声援
「あ!全くもう、何をボヤボヤしてるのかしら…!」
「……おい…」
「あ!だから、そっちじゃなくてこっちでしょう!?」
「…おい!」
「あー!!駄目だったら…バカバカ!見るのはそっちじゃなくてこっちだってば!!」
「おい!!」
「え!?何よ、今大変なんだから、くだらない用事なら後にして!!」
「あのな…」
「もう何よ…って、あー!コラー!!どこ見てんのよ!子供達なら大丈夫だって言ってるでしょう!?」
「……いや、聞こえねぇから…」
「うるっさいわよザックス!!今、ティファがピンチなの!どこの馬の骨とも分からないチンピラが、人の良さそうな顔をして話しかけてるって言うのに、チョコボ頭がお子様達の方に気を取られて、全っ然気付いてないの!!ホラ、見えるでしょ!?ティファー!!駄目だったら、そいつら道が分からんない振りしてるだけなんだってば!!」
「……えらく古典的な手に引っかかるんだな…って、イタッ!!何すんだよ!?」
「うるさいわよ!ティファは良い子なの!純情なの!!真面目なの!!!心が優しいのよ!!!!人が良すぎて騙されやすいけど、そこがティファの魅力なのよ!!」
「いや、それフォローしてるのか…?って言うか、何もそこまで興奮しなくても、彼女なら得意の格闘術で乗り切るだろ?」
「もう、何言ってるのよ!そういう問題じゃなくて、心の問題なのよ、心の!!」
「は…?」
「ああもう!今、ティファはまさにピンチなのよ!そこを、クラウドが颯爽と現れて助けてくれる…!それこそティファの心が幸福で満たされる瞬間じゃないの!!」
「ああ、なるほどね…そういうわけ…」
「それに、自分が騙されたって知った時のショックを考えたら、とてもじゃないけど静観なんか出来ないわ!!」
「…イヤ、叫ぶだけム…ダーー!!何すんだよ、さっきから!!」
「うるさいってさっきから言ってるでしょ!?用事が無いならあっちに行って!」
「…………」
「あ!……よし、良くやったわクラウド!」
「…………」
「うんうん。ホラ見て!ティファの幸せそうな顔!ああ、全くヒヤヒヤさせないでよね。それにしても、クラウドも随分大人になったわよね〜。今のナンパ男達も一睨みするだけで我慢したし!」
「……いや、明らかに殺気が込められてたぞ…」
「良いじゃない、殺気くらい。手を出してないんだから」
「……殺気くらいって…」
「それに、ホラ見て!ティファの輝く笑顔!!ティファが幸せならチンピラの一人や二人、腰を抜かして泣きながら逃げ出すことくらい、どうって事ないじゃない!」
「……五人だったけどな…」
「そうだったかしら?」
「………お前、鬼だな…。それに、そんな哀れな男共を視界にすら入れずに幸せそうに微笑んでる彼女も相当酷い…」
「あら!何言ってるの!自業自得よ!!うんうん、良くやったわクラウド!ホラ、ティファもそこでギューってしがみついたら、可愛さUPなのに!!」
「……いや、そんな事したらクラウド、血圧急上昇で昏倒するって…」
「あ、そうかもねぇ。クラウドもティファも、まだまだお子様のところがあるから…。ああ、何だか心配だわ!今回のバカンス、二人共無事に過ごせるのかしら…」
「いや、大丈夫だろ…。って言うか、お前、年寄りみてぇ…」
「何か言った!?」
「……いえ、なにも…」
「それにしても、ユフィも大人っぽくなったわよね〜」
「ん?ああ、あの子か。うん、かなり可愛いよな〜…見た目は…」
「何、その最後の一言は!?」
「だってさ…。さっきからあの子、ナンパ男に奢らせるだけ奢らせといて、トンズラかましてるんだぞ?普通の精神の女の子じゃ、あんなに奢らせといてドロンするか!?」
