その日。
 セブンスヘブンに衝撃が走った。

 まだ昼の14時という時間。
 ティファがのんびりと家事に専念出来る時間。
 その時間に…。

 チリンチリン…。

 店のドアベルが来客を知らせる。
 丁度店内でソファーに座りながら、子供達の服を繕っていたティファは、急な客に対応すべく立ち上がって、石化した。



『その人らしさ』という鎖




「えへっ!来ちゃった〜♪」
「………ユフィ…」

 笑顔満載のお元気娘に、ティファは思わず苦笑した。
 いつもいつも、なんの前触れも無く現れるこのウータイ産の忍は、およそ『忍』という立場に相応しくない部分が多々ある。
 大体、『忍』とは目立ってはいけないはずなのだ。
 敵の本拠地に潜入すべく、情報収集をし、いざとなったら目にも止まらぬ動きで相手をしとめる。
 その為には『己を殺す』ことが必要だと思われるのだが…。
 そのような一種の『常識』をこの破天荒娘は持ち合わせていない。
 勿論、戦闘技術はかなりなものだ。
 安心して背中を預け、戦いに身を投じることが出来る仲間だ。

 だが…。

「どうしたの、今日はまた…」

 苦笑いを浮かべながらソファーに座るよう促し、ティファはユフィの好きなミックスジュースを作るべくカウンターへと足を向けた。
 いつもなら、座って待っているように勧めても、必ずなんだかんだと話しかけながらくっ付いてくる彼女が、今日は、
「うん、じゃ、悪いけど〜」
 と、素直に腰を下ろした。

 ティファは少し違和感を感じながらも手際よくジュースの材料となる果物や人参、ミルクをミキサーにかける。

 ガーガーガー…。

 ミキサーの音が店内に響く中、ティファはミキサーに落としていた視線をチラリとソファーへ向けた。
 こちらに背を向けて座っている為、ユフィがどういう顔をしているのか分からない。
 分からないが……何故か元気がない…気がする。
 こう…いつも溢れんばかりに明るいオーラが出ているのに、今日はどことなくしょぼくれている…。

「 ??? 」

 ティファは小首を傾げながら、出来上がったジュースをグラスに注ぎ、自分用には紅茶を煎れてソファーに戻った。
 ソファーの前にあるローテーブルにそれらを置く。
 ユフィは、ハッと我に返ったようにニッカリと笑って見せると、
「あんがと〜!」
 いつものおどけた口調でグラスに手を伸ばした。
 そのギャップに知らず眉間にシワが寄る。
 ユフィは…目を合わせない。
 ジッとテーブルの木目を見つめ、「美味しいねぇ〜!流石ティファ!!料理上手〜!!」とおどけている。
 仕草はいつも通りなのに、どこかぎこちない。

『おかしい…』

 いつもの破天荒娘ではない。
 元気がない。
 覇気がない。
 溢れるばかりのオーラがない。
 いつもの…ユフィじゃない。

 ザワリ。
 胸がざめわく。
 何かあったのだろうと容易に想像がつく。

『何があったのかしら…』

 思いつく限りの可能性を浮かべようとして……止めた。
 ユフィがどういう生活をしているのか分からないからだ。
 この破天荒娘の正体が、パッと見ただけでは分からないほど優秀なウータイの忍びであること。
 また、いつもいつも明るく、時には無神経とすら思えるほど突拍子もないことをしでかすくせに、実はその反面、非常に細やかな心配りが出来る女性であること。
 更には、彼女が本当のところの弱音を口にせず、くだらない、どうとでもなるような弱音しか吐かない性格であることを知っているが故に、ユフィがこうして元気のない姿で現れた原因がさっぱり分からないと判断した。
 いくら想定内の範囲で考えた所で、ユフィが抱えている問題には到達できないだろう。
 ならば…。


「ユフィ、なにかあったの?」

 予想通り、驚いたように見開かれた瞳。
 ティファはそっと微笑んだ。

「なにかあったんでしょう?」

 疑問符のようで…確定。
 言い切ったティファに、ユフィは一瞬条件反射のように「違う!」と言いかけて……口を閉ざした。
 俯き、手を膝に乗せる。
 そのまま暫し静かな時間を送った。


