チリンチリン…。
 聞き慣れたドアベルの音が頭の上で響き、私達は通いなれた店内へと足を踏み入れた。
「いらっしゃいま…せ…」
 ……この店の看板娘がくるりと振り返って私達を見た途端、顔が引き攣った…気がしたんだけど……気のせいよね……?



それでもやっぱり憧れる!




「あ、いたいた!!」
「ウソ…キャッ!本当!!」
「イヤ〜ン、久しぶり〜!!!」
「ホントホント!あぁ…今夜も素敵よね〜!!」

「「「クラウドさ〜ん!!」」」

 久しぶりに見る金髪で紺碧の瞳を持つ端整な顔立ちに、私達の口から甲高い声が飛び出した。
 それを、煩わしそうな顔をするでもなく、ムッとするでもなく、勿論嬉しそうな顔をするでもない。 クラウドさんは、キョトンとしてから戸惑ったように「あ、いらっしゃいませ…」って言ってくれるの。そう、私達の予想通りに…!
 その顔がもうたまらなく可愛いの!
 普段、彼が大きなバイクに乗って颯爽と街を駆ける姿も勿論カッコいいんだけど、こういう『どうしたら良いか分からなくて困った……』って表情がたまらなく……素敵……!!
 だって、あんなに普段は凛々しいのにこういう女性の扱い…っていうのかしら?それにはとんと疎くて、子供みたいなんだもの。
 そのギャップがたまらないわ!!

 そもそも、”ジェノバ戦役の英雄”と称されるクラウドさんに、こんなにも私達が積極的になってしまったのは、一つの事件がきっかけ。
 忘れもしないわ!あれは丁度、四ヶ月と一週間前の事…。
 エッジの街の建設中のビルの下で、私はクラウドさんに命を救われた…。
 建設中のビルの上から、鉄骨が真っ逆さまに落ちてきたの…私の頭の真上に…!!
 丁度、その下を歩いてたのよね…。
 そしたら、変な音が上からして、『何かなぁ?』って見上げたら、目の前一杯に鉄骨が広がってたのよね…。
 普通だったら、それが生きてる内で最後に見るものだったんだわ…。
 あぁ、なんてつまらない最後の光景……。今思い出してもゾッとするわ。
 でも、そこでクラウドさんが颯爽とバイクに乗って現れて、私を鉄骨の下敷き寸前のところから救い出してくれたの!!
 下手したら、クラウドさんも私と一緒に鉄骨の下敷きになって死んでしまうっていうのに、全く躊躇わずに飛び込んできてくれたのよ…!!
 そんな彼に憧れない女なんて世の中にいる!?
 いいえ、いるはずないわ!!!
 助け出された直後は、気が動転してて泣き叫んじゃうという何とも恥ずかしい姿を晒してしまったんだけど、そんな私をクラウドさんは優しくも家まで送って下さったの!!
 まさに『男の中の男』『紳士の中の紳士』『英雄の中の英雄』だと思わない!?
 こんなに素敵な人が世界を救った英雄……。
 何て素敵な現実なのかしら!!
 もう、本当に生まれてきて良かった!!!お父さん、お母さんありがとう!!!

 そんなわけで、大感激した私はその日の内に友人達にその事件の一部始終を熱く熱く語って聞かせたの!!
 そして…。
 その日からクラウドさんに憧れる会…『クラウド同盟』なるものを結成したの!!

 勿論、クラウドさんと彼の家族には同盟の事は内緒…。

 だって、そんな事がバレたら二度とこの店の敷居を跨げなくなるじゃない…。
 ううん、もしかしたら二度とクラウドさんがお店のお手伝いに出なくなるかもしれないわ…!!
 それは駄目!
 絶対駄目!!
 そうなったら、こんなにも純粋で子供のような彼を二度と拝めなくなるじゃない!!!
 ああ、そんな事になったら死んでも死に切れないわ!!!

 というわけで、私達は『同盟』の事がばれない様に、彼を追い続ける事を固く誓い合ったの!!