「良いのよ、ユフィはあれで!大体、如何わしい目的で声をかける男共が愚かなのよ!」
「……その点については俺も同感…って言うか、ノーコメントだな」
「?何で?」
「いや、それはやっぱりあれだ、男の性(さが)ってやつだな」
「あ〜、そうよね。ザックスはそうでしょうね〜」
「何だよ、その間延びした言い方と白い目つきは!?」
「別に〜」
「……何だか無性に腹が立つんだが…」
「はいはい、怒らない怒らない!あんまり怒ると禿げるわよ」
「もう禿げるかよ!!」
「え、禿げるとこまで禿げちゃったの!?」
「だーーー!!何でそうなるんだよ!俺達はもう時間が止まってる様なもんだろ!!だから、禿げるわけがないだろうが!!」
「バカね〜、分かってるわよそんな事。ちょっとからかっただけじゃない。そんなにムキになっちゃって、もしかして気にしてるの、おでこ」
「…………!!!」
「あはは〜、ザックスったら可愛い〜!」
「うるせぇよ!!」
「あ!何て話してる間に、またまたユフィが獲物をゲット!」
「……群がる虫どもは愚か者ばっかだな…」
「う〜ん、そうとも言えるけど、ユフィの魅力が凄いんじゃないかしら?」
「…確かに白い砂浜であの子の輝く笑顔はか〜な〜り!魅力的だな…でもなぁ…」
「?どうしたの?」
「いや、俺的にはティファの方が…。こう、グッてくるって言うか…」
「…………」
「何だよ、その冷たいブリザードのような眼差しは!?」
「……ザックスやらしい…」
「しょうがねぇだろ!?俺は男なんだから!!」
「はいはい、どうせまた、男の性(さが)とか言うんでしょ〜?」
「……ッ!!ホンットウに俺の事バカにしてるだろ!?」
「う〜う〜ん、べっつに〜!」
「くぅ…な、殴りてぇ…!!」
「それにしても、バレットとシドは相変わらずよね〜」
「ん?あのオヤジさん達か?」
「うん。いっつも何かあると宴会開いちゃうのよね。まぁ、賑やかで楽しいんだけど」
「それにしても、あの構図はヤバイだろ〜?お子様達の教育にはよろしくないな」
「そうよねぇ。いくらなんでも、昼真っからあんなに酔っ払ってるのは、ちょっとまずいわよね」
「白い砂浜、輝く水しぶき、照りつける真夏の太陽の下、艶やかな肌を見せ付ける美しい乙女達…」
「……頭でも打ったの……?」
「ち〜が〜う!!夏のビーチに相応しく、美しい光景の中で、あのオヤジさん達の構図はこれ以上ないほど似合わねぇ…って言いたかったんだよ!!途中で口を挟むから変になったんだ!!」
「ああ、そういう事!」
「そういう事なんだ!!」
「ま、どうでも良いわね」
「…お〜ま〜え〜!!」
「あら、ヤダ。私の名前忘れたの?可哀想に、もうすぐ星と一つになるから記憶がボケちゃったのね」
「だーーーー!!!んなわけないだろ!いい加減にしろよ、エアリス!!!」
「はいはい、良く出来ました!」
「頭撫でてんじゃねぇよ!」
「それにしても、あのお子様達は最強だな」
「ん?何が?」
「いや、さっきからティファに群がる虫共を何だかんだ言いながら撃退してるんだ」
「ああ、マリンにデンゼルね!本当に良く出来た子供達よね!!」
「ああ、本当に。クラウドとティファが肝心なところで危なっかしいのを実に上手くフォローしてるよな」
「うんうん!本当に素晴らしいサポート振りだわ!あ!!そしてそんな子供達を可愛がるクラウド登場!」
「おお!あのお父さん振りには脱帽だな。何だよ、あのしまりのない顔は。あのクラウドがねぇ…。あいつも大人になったもんだ。見ろよ、似合わねぇよ、あのソフトクリームを口に運んでもらってる姿!」
