ただ、シンプルに…




『もう…なによぉ……!!』

 セブンスヘブンの女店長であり、二人の幼子の母親代わりであり、『ジェノバ戦役の英雄』の一人であり、更にはその『英雄達のリーダー』である青年の恋人でもあるティファ・ロックハートは非常に不機嫌だった。
 原因はというと…。


「どうしてこの日に限って私一人なわけ!?!?」


『この日』というのは、彼女の誕生日なのだ。

 別に誕生日を迎えて嬉しい歳でもない。
 誰かからのプレゼントを期待しているわけでもない。
 ただ…。
 ただ………。

 家族と一緒に過ごしたかったのだ、自分の誕生日くらい…!!

「……そんなに贅沢な事かしら……」

 いささか自分の希望が高望み過ぎたか……?と、不安になって一人ごちる…。
 さほど広くない店内でも、たった一人でいると、妙に広く感じてしまうから不思議だ。
 それも、今夜は店を開けない!と、以前から決めていただけに、余計に広く感じてしまう。
 ようするに、店内に下りてきてもすることが無いのだ。

「もう……『臨時開店』しちゃおうかしら……」

 勿論、そんな事はしない。
 看板娘と看板息子に固く約束させられたのだから…。

『いい?ティファは自分の誕生日くらいゆっくりしないとダメだからね!!』
『俺達がいないからって、する事なくて店を開けたりするなよな!?』
『ガッハッハ!二人共、いくらティファが働き者だからってそこまでガツガツ働かねぇって!』

 マリンの養父は、心配そうに眉間にしわを寄せる子供達を引きずるようにしてトラックに乗せ、あっという間に走り去ってしまった……。

 彼曰く…。


 ― 誕生日くらい、子供達の世話は忘れて、大好きな男と甘〜い時間を過ごしやがれ!! ―


 だそうだ。


「………甘く過ごす……って言ったって……
 一人でどうしろって言うのよ………」


 スツールに腰を下ろし、プゥッ…っと頬を膨らませて冷たいカウンターに突っ伏した。



『すまない……今日中には帰れそうに無いんだ』



 たった今、かかって来た彼からの電話。
 一昨日から他の大陸に配達に出ているクラウドは、『今日という日』を家で絶対に過ごせるよう、かなりなハードスケジュールで動く事にし、現在実行中……だった。
 全ては、『家族みんなでティファの誕生日を過ごしたい』という思いから…だったというのに…。


 と・こ・ろ・が!!


 いざ、他の大陸に渡ってみれば、いつもの様に予定外の仕事が増える事増える事……。


『絶対に予定外の仕事は請け負わない!!』


 彼の誓いは脆く、儚く崩れ去った……。
 荷物には、その依頼主の相手への心が籠っている。
 それを知ってて尚、依頼主の必死な顔を前に、無愛想で無表情で愛想の欠片も無いくせに、実はお人好しな青年が断れるはずも無かった。

「あ〜あ……。まぁ…そこがクラウドの良いところ……何だけど……」

 先程の、心底申し訳なさそうな声思い出して、小さく笑みを浮かべる。

 クラウドは知らない。
 ティファが一人でセブンスヘブンにいるという事を。
 もしも子供達がバレットによってここにいない事を彼が知っていたら、何が何でも帰ろうとするだろう。
 それこそ、心を鬼にして依頼を片っ端から断って…。
 そして、断った事で罪悪感に苛まれながらも、自分の前では無理に平気な振りをするのだ。
 彼はそういう人だから……。
 他の人には分かりにくいだろうけど、人一倍心が優しい人だから…。
 そんな彼だから、こんなにも愛しいと思えるんだから…。

「しょうがないよねぇ…」

 カウンターに押し付けていた頬をゆっくりと上げ、大きく溜め息を吐いた。
 バレットだって、子供達だって、普段二人きりになれない自分達の事を思ってしてくれた今回の行動に出たのだから、誰が悪いわけじゃなし。
 むしろ、ここまで想われる自分は本当に幸せ者じゃないか…。