「こちらのお席にどうぞ…」
 看板娘のマリンちゃんが、私達を空いているテーブルへ案内してくれた。
 ん〜…でも…いつもはもっと覇気のある声だと思うんだけど…。
 ……気のせい…だよね…。
 それよりも、
「あ〜ん、クラウドさんに案内してもらいたかったな!」
 同盟メンバーの一人が、私の心を代弁してくれる。
 メンバー全員がコックリ頷くのを見て、マリンちゃんが何か言いたそうな顔をして口を開き、そして何も言わずに小さくい気を吐いたのを私は見た…。
「あ、ごめんねマリンちゃん。ほら、クラウドさんがお店に出ておられるのって久しぶりでしょ?だから、ついつい…」
 手を合わせて見せると、マリンちゃんは「あ、すみません、なんでもないんです」ってほんのりと紅くなりながらモゴモゴと言った。
 一緒に来ていた友人達も、マリンちゃんと私のやり取りを見て「あ、ごめんね〜?」「悪気は無かったの!」「マリンちゃんも私達、大好きだから!!」と、口々に謝罪をしたり、頭を撫でたりして非礼を詫びた。
 マリンちゃんは、その度に「いえ、私こそ本当にすみませんでした」と小さな頭をぴょこんと下げる。

 うん。やっぱり可愛いわ!
 だって、今のところって本当ならもっとイヤな顔とか普通する場面でしょ?
 それなのに、ちっとも拗ねないどころか、自分のした事をきちんと恥じて相手に謝ったのよ?
 本当に…何てしっかりした女の子なのかしら…。
 私だったら……無理だよねぇ〜…こんなに素直に頭下げるだなんて…。

 そう思いながら、ふと顔を上げるとクラウドさんがジッとこっちを見ているのに気がついた。
 その瞳が優しく細められている。
 勿論、クラウドさんの視線の先にいるのは、看板娘のマリンちゃんなんだけど、もう本当にその瞳に……胸がドッキドキ!!
 す、素敵過ぎよ……!!!
 あぁ…あんな風に見つめられたら…。
 もしも、あんな瞳で何か囁かれたら、内容なんか絶対に頭に入らないわ!!

 ……さ、囁かれたい……!!

「ちょっと、大丈夫……?」
「ニヤニヤして…気持ち悪いわよ…」

 妄想…空想の世界に浸っていた私を、友人達の気味悪がっている声が現実に引き戻した。

「う……何でもない……
ごめんなさい
 尻すぼみになる私を、友人達が「ま、良いけど」「どうせ、何かまた変な事考えてたんでしょ」と、いともあっさりと受け流し、さっさと席に着いてしまった。
 私も何だか拗ねたい気分になりながら、席に着いたんだけどその時にクラウドさんへ視線を戻した時には、彼は既に他の常連さんのお相手に行ってしまっていた。
 だから、私が見えたのは彼の後姿だけ…。

 あ〜ん、残念!!
 もっとさっきの蕩ける様な瞳を堪能したかったのに…!!

「えっと…。ご注文は何になさいますか…?」
 おずおずとマリンちゃんが声をかける。
 ハッと我に返ったのはどうやら私だけじゃなかったみたい。
 他の友人達も、穴が開くほどクラウドさんを凝視していた…らしい…。
 そりゃ、困るわよね…客が皆、注文を待ってる自分そっちのけにしたら……。
「あ、ごめんね〜!」
「私達はいつもので良いよ!」
「「という訳で、いつものやつを四つお願い!」」
 声を揃える私達を、マリンちゃんはニッコリと微笑みながら
「かしこまりました」
 一礼してカウンターへ去って行った。
 それは見事なまでの……。

 営業スマイルだった。

 本当につくづく天晴れな女の子よね。
 その事に気づいているのかいないのか、友人達はマリンちゃんがクルッと背を向けたと同時に『同盟』の目的を遂行し始めた。
 即ち、『クラウドさんの姿を温かく見守る』という崇高な行為に没頭してしまった。
 かく言う私も……。
「…本当に素敵よね〜。あ、何だか笑ってる!良いなぁ、あそこのオジサン…私にも笑って欲しい…」
 と、完全に視線は金髪の美男子に釘付けになったんだけどね。



「お待たせしました」
 その声でハッと我に返ると、茶色の髪の看板息子君が少々憮然とした顔で料理を持って立っていた。
 デンゼル君はマリンちゃんと違って、営業スマイルが得意ではない。
 だから、思った事が子供らしく顔に出てしまう。
 私はそんなデンゼル君もお気に入りなんだ〜。
 だって、デンゼル君がテーブルに来ると、必ず少し心配した様な顔でクラウドさんがチラリと視線を投げてくるの!
 その事に気づいたのは最近なんだけどね!
 ホラ、丁度今、クラウドさんがそんな目でこっちを見てる。
 きゃ〜、その『良いパパ』の顔も本当に素敵!!

