道行く誰もが振り返る。
 そんな、かなりカッコイイ容姿をした男が三人、エッジの街を悠々と歩いていた。
 三人の目的地。
 それは…。





so cool !!






 派手なドアベルの音がして、ティファと子供達は振り返った。
 店はまだ開店直後。
 夕暮れにたそがれる街並みにはちょっと不釣合いな三人の男性客。


「「「 いらっしゃいませ! 」」」


 ちょっと不審に思うことはあったのがだ、開店後に店に来たのなら、一応客だ。
 その客が『お茶目な悪戯』目的だったり『お調子者過ぎたり』したら、その時はティファの手によって速やかに、出来る限り穏便に『お引取り願う』だけ。
 ちょーっと不審なものを感じないでもないけど、子供達は『『 いつものこと 』』と、さして取り合わなかった。
 それは、母親代わり兼店長であるティファも同様。
『お行儀の悪い客』である素質は充分兼ね備えているこの若者達を前に、その素質を確認すると同時に『お引取り願う』心の準備はバッチリオーケー。
 営業スマイル満点のセブンスヘブン三人を前に、青年達はほんの少し意外そうな顔をして…。

「や〜っぱさぁ…」
「あぁ、だよなぁ」
「 ……… 」

 いわくありげな笑みを浮かべた二人が、仏頂面になってそっぽを向いている一人を覗き込んだ。

「 ? お客様、こちらへどうぞ」

 いつもなら、マスコットとして有能な子供達にテーブルまで案内してもらっているのだが、流石にちょっとそれは任せられない…と判断したティファ自らが、子供達に目配せをして前へ出る。
 仏頂面の青年の頬が、夕焼けのせいかほんのり赤らんでいる。
 残りの二人は、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて仏頂面の仲間とティファを見比べた。

 ティファは、その瞳に隠されようともしない好奇の色に内心鼻白みながらも、
「どうぞ」
 笑顔満開で再度、テーブルへと促した。
 子供達がそれを注意深く見守る。
 仮に、男達三人がティファに対して不埒な振る舞いをしたとしても、ティファ相手にそれが最後までまかり通るはずが無い。
 ジェノバ戦役の英雄と称えられる彼女自ら、鉄槌を下されるのはオチだ。
 だから、そういうことはこれっぽっちも心配しなくても良いのに、それでも心配になるのがやはり『子供心』というものだろう。
 この場にいない『クラウド・ストライフ(恋人)』の代わりという意味合いも込め、子供達の使命感は非常にデカイ。

 そんな子供達の視線を余裕綽々の顔でやり過ごしながら、青年達は意外にも大人しく席に着いた。


「じゃあ、コレをお願いね」


 約15分後。
 出来上がった料理を前に、デンゼルは低く呻いた。
 目の前には先ほどのイヤな感じの青年三人組のオーダーしたメニューの品々。
 たった、15分でこのメニューを完成させたティファに敬意を抱きつつ、コレを運ばなくてはならないことに軽い眩暈を感じる。
 勿論、ティファやマリンに運ばせるなど論外だ!
 今夜はセブンスヘブンの働き手で男はデンゼルだけ。
 そうだ。
 自分が頑張らなくてどうするというのだ!?

 その使命感一つを胸に、デンゼルは決死の覚悟でそれらのメニューを盆に乗せた。
 マリンが「半分持つよ」と言ってくれたが、それも新しく来てくれた馴染み客を口実に断ることに成功する。
 出来る限り、マリンとティファをこの三人組に近寄らせたくない。
 何故?と聞かれれば困るが………『男の勘』だ。


「お待たせしました。『スタミナ定食』『揚げ物定食』『お袋の味定食』です」

「へぇ〜!!」
「なかなかやるじゃん?こんなに沢山のものを運んでくるなんてよぉ」

 デンゼルを待っていたのは、青年達の冷やかしとも取れる称賛の言葉。
 デンゼルはただ黙々と、盆からそれらのメニューをテーブルに並べた。
 多少、「無愛想だ!」とクレームがきても良い。
 きっと、ティファもそれくらい分かってくれるだろう。
 ソレよりも何よりも、これから段々混んでくる時間帯だ。
 そのゴールデンタイムには、この客達が程ほどに酔っ払って『二次会』に赴いてもらえるようになってもらいたい!
 そうなってくれたら、もう後は知ったことではない。
 きっと、セブンスヘブンよりも『青年達』に合った店で彼らは楽しんでくれるだろう。

