………。 …………。 ……………。 ………………。 「あ〜〜!!ほんっとうにじれったい!なんなのよ、あの二人は〜〜!!」 髪を掻き毟りながらイライラと声を張り上げる彼女に、俺はそっと溜め息を吐いた。 大切な想いをキミに託す…(前編)『大体ねぇ、ティファよりも美人で気立てが良くて料理上手でまさに『妻の鑑』の女性なんかそうそういやしないわよ!!』 いつだったか、彼女がそう言っていたことを思い出す。 それには俺も同意見だな。 ハッキリ言って、クラウドには勿体な……いやいや、何でもない…。 まぁ、そういう冗談はおいといて…。 実際、『ティファ・ロックハート』という女性は俺達男から見たら、まさに理想の女性! 目の前で眦を上げ、それはそれは恐ろしい顔をしているエアリスが言った様に、めっちゃイイ女!! そんな女性だから、そりゃモテて当たり前だな……うん。 んでもって、彼女を巡って水面下で小さな争いが起こっても……これも仕方ない。 それくらい、本当にティファはイイ女だ。 俺が死んでなかったらなぁ……。 ハッ! いやいや、今のはナシ! 忘れてくれ!! 話がちっとも前に進まねぇ…。 要するに、エアリスが怒る気持ちは丸々俺も賛成、同意見、共感してるわけだ。 …ん?何がかって?? それはなぁ…。 「どうしてクラウドはああなのかしら!!」 「……まったくなぁ…」 「もっとこう…ビシッと決めてくれたら良いのに!」 「……本当になぁ…」 「ティファがちょっと怒ったからって、どうしてあそこまでヘタレになっちゃうわけ!?」 「………いや、あれはちょっとってレベルじゃないと思うが…」 「何か言った!?」 「………いいえ、すいません」 おっそろしい顔で睨みつけてくるエアリスに、たちまちシュンと項垂れて謝罪する俺も、クラウドと同じだよな…。 でもなぁ。 エアリスが怒るのも無理ないな。 ティファがモテるのは、当然クラウドも知ってる。 クラウドがそれをあいつなりに心配してたり、ヤキモチ妬いてたり…っていうのもこっちはちゃんと知ってる。 その度に、届かないと分かっていながらも『クラウド〜!しっかりしろ!!』『クラウド…お前、そこでティファを抱きしめんでどうする……』とエールを送ったり、突っ込んだりしてるわけで…。 本当に、ほとほと呆れてしまうカップルだ。 んでもって、そんなカップルを『草葉の陰からそっと見守ってる(?)』俺達もどうかと思うわけで…。 まぁ、とにもかくにも、俺とエアリスはこうして友人達を度々見守る事こそが、死後の今、俺達に課せられた最後の使命だと勝手に思ってるわけで、時々様子を見ては歯噛みしている。 あん? なんで歯噛みするのかって…? そりゃさ、この二人を見てたら誰だってエアリスみたいに『キィィィッ!!』ってなるぜ…? 俺? ああ、俺はもうアレだね。 この二人の関係に関してはある意味『悟りを開いた』状態だな。 いつまでもお子様のような二人だけど、徐々に『大人』になりつつあるみたいだし、そのうちなるようになるだろうと思ってる。 それに、本人同士は気付いてないみたいだけど、お互いにすっげぇ大事に想いあってるから、まぁ、大丈夫だろう。 でもなぁ…。 自責の念にがんじがらめに囚われてるからな……この二人。 まぁ、それはクラウドとティファだけじゃないんだけど、二人共堅苦しく考え過ぎてるんだよな。 だから、さっさと幸せになろうとしない…。 エアリスが言うには『二人共変に意地っ張りだから、中々進展できないのよね…』だそうだ。 俺も同意見。 さっさと結婚して、お互いがお互いのものだ…って世間に知らしめたら良いのによぉ。 そしたら、『今回みたいに』馬鹿みたいな『要求』を引き受けることなんか無かっただろうに…。 あぁ…ほんっとうに不器用なカップルだよ……。 お兄ちゃんは悲しいね…。 「ったく…クラウドったら!そんなに弱腰でどうするの!?」 俺の隣ではエアリスがまだブツブツ言っている。 俺達の目の前では、すっかりしょぼくれたクラウドがゴソゴソとベッドに潜り込んでるところだった。 「…それにしても…。ティファもあそこまで怒る事ないと思うんだが…」 溜め息を吐きながら先程のティファの様子を思い出す。 もう、完全に無視を決め込んでて『取り付くシマも無い』とはまさにあの事だと思う。 そもそも、今回の二人の喧嘩……と言って良いのかどうか…。(ティファが一方的に怒ってるだけだからなぁ…。) リーブが局長を務めてるWROというデカイ組織の中で、最近『驕った隊員』が急増してるのがそもそもの発端。 ま、この星も落ち着いてきたし、平和が徐々に人々の心に浸透すると余裕も出来るってもんだ。 