「はい、ありがとね〜」
 ご機嫌で料理を受け取る私達に、デンゼル君はどこまでもムスッとした顔を崩さなかった。
「失礼します」
 軽く頭を下げてデンゼル君がテーブルから離れる。
 それを見守っていたクラウドさんが、ホッとしたように目を細めて自分の仕事に戻って行った。
 それに気付かない私達じゃない。
「見た見た!?」
「見た〜!!」
「本当に、『良いパパ』よね〜!」
「「「そうよね〜!!」」」
 すっかり興奮して声が高くなる私達を、周りのテーブルの人達が白い視線を飛ばしてくる…気がするんだけど、そんなの気になんかしてらんない!
 だって、本当に久しぶりなんだもん、クラウドさんに会えるの!!
 もう、彼の行くところならどこだって着いて行きたいのよ、本当は!!
 でも、そんな行動に出たら絶対に私達に明日はないわ!!
 何故なら…。

「あら、お元気そうね!」
「おう、お陰様でな!!
 輝くような…とはまさにこの事よね。
 この店の女店長が、実にそんな表現が相応しい笑顔を常連さんの一人に向けている。
 この女店長…ティファさんは、クラウドさんの……認めたくないんだけど恋人…なんだ〜。
 スッとした目鼻立ちに温かな眼差しの茶色の瞳、黒いサラサラな髪は歩く度に軽やかに揺れ、艶やかな唇は薄くグロスが塗られているだけというとてもシンプルなお化粧だけ。
 そして、何よりも目を瞠るのが抜群のプロポーション!!!
 メリハリのある身体…って彼女の事を言うんだわ!!
 性格も良いのよね…彼女。だから、こんなにもこのお店は繁盛してるのよ。

 ハッキリ言って、反則よ、反則!!
 こんなにも女としての理想を手にしている彼女から、クラウドさんを奪えると思う!?
 絶対無理!!
 悔しいけど…完全に負けてるもん、色々な面で…。

 あぁ、何だかまた落ち込んできた…。
 私がクラウドさんに恋した時には、既にティファさんがクラウドさんの隣にいる権利を握ってたのよね…。
 ……もっとも、クラウドさんに出会ったのが私の方が早かったとしても、きっと勝てなかったんだろうけど〜……。
「…なに拗ねてんの…?」
 友人の一人が気味悪そうな顔をしながら、ライムサワーを口に運んだ。
「……何でもない……」
 私は溜め息を一つこぼすと、自分のリキュールに手を伸ばした。



「クラウドさ〜ん!メニューをお願いしま〜す!」
「クラウドさ〜ん!ごめんなさ〜い、スプーン落としちゃった〜。新しいのくれませんか?」
「クラウドさ〜ん!」
「クラウドさ〜ん!」

 酔いの回った私達の『クラウドさんコール』が始まってしまった…。
 シラフだと流石に恥ずかしくて名指しで呼んだり出来ないんだけど、お酒が入るとそれは別。
 クラウドさんへの溢れんばかりの気持ちが、お酒の力でいとも簡単に堤防を越えてしまう。
 その結果が…。
「あ、はい。少々お待ち下さい」
 困ったような顔をしながらも、実直にそれをこなしてくれるほんの僅かに独占出来る時間。
 それが例え、人生の中で数パーセントにしかならない時間だったとしても、それでも良いの!
 クラウドさんがその時間だけは私達の事を見てくれるから!!
「本当にカッコいいわよね〜」
「うんうん!」
「あの困った顔も本当に素敵よね〜!」
「そうよねぇ。困った顔も素敵な男性、そうそういるもんじゃないわよ!!」
「「「そうよね!!」」」

