人間顔じゃない、心だ!

 いい年頃を迎えると、周りの誰かしらが物知り顔、したり顔でそう諭すようになってくる。
 それを聞いているものは、誰もが『なるほど』と神妙に頷いたり、『その通り!』とあたかも自分はそういう人を選んで惹かれているのだ、と言わんばかりの顔をする。


 でも…。






建前と本音







「え〜、本当に今、フリー?」
「勿体無い!」
「なんなら俺なんかどう?お買い得だよ〜?」
「いやいや、コイツなんか勿体無い!俺の方が良い男だろ〜?」

 先ほどから店の一角が華やかに賑わいでいる。
 店主であるティファは、ここ最近よく目にするようになった光景にほんのちょっぴり羨ましいものを感じながらいつものように笑顔を絶やさず働いていた。
 デンゼルとマリンは、最初の頃こそ少し勝手が違うそのグループを不思議そうに見ていたものだが、今ではすっかり慣れてしまっている。
 そのグループよりも年配である常連客たちへいつものようにニッコリ笑いながら接客する姿にティファは胸を撫で下ろしていた。
 まだ小さい子供たちにとって、そのグループ客たちの影響を少しばかり心配していたのだ。
 だが…。

「ヤダ〜!」
「アタシなんか全然可愛くないし〜…、むしろこの子の方が〜…」
「もう、褒めても何にも出ませんよ〜?」

 唐突にあがる歓声、笑い声。
 そのたびに店の雰囲気が若干変化するのは、どうしたら良いのだろう?
 もう少し大きな店ならそういう声もあまり気にならないのだろうが、セブンスヘブンは小さい。
 勿論、小さすぎるということはないのだが、ティファと子供たち2人で切り盛りしている程度の大きさでしかない店で、彼らの大きな笑い声は少し遠慮して欲しいものがある。
 仕事で心身ともに疲れている常連客にとって、若いグループ客の歓声は嬉しくないだろう…。
 などと少し心配になっていると…。

「なんか、今日もハズレ日だなぁ…」
「うん、なんかごめんね?」
「いやいや、マリンが謝ることじゃないだろう?」

 マリンと客がそうやり取りしているのが通り過ぎたときに耳に飛び込んできた。

 あぁ、やっぱり…。

 誰でも拒まずがセブンスヘブンのモットーにしていたのだが、そろそろ改めなくてはならないだろうか?
 だが、一体なにをどうやって制限するべきなのかがまた別問題として上がってくる。
 20代の男女グループはお断り?
 それだと、普通にお友達グループとして楽しもうとしてくれている人たちにとって失礼に当たってしまう。
 なら、『合コンお断り』とストレートに言葉にするべき?

「……いくらなんでもねぇ…」

 ハハハ、と自らの考えに失笑する。
 明け透け過ぎだ、いくらなんでも。
 それに、どこまでが『合コン』でどこまでが『お友達グループ』になるのかの境界線が非常に曖昧だ。

「…いっそのこと、会員制にしてみる…?」

 む〜〜…、とティファの眉間にしわが寄る。
 会員制にすればあらかたの問題は解消されるかもしれない。
 しかし、会員制にするほどの店だろうか…セブンスヘブンは。
 なんだか非常に大層なもののような気がしてしまって、やはりその案も取り下げる。

「ティファちゃん、なにさっきから百面相してるんだ?」

 すぐ傍のテーブルに座っていた中年の常連客が怪訝そうな顔をして声をかけるからティファはハッと我に返った。
 思いっきり赤面しながら客の、
「さっきからあっちの兄ちゃんたちが注文って言ってるぜ?」
 の言葉に慌てふためいてそちらに向かう。
 動揺がそっくりそのまま動きに出てしまって思い切りつまづくと、例の悩みのタネであるグループから笑いが上がった。

「ティファがそんなに慌てるところ、見たことないな〜」
「お〜、マジマジ!俺、超ラッキー!」
「あぁ、本当にめっちゃ貴重なシーン見たって感じ〜」

 同年代と言うこともあり、彼らはティファのことを最初から呼び捨てにしている。
 それが、セブンスヘブンの常連客と看板息子&娘の反感を買っていることに気づいていない…。

「お待たせしました、ご注文は」

 恥ずかしくて真っ赤な顔をのままなんとか営業モードに切り替えようとするティファに、青年たちはニヤニヤ笑う。
 対して、青年たちの向かい側の席に座っている女性たちからは引き攣った笑みが向けられた。

