望んでこんな容姿になったわけではない。
 それなのに世の中は、いや、人は理不尽なことばかり並べ立てて自分を追いやるのか。

 出来ることならこの体、この顔、今すぐ取り替えてやる!






理不尽な世界







「しつこいぞ、断る!」
「だーーーっ!てめぇ、こんだけ言っても分かんねぇのか、バカ野郎!!」

 不機嫌を隠そうともせず怒鳴り声を上げた青年に、巨漢で色黒の男は頭を掻き毟って逆切れした。
 返す返すも、自分にこの任務は果たせない、そう思ってしまう。
 もっと適任がいたはずだ。
 ティファとか、ティファとか、ティファとか…。

 だが、結局どうして一番頼りになる彼女に頼めなかったのかという理由を思い出して、何十回目かの『理不尽だ!』という苛立ちと共にティファに頼ることを諦めざるを得なかった。

 一方、そんなバレットの葛藤なんぞ露とも知らず、クラウド・ストライフは端整な顔に怒りをたぎらせ、今にもバスターソードを抜き放たんばかりの殺気を放った。

「バレット!お前、俺がそんなバカバカしい要求を叶えるなんて、本気で思ってるのか!?」
「思ってねぇよ!思ってねぇけど叶えてもらわなきゃ困るんだよ!」
「お前が困ろうとどうしようと俺には関係ないね!」
「なにおぉ!?仲間がこんだけ頼んでもか!?」
「仲間なら、嫌がることを強制したりしないだろうが!!」

 ぐっ。

 思わぬ反撃にバレットはぐっと顎を引いた。
 まさにその通り。
 出来れば仲間の嫌がることを強制なんぞしたくない。
 強面な容貌をしているが、バレットの義侠心はとても厚い。
 だが、そんな義理・人情には目を瞑ってもらわなくてはならなことも人生にはいくらでもある。
 そして、その時がまさに今なのだ。
 何がどうあっても、バレットはクラウドを今回の件に巻き込まなくてはならなかった。

 あぁ、何が悲しくてこんな役目を…。
 それにしても、あんだけ無口で言葉のボキャブラリーが人と比べて100分の1くらいしかなかったクラウドが、こんなに語彙(ごい)が増えるとは!
 それもこれも、ティファやマリン、デンゼルと暮らしているからこその恩恵。
 なんて羨ましい!
 自分なんぞ、むさくるしい男どもに囲まれて日々、油と汗と土の匂いをぷんぷんさせているというのに…!

 心の中でそっと涙を流しながらバレットは唐突にクラウドの腕を掴んだ。
「良いからとっとと行くぜ!!」
「なにが良いんだ、離せバレット!!」
「ギャーギャーうるせぇ!俺のハートを少しは思いやれ!!」
「手前勝手なことばかり言うな!そういうなら俺の気持ちも考えてみろ!」
「ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う男ってのは女にモテねぇぞ!?」
「黙れ!ティファ以外にモテなくて結構だ!!」
「かぁーーっ!これだから色男はーー!!」
「何が色男だ、古臭い表現はよせ!!俺に障るな、担ぐな、今すぐ下ろせ!!」

 ギャーギャー大騒ぎ、罵りあいの声が虚しく荒野に響いて消えた。
 そうして。
 クラウド・ストライフはコレルに連行された。

 連行するにあたり、使用された交通手段はシエラ号ではない飛空挺だった。
 道すがら、双方共にブスッと膨れっ面だったため、どうしてシエラ号でないのかクラウドは現地に着くまでとうとう知らなかった。
 到着して、あぁ…なるほど…。と思ったものだ。
 ゴツゴツした岩肌が目立つ山岳地帯。
 そのところどころにある岩肌の平地に、着々と進んでいる『セット』。
 指揮しているのは、シエラ号の艦長。
 そして、低空で浮上しているシエラ号から運び込まれている『機材』。
 クラウドはガックリと肩を落とした。
 悟ったのだ、もう逃げ場はない…と。
 愛車であるフェンリルは一緒にこの地に運ばれてきたが、シエラ号が相手だと逃げ切れるはずがない。