「私さ…」
「うん?」
「私……落ち込んだら……ダメなのかな…?」
「え?」


 突然の言葉に、ティファの目が丸くなる。
 唐突過ぎるその内容。
 予想もしなかったその一言。
 ティファのキョトンとした顔に目を向ける事無く、ユフィは慌てて取り繕うように笑った。

「アハッ、ごめんごめん!ちょっとなんか感傷的になっちゃって。気にしないで!」

 カラカラと空笑いをしながら腰を上げる。

「ほんっとうにごめんね〜!私、帰るね!!」

 逃げるようにそう言い残して去ろうとするユフィの腕を取ることに成功した自分を褒めてもらいたい。
 ティファは誰に言うでもなくそう思いながら、驚きつつ怯えるような視線を向けるユフィに穏やかな笑みを浮かべた。

「ユフィ、話して?」
「………いや、本当に…」
「ユフィが弱音とか言ってくれると嬉しいわ」
「え……?」

 どんぐりのようにクリッとした目を丸くして、年下の仲間が驚いて見つめてくるのを、ティファは笑顔で包み込んだ。

「本当に嬉しいのよ?」

 小首を傾げてもう一度言う。
 ユフィの目に涙が溢れた。







「ほら、アタシっていっつも元気一杯じゃん?それに、可愛いしさぁ〜」
 ソファーに座りなおして口を開いたユフィは、無理におどけ表情を浮かべた。
 ティファは黙って聞いていたが、目元は柔らかい。
 実の妹を見るような瞳。
 ユフィの『道化の仮面』はすぐに剥がれ落ちた…。
 強張った笑顔を貼り付けたまま、ユフィは口を開く。

「んでさ…。その…結構モテたりするんだなぁ…これが。『ユフィの笑顔にいつも元気貰ってます』とか『キミみたいにいつも明るい人は初めてだ』とかってさぁ」

 ハハハ…。

 また…乾いた笑いが少女の口から漏れる。
 ティファの心が軋んだ。

 こんな空笑いをするユフィは…ユフィじゃない。
 いつも、駆け引きなど全くない澄んだ笑顔。
 無邪気な笑い声がユフィの笑顔。
 それなのに、こんなに疲れて…元気のない笑顔をするとは…。

 ティファの表情が曇った。
 ユフィはティファを見ないまま、話を続ける。

「それにさ、アタシのオヤジが有名人じゃん?だからさ……言い寄ってくる男って結構いるんだよね」
 そんなもんで言い寄ってこられても腹立つだけだっつうの!

 軽く拳を握ってパンチをする。
 そして、また、力なく膝の上に手を乗せた。

 ティファは正直驚いていた。
 このお元気娘の口から恋愛相談らしきものをされるとは!
 そういう『好いた、惚れた』話しを聞かされるのはもっと先だと思ってたのだ。
 だが、確かに冗談抜きでこの少女は可愛い。
 いつも元気で前向きで。
 一緒にいると振り回されて大変な面もあるが、それでもやっぱり楽しいし元気をもらえる。
 だが…。
 どうも今日はそれだけの内容ではないようだ。
 ティファはじっと続きを待った。

「アタシさあ。別に今は恋愛云々には関心ないんだ…。それこそクラウドみたいに『興味ないね』ってやつなんだよねぇ。それでもさ、やっぱり自分に対して好意を持ってくれるって嬉しいじゃん?だけどさ……」

 いっつも明るくて前向きなアタシが好き……って言われ続くと、なんかさ。
『それ以外のアタシ』って『アタシじゃない』って言うか『アタシ』として不似合い…って言うか……認められない……って感じがしてさ。
 なんか……疲れたって言うか……。
 虚しい…って言うか…。
『明るくて元気で前向き』な『アタシ』以外の『アタシ』はこの世の中には必要ない…ってことなのかなぁ…って思ったりしてさ……。

「疲れちゃった……」


 言い終えたユフィは、力なく微笑むと肩から力を抜き、物憂げな表情でソファーに沈んだ。
 ティファは無言のまま、そっとユフィの隣に腰を下ろすと優しく肩を抱き寄せた。
 そのままゆっくりとユフィの髪を撫でる。
 優しいその手つきとは裏腹に、内心、かなり驚いていた。
 ここまで弱気なユフィは『ユフィらしくない』。
 だが、その台詞は絶対に口にしてはいけない言葉だ。