「私、『チョレギサラダ』お願いしま〜す」
「あ、じゃあ私は『シーザーサラダ』にする〜」
「ん〜…私はもうお腹いっぱいかなぁ」

 気を取り直すかのように注文をする女性陣。
 その間、青年たちの視線はティファに集中。

「なぁ、今度の休みっていつ?」
「たまには俺たちと一緒に遊びに行かねぇ?」
「あ、彼氏のことを気にしてるんなら大丈夫、女の子もちゃんといるからさ」
「ね、みんなも良いよね?」

 次々かけられる声は注文とは全く違うことばかり。
 女性陣へおざなりに声をかけてはいるが、彼女たちの機嫌を取ることは出来ず、発せられる雰囲気が刺々しくなっていく。
 ティファは内心、非常に困惑していたものの、表面上は完璧に店主として振舞った。
 すなわち。

「ごめんなさい。前から言っているようにお仕事のお休みは不定期なんです。なるべくお店は開けるようにしてるんですけど、即戦力になってくれているデンゼルとマリンのためにお休みを取ったりしてるので。それに、お休みの日はなるべく出来るだけ家族と過ごすって決めてるので、お誘いは嬉しいんですけど…」

 にっこり笑って「お誘いよりも今はご注文を決めて下さる方がうんと嬉しいんですけど〜」と止めを刺す。
 お調子者の青年たちがメニューに噛り付いている間に、女性陣ににっこり微笑みかけて注文されたものを繰り返し、ちゃんと注文を聞いていたことをアピール。
 ついでに、満腹だと言っていた女性には熱いお茶を申し出ることも忘れない。
 刺々していた雰囲気がティファからスーッと逸れて青年たちにのみ向けられていく。

 胸の中で、
(この人たち、毎回毎回、何しに来てるのかしら…。『彼女が欲しい!』って言ってたじゃない…。店主の私に声かけるよりも彼女たちに話しかけたらいいのに…)
 と呟きながら一礼してカウンターに戻ったのだった…。


 彼女が欲しい!


 青年たちの誰かがそう言っていた。
 最初、彼らは男だけで飲みに来ていた。
 あまりにストレートな一言で、大きな声だったから思わず振り向いた。
 見た目、特に不細工でもない一般的な青年たちが着いているテーブルに、ティファはちょっぴり笑いを誘われた。
 バカにしたのではなく、なんとなく素直なその一言が可愛いと感じたのだ。

(クラウドだったらなんて言うかしらね?)

 仕事で忙しく働いている彼を思ってほんわかと胸が温かくなる。
 勿論、クラウドが外で『彼女が欲しい』とか言っていたら大ショックだ。
 じゃあ自分という存在は一体なんなんだ!?と激しく詰ってしまうだろう。
 いや、もしかしたら詰ることも出来ないほどのショックを受けてしまうかもしれない。
 それこそ、クラウドではないが家出してしまうかも…。

 などなど、思考が青年グループからクラウドに流れてしまったティファの耳に、
「お前、彼女どうしたんだよ…?」
 呆れたような別の青年の声が届いた。
「あ〜、アイツなぁ、別れた」
「はぁ?またかよお前…」
「だ〜ってよぉ、なんつうか、こう、うざったくなってさぁ。『メールの返信が遅い』とか『折角料理したのにもう少しなんか言って欲しい』とかさあ。俺だって仕事があるからメールなんてしょっちゅう返せるわけないし、料理も正直俺の口にはなぁ…。味覚が違うんだからしょうがないっつうの。正直に『マズイ』なんて言えないだろ?コメントしないことがその答えだって分かれよなぁって思うわけだよ」

 …。
 ……そりゃ、確かに彼の言う通りかもね…。

 と、思わず手を動かしながら聞き耳を立てていたティファは同意してしまった。
 思えばそれから1週間経った頃からだ、彼らがセブンスヘブンを『合コン会場』にしてしまったのは。
 今では『花の金曜日』には毎週、顔ぶれの違う女性数名を伴って店に来るようになってしまっている。

 …よく、そんなに毎回違う女性たちを誘えるだけの『ツテ』があるものだ…。

 呆れながらもその一方で、同年代の人が新しい恋や出会いに前向き且つ楽しみながら向かっている姿が羨ましいと思ってしまう…。
 そして、そう感じてしまう浅ましい自分に辟易するのだ。
 辟易しながらも、どうしても想像することをやめられない。

 もしも。
 もしも、今、クラウドと一緒に住んでなくて、デンゼルとマリンはバレットが預かっていて、実質上独り暮らしだとしたら、自分にもこういう『同年代と楽しくちょっぴりドキドキ』な時間があったのだろうか。
 勿論、デンゼルとマリンを今の生活から追いやってしまうなど考られないことだけれど、ほんのちょっぴり想像するくらいは許して欲しい。
 更にティファのその想像には、自分が新しい出会いを求めて『合コン』に参加すると、決まってクラウドが不機嫌な顔をして店の入り口で待ち伏せをしている、という妄想がおまけでついてきていたりする。
 