「おう、来たかクラウド」

 クラウドの心情など知らないかのようにシドはいつものニヒルな笑みで片手を上げた。
 それに応える気力もない…。

「よお、バレット。ちゃんと時間までに連れてこられたなぁ。お手柄お手柄」

 軽く口笛を拭きながらバレットを褒める。
 巨漢の男はブスッとしたまま、苦虫を噛み潰したような顔のまま、舌打ちをした。
 バレットも今回の件に関して、非常に面白くない目に合っている、ということがここに来るまでの間でクラウドにも何となく伝わってはいたのだが、だからと言ってバレットを許すとか、そういう気持ちにはてんでなれない。
 胸にあるのは「この裏切り者!」という腹立たしさだけ。
 シドは、「はは〜ん…」と笑った。
 クラウドとバレットの心情を正確に読み取ったのだろう。
 口を開いて…、思い直したようにガシガシと頭をかいた。
 結局口にしたのは「まだ時間かかるから、それまでに何か飲んでろよ」という言葉だけ。
 からかいたくて仕方ないが、流石にそんな非道なことは憚れた…といったところか…。
 だが、そんな気遣いなどこれっぽっちも慰めにならない。
 本当に仲間だと思うなら、今すぐ低空浮上しているシエラ号でエッジに送ってくれ。

「クラウド、言っとくけどお前が一番ご指名がかかるだろうから、今のうちにしっかり休んでおけよ」

 クラウドの心の叫びを一蹴してくれたシドに、クラウドはその横っ面を張り倒したくなったのだった…。


 *


 ―『ねぇ、クラウド。デンゼルみたいな子供達って…どれくらいいるのかな…?』―

 そう言って、少し悲しそうに目を伏せたティファの横顔を見たのはいつだっただろう…?

 ―『少しでも、デンゼルみたいな悲しい子供達が笑ってくれるように私達が出来ることってなんなのかしらね…』―

 そう言いながら、悲しそうに微笑んだティファを抱きしめたのはいつだっただろう…?
 あの時、心から思った。
 自分の出来ることならなんだってしよう…と。
 今は、どうしたら良いのか、その方法が分からないから、分かった時には惜しまず、怯まず、躊躇わずに全身全霊をかけてそのことに注ぎたい。
 そう…思った。

 あの時の気持ちにうそはない。


 ……だが…。


「皆、英雄に会いたいか〜?」
「「「「 会いた〜〜い!! 」」」」

 荒野に夜が訪れて数刻。
 テンションの高い女性の声がマイクを通して大音量で鼓膜を叩く。
 それ以上に大きな歓声がクラウドの鼓膜を容赦なく攻撃した。
 ビリビリと伝わる熱狂的な気迫に、我知らず、手の平がじっとりと汗ばむ。

 確かにあの時、自分に出来ることならなんでもしたいし、なんでもする、と心に誓った。
 だが、こんな風に見世物になることなど、どうしても、どうしても!!我慢出来ない、というか、納得出来ない!

 クラウドは何千と突き刺さる好奇の視線に、ダラダラと汗を流していた。
 左隣では、絶対に自分と同じ気持ちを味わっているであろうヴィンセントが、容赦なく降り注ぐ照明のためか、それとも不機嫌マックス状態であるが故なのか、いつも以上に目を細めて唇を引き結んでいた。
(いや…両者だ)
 眩しいことと機嫌が悪いせいで目を細めているに違いない。

 反対の右隣では、ヘラヘラっと笑ったシドが時折肩に担いだ槍を構えたりして『ファンサービス』をしている。
 そのせいで、集まった人達から黄色い歓声がしょっちゅう上がった。
 …なんと迷惑な。
 これ以上不幸になりようがない状況で、更に居心地の悪い空気を作り出そうとは…。

(シド…、お前の罪、万死に値する。これが終わったら覚えてろよ…)

 心の声が聞こえる能力を持つものがいたら、蒼白になって後ろを振り返ることなく全速力で逃げ出すこと間違いないだろう。
 そして、その死刑宣告をした相手であるシドの右隣には、今回の悪の根幹とも言えるバレット・ウォーレスが義手を構えたりして得意満面の笑みで立っていた。
 シドと同じく、バレットが義手を構えるたびに黄色い歓声が上がる。
 クラウドの左隣でヴィンセントがピクリ…、と眉をひくつかせた。
 それだけでなんとなく救われたような気がするのは、恐らくこの場で自分と同じくらいに不快な思いを味わってくれている『同士』がいてくれる、というただの気休めに他ならないのだが、理不尽な思いを味わっているのが自分ひとりではないということがこれほど心強いとは…。