「うん、そうだよね!」

 一人、納得してみせるとティファはスツールの上で大きく伸びをした。
 時計に目をやると、既に夕暮れ時。

 吹っ切るようにもう一度短く息を吐き出すと、
「さぁ……なにしようかな」
 スツールから軽く飛び降りるようにして立ち上がると、そのままカウンターの中に入ってゴソゴソと何やら作業を始めたのだった。





『はぁ〜〜!?!?アンタ、今日が何の日が忘れてるわけじゃないでしょうね!!!!』

 大音量のユフィの怒声に、クラウドは携帯を思い切り耳から遠ざけた。
 その最大限に伸ばされた腕先からは、それでも尚、ユフィの甲高い声がギャンギャンと喚き立てていた。

『アンタが……まさかそこまで人でなしだったとわ〜〜〜!!!!!』

 ……誰が『人でなしだ』……。

 不機嫌そのものの顔になり、苦々しく盛大な溜め息を吐く。
 自分だって、彼女の誕生日くらいゆっくりと家で祝ってやりたくて、今回は中々ハードなスケジュールを組んだのだ……。
 それなのに、何故か突然な仕事が増えてしまって…。

 ……いや…断れなかった自分が一番悪いんだけど……。

 などと少々自己嫌悪に陥っているクラウドの耳に、遠ざけた携帯からは、何やら小さい声でユフィがボソボソと呟いている。
 そろそろと、自分の耳元に携帯を戻したクラウドに…。
『どうしよう……折角の『ラブラブサプライズプレゼント』がぁ〜〜〜……』
『…ユフィ…またか…』
『なんだってそう…考えなしで動いて、挙句の果てに俺様達まで巻き込んでくれるんだ、テメェは!!』
『ユフィ……今頃ティファ、一人っきり…って事だよぉ…?どうするのぉ……?』

 などなど、仲間達の声までが聞えてきたではないか。
 しかも、聞えてきたその内容はとんでもないものだった。
 ナナキの声が聞えた瞬間、全身からドッと冷や汗が噴き出した。
 思わず目を吊り上げて携帯を握る手に力を入れる。

「おい、ユフィ!!お前……まさか、またなにか企んでたな!?!?」
『ヒェ!!!』

 クラウドの怒鳴り声に、素っ頓狂なお元気娘の短い悲鳴が上がる。
「ユフィ、きちんと説明しろ!!」
『わ、分かったよ〜〜…!!』

 そうして…。
 半泣きの声でユフィが告げた事実に、クラウドは眩暈を起こした。



 ユフィ曰く…。


 ティファは『乙女のトキメキ』とは無縁の生活を送っている。
 故郷を失ってから今日まで、彼女は必死に生きる為……そして『仲間』や『家族』の為に頑張る日々…。
 そんな彼女の為に、一日くらい、世の中の『乙女』のように『愛する人』と『二人っきり』で『甘い時間』を過ごしても罰は当たらない!!
 いや、むしろ一日くらいそうするべきだ!
 ティファのように、頑張ってる人が報われない世の中は間違っている!!


 という訳で…。


 ― ティファへ日頃の感謝を込めて!!
  『ラブラブサプライズプレゼント』を贈ろう!! ―


 という事になったらしい…。
 プレゼントは勿論…。

「ユフィ………」
 クラウドはガックリと膝を折り、ワナワナと肩を震わせた。
「だったら……俺にくらいきちんと説明をしておけ!!!」
『だ、だってさぁ……』
「だってじゃない!!」
 半泣きの声で反論しようとするお元気娘に、ピシャリと言う。
「お前な……ティファへのサプライズプレゼントが『俺』なら、事前にきちんと俺に説明しとけ!!」
『うう……だってぇ……』
「だってじゃないって言ってるだろう!?どうするんだよ!!」
『まさか、アンタがティファよりも仕事を取ると思ってなかったんだから、仕方ないじゃんか!!!』
「う………」
 噛み付くように怒鳴り声を上げていたクラウドは、ユフィの一言で言葉に詰まった。

 ……痛いところを突かれた……。

 それが正直な感想。
 しかし、まさか…。

「お前達がティファの誕生日を祝ってくれると思ったから……新しく舞い込んで来る依頼を強く断れなかったんだ……」
 ボソッとこぼした言葉に、携帯の向こうでユフィが『バッカじゃないのーー!?!?』と絶叫する。

 キーーーーーン……!!!!