 デンゼルの頭の中はそれだけで一杯だった。
 だから、気付かなかった。
 ちょっと意地悪そうに青年組みの内、二人が異様に何かを示唆するようにティファを見ているということに。
 特に、中でも…不貞腐れている青年が、気がつけば視線を店長に流している事に…。



「ねぇ、あのお客さん達、まだ帰らないのかなぁ…」

 コソッと耳打ちしてきたマリンに、デンゼルが顔を向ける。
 そこには、注文した料理の半分強を食べ、残りをチビチビやっている例の三人組。
 料理も残っている。
 適度に新しいドリンクのオーダーもしている。
 ましてや、何も問題も起こしていないとなると、流石のジェノバ戦役の英雄もなにも言えない。
 出来れば、すぐにでも中途半端に残っている料理を平らげるか、それとも残して退散するか…。
 どちらでも良いので、セブンスヘブンから消えて欲しかった。
 ティファに卑猥な言葉を吐いてくるわけでもない。
 子供達に取り入って、クラウドとの仲をこじれさせるわけでもない。
 なら、何がそんなにいて欲しくない要因になるのか。
 それは…。


「すっごいカッコイイよねぇ」
「うんうん、あの三人、コスタで有名な三人じゃない?」
「あの『某大財閥のご子息三人組』〜!?」
「うっそー!マジでーー!?」
「やーん、カッコイイ!」
「うん、言われて見たら、そうよきっと!」
「全員、身長187センチ以上っていう、三人組でしょう!?」
「「「 キャーッ!お近づきになりたーい!! 」」」


 いつもはクラウドの帰りをソワソワしながら…、時にはティファに恋敵としての嫉妬の視線を突き刺しながら待っている女の子達が、ヒソヒソ……と表現するには控えめ過ぎる態度でキャーキャーと騒いでいる。


 ティファはメラメラと怒りの炎を燃やした。


『なんなのよ!いっつもクラウドのことを『キャーキャー』騒いで待ってるくせに!こんな見てくれだけのボンボンにあっさりと乗り換えるだなんて信じられない!これだから最近の若い女は〜〜!!!!』(*注:女性達はティファと同年代です)

 ザブザブと、いささか乱暴に食器を洗っているこの店の女店主から発せられる怒りのオーラ故…。
 般若の形相で洗い物をあっという間に片付けていく母親代わりに、

『『 女心って複雑だなぁ… 』』

 子供達は顔を見合わせ、小さく溜め息を吐いた。

『でも……』

 デンゼルはフッと一つの疑問にぶつかった。
 チラリ…と青年達を見る。
 他の二人は、実に陽気に女の子達に軽く手を振って見せたり、逆に話しかけてくる女の子に気軽な調子で、
「良いよ、じゃあまた明日、エッジの記念碑前でね」
「そうだね。いつもはこんな『庶民の店』にはこないんだけど、ちょっと野暮用で」
 などと、実に腹の立つことを言ってくれている。
 だが…。

『やっぱり…』

 先ほどからそのアホな輪に加わらず、一人だけずーーーっと仏頂面で、料理をチビチビ食べている。
 そんなにイヤなら食べなきゃ良いじゃん!?と、思わず腹を立ててしまいそうな、実にイヤそうな食べ方なのだが、よくよく思い返してみると…。