んでもって、変に自分に自信を持つ人間が出てきても…それは仕方ないんだろうなぁ。 でもよぉ。 「なんで『ティファが景品の手合わせ試合』をしなくちゃいけないわけ!?」 怒りに拳を震わせるエアリスが俺に八つ当たりしてくる。 「痛いって!そんな事言ったってしょうがねえだろう?」 「なんでしょうがないのよ!」 「あの場の雰囲気を考えたら断れないだろうが!」 「ザックス!あんた、いつからそんなに非人道的な男に成り下がったの!?」 「…おいおい……お前、そこまで言うか…?」 あんまりな発言に、流石にムッとする。 それでも、エアリスの方が完全に俺以上に頭にきてるらしくて、俺がムッとしたのをみて更にヒートアップしちまった…。 「本当に女心が分からないわね!自分が景品になっちゃうっていう一大事を、好きな男がホイホイと軽く同意しちゃったのよ!?それを怒らないでいられると思う!?どうなのザックス!!」 「………すいません」 結局、謝る事になるだよなぁ…。 あ〜、俺ってクラウドに似てるんじゃないのか……? ……それって、めっちゃカッコ悪い……。 はぁ……。 「ほんっとうにもう!もしもティファが許してくれなかったらどうするわけ!?本当に一週間後に来てくれなかったら、ものっすごくカッコ悪いわよ!?って言うか、そもそも一週間も口を利いてもらえなくてもクラウドは平気だって言うのかしら!!」 エアリスの言葉に、先程のクラウドの言葉を思い出した。 『俺…もう休むな。一週間後が約束の『手合わせ』の日だから、許してくれるなら……来て欲しい』 あ〜……確かに。 「バカだなぁ…あいつ…。一週間経っても許してもらえないかもしれない…って思ってるんだ……」 「本当にもう、なんてじれったいのかしら!三バカトリオに向かってビシッと決めたあの勢いはどこに行ったの!?」 「……本当になぁ……」 …本当に……。 クラウド、お前という奴は…。 どこまでヘタレてるんだー!! お前が星痕症候群に侵された時もそうだった…。 小さい子供がいるっていうのに、恋人に何も言わないで姿くらませて…。 そうかと思ったら、子供達が攫われた時も助けに行くのをしりごみして…。 んでもって、何とか円満解決したと思ったら、未だにそのヘタレっぷり…!! 「お兄ちゃんは悲しい!!!」 「…いつからクラウドのお兄さんになったのよ…」 「……年齢的にも俺が上だけど、どうもこう、見てると精神的にも兄のような気分になってくるんだよなぁ…」 「あ〜…それ、すっごく分かるわ…」 「…だろ…?」 「ええ……」 「「はぁ……」」 冷静なツッコミを入れてきたエアリスと一緒に盛大な為息を吐く。 すると、まさかその溜め息が聞こえたわけじゃないだろうが、実にタイミングよくクラウドが跳ね起きた。 ちょっとびっくりしたけど、ブツブツなにか言いながら額を押さえている様子から、グルグル頭の中を心配事が駆け巡っているんだと分かる。 「…なに考え込んでるんだ…?」 「さぁ…。もしかしたら、一週間も許してもらえなかったらどうしよう…とか思ってるのかもね…」 「あ〜…あり得るな……」 「ええ……」 「………」 「………」 「「はぁ……」」 目の前で思いつめたようにブツブツ呟くクラウドは、それはそれは不気味な男で、正直笑えるどころの話じゃなくてよぉ…。 ちょっと哀れに思えたな。 「あ……ティファ」 「ん?あ、本当だ…」 エアリスの声に、部屋のドアを見る。 おずおずと顔を覗かせたクラウドの恋人は、バツの悪そうな顔をして恐る恐るベッドに近付いた。 丁度、俺達の目の前を通り過ぎる事になったんだけど、当然ティファは気付いてない。 ……気付いたら怖ぇけどな…。 んでもって、見守る俺達の目の前でモジモジとしながら、クラウドに声をかけようとした。 が…。 クラウドの様子が変なことに気付いて段々不審そうな顔になる。 「ティファ…そこでガツンと言ってやりなさい!」 「…エアリス、お前な…」 「だって、ほんっとうにクラウドったらだらしないんだもん。ティファがお人好し過ぎるのよ。もう、こんなヘタレた男なんか振っちゃったら良いんだわ!」 「……鬼」 「何か言った?」 「いいえ、何も申しておりません」 本当に…。 エアリスはティファ贔屓だ。 ま、俺もクラウドに同情はするけど共感するのはティファの方が多いからなぁ。 大体、愛しい彼女をあっさりと賭けの景品にしちまうんだからさ。 ダメだなぁ。 女の子の扱い方をもっとちゃんとレクチャーしとけば良かったぜ…。 なぁんてことを考えてると、ティファが部屋に入って来たことに全然気付いてなかったクラウドが、彼女に声を掛けられてびっくりして飛び上がり、壁に後頭部を打ち付けた。 