 鼓膜を直撃したユフィの怒声に、耳鳴りがする。
 クラリ…と上体を揺らせて一瞬意識を飛ばしたクラウドは、次の瞬間、
「バカとは何だ!!ふざけるな!!!いつもいつも、一人で勝手に決めて、暴走してるんじゃない!!!!」
 いつものポーカーフェイスをかなぐり捨てて怒鳴り散らした。

 もしもクラウドの今いるところが荒野でなかったなら、さぞいい見世物になっただろう…。

『なによーー!!普通はねぇ、誰に何を言われなくったって、なにがあっても日頃から迷惑かけてる恋人の傍にいるもんでしょうが!!!』
「なに勝手なこと言ってるんだ!大体、お前、ティファの恋人………こいびと……
コイビト…………」
 ギャンギャン喚きたてるユフィに、クラウドは怒鳴り返そうとして勢い込んだが、それもあっという間に尻すぼみになった。

 改めて『恋人』という響きに顔がカーッと熱くなる。


 ……そうだよな……。
 俺とティファは……その………。
 コ、コイビト……なわけで………。
 それに……。
 ユフィの言う通り…、ティファには迷惑掛けっぱなしだし……。
 それなのに…。
 なにしてるんだろう、俺……。


『お〜い…クラウド〜〜!帰って来〜〜い!!!』

 しみじみと自分の不甲斐なさに、呆然とする。
 そんなクラウドを呼びかけるユフィの声が、携帯から虚しく荒野に漏れ響くのだった。



 まさか、そんな面白い…もとい。
 とんでもない計画が大失敗に終わろうとしている事など、露ほども知らないバレットと子供達は、目的地のロケット村が近付いてきてウキウキしていた。
「なぁなぁ、シドのおっさん、元気かな〜?」
「元気よ、絶対に!」
「元気に決まってるだろう!?あの野郎から元気を取ったら、なぁんにも残らないぜ!!」
 ガッハッハ!!

 豪快に笑うバレットに、『それってまさに自分の事じゃん……』とデンゼルは思ったが、妹のように可愛がっているマリンが、バレットを心から慕っている事を知っている手前、その正直な感想はそっと小さな胸にしまう事にした。

 ガタガタとトラックが小刻みに揺れ、もうすぐロケット村の入り口……と言う時。
 まさに顔色を変えたシドとユフィ、ナナキが入口からシエラ号の停泊場所まで、全速疾走しているのと鉢合わせた。(ヴィンセントは相変わらずの無表情振りだった)

「おいおいおい…おめぇら……なにやってんだ???」
 トラックをいささか乱暴に止めると、子供達がシートベルトのお蔭で前に吹っ飛ばされずに済んだ代わり、ベルトが身体に食い込んで強い痛みに襲われる。

「ぐえっ!!」「キャッ!!」
「お、おお…二人共悪かった、大丈夫か!?」
 慌てるバレットに、子供達はしかめっ面で「「……なんとか……」」と一言返してプイッと横を向いた。
 バレットは可愛い子供達が機嫌を損ねたことで、非常に焦ったのだが、それどころではない仲間達は、トラックに飛びつかんばかりに駆け寄った。
「「バレット!!」」
「おお…良かった、こっちは迎えに行かなくて済んだな」
「はぁぁ………」
 何やら切迫した仲間達に、バレットだけでなく子供達も嫌な予感が急速に胸いっぱいに広がらせ……。
 深い溜め息を吐いたヴィンセントをジッと見た。
 ヴィンセントは、子供達の強い視線にすぐ気付くと、何を問われているのかもう聞くまでも無かった為、