『あの兄ちゃんだけが、まともに料理を食べてる…』

 デンゼルはテテテ…と、他の客と笑って話をしているマリンの服をクイクイッと引っ張った。
「 ? 」
「あのさぁ…」
 不思議そうな顔をして振り返ったマリンに耳打ちする前に、ちゃんと行儀良くマリンと笑って話をしていた客に一言断りを入れる。
「……そう言えば…そうかも…」
「だろ?」
「ん〜…うん。そうだよ、間違いない。あのお兄ちゃんだけが、まともにティファの料理を食べてくれてる。しかも、さっき見たときはあの緑の髪したお兄ちゃんの前に置いてあった料理が、まさに今、お兄ちゃんが食べてくれてる料理だよ…」
「だよなぁ…」
「うん……」
「………」
「……だから…なに?」
「……だから…まぁ…その……」
「…………………」
「…………………」
「……クラウド、今日は遅いんじゃなかったっけ…?」
「……やっぱ……帰って来る日だったよな…」
「うん」
「…ヤバくないか…?」
「…ヤバイ…よね…やっぱり」
「…………」
「…………」

『『ティファー!!店閉めてーー!!!!』』(心の叫び)


 時間だけが無情に過ぎていく…。


 小一時間後。
 当然の流れのように、輝きオーラ満載の二人と無愛想でそっぽを向いた一人のテーブルの周りには、女性客達が静かに群がっていた。
 いつもはクラウドを待っているこのウザい女性客達に、ティファの脳内血管は切れそうだった。

 …いや、数本は切れているかもしれない。

 ここで、もっと周りの客に迷惑がかかるような大騒ぎとかだと、お引取り願うことも出来るのに、あろうことか…!

 ― 皆と知り合えて俺達も本当に嬉しいよ ―
 ― でも、俺達、まだもう少しこの店で食事を楽しみたいんだ〜 ―
 ― だから、皆、協力してくれるだろ?うるさくしたりすると、『営業妨害』で追い出されるからさ〜 ―
 ― そうそ!静かに…静かにね〜 ―

 と、自分達に黄色い歓声を上げようとする女性達を説得してしまっていた。
 だから…『静かに』群がっているのだ…。

 非常に奇妙な光景極まりない。
 常連客達も、その異様な光景に目を丸くしていたが、すぐに事情を察したようだった。
 何しろこの店は『ジェノバ戦役の英雄』が営んでいるのだ。

 何が起こってもおかしくない!…と、思っているのだろう。
 ここらへんが、セブンスヘブンの常連客達の凄さだ!というのは、デンゼル&マリン談。
「ま、色々な人間がいるもんだなぁ」
「そうだな」
「とりあえず、無事に今日も終ったし〜」
「「「「 カンパーイ! 」」」」
 と、自分達のいつもの姿を披露してくれる常連客達に、子供達とティファは安堵とも苦笑ともとれる笑みを浮かべた。

「でもさぁ、やっぱり早く帰ってもらいたいよなぁ…」

 うんざりした口調でボソッとこぼすデンゼルに、ティファが諦めたように溜め息を吐いた。

「なにも食べないでうるさく集まってるなら追い出せるんだけど……」
「なんだかんだ、注文してるし、うるさくしてないもんね…」

 ティファの言葉を継ぐように、マリンが小さな肩を竦める。
「でも…、なんであのお兄ちゃんはずっと一人なのかなぁ…」
 首を傾げる娘に、ティファはチラッと例の青年を見た。
 窓際に座り、ただひたすら黙々と食べている。
 注文した料理の大半が恐らく彼の胃袋に入っているであろうことは、ティファは知らないがそれでも青年が店に着てからずーっと、ブスッとした顔をしているのは知っていた。

「…そんなに不味いのかしら…」
「「 …え…? 」」

 青年のイヤそうな顔を見て、困ったような顔をし、味見をしなおすティファに子供達が顔を見合わせ、同時に『『やれやれ…』』と、肩を落とした。


 と…。

 チリンチリン。

「「「 いらっしゃいま………… 」」」

 もう何十回目かの来客の音がして、ティファと子供達が振り返り……固まった。
 中途半端に途切れた接客文句。
 常連客達が、それに不審げに気付いてドアを振り向き……同じ様に固まった。
 あっという間に店内に静寂が訪れる。
 賑やかに楽しんでいた例のテーブルの青年達と女性達も、ハタ…とその空気に気付いてドアを見た。
 そこには…。