「アハハ!良いなぁ、マリンにソフトクリーム貰っちゃって!!」
「おお、それをまた嬉しそうに笑っちゃって!」
「ティファも幸せそうね〜!見てよ、クラウド達を見つめる温かい眼差し!」
「まさに聖母って感じだな」
「プッ!デンゼルから貰い損ねてほっぺたにソフトクリームついてるし!」
「ハッハッハ!笑えるねぇ!そこでブスッとしないで笑ってるのが、今までのアイツからは考えられねぇ!!」
「フフ、本当に!でも、あの子供達なんですもの、良いお父さんにならない方が難しいわよ!」
「それは言えてる!ああ、良いなぁ。俺もあんな可愛い子供達が欲しかった」
「フフ、私も」
「ま、それでもこうして幸せそうなあいつらを見れるから良いけどな!」
「うん、本当にね!」
「それにしても、あれだな。最近のナンパは親子連れでするわけか?」
「え?」
「いや、さっきから変な視線を投げつける親子連れがいるんだが…」
「ん、どれどれ?」
「ほら、あそこ」
「ああ!あの親子連れなら、コスタにクラウド達が着いたばっかりの時に、ティファとマリンをナンパしてたのよ」
「え゙…親子で!?」
「そうなの!もう、信じられないでしょ!?でも、そこにバレットが物凄い形相で駆けつけてね。腰抜かしながら逃げ出したのよ」
「あのおっさんが…。そりゃ、腰抜かしながら逃げ出すよな…」
「そうなのよねぇ。でも、その時クラウドったらその親子のナンパを見てげんなりしてるだけで、ティファを助けに行かなかったのよ!?もう、信じられる!?」
「いや…、多分、あまりの非常識さに呆れかえったんだろ…」
「そうなんだけど、やっぱりあそこでビシッと『俺の女に手を出すな!』って言ってくれなきゃ!そしたらティファも感動ひとしお、夏のビーチ万歳!!になるじゃない!?」
「……お前、そんな恥ずかしい台詞、よく言えたな…」
「あら、何よ!私だって乙女なんだからそういう夢を見たって良いじゃない!!」
「く、首を絞めるな、首を!!」
「大丈夫よ、これ以上苦しくなりようが無いんだから!」
「そういう問題じゃなくて、気持ちの問題だ、気持ちの!!」
「もう!大の男が細かいこと気にしないでよね!」
「………ホンットウに良い性格してるよな…」
「ありがとう、お褒めに預かり光栄だわ」
「誰が褒めとるか!!」
「う〜ん…」
「何悩んでるんだよ?」
「ん?うん…」
「???」
「ホラ、クラウド達のパラソルの隣のハイエナさん達がねぇ…」
「ん?ああ、大丈夫だろ?あんなオヤジさん達のいるパラソルの女の子に声かける勇気があるとは思えんな」
「そりゃそうよね。でも、そうじゃなくって…」
「なんだよ?」
「さっき、ユフィがティファに言ってたんだけど…」
「???」
「さっきからティファをじっと見てるのよね、ハイエナさん達が…」
「ああ、見てるみたいだな…」
「それで、どうもハイエナさん達はお金持ちらしいのよ…」
「……そうみたいだな。何だか金持ちっぽいシルバーアクセを身につけてるな…」
「うん。それでねぇ…」
「それで?」
「こう、ティファがユフィみたいに上手にトンズラしてくれたらなぁって…」
「はい!?」
「だから!奢らせるだけ奢らせて、上手に撒いてくれたら…」
「…………」
「『美味しい思いが出来る』ってユフィが言ってて、ああ、その通りだわ!!って思ったのよ」
「………おい」
「でも、そんな事出来ないわよねぇ。ティファは正直者で、純情だから」
「……しなくて良いから、そんな非道な事…」