 声を揃える私達を、看板息子と看板娘がチラリと見た。
 そして、その次に二人が視線を移した先には、子供達の親代わりであり、この店の店長でもあるティファさんの姿。
 ティファさんは、私から見ると特にいつもと変わらないように見えるんだけど、もしかしたら私が気付かないだけで嫌な気分になってるのかもしれない…。
 ん〜……やっぱり見ただけじゃ分からないけど……機嫌悪いの……?
 でも、そうかもね。
 どんなにクラウドさんがティファさんにメロメロだって分かってても、自分の大好きな人を目当てにお店に来る女の人がこうして『クラウドさんコール』してたら、嫌な気分になるのかも…。

 でも…。
 いつも思うんだけど、どうしてティファさんって『優越感』に浸ったような顔をしないのかしら…?

 だってそうでしょう?
 あんなに素敵な人が自分の恋人なのよ?
 おまけに、クラウドさんったら周りがどんなにモーションかけてもこれっぽっちもなびかないんだから!!
 もう、『ティファ意外には興味ないね!』って言わんばかりのスルーっぷり!!
 ハッキリ言って、贅沢よ、贅沢!!
 もしも私がティファさんだったら、絶対に、

『オーホホホ!!一昨日いらっしゃいな、凡人共!!』

 って高笑いしちゃうわ。

 あ…。今私の性格『最悪』『性悪女』って思ったでしょ!?
 でもしょうがないじゃない!
 こんなに素敵な人が自分以外に心を移さないのよ!?
 高笑いの一つや二つや三つや四つ…出ても仕方ないと思わない?
 それなのに、ティファさんはちっともそういう素振りを見せないの。
 逆に、全然何とも無いです、みたいな見事なまでの平常心を表したかのようないつもと変わらない表情なの。
 ううん、むしろどこか遠慮してるようにすら見える、。
 全く、どうしてこうも控えめなのかしら。
 こう、何て言うか…。

『クラウドは私のものよ!』『私の彼氏をそんなに呼ばないで!』『クラウド、私だけ見てて!』

 みたいな『独占欲』っぽいものをもう少し見せても良いと思うなぁ。
 ま、もしもそんな素振りを見せられたら、このお店に来にくくなるんだけど…。
 でも、何だかクラウドさんが可哀想な気もするのよね。
 ここまで他の女に纏わり付かれてるのに、自分の彼女がヤキモチ焼いてる表情一つ見せてくれないだなんて…。

 って、なに言ってんのかしら私。
 敵に塩を送るような事考えてるんだもの。
 でも、私にとってクラウドさんはあくまで憧れの人。
 勿論、彼がティファさんや子供達を捨てて私の事を選んでくれたら、私も今の生活全てを捨てて彼と共に生きる事を選んじゃうけど、絶対にそんな事なりようがないもの。
 それに、実は私、今一緒に飲みに来てる『同士』の女の子達とは考えが違うんだ〜。
 彼女達は『クラウドさんが少しでも私達を見てくれるように』あの手この手を使って頑張ってるんだけど、私はちょこっと別。
 いつか、ティファさんがクラウドさんにとって『嬉しい事』をしてくれる『瞬間』を見たくてこの店に通ってるの。
 ん?
 『嬉しい瞬間』って何かって?
 それは、一つしかないでしょう!!
 ティファさんがヤキモチ焼いてくれる事よ!
 ヤキモチを表すのにも色々あるんだろうけど、私の希望としては…。

『泣き出す』『詰る(なじる)』『縋りつく(すがりつく)』『他の男に媚を売る振りをする』

 この四つかしらね。
 ん〜…どれもこれも、しっかり者で一途なティファさんからは考えにくいんだけど…。
 それだけに、彼女がこの行動に出た時のクラウドさんの顔が見てみたい!!
 絶対に一見の価値があるはずよ!!