「よぉ…久しぶりだな」「この前はほんっとうに世話になったなぁ」「今夜は『リーダー』はいないのか〜?」

 いかにも!という柄の悪そうな大柄な体躯の男が三人。
 どの顔も極悪面。
 顔に走っている傷は彼らの勲章なのだろうか?どれもこれも、いびつに顔の表面を走っており、醜く皮膚を引き攣らせている。

 あまりにもお約束な極悪面に、青年達は驚愕に目を見開いた。
 彼らも身長はしっかりある。
 だが、今、店に来たばかりの中年達は、身長は勿論、体格からして全然違う。
 自分達と比べたらまるで赤ん坊と大人ほどの違いがありそうだ。

 そんな大迫力の中年三人組に、ティファが黙ったまま颯爽と立ち塞がった。
 極悪三人組の前に立つと、彼女の華奢な身体がまるでマッチ棒のようだ。
 子供達が心配そうにしながらも…瞳の奥では信頼を刻み込んで見つめている。
 常連客達も驚きつつ、静かにソロソロと自分達の料理を持って、出来る限りドアから……、ティファから離れて邪魔にならないよう避難した。
 そのあまりにも慣れた行動に、ずっとそれまで黙って食べ続けていた青年が目を吊り上げた。

「おい…良いのかよ、誰も間に入らないが」

 目の前に避難してきた常連客にコソッと囁いたのは、目を吊り上げて思わず席を立とうとした青年の友人。
 傍らではもう一人が、必死になって友人を引きとめている。
 口を大きな手でふさいで、余計なことがしゃべれないようにしているのは…賢明な判断だ。

「お?ティファちゃんのことかい?大丈夫、大丈夫!あんなん、目じゃないな。なんたって『ジェノバ戦役の英雄』だし」
「そうそ。それに俺達が変に手を出そうとしたら足を引っ張っちまうから」

 シレッとそう答える常連客達に、青年達に媚を売っていた女性達も頷いている。
 だが…。

「『英雄』でも『女』だろう!?それなのに、誰もかれも『英雄だから大丈夫』って、おかしいんじゃないのか、お前ら!?」

 親友の手に噛み付いて塞がれていた口の自由を取り戻した青年の大声が店内に響く。
 ティファが…、子供達が…、客達が…、そうして極悪面三人組が…。
 驚いて青年を見た。
 ティファと子供達はただ純粋にビックリして。
 客達の幾人かは面白そうに。
 極悪面三人組は、下卑た笑いを浮かべて…。

「そうだよなぁ?」「『英雄』でも『女』だよなぁ?」「『女』なら『女らしく』大人しく酌しろってんだ」

 青年の言葉尻を掴まえて、なんとも都合の良い台詞を吐き出した。
 青年のこめかみに青筋が浮かぶ。
 一方ティファはキョトンとしていたが、青年の真剣な瞳と重なり合い…。

 極々自然に、フワッと笑顔を浮かべた。
 青年の怒った顔に朱が差す。
 友人二人が、それに気付いてニヤ〜ッと笑い、冷やかそうとした。
 が…。
 勿論、そんな場合じゃない。
 ティファが微笑んだことにより、極悪面の男達に変なスイッチが入ったらしい。
 耳を覆いたくなるような罵詈雑言を青年に浴びせながら、真っ直ぐそのテーブルにズカズカと足音も荒く、近付いた。
 女性達と避難した常連客達の悲鳴が店を震わせる。
 青年達も、極悪面の中年達の目標が自分達になってしまって頭が真っ白になった。
 一人だけ、ティファを『女』だと言って庇った青年だけが深緑の瞳に闘志を燃やし、グッと腰を落とした。

 ガシッ!!
 ブンドゴバキメキメキガラガラドガシャーーンッ!!!!(← ティファの攻撃が炸裂した音)