「作戦はものの見事に失敗だ。今からクラウドを迎えに行って、代わりにクラウドの配達の仕事を手伝う」

 バレットと子供達の三人に、実に簡潔な分かりやすい説明をしてくれたのだった。
 そして…。
 その説明に、子供達がガックリと首を項垂れ、バレットが真っ赤になってクラウドに対し、怒りまくったのは言うまでも無い。





「あの……本当に今夜はお店は開いてないんです…」
 もういつもなら店を開けている時刻…。
 何故か、『臨時休業』のセブンスヘブンの前にはチラホラと列が出来ていた。
 ティファは、店を開ける気は無い…と、並んでいる客達にそう声をかけて回っていたのだが…。

「でもさぁ、ティファちゃん、今夜は一人なんだろう?」

 ………何故それを………。

 咄嗟に言い返せなかったティファに、その男性は、
「ティファちゃんの事を想ってる人間は、なにもティファちゃんの『家族』だけじゃないって事だよ」
 そう言って、「なぁ、みんな、そうだろう!?」と周りにいた男性達を振り返った。
 当然、その彼の声に対し、歓声が上がる。
「その通り!いつでもティファちゃんを見てるから、子供達が朝早くにバレットさんと一緒に出かけるところを見ちゃったんだぁ」
「それに、クラウドさん、今夜は帰ってこられないんだろう?」

 ………だから、……どうして知ってるの……!?

「だって、ティファちゃん、電話してた後、ちょっと拗ねたような、それでいて悲しそうな顔してたじゃん?」
「あの顔見たら、誰でもすぐに分かるよなぁ!」

 ………覗かれてたのね……クラウドの電話の内容がショックすぎて、全然気付かなかったわ……。

「今日は俺達、ティファちゃんの誕生日を祝いたくて、集まったんだ」
「そうそう。だから、俺達皆、飲み物も食べ物も持参だし!」
「だから、ティファちゃんは今夜は『セブンスヘブン』でお客様ってことで、一つよろしく!!」
 そう言うと、並んでいた客達…いや、ティファのお祝いに駆けつけた人達は、呆気に取られているティファを尻目に、サッサと店内に入ってしまった。
「あ、あの……ちょっと…!!」
 慌てて店に戻ったティファの目の前では、ティファのお祝いをしたい、と駆けつけてくれた総勢三十名未満ほどの男性達がワイワイと持参した料理と酒をテーブルに並べ始めた。
 それこそ、店主であるティファをそっちのけにして…。

「おお…すっげー料理が出来てる!!」
 カウンターの中に勝手に入った男性の一人が、そこにある料理に目を丸くしていた。
「あ、それは…」
「ティファちゃん、いくら寂しいからって、一人で祝うつもりだったのか〜?」
 呆れたような顔をする男性達に、ティファはいささかムッとしながら「それは、明日子供達と仲間が来る予定だから、その準備です」と、答えた。
 その言葉に、男性達は「あ、そうなんだ」「いや、ごめんごめん」と、顔を引き攣らせてスゴスゴとカウンターから出てきたのだった。
 ティファは溜め息を吐くと、作りかけの料理に布巾をかけ、冷蔵庫にしまったのだった。



「はぁい!では、我らが麗しのセブンスヘブンの店長の誕生を祝して〜!!」
「「「「「「カンパ〜イ!!!!」」」」」」
「…カンパイ…」

 ドッと盛り上がる乾杯の音頭。
 その音頭の主役たるティファは、何とも複雑な心境だった。
 勿論、こうして皆が自分を祝う為に集まってくれたのはとても嬉しい。
 でも………。
 本当は……そうじゃない…。
『嬉しい』の種類が違う。