「お待たせしました」
「ありがとうございます〜!」
「あ、すみません、クラウドさん、今度はこのお酒のお代わり下さい!」
「それにしてもクラウドさんがお店に出るのって久しぶりですよね〜!とっても会いたかったんです!!」
「あ〜、私もです〜!!」
 注文と称してクラウドさんを呼び寄せる事に成功した『同士』は、手を緩める事無くクラウドさんにここぞとばかりに話しかける。
 クラウドさんは、ほとほと困ったような顔をして「はあ…ええ、まぁ」「いや…それは仕事でしたし…」「……ありがとうございます…」と、一生懸命出来る範囲で答えてくれる。
 そして、答えるその合間合間でチラチラと視線をカウンターに向けていることに、当然私達は気がついていた。
 カウンターの中には、この店の美人店長。
 その事を熟知している私達は、決してティファさんの方を見ないようにしていた。
 だって〜…もしも怖い顔してたら二度とこの店に来れないじゃない…。
 でもでも、私はさっきも言った様に『ヤキモチ焼くティファさん』も見てみたいと思ってるの。
 今まではちょっぴり怖かったから、こう言う時は見ないようにしてたんだけど、今まで通ってきた経験から『店を叩き出される心配は無い』という結論に至った為、今夜初めてティファさんをチラリと盗み見るという快挙に乗り出した!!

 その私の視線の先では……。



「クラウドさん!クラウドさんっていつからティファさんの事が好きなんですか?」
「えっ!!!な、なななな何を突然……!!!!」
 私の突拍子も無い質問に、クラウドさんは瞬時に顔を真っ赤にさせ、口をパクパクとさせる。
 友人達も一様に呆気に取られて私を見た。
 それに、店内の他のお客さん達も、そして子供達とティファさんまでがびっくりしてこちらを凝視しているのが分かる。
 わ、私だってこんなに店の全員に注目される質問なんかしたくなかったけど、だって…。


 あんまりにもティファさんが可哀想になったから!!!


 今にも怒って泣き出しそうなのに、店長という枠にはめ込まれて自分の感情を押し殺してるティファさんが、あんまりにも可哀想で!!!
 クラウドさんが少しでも私達と接するのが『イヤ』だって素振りをしてくれれば、ティファさんもここまでの顔はしなかったと思う。
 でも、クラウドさんは『困った顔』はしてても、決して『イヤそう』な顔はしなかったんだもの。
 そりゃ、ティファさんだって怒りたくもなるし、泣きたくもなるよ〜…。
 だから…。
 ここでクラウドさんに皆の前でハッキリ言わせてやれば、ティファさんも『救われる』ハズよ!!
 それに、もしもここで逃げるようなら、私が考えているよりもクラウドさんはティファさんの事を何とも想ってないって事になるんじゃない!?!?
 そうだとすると、私にもチャンスがあるはずよね!
 ま、それはないんだって分かってるけど…。
 どちらに転んだとしてもハッキリ言えなくったって、思いっきり照れてくれたら万事OKのはずよ!!
 もうそれだけで良いから……クラウドさん!!どうなの!?

 店内の視線を全て浴び、クラウドさんは耳までどころか全身を真っ赤にさせた。
 そして、ドッと汗が噴出させながら、オロオロと視線を彷徨わせ、最後に行き着いたカウンターの中のティファさんにはた、と目を止めた。
 チラリとその視線の先を盗み見ると、表情を消したティファさんがジッとクラウドさんを見つめてた。
 その眼差しがあまりにも真剣で…切なくて……。
 彼女の全部が、クラウドさんの答えを求めてた。

 クラウドさんもその事に気づいたんだと思う。
 ゆっくりと私に顔を向けると、


「子供の頃から…」


 途端に上がる黄色い声と、クラウドさんとティファさんを冷やかすおじさん達の笑い声。
 言い切ったクラウドさんは、その沸き立つ店内にハッと我に帰ると、そそくさと私達のテーブルから去って行った。
 行き着いた先には顔を真っ赤にさせて瞳を潤ませてる店長さんの姿。

 カウンター越しにそっと何か囁いていたけど、きっとティファさんにとってはこれ以上ない嬉しい言葉なんだと思う。
 だって、初めて見たんだもん。

 花が咲くような笑顔…ってやつ!!



 その夜の帰り、お勘定を済ませる私に、マリンちゃんとデンゼル君が初めて、
「また来て下さいね」
「今夜は…ありがと…」
 と、囁き、営業スマイルではない本当の笑顔を見せてくれた。

 うんうん。
 中々私も良い事したじゃない!
 やっぱり、クラウドさんは私の命の恩人だもの、少しくらい恩返ししないとね〜!