 他の誰であっても、『あなたらしくない』という言葉は使ってはいけないのだろう…。
 その事に、ティファは初めて気付かされた思いがした。

 無意識に、『ユフィは元気で明るくなくてはダメ!』と、今まで接していたのかもしれない。
 それは勿論、誓って悪意からではない。
 自分達が今まで目にしてきた彼女は、明るくて、少々強引に周りを巻き込んではお祭り騒ぎをして…。
 仲間の仲でのムードメーカーだった。
 だから、自然と『それがユフィ』と思っていた。
 だけど、それだけじゃないと知っている。
 あの旅の中、彼女が幾度となく傷ついて、心身ボロボロになっている姿を…ティファや仲間達は知っている。
 その『弱いユフィ』もユフィ。
 ちゃんと…ティファの中に、『弱いユフィ』は覚えられていて、そして受け止めている。
 しかしながら、本当にその姿は滅多にお目にかかれないもの。
 やっぱり、記憶に色濃く残っているユフィは、明るくてはちゃめちゃなお祭りと悪戯が大好きな元気一杯の少女。
 恐らくこの場に他の仲間がいたら、こんなに弱々しい彼女を前に動揺し、絶対に口にしてはいけない台詞をついつい言ってしまうかもしれない。

 ― 『なに言ってんでぇ!そんなん、おめぇらしくねえじゃねぇか!元気だしねぇ!!』 ―

 だが、それはユフィ本人にしたら、『いつも元気でいなくてはいけない』という『鎖』になりかねないものなのだ。

 あぁ……そうだな……、と、ティファは思った。
 いつも明るい笑顔で店を営む自分には良く分かる。
 明るく笑って『いなくてはならない』。
 身体がしんどくても、客が鬱陶しくても、セブンスヘブンの店長は自分なのだから…。
 だから明るく、笑顔で接客『しなくてはならない』。
 子供達が心配そうに見つめているから、元気な振りを『しなくてはならない』。
 だから自然に…。

 ― ティファちゃんはいつも明るいよなぁ! ―
 ― ティファさんの笑顔で、明日も頑張れますよ! ―
 ― ティファさん!アナタの笑顔は最高です! ―
 ― なんだか俺の悩みはティファちゃんの笑顔の前だと小さく思えるよ ―
 ― 本当に、ティファさんは明るくて元気で、素晴らしい! ―

 そんな風に言われることが多い。
 そう言ってもらわないと『いけない』、といつしか思ってる自分がいる。
 だが、それは別に『苦』にはならない。
 だって、『仕事』なのだから。
 むしろ『いつも明るく、笑顔の店長でいなくてはいけない』のだ…、店長の間は。
 それ以外の時間は、ただの『ティファ・ロックハート』に戻って良い。
 ただの『ティファ・ロックハート』は、時々怒ったり、時々弱くなって泣いたり、そして…恋人に全てを晒して支えてもらう……そんな普通の女性。
 では…ユフィは?

「へへ……ごめんね〜、ティファ。聞いてもらって元気出た!」

 照れ臭そうに笑って、おどけながらティファの肩口にグリグリ額を押し付ける。
 まるで、顔を見られないようにしているかのようだ。

 ティファは、ユフィの頭に回していた腕を背にずらし、向き直って両腕でギュッと抱きしめた。
 ユフィは……黙ったまま抗わなかった。

 ユフィには…いないのだろう。
 こうして甘えられる相手が傍にいないのだ。
 だから、イッパイイッパイになってしまって自分のところにやって来たんだ。

「弱くても良いじゃない」
「………」
「落ち込んでも良いじゃない」
「………」
「人間だもの、いつもいつも明るく元気でいるだなんて絶対無理よ」
「………」
「こんな風に甘えてくれるユフィもユフィ…でしょ?」
「……ん」
 ありがと…。


 腕の中でくぐもった声を出したユフィを、ティファは暖かく包み込んだまま、そっとその背を撫でた。






「……なんでここにいる……?」
「あっれ〜〜、クラウドだ〜〜、おかえり〜〜♪」

 帰宅したクラウドは、店のドアにCLOSEの看板が下がっているにも関わらず、店内から明るい笑い声が洩れているのに首を傾げた。
 子供達の笑い声…とは違うものが確実に混じっている。
 イヤな予感が脳裏を掠め、意を決してドアを開けた。
 自分の予想が外れなかったことに大きな溜息が出る。