「あら、何言ってるのよ!ティファの魅力に引き寄せられた虫共の当然の帰結じゃない!」
「いや、そんな事普通はしないから!って言うか、そんな事するのはあのユフィって子だけだぞ!?」
「そうなのよねぇ。だから、勿体無いなぁって」
「勿体無くねぇよ!それじゃ丸きり悪女じゃねぇか!!」
「そんな事無いわよ。ティファの見てくれだけに引き寄せられた愚か者が辿る、当然の結末よ!」
「……お前、本当に根性悪いよな…」
「だ〜れ〜が!根性悪なのよ!そんな事言う悪い口はこの口か!!」
「いひゃい、いひゃい(痛い、痛い)!やめれ〜!!」
「あ〜、今日も無事に終わったわね」
「そうだな」
「それにしても、本当にクラウドもティファも幸せそうで安心したわ」
「全くな。クラウドなんか特に、幸せになる事に臆病だからなぁ、心配は尽きないな」
「いつまで経っても不器用で捻くれ者なんだから」
「ま、それがあいつらしさなんだろうけど…」
「フフ、そうね」
「それにしても、あのユフィって子はなかなか見た目のはっちゃけた外見とは打って変わって、繊細な心配りが出来る子なんだな」
「そうでしょ?良い子でしょ!?」
「ああ、本当に良い子だよ」
「そうなのよね!本当に心が優しい良い子なの。ただ…」
「ただ?」
「いっつも照れ隠しで賑やかにしちゃうから、見過ごされがちになっちゃうのよね〜」
「ああ、何かそんな感じだな。でもさ…」
「うん?」
「ちゃんとクラウドやティファ達には伝わってるみたいだな」
「うん!だって、大切な仲間…だもんね」
「ああ、そうだな」
「私達も…」
「うん?」
「いつまでもクラウド達の仲間…だもんね」
「ああ、当ったり前だろ!」
「フフ、これからどうなるのか、ますます目が離せないわね!!」
「ハハ、そうだな。楽しみだ!」
「フッフッフ!逐一チェックしといて、遠い将来、二人がこっちに来た時に読み上げてやる〜」
「え……」
「そんで、二人の真っ赤になる顔を拝んでやるのよ!キャー!今から楽しみだわ〜!!」
「お前……」
「何よ、その呆れかえった眼差しは!」
「いや、折角良い奴だなぁって思ってたっていうのに、結局そこかよ…と……」
「あら!じゃあザックスはその時は不参加で良いのね?」
「何を言う!率先して参加しないとでも?」
「フフ、思わない!」
「だろう!そんな面白そうな企画に参加しないでどうするか!!」
「じゃ、一緒にチェックリストを作成して、これからバンバンチェックしまくるのよ!!何しろ、こっちには時間がたっぷりあるんだから!!ああ、楽しいわ〜!!」
「お〜お〜!悪い顔だねぇ!」
「フフ、そうでしょうとも!ザックスの次くらいに悪い顔だと自覚してるわ!」
「………おい…」
「ま、冗談はさておき、今日も無事に終わって本当に安心したわ〜!皆明日の朝は早いのかしらね?私達もそろそろゆっくりしましょうか」
「そうだな。どうせ明日もチェックするんだろ?」
「勿論よ!こんなに面白そうな香りがするバカンスを見ないとでも?」
「いんや、見ないわけにはいかないな」
「でしょ?」
「ああ」
「それじゃ、行こっか?」
「ああ、そうだな…」
「お休み、皆…」
「お休み…また明日な…」
ゆるりと温かな気配が消えたのは、満天の星が夜空を彩り、瞬く時間だった…。
あとがき
何となく、クラティを見守るザクエアが書きたくなりました。
きっと、カダージュ達との戦いが終わった後でも、温かく見守っているのではないかと思います!!
そして、二人が遠い将来、星に還った時、温かい笑みで迎えてくれるのではないでしょうか!
いえ、むしろマナフィッシュの願望!!(笑)

|