「「 あ〜あ… 」」

 子供達の呆れ返った声が、虚しくこぼれ落ちた。





「ほら、さっさと片付ける!」
「「「 は、は〜い… 」」」
「アンタ達のお蔭で大変なことになっちゃったんだから!」
「「「 すいません… 」」」
「ここを綺麗にするまで、今日は絶対に許さないから!」
「「「 はい… 」」」

 壊れた椅子とテーブル。
 床に飛散しているガラスの破片。
 料理が散らばっていないのがいっそ不思議なくらいの惨状ぶり。
 ティファのクリティカルヒットな大技を喰らい、三人の極悪人はあっさり撃沈。
 暫く床でひっくり返っていたのだが、目を覚ました直後からずーっと!
 店の後片付けをさせられていた。
 店の客達の目の前で床にしゃがみ込んで片付けをする。
 これ以上の屈辱を三人は知らない。
 だが、屈辱を屈辱と思えないほど、三人は打ちのめされていた。

「クラウドに一回負けてるんだから、ソレに懲りて来なかったら良かったのにね」
「ま、良い薬になったんじゃないか?きっと、他の人達にとっても良いことだよ」

 マリンとデンゼルが小声で交わす会話。
 それを青年達の耳に微かに届いた。
 再びムッツリと押し黙ってしまった友人に、二人は苦笑しながら肩を抱いた。
「ま、仕方ないじゃん?」
「そうそ。それに、やっぱ彼女、俺達のこと覚えてないみたいだし」
「 ……… 」

 友人のその一言に、青年はガックリと項垂れた。
 そこへ、
「あの…」
 声をかけたのはまさに話題の中心となっている人物。

 肩を落とした青年の顔がまたまた朱に染まる。
 友人二人も、自然と肩に力が入った。

「さっきは本当にどうもありがとう」
「あ…いや…別に…」

 華が咲くような笑顔のティファに、とてもじゃないが正視出来ない。
 モゴモゴ…と口の中で呟きながら視線をそらせる。
 友人の二人も思わずうっとりしてしまう可憐さだ。
 ティファは笑顔のままペコリ、と頭を下げた。

「『英雄』でも『女』って言ってもらって…なんだかとても新鮮で…嬉しかったわ。本当にありがとう」

 ニッコリと小首を傾げる様にして微笑んだティファに、青年が思わず、
「あの!」
 手と声を一緒に出す。
 伸ばされた手がティファの手に届く……その直前。


「「 あ!! 」」


 子供達の高い声に思わず出ていたその手が引っ込んだ。
 誰かが「チッ、惜しい!」「珍しいものが見れるところだったのに〜!」「はぁ…心臓に悪い」などなど、舌打ちをしたり残念がったり…ホッとしたりしている。
 そんなものに全く気付かないのか、ティファもパッと顔を子供達に向けてそれまで見せていた笑顔とは違う笑顔を顔一杯に浮かべた。

 何が何だか分かっていない青年達に、ススス…と女性客の一人が横歩きで近付き、
「帰って来たみたいvv」
 と、耳打ちをした。

『なにが?』とか『誰が?』とか考えている時間はなかった。
 床に這いつくばるようにして掃除をしている三人の脇を駆け抜け、子供達がドアに飛びつく。
 と、同時に…。

「っと。…二人共、ビックリするだろ?」
「「 おかえりなさ〜い! 」」

 ドアを開けた途端、子供達に抱きつかれた金髪の青年。
 三人よりも身長は低い。
 ついでに、身体つきも男性としては華奢だ。
 だが、軽々と子供達を抱き上げて、その小さな頬に「ただいま」とキスをする……かなりな男前。

「おかえりなさい!」
「あぁ、ただいま、ティファ」

 軽やかな足取りで駆け寄ったティファを、クラウドは愛しそうに紺碧の瞳を細めて見やった。
 その…甘く漂う雰囲気。
 クラウドを一目見ようと、毎晩通っていた女性客達の視線を釘付けにして離さない。
 クラウドは差し出された手に軽く首を振ると、
「いい。このまま二階に行く。子供達ももう休む時間だろう?」
「あ、本当。もうこんな時間!」
 目を丸くして店内の時計を見るティファに、クラウドは小首を傾げた。
 床に座り込んでいる極悪三人組みに気付き、眉根を寄せる。