 子供達が満面の笑みで駆け寄り、クラウドを見上げる。
 いつもの自然な流れで二人を抱き上げ、「ただいま」と、それぞれの額にキスを贈る。
 その『家族』に、ユフィはヘラヘラ〜…と笑いながら、
「いやぁ…あの無愛想で無口で朴念仁がすっかりパパさんですねぇ〜♪」
 呂律の回らない舌でケラケラ笑った。
 クラウドの眉間にシワが寄る。
「ユフィ…どんだけ飲んだんだ…」
 ポツリ…と呟かれたその言葉に答える様に、デンゼルとマリンは抱き上げられたままそっとクラウドの耳に口を寄せた。
「あのね、ユフィお姉ちゃん、なんかちょっといつもと違うの」
「なんかさ、落ち込むことがあったみたいで、いつもと違うんだ。今も無理して飲んで、空元気…って言うか。ティファもそれが分かってるみたいだから、あんまり深酒にならないように気をつけながらお酒作ってやってるんだ」

 クラウドは軽く目を見開くと、不安そうに自分を見つめる子供達に目を細めた。

 ゆっくり二人を床に下ろしてポンポンと頭を叩く。
 溜息を吐きながらゆっくりユフィの着いているテーブルの椅子に腰掛けた。

「おかえり、クラウド」
「ああ、ただいま、ティファ」

 笑みを交わし、ティファが差し出したグラスを受け取る。
 中にはクラウドの好きなウィスキーのロック。
 ユフィはニヤニヤ笑いながら口を開いた。
「おりょりょ〜?ティファにはただいまのチューしないの〜?」
「「 !? 」」
 カウンターへクラウドの夕食を取りに向かっていたティファがビクッと固まり、クラウドは危うく酒を噴き出すところだった。
 真っ赤な顔をして睨みつけるクラウドに、ユフィはケラケラ笑いながら、
「相変わらず『純』だねぇ〜♪」
 からかって自分のグラスを呷った。
 クラウドは、眉間にシワを寄せながらも、たった今、ユフィがからかったその声音がいつもと違うように聞き取れたことに、子供達とティファが心配している理由が分かった。
 確かに……何か違う。

 ぎこちない。
 無理をしている。
 必死になって足掻いている。

 そんな感じがする。
 クラウドは片肘を突いて頬を乗せると、ジッとユフィを見つめた。

「な、なんだよぉ…」

 真正面からジッと見つめられ、ユフィは居心地悪そうに身を捩らせる。

「あはは〜、クラウドもアタシの事『可愛い〜♪』って思ってるんだ〜?へっへ〜、今頃気付いた〜?でも、二股かけるのは人間として最低だからね。アンタはティファがいるんだから、アタシに惚れるなよぉ?」

 冗談に紛らわせて己を隠す。

 そんな印象を受けたクラウドは、目を逸らし気味の仲間に、
「どうした?」
 一言。
 たった一言。

 そのたった一言でお元気娘の空回りが……止まる。

 ティファだけはユフィの空元気の理由を知っていたが、子供達は知らない。
 いつの間にか、クラウドの傍にいた子供達も、心配そうにジッと見つめている。

「は…、なに言ってんの?別に…さ……、もう大丈夫なんだ!だって、昼間……ティファに聞いてもらったし…」
「ちっとも大丈夫そうじゃない。それに、無理して笑うな。ユフィらしくないぞ」
「 !! 」

 ガタンッ!!
 クラウドの最後の言葉に、カッと目を見開いて立ち上がる。
 反動で椅子が床に転げ、大きな音を立てた。
 ティファは、しまった!と後悔した。
 クラウドに電話でもメールでも、ユフィの状態を知らせておくべきだった…と。
 今のユフィにとって、『らしくない』という言葉はタブーだと…。
 自分の迂闊さを呪いながら、興奮して顔を真っ赤にさせ、クラウドを涙混じりに睨みつけているユフィの肩に手を置く。