 少々塞ぎこんでいるティファに、男達は次々自分の持ってきたプレゼントを差し出した。
 綺麗にラッピングされている箱、明らかに……意味を込めた指輪が入っているであろう小箱、そして……両手でも抱えきれない程の色とりどりの花束の数々。
 どれもこれも、女性なら貰って嬉しくないはずは無い。
 それでも…。


「ごめんなさい…」


 ティファは差し出されたプレゼントの山に……そして、自分に掛けられる祝いの言葉に……。
 深く深く…頭を下げて……それらを拒んだ。
 シーン…と静まり返る店内で、ティファは頭を下げたまま口を開いた。

「皆さんの気持ち……本当に嬉しいです。でも、私は……。私が欲しいのは、沢山のプレゼントでも、沢山の高価なアクセサリーでも……豪華な花束でもないんです…。私が欲しいのは……!!」

 ………『家族』と『親友』と一緒に過ごす時間………。
 それが……一番私にとってはなによりのプレゼント……。
 だから……。
 どうか……今夜は帰って下さい…。
 お願いします…。


 頭を下げたままの彼女の肩が、微かに震えている。
 祝いとかこつけて、本当はティファの傷ついた心に隙あらば…!!などとふざけた事を考え一色だった男性達は、言葉も無く立ち竦んだ。

 しかし、それでも男性達の中でも中心人物らしき青年は、グッと顎を引き、意を決してティファの傍に足を向け、そっとその下げられた頭を上げるべく、両肩に手を置いた。
 ティファの身体がビクッと震える。
 青年は、そのままゆっくりとティファの肩を起こし、俯いたまま目を合わせようとしない彼女の顔を覗き込んだ。

「ティファさん。貴女が『家族』を大切にしているのは分かってます。でも……俺達だって、貴女への思いは負けてません。でなけりゃ、後でバレたら確実にクラウドさんとデンゼル君とマリンちゃん、更にはジェノバ戦役の英雄達に恨まれるというリスクを犯してまで、こんな事したりしませんから」

 青年の言葉に、ティファはハッと顔を上げた。
 そこには、クラウドほどではないがそこそこ容姿の整った若い男性。
 そして、彼の瞳はまっすぐティファに注がれていて……目をそらす事が出来ない。

「ねぇ、ティファさん。どうか、もっと自分を大切にして下さい。貴女の誕生日に帰ってこない『彼』の事なんかどうか忘れて。そして、貴女の言う『家族』の為に、人生を棒に振るなんて……そんなバカな事をしないで、これからは自分の人生を…」

 恐らく、他の女性相手だとこの台詞は非常に効力があっただろう。
 しかし、ティファは他の女性……その他大勢ではないのだ。
 そんな女性ではないのだ。

 キッと眦を上げると、凛とした口調ではっきりと言葉を紡いだ。
「お客様、お引取り下さい」
「ティファさん!」
「私は私の家族を悪し様に言われて、それでも笑っていられるような人間じゃないんです。これ以上、私の家族を……クラウドを……バカにしないで!!それに、さっきも言いましたけど、私はこんなに沢山のプレゼントが欲しいわけでも大きな抱えきれない程の花束が欲しいわけじゃないの!私が欲しいのは、本当に本当に…ただ、シンプルなものなの。だから……」

 その時。
 聞えないはずの聞き慣れたエンジン音が遠くから夜気を切り裂くように響いてきた。
 そして、その音は一気に店に近付いてくると……。


 キキキキキーーーーーーーッッッッ!!!!!!


 それはそれは、恐ろしいブレーキ音を響かせて、店のどまん前で停車した。


 ギョッと身を竦める男性達には目もくれず、ティファはドアへ走り寄った。
 そして、勢い良くドアを開けようとしてノブに手を伸ばした瞬間、

 バンッ!!