「あ〜ん、それにしても本当に世の中不公平よね〜」
 友人の一人が夜空を見上げてそう愚痴をこぼした。
「そうよね〜。ああ、良いなぁ、私もクラウドさんのような素敵な彼氏が欲しいなぁ!」
「「それ、絶対無理!!」」
「やっぱり〜…?」
 友人がガックリとうな垂れる。
 私も他の友人も笑ったけど、皆きっと心の中ではさっき見た光景で胸を痛めてるんだと思う。
 さっきの光景。
 照れながらも幸せそうに微笑むクラウドさんとティファさんの姿。
 私はあんな風に微笑むクラウドさんを遠めで見るだけでも割と満足するんだけど、友人達は結構本気で恋してるからきついんだろうなぁ。

 もっとも、私も最近まではクラウドさんに本気で恋していたんだけどね。

 でも諦めたんだ〜。
『恋』から『憧れ』に気持ちを切り替えたの。
 でないと、きっと苦しくて切なくて、生きてるのが辛くなっちゃうんだもん。
 絶対に実らない想いだから…。
 いつか、私にも素敵な人が現れるかもしれないでしょ?
 その時までクラウドさんに『恋』してたらいいじゃない…って言う人もいるかもしれないけど、それは無理。
 だって、クラウドさんに『恋』してたら他の人が『現れた』時に、その人に惹かれるはずが無いもの。
 だから、私の為にも『恋』から『憧れ』に切り替えたの。
 友人達も、いつかはその切り替えが出来れば良いんだけど…。

「それにしても、久しぶりのクラウドさん、本当に素敵だったわね!」
「うんうん!本当に!!」
「特に、最後のあの照れた顔…!!」
「ほんっとうに最高に可愛かったわ〜!!!」
 うっとりと夢見心地になりながら、照れた彼の顔を思い出す。
「今夜お店にいたって事は、明日はいないわよねぇ…」
「そうねぇ…」
「今までの統計からすると、翌日とその翌々日にはお店に顔を出す暇が無いはずよ…」
「って言うことは…」
「少なくとも明日から二日間はクラウドさんはお店にはいないわね」
 指を折って数える友人達が、うんうん、と頷いている。
「じゃ、三日後にまた行く?」
「ん〜……そうねぇ」
「んじゃ、三日後に集合するように伝えとくね」
「じゃ、私は帰ったら早速会報作りにとりかかるわ〜!」
「うん!出来上がり、楽しみにしてる〜!!」

 自分達の役割分担を話し合いながら、私達はエッジの街を踊るような足取りで家路に着いた。



 三日後。
 別の『同士』の女の子達が
「あ〜ん、クラウドさんに会えなかった〜!」
「残念すぎ〜!」
「でもでも、これで三日続けてお店にいなかったから、もしかしたら明日か明後日には……!」
 という報告を受けた。

 よし!では、このデータを元に、新たに『クラウドさん同盟』の会報を作らなくっちゃ!

 新たな情報を手に、私は『書記』の家に飛んで行った。



 私は『クラウド同盟』会長。
 恋心から憧れに転換させた女で、クラウドさんに命を救われた女。

 今日も私は、『クラウドさんを温かくを見守る』という崇高な目的を達成すべく、同志なる女の子達総勢五十五人を引き連れ、エッジの街を行く。

 彼を見守れるように、情報収集をする為に…。





あとがき

30000番のキリリク小説でした…。い、いかがでしたでしょうか!?!?
”『Our father is…』に出ているクラの追っかけの女の子達視点のお話”がリク内容でした……が!!
こ、こんなん出来ましたけど……あ、あれ…?
長い!!
何でこんなに長くなったんだろう…。
二部に分けようかとも思ったのですが…分けるほどの長さでもなく…。
えらい中途半端に……!!

あ、最後の五十五人という数字ですが、『GOGO(行け行け!)』というのをもじってみました(笑)。

ああ、すみません、VXZ様!!
こんなんになりました〜(汗)。

でも、書いててとっても楽しかった…o(*^▽^*)o
リク、本当にありがとうございました!!