「ユフィ、落ち着いて、ね?クラウドも悪気があって言ったんじゃないんだし。ほら、クラウドも謝って…」

 何とかその場を和ませようと作り笑いを浮かべるティファに対し、ユフィはギュッと唇を噛み締めてそっぽを向くことで、かろうじてその場に止まっていた。
 だが…。

「何故謝る必要がある?」

 ティファの苦労を一蹴してしまうかのような一言。
 ユフィは激昂した。

「なにさ……なにさ!!」

 自分を抑えるようにしているティファを押しのけながらクラウドに食って掛かる。

「アタシが落ち込んだり、凹んだら可笑しい!?アタシだって、普通に傷ついたりするんだよ!!それを…」

 真っ赤な顔をして捲くし立てる仲間に、クラウドは目を丸くしながら僅かに上体を仰け反らす。
 傍らで子供達がハラハラしながら見守っている。
 ティファは、頭を抱え込みたくなるような思いで、必死にその場を宥めようとした…が、良い案が浮かばない。
 オロオロと「ユフィ、落ち着いて。クラウドも謝って!」と、意味をあまり成さない台詞を口にする。
 対するクラウドはと言うと…。

 ユフィに押され気味なのは相変わらずのまま、怪訝そうに眉を顰めた。

「そんなの当たり前だろ?」

 ピタリ…。
 激昂していたユフィに、狼狽していたティファと子供達がその一言で固まる。
 クラウドは気付いていないのか、更に言葉を続けた。

「そんなの、人間なんだから当たり前だ。無理して笑う必要がどこにあるんだ?わざわざエッジまで来たんだ。たまには弱音を吐きたくなったんだろ?なら、無理する必要がどこにある?俺達にくらい、弱いところを見せても良いじゃないか…。そうだろ?」
 ……違うのか……?


 尻すぼみに言ったクラウドに、ティファは軽く息を飲んだ。
 そうしてユフィを見る。
 ユフィは……目をまん丸にして固まったまま………。


 ポロポロポロポロ…。


「お、おい…、ユフィ……?」


 幾筋も頬を伝う涙に狼狽するクラウドに、ユフィは思い切り抱きついて大声で泣き出した。
 戸惑いながらもしっかりと抱きとめ、その背を反射的に撫でるクラウドを、ティファと子供達はホッとしたように…、また、嬉しそうに微笑み合って見守るのだった…。





「ユフィって本当に不器用だよな…」
「ふふ…そうね」

 すっかり泣きつかれて眠っているユフィを、ティファのベッドに横たえて二人は囁き合った。
 いつもいつも、ハチャメチャで元気すぎるこの破天荒娘の意外な一面に、驚かされっぱなしの一日だった。
 だが、それは決して不快なものではなくて、むしろ『頼られている』という喜びを連れて来てくれた。
 本当に…たまにはこうして甘えてもらいたい。
 いつも、自分たちの事ばかりを気に掛けて、むちゃくちゃするのではなくて、ユフィ自身の事で甘えて欲しい。

「ユフィも…ほんとに苦労してるのよね…」

 ポツリ…と呟くティファの肩をそっと抱き寄せ、クラウドは小さく頷いた。

「いつもハチャメチャに元気だからな、分かりづらいけど…。それでもユフィだって色々悩むこともあるだろう…」
 こうしてたまに頼ってくれると安心するな…。

 フッと微笑むクラウドに、ティファは嬉しそうに微笑んだ。


 穏やかにユフィを見つめる魔晄の瞳に胸が震える。
 クラウドがとても頼もしく見える。
 ユフィには申し訳ないが、ユフィのお蔭で改めてクラウドが強く…大きくなったと感じられて…本当に幸せだった。

 そのまま、二人はそっと笑みを交わして部屋を後にした。



 願わくば、明るすぎて仲間を大切にする少女が、心から心身ともに委ねることが出来る伴侶にめぐり合える日が来たらんことを祈りつつ…。



 あとがき

 拙宅のユフィは優しすぎて強すぎる面がある気がしたので、ここらでストレス(?)発散して頂きました(笑)。
 実際、彼女はモテると思います。
 明るくて、可愛くて、元気で。
 一緒にいたらハラハラすることもあると思いますが、それでもやっぱり貴重で大切な存在ですよね。
 マナフィッシュ的には、ユフィはヴィンセント…も良いと思うのですが、彼よりももっとこう…ザックスをミックスさせたような人がいい気がします。
 要するにまだ、登場していない人物になるわけですが……(^^;)。

 いつか、スクエニさんが『ユフィだけの人』を登場させて下さる事を願ってやみません。(だからと言って、ヴィンユフィがダメなわけではないです!!)