 顔面すれすれのところで勢い良くドアが開いた。
 そして、その次の瞬間…。


「ティファ、誕生日、おめ、でとう……!!」


 荒い息を整えながら、クラウドがティファにバラの花束を手渡し、目を見開いて固まるティファをギュッと抱きしめた。

「クラウド……?」
「ごめんな……俺、ちゃんと仕事を今回は断るべきだったのに…」
「そんな……私は……別に……」
 自分の正直な気持ちにふたをして、己を責めるクラウドにそう言うと、紺碧の瞳が至近距離で真っ直ぐティファの瞳を覗き込んだ。
 魔晄色に染められた透き通るような瞳に、頭がクラクラする。
 胸がバクバクと激しく脈打つ。
 呼吸すら忘れるような彼の熱いまなざしに、ティファは視線を逸らせない。

 そんなティファに、クラウドはフッと柔らかな笑みを浮かべて……。

 そっとティファの頬に自分の頬を押し当てて……。

「俺が……そうしたかったんだ…。誰よりも、ティファが生まれてきた日が……生まれてきてくれた日が嬉しくて…。誰よりも一緒に、ティファの誕生日を祝いたかったんだ……」


 ティファにとって、最高のプレゼントを贈った。



 その後。
 店にいたティファ目当ての男性達は、スゴスゴと退散し、店には大量の贈り物と大きな花束が寂しそうに鎮座していた。
「……これ…凄いな……」
 呆れたようなため息交じりでクラウドがそう言うと、ティファは満面の笑みでゆっくりと頭を振った。
「私にとっては、クラウドがくれたこの花束と、さっきの言葉がなによりのプレゼントよ…?」
 少々頬を赤らめて口にした彼女のその言葉に、クラウドは真っ赤になりながらもそっと彼女の細い腰を抱き寄せて優しく彼女の髪を梳いた。
「そう言ってもらえる俺は、世界一幸せ者だな」
「……私の方が幸せだもん!」
「そうか?こればっかりは譲れないな」
「もう!絶対に私の方が幸せなんだから!!」
「いやいや、やっぱり俺だろう…」
「そんな事ない!」
「いや、ある」
「ないったら〜!」
「ある」
「クラウド〜!」
「それだけ、俺がティファから幸せを貰ってるって事だからな。こればっかりはいくらティファでも譲れない」

 キッパリと言い切ったクラウドに目を丸くして…。
 そして、ティファとクラウドは同時に吹き出した。
 ひとしきり笑っている間も、ティファはクラウドの腕の中で…。
 クラウドはティファの心休まる匂いに、心からの幸せを感じて。
 二人は改めて仲間達に感謝した。

「今頃……ちゃんと配達できてるかなぁ…」
「さぁ…。まぁ、今回は多少の事には眼を瞑るさ」
「ふふ……もしもアクシデントが起こってたら、一緒に私も謝るからね?」
「フッ……頼む」
「まかせて!」

 そうして、やっぱり笑い合って、二人は久しぶりに……二人だけの優しい時間を過ごす事が出来た。



 うっすらと空が白み始める頃。
 ふと目を覚ましたティファは、自分をやんわりと抱きしめてあどけない顔をして眠るクラウドに、涙が出る程の喜びを感じた。

 なんて……幸せなんだろう……。



 彼女にとっての最高のプレゼント。
 それは、いたってシンプルなもの。


『最愛の人と共に過ごせる時間』


 その時間をプレゼントしてくれた仲間達に心からの感謝を捧げつつ、ティファは再び柔らかな眠りに落ちて行ったのだった。


 あとがき

 ティファ、お誕生日おめでとう!!
 貴女に出会えて、本当に幸せです!!
 貴女がDC後の世界では、もっともっと幸せだと良いなぁ……と、日々真剣に妄想してるマナフィッシュです(笑)
 でも、本当に…。
 ティファに出会えて良かったと思えるのは、きっとクラウドに負けてません(いや、ちょっぴり負けてるかも)
 本当にティファ、貴女は最高です!!
 全国のティファファンさん達と一緒に、貴女の誕生日を心からお祝いします♪