(殴!!)

はい、本当に本当に大感謝の麗音さんの素敵サイトはこちら〜♪