ゴンッ!! 「っつぅ〜〜〜〜……!!!!」 「だ、大丈夫…!?」 「「!?」」 おいおい、なんだよそのコントのような動きは!?!? お前、それ美味し過ぎだろ!? わ、悪いけど……。 「ブ……ブッハハハハハハ!!!」 「プ……クックックックック……もう、もうダメ、もうダメ〜〜ッハッハッハ!!」 いやぁ…。 面白過ぎるだろ!? 「アッハッハ……!腹痛ぇ〜!」 「ハハハハハハ、もう、もう見た?今の!?」 「見た見た、ティファもだろ?」 「そうそう!ク、クラウドがびっくりしたのを見てギョッとしてたでしょう!?あ、あの時の…あの時のティファの顔!」 「ックック……!足が確実に一センチは浮いてたな!」 「「アハハハハ!!!」」 あ〜。 死んでからこんなに笑ったの、初めてじゃないか? なんて面白いカップルだ! くぅ〜、こうしてここで俺達が大笑いしてるなんて全然気付いてないのが悔しいぜ! 絶対に恥ずかしがってもっと面白い事になるのになぁ〜! 慌ただしく部屋を出て行ったティファが、洗面器とタオルを手に戻って来た。 その必死な彼女の表情に、俺とエアリスは顔を見合わせるとそっと二人から離れる事にした。 ん? 何でかって? そりゃ、これ以上ここにいるのはお邪魔だろう? ま、勿論二人共俺達がここにいるなんて全然気付いてないんだけど、それでもやっぱり悪いじゃん? これから『恋人の時間』に突入するんだろうから…さ。 「大丈夫…!?こんなにおっきなたんこぶ……」 「……いや……大丈夫…大丈夫……っつ……」 「大丈夫じゃないじゃない!明日、配達の仕事お休みしたら…!?」 「いや……こんな事くらいで仕事をキャンセルなんか出来ないさ…」 「なに言ってるの!頭は打ち所が悪かったら、後々になってとんでもない症状が出てくるのよ!明日の仕事はキャンセルして、ちゃんと病院で検査してもらって!」 「ふふ…。ティファったらお母さんみたいね」 「そうだな」 遠くなる二人の会話に、エアリスと苦笑し合う。 でも…。 「ティファ」 「うひゃ!?」 「「『うひゃ』!?」」 いよいよ遠ざかろうとしてた俺達は、あまりにも素っ頓狂過ぎるティファの声に顔を見合わせた。 なんだよ、その色気の欠片も無い声は! びっくりし過ぎて、慌てて舞い戻った俺達の目の前では…。 しっかりとティファを抱きしめてるクラウドの姿。 彼女を抱きしめてるクラウドは、しっかりと男の顔をしてて…。 「ティファ……本当にさっきはごめん」 「……クラウド……あの…」 「ティファ…。ティファが『手合わせ』に来てくれなかったら力が出ない」 「…クラウド…」 「だから…許してくれないか?」 「………私…、私こそ…」 「ティファに許されなかったら、勝てる試合も絶対に勝てないという『自信』がある」 「……それ…『自信』って言わないんじゃないの…?」 「そうか…?じゃあ、『確信』って言うよ」 「…………うん…」 「私こそ……ごめんね?」 「絶対に勝つから」 「うん!信じてる!」 そのまま…。 二人の影が重なる。 「!?」 「お、お邪魔しました〜!!」 いやいや、これは不可抗力だから! 断じて覗きじゃないから!! なんとなく息切れした気分だ。 動悸も激しい……気分だ。 ……実際は身体があるわけじゃないから息切れも動悸も気のせいなんだけど……。 ま、何はともあれ…。 「うん、よく言ったわ!」 「ま、そうだなぁ…」 「これで、あとは試合に勝ってビシッと決めたらOKよ!」 「そりゃ当然勝つだろう?」 すっかりご機嫌になったエアリスに笑いかけると、満面の笑みを湛えた深緑の色をした瞳が嬉しそうに細められた。 「うん、そりゃ勿論そうなんだけど、ビシッと決めてもらわないと…ね?」 「アイツにはちょっと難しいかもしれないけど…ま、今夜のアイツを見たらそれももしかしたら可能かもな」 「フフ…あ〜、一週間後が楽しみね〜!」 「そうだな。んじゃ、それまでちょっとゆっくりするか…」 「そうね」 そうして二人揃ってゆるゆると星の中に戻っていく。 この感じがまた幸せでさ。 アレだ。 こう、かけがえのない温もりに包み込まれてるって感じがするんだ。 いつか…。 いつの日か、アイツもアイツの家族もここに来る事になるんだけど、出来ればそれがうんと遅いと良いな。 そんな事を考えながら、俺は眠りに付いた。 一週間後を楽しみにしながら……な。 あとがき T・J・シン様のリクエストです♪ 遅くなった上、またもや読みきりならず…。 ご、ごめんなさ〜い!! 続きはもう少々お待ち下さいませ<m(__)m> |