(ヴィンセント、今度一緒にとことん呑もう…)

 そっと胸の中で唯一の仲間にそう話しかける。
 クラウドの胸中など、この場にいる誰もが気にしていなかった。
 よしんば、気にしたとしてもこの大観衆を相手にどうしろというのか?
 いや、どうも出来るはずがない。
 流されるしかない場面など、人生でいくらでもあるのだ。

「それでは、最初にバレット・ウォーレスさんに質問のある人〜?」

 司会役である女性が、短すぎるスカートの裾をヒラリ、と揺らせてステージ上の英雄(捕獲された獲物)を振り返った。

 沸き起こる歓声。
 上がるテンション。

 バレットは盛り上がる観客たちへのサービスと言わんばかりに、空目掛けてタタタタン…、と数初発砲した。
 効果覿面(こうかてきめん)。
 観客たちは異様な興奮状態を見せた。

(……なにが『チャリティーステージ』だ。ただの見世物じゃないか…!)

 マイクを向けられたバレットが、
「おうよ!俺様がバレットだー!おめぇら、最後までついてこいやー!」
 などと、わけの分からないことをほざいているのを見ながら、クラウドは観客席の一番最後列後ろに飾られているアーチの文字に心の中で唾を吐いた。


【〜世界の孤児のために〜 チャリティーステージ】


 なんとも忌々しいフレーズだ。
 なぁにが『世界の孤児のために』だ。
 完全に面白がっているだけじゃないか。
 …確かに、今回のこの企画に参列している客達の入場料金やその他、諸々の売上品は、全て世界の孤児院や病院へ寄付されることとなっている。
 だが!
 なぜに『ステージ』!?
 しかも、このステージはただのステージじゃない。
『トークショー』なのだ!
 しかも全世界放送ときている。

 この場に集っていない英雄はティファ、ユフィ、リーブだ。
 ナナキですら、この暑苦しい照明に晒され、ヴィンセントの左隣でなんとなくヘバリ気味だった。
 世界を旅して見聞を広めているナナキにとって、はた迷惑以外の何ものでもない緊急招集だ。

 ちなみに、この場にいない英雄達の理由は…。

 @ティファ:子供達の面倒を見ないといけないから。
 Aユフィ:まがりなりにも一応女性なので、夜の番組に出演させるわけにはいかない!という古風な土地柄ゆえ。(だが、忍家業の場合はこれに限らない)
 Bリーブ:忙しいから。(それ以外に理由があるとでも?)

(ティファ達、もしかしなくてもこの中継、見てるんだろうか…?)
 クラウドは遠い目をして一瞬、現実逃避をした。

 一際高い歓声と割れんばかりの拍手。
 クラウドはハッと現実に返った。

 いつの間にかシドの番が終わっている…。
 えっ!?
 バレットの次だったはずのシドがもう終わっている!?!?
 ということは…。


「はい、次はナナキさんで〜す!」


 途端、湧き上がった黄色い歓声は明らかに先ほどの歓声に混ざっている小さな子供の数が多い。
 右隣とその右隣の仲間が苦笑した雰囲気が伝わってきた。
 対して、ナナキの右隣にいるヴィンセントから絶対零度のオーラがビリビリと発せられた。
 真正面からは観客の熱気、すぐ隣からは極寒の冷気。

(……風邪引きそうだ……)

 薄ら寒いのに暑いなど、風邪を引く原因ではないか…、と、ずれた頭で考える。
 頭がずれて当然だ。
 何しろ『え?なんで俺、すっ飛ばしてナナキ?俺のことは無視なわけ?だったら、この場に呼ばなかったら良いんじゃないか!』状態なのだから。
 司会者があえてクラウドの順番をすっ飛ばした理由に全然気づいていない。
 いや、実は事前に簡単な打ち合わせをしたのだが、ぶんむくれていたクラウドは、ヴィンセントと一緒に『フケタ』のだ。
 だから、トーク順を全く知らないで時間を迎え、ステージに引きずり出されて今を迎えている。
 クラウドの困惑などよそに、ナナキはハイテンションの司会に紹介されて、引き攣ったように笑いを浮かべながら尻尾をクルリ、と回して見せた。