「なんだ…アンタら、また来たのか?」
「「「 ヒッ! 」」」
 肩を寄せ合い小さくなる三人に、クラウドは面白くなさそうな顔をして短く息を吐き出した。
「おおかた、俺のいない隙にティファをどうにかしてやろうかと思ったんだろうが……その様子だと返り討ちにあったようだな…」
「「「 ……… 」」」
「コレに懲りて、二度と来るな。良いな?」

 魔晄に彩られた瞳で凄まれた三人組は、泡を噴く勢いで引き攣ると、口々に謝罪の言葉を並べ立てながら転がるようにしてセブンスヘブンから逃げ出した。

「あ〜あ。まだ片付け終わってないのに」

 三人がすっかり見えなくなった頃。
 ティファがおかしそうに言った。

「片付け…やらせてたのか?」
「うん。だって、あの人達が来なかったらこんな事にはならなかったんだもん」
「……フッ。本当にティファは大した女だよ」
「ふふふ」

 嬉しそうに笑うティファに釣られ、クラウドの頬も自然と緩む。
 なんとも幸せ一杯な二人。
 その二人にあてられた客達が、苦笑したり心から微笑ましく思いながら…、それぞれテーブルの上に自分達の勘定を置いて席を立った。
 その中に、例の無愛想な青年も混じっていた。
「お、おい…」「もう帰るのか?折角目的の人物が帰ってきたのに…」
 戸惑う友人に背を向け、さっさとドアに向かう。

「あ、お客様!」
「お釣りは…良い…」

 次々帰路に着く客達にハッと我に返ったティファに、青年が短く答える。
 そして、そのまま隣に立っているクラウドを見た。
 身長差…約○○センチ。
 その為に、自然と見下ろす形になる。
 クラウドは、怪訝そうに眉を顰めた。
 子供達はちょっぴりハラハラしながら、クラウドの腕に抱かれたままジッとしている。

 青年は暫しジッとクラウドを睨み下ろしていたが…。

「…ごちそうさん…」

 ボソッと一言言い残して、夜の街へ踏み出してしまった。
 慌てて追いかけた友人二人もすぐに宵闇に溶けて見えなくなる。

「なんだったんだ…アイツ…、って言うか…誰?」
「…えっと…初めて来たお客さん」
「……なんか睨まれたぞ…?」
「うん…なんでだろうね…」
「………」
「なに、クラウド?」
「はぁ……」
「あ〜、なによ、その溜め息!」
「デンゼル、マリン、寝るか?」
「「 は〜い! 」」
「あ〜!三人揃ってなんなのよぉ!」
「「「 はぁ… 」」」

 三つの溜め息を残しながら、クラウド達は二階に消えて行った。
 それまでにまだ店内に残っている客達への挨拶も忘れない。
 ティファはそんな三人にちょっとだけ頬を膨らませていたが、すぐに笑顔になって仕事に戻ったのだった。





「おい、ほんっとうにちょっと待てよ」
「………」
「それにしても、本当に『英雄のリーダー』ってちっこいのな〜」
「………」

 夜のエッジを、三人の青年が歩いている。
 一人は足早に。
 残りの二人はそれを追いかけるようにして…。

 二人は面白そうに先ほどの店の話をしきりにしていたが、前を歩いている青年は話しに混ざろうとしなかった。
 二人共、あえてしつこく話しに混ざることを要求してはいないようだが、気にはしている様だった。