「わ〜〜!可愛い!!」「俺、俺欲しい!!」「お父さん、買って、買って〜!!」「母ちゃん、俺、ナナキ欲しい!!」

 目を輝かせて親にねだる子供の姿に、ナナキはガックリ…と肩を落とした…。(ように見えた)。

「ナナキさんは本当にお子様たちに大人気ですね!やはり、その可愛いルックスで英雄の皆様のマスコットキャラとしてあの辛い旅に心の癒しを与えていたのでしょうか?」

 興奮絶頂の司会に、クラウドとヴィンセントは無表情を貫いた。
 何が『癒し』だ、『マスコットキャラ』だ。
 マスコットキャラなら、ケット・シーの方こそが適任だ。
 いや、だからと言って別にケット・シーに癒されたことはないのだが…。

 シドとバレットはケラケラ笑いながら、
「んなことねぇって」「そうだぜ、こいつよりもケットの方がうんと癒し系だっつうの」
 などと軽く突っ込みを入れている。
 軽い口調で『癒し系キャラ』を否定されたナナキは、苦笑半分、この場のノリについていけなくて引き攣り半分で女性の質問になんとか応じていた。
 そして、ナナキへの惜しみない拍手が送られた後、次に回ってきたのは…。


「はい、次は幅広い女性から絶大な人気を集めています、ヴィンセントさんで〜す!!」


 クラウドは凍りついた。
 またしても順番を抜かされた。
 最初は一番右に立っているシド。
 その次は右から二番目のバレット。
 そして、その次は一番左に位置しているナナキ。
 そして今、その右隣に不機嫌絶頂視線だけで殺してやるぜオーラを発散させているヴィンセントが呼ばれた。

(なんでこんな順番!?しかも俺、よくよく考えたら真ん中じゃないか…!)

 真ん中の人間をすっ飛ばして両端から攻めるように順番が廻っている。
 どういうことだ!?
 真ん中の人間は全無視!ってことか!?
 ということは、これは新手でスケールのでかい嫌がらせか!?
 バレットか?バレットの嫌がらせなのか!?
 マリンと一緒に住んでいるから、憂さ晴らしをしているのか!?
 だからこんな大衆の面前で恥をかかせようとしているのか!?
 いやいや、ならどうしてシドまで協力を!?
 何かシドとバレットの間で協定でも結んだのか!?!?

 クラウドの脳内ではバカみたいなことが次々と『可能性』として浮上し、パンク寸前となった。

 幸か不幸か、無表情&無愛想男であるクラウドの混乱は、見た目では全く、これっぽっちも分からなかった。
 そのクラウドの隣で、ヴィンセントは司会である女性の営業スマイルを最初から最後まで全無視を決め込んだのだった…。


「え、え〜と、では、最後になりました〜!」


 笑顔は完璧なのに声を引き攣らせた司会に、突然会場が沸き立った。
 脳内グルグル状態だったクラウドがハッと我に返るほどの熱狂振り。
 気のせいか、客達が一斉に視線をガン飛ばししている…ようだ…。
 思わず半歩後ずさり、チラッと視線を仲間達に走らせた。
 ナナキは苦笑。
 ヴィンセントは不機嫌。
 シドは愉快そう。
 そして……、バレットは……。

(は?なんであんなに機嫌悪いんだ…)

 先ほどまで愉快痛快な様子だったのに、今は唾を吐きそうな顔をしてそっぽを向いている。
 ますますわけが分からなくて混乱するクラウドを気遣うことなく、司会は満面の笑みと、会場を盛り上げるべく効果抜群な『溜め』を用いて…。


「ジェノバ戦役の英雄、クラウドさんで〜す!!」


 割れんばかりの拍手と黄色い歓声が上がった…。


 *


「わ〜、やっぱりクラウドが一番人気だなぁ…」
「そうだね。クラウド、固まってるけど大丈夫かな…」

 コレルから遠く離れたエッジの一角に構える店内で、デンゼルとマリンが心配そうにTVにかじりついていた。
 ティファは子供達の頭越しにTVを見た時から、ハラハラ、ドキドキ、ヒヤヒヤしっぱなしだった。
 今回の『チャリティートークショー』のことを知ったのは、クラウドがバレットに無理矢理拉致された直後、シドから聞かされたのでクラウドになんのアドバイスも出来ないままだった。
 話しを聞いた時には、コレルまで飛んでいこうかと本気で思った。
 だが、すっかり面白がっているシドは、ティファをコレルに運ぶことを先手を打って拒否した。

『ティファ、おめぇは来るなよ。デン坊とマリンがいるだろ?』

 その一言は何よりも効いた…。
 そうして、歯噛みしながらTVの守をすることになったのだが…。

(クラウド……素敵…)

 キラキラと照明に光る金糸の髪。
 透き通ったアイスブルーの瞳。
 これでもか!と整った顔立ちに、困惑気に顰められた眉はゾクゾクするほど色っぽかった…。

(あぁ…、録画しておいて良かった)

 うっとりと画面に見惚れながら、ティファは一瞬察知したクラウドの心の嘆きを忘却の彼方に蹴り飛ばしたのだった…。


 *


 ―『バレット……覚悟は出来てるんだろうな…』―
 ―『はん!?覚悟!?一体何の覚悟だっつうの!!』―
 ―『お前!!』―
 ―『それは俺様の台詞だ!』―
 ―『なに!?』―
 ―『毎日毎日、汗水垂らして、マリンのため、デンゼルのため、俺が迷惑かけた星のみんなのため、そんでもってこの星で生きてる野郎どもみんなのために必死で働いている俺様を横目に、『クラウドの方がバレットよりもうんと英雄らしいよね』、なぁんて油田開発仲間のガキに言われた俺様の心の悲鳴はおめぇには分からねぇよ!!』―
 ―『……は…?』―
 ―『ついでに、『バレットも英雄なら、クラウド様に会わせてくれることくらい簡単だよね』なぁんて言われた日には!!』―
 ―『いや……意味が分からん…』―
 ―『しかも、そのガキの親である俺の仕事仲間に『それは無理だ。バレットと違ってクラウドさんは忙しいし、シャイだから一対一では会ってくれないさ』なぁんて軽く笑われた日には!!』―
 ―『……あの……バレット……泣かなくても…』―
 ―『そしたら、『じゃあ、沢山の人が集まったら良いんじゃない?そしたら、チケット代とかもらうだろうし、その売上金を孤児院に寄付したら良いよ。一石二鳥!』なぁんて、話しが進められて、『バレット、お願い!』なんて可愛い顔してお願いされて断れるか!?断れるのか!?!?』―
 ―『……え……?』―
 −『ちくしょう……ちくしょう!俺だって、お前みたいに色男だったらこんな惨めな思いを味わなくて済んだんだ!』―
 ―『…バレット……、色男って死語…』―
 ―『誰が好き好んでむさくるしい容貌になったかっつうの!畜生、なんて理不尽な世の中だ!!』―
 ―『……あのな…』―
 ―『くっそ〜!クラウドの大バカ野郎!てめぇなんか見てくれだけだー!!どうせ、エッジでもモテまくってるんだろうが!この女と子供達の敵野郎!!』―
 ―『(ブチッ!)』―

 ―『うわわわ、ダメだってクラウド!!ヴィンセント、そっぽ向いてないで助けて!!』―
 ―『ナナキ、言うだけ無駄だっつうの…。ほっとけよ、死ぬことはねぇだろうからよ…』―
 ―『わ〜〜、シドまで!!2人のバカ!!クラウドとバレットが怪我したらティファ達が悲しむじゃないか!!』―

 ナナキの悲鳴を聞きながら、怒りマックス状態のクラウドの脳内でリフレインしているシーンは、下心満載で近寄ってくる妙齢の美女である『デリバリーサービスの客たち』。


 誰が好き好んでこんな容姿になったものか!
 可能ならそっくりそのままバレットと入れ替わってやる!
 入れ替わったとしても、ティファへの想いも、ティファが寄せてくれる想いもいささかも変わらない!


「うぉおぉおお!!」
「とりゃーーーー!!」


 バカバカしすぎる理由で、英雄達の闘気の雄たけびが『トークショー』を終えて寒々しい荒野に響き渡った。

 そして…。


「クラウド」「ダメじゃない、喧嘩しちゃ…」「クラウド、デンゼルとマリンの教育上にもよくないからこれからは喧嘩しないでね?」


 三日後に帰宅した包帯だらけのクラウドに、事情をシドから聞いていた家族は呆れながら出迎えたのだった…。


(……理不尽だ…!)


 クラウドはそっと心で涙した。



 あとがき

 どうして『握手会』とかにしなかったのか?という疑問があるかもしれませんが、理由はとくにありません(笑)
 FFACCのクラウド達は、絶対にこんなことはしないでしょう。
 はい、おふざけすぎました<(_ _)>