「ま、仕方ないって…」
「そうそ。あの時も言ってたしなぁ」
「………」
「「 『クラウド以外、男の人はいないの』か〜! 」」
「 !!…… 」
「それに…」
「あぁ、あれだろ?『食べ物を粗末にするなんて最低』だろ?」
「そうそ!俺達が買ったモノだから何してもいいだろ?って言ったら、すっげー顔して怒ってたもんなぁ」
「『この罰当たり!』だっけ?」
「そうそう!ほんっとうに凄い女だなぁ、って思ったぜ」
「俺も!でもさぁ…マジで俺達のこと、覚えてなかったなぁ」
「ちょっとショック。俺達、かなりイケてる!って言われてるのになぁ」
「それに、彼氏の『リーダー』もさぁ、確かにイケてるけどそんなに身長なかったしなぁ…」
「なぁ?俺達のほうが断然良いよなぁ?」


「……バカじゃねぇ?」


 ピタリ。
 それまで我武者羅に歩いていた青年が立ち止まって友人達を睨みつける。
 睨まれた二人はビックリして立ち止まり、友人の剣幕に驚きオドオドした。
「え…?お前、なんで怒ってんの?」
「あれか?もしかしなくても、クラウド・ストライフにビビってんのか?」

 青年はギンッ!と友人を睨みつけ、金髪の髪をかき上げた。

「うるせぇな、ビビってねぇよ!」

 そうしてクルリ…と背を向ける。

「絶対に諦めねぇからな!」

 そう言いきって、またズンズンと荒い足取りで街を行く。
 置いていかれる形になった青年二人は、それぞれ吹き出すと、
「そうこなくっちゃなぁ〜」「俺も参戦〜!」
 好きなことを口走りながらその後を追った。





 ― なにしてるの!? ―
 ― あん? ―
 ― 食べ物を捨てて足で踏むってどういう育ちかたしたの!? ―
 ― これは俺が買ったんだ。不味かったから捨てた。ついでに不味いもので口の中一杯にされて腹が立ったから踏み潰した。どこが悪いんだ? ―
 ― 食べ物を粗末にするだなんてとんだ罰当たりね!なんてことするのよ!! ―
 ― ってかさぁ、アンタ誰?いきなり初対面で失礼な女だよな ―
 ― 私!?私は…… ―




 ― へぇ、『ジェノバ戦役の英雄』ねぇ。でも、アンタ『女』じゃん?女が男の俺に喧嘩売って勝てるわけ? ―
 ― おあいにく様。私にそんな気遣い無用よ ―
 ― …本当に可愛くねぇ女だな ―
 ― 可愛く無くて結構よ ―
 ― でも、もしもアンタが勝ったら俺の『愛人その壱』にしてやってもいいぜ? ―
 ― 悪いけど、私にはクラウド以外、男の人は存在しないの ―
 ― ……ケッ。本当に可愛くねぇ… ―




 ― さ、コレに懲りたら食べ物を粗末にするなんて、やめるのね。作ってくれた人に失礼だわ ―
 ― おい!俺はまだ負けてないだろうが!! ―
 ― なに言ってるの?勝負の最中、背中をとられたってことは『負け』ってことよ ―
 ― …! ―
 ― それに、一発でも私の攻撃が入ってたら、今頃悶絶してるわよ。殴られないで背中を取ってもらったこと、感謝してもらいたいくらいね ―
 ― てめぇ…! ―




 ― 私はエッジの『セブンスヘブン』にいるわ。逃げも隠れもしないから、どうしても納得出来なかったらいらっしゃい ―
 ― …その言葉、忘れるなよ… ―
 ― 無理。あなたみたいな人多いもの。すぐ忘れちゃうわ ―


「本当に忘れてやがるし…」


 今にも振りそうな満天の星空に、青年の呟きが吸い込まれた。


 ティファが青年達の事を思い出すかどうかは…。

 神のみぞ知る。




 あとがき

 なぁんとなく、フッと浮かんだお話し。
 金持ちでカッコイイ青年。
 絶対にちやほやされているはず!と思っているのはマナフィッシュだけでしょうか…。(おおう…発想力が貧相)
 そんな天狗鼻をティファにへし折られた青年が、それでもその衝撃が『恋心』に変化する…という話のはずが、なんか横道反れまくって…気がついたら『あれ〜???』という話しになりました…。

 おおう…本当にすいません。
 お付き合い下さってありがとうございます!