 ようするに、ティファはクラウド以外の男性を求めているというわけではなく、同年代の男女が楽しそうに笑っているその輪が羨ましいというだけの話なのだ。
 オプションで、クラウドが嫉妬らしきものを見せてくれたら大満足!というわけなのだがそのことに本人はこれっぽっちも気づいていない。
 いやそうではなく、そのことに気づいていながらも恥ずかしすぎてちゃんとした思考となって頭の中で固まってくれないと言ったほうが正しいかもしれない…。


「ティファ、クラウドはいつ帰ってくるんだ?」

 女性陣が注文したサラダ類を運ぶと楽しげに盛り上がっていたのだが、青年の1人が馴れ馴れしく声をかけてきた。
 馴れ馴れしい!と、思わせない自然な呼称にティファもまた、自然体で答える。

「今夜は午前様だって言ってたわ。最近こういうパターンが多くて…」

 最近の疲れきった顔を思い出すと胸が不安でざわつく。
 その感情をそっくりそのまま顔に出して返すと、女性陣からは感嘆のため息、男性陣からは少し白けたような雰囲気が流れた。
 同性にとって、ティファのように想える相手がいることは強い憧れだ。
 そして異性にとっては、ティファのような『イイ女』にそこまで想われる男の存在は嫌味でしかない。

「いいなぁ、ティファさん。そこまで想える人と一緒に暮らせて〜」
「羨ましいよねぇ」

 手放しの言葉にティファの頬が薄っすら染まる。
 そして照れ笑いを浮かべながら足早にそのテーブルを離れると、背中からは女性たちの「「恋する乙女って感じで可愛いよねぇ〜」」という笑い声が上がった。

(は、恥ずかしい〜!)

 恥ずかしすぎて居た堪れない。
 しかし、イヤな恥ずかしさではなく、胸をくすぐる恥ずかしさなのがまたなんとも…。

「ティファ、さっきから携帯鳴ってたぞ?」

 カウンターに戻り、赤い顔をして溜まっていた注文の品を作り始めたティファに、デンゼルがにんまり笑いながら携帯を掲げて見せた。
 普段なら見せない『にんまり笑顔』にたった今、女性たちに羨ましがられた恥ずかしさがしっかり残っているティファは、ドギマギする。

「クラウド、なんの用事だろうなぁ〜?」
「え!?」

 に〜んまり♪

 デンゼルのにんまり笑顔が濃くなる。
 慌ててパカリ、と開いてみると、着信アリの表示。
 着信履歴を見ると…。

 心臓がバックン!と大きく跳ねた。

 クラウドの文字が異様にでかく見えるのは気のせいだろう。
 視線を感じて下を見ると、デンゼルがニヤニヤしながら見上げていた。

「な、なぁにデンゼル…?」
「ううん、別に〜」

 明らかにティファの反応を見て楽しんでいる。
 そしてなにか言われる前にさっさと料理と酒を盆に乗せて仕事に戻った小さい背中を、ぐぅの音も出ないまま見送ってからティファはコソコソと居住区へ続く階段下へ行った。
 改めて携帯をパカリと開け、慣れた手つきで操作する。
 数回の呼び出し音の後、留守番電話に切り替わってしまいガッカリ肩を落とした。
 メッセージに電話に出れなかったことを詫び、なにかあったのか、また連絡できたらして欲しいということを残す。
 そうして店内に戻ってみて、ティファは目を丸くした。


「クラウド!?」


 ドアをくぐって帰宅したばかりのクラウドの姿に一瞬、自分の妄想がとうとうここまで酷くなったのか、と驚愕したがそんなことはありえない。

「ただいま、ティファ」
「おかえりなさい、ってでもどうして?帰るの遅くなるって言ってたのに」

 悪戯が成功したことを喜ぶ子供のような笑顔を見せ、仕事が思いのほか早く片付いたことを簡潔に話した。

「折角だから一言だけでも早く帰れるって言おうと思って電話したんだけど」
「あ、ごめんね。ちょっと出れなくて」
「いや、いい。仕事中だってことくらい分かってたから、出れないかもしれないことくらい想定内。それに、今電話してくれただろ?」
「あ〜、うん、たった今ね。って、分かってたの?」

 分かってたなら出てくれたら良かったのに。
 そう言外に匂わせ、少し口を尖らせたティファにクラウドは笑った。

「ドアに着いたところだったからな、出なくてもすぐ会えるだろ?」

 そりゃそうだ。
 そりゃそうなんだが、ちょっぴり悔しいような、恥ずかしいような…。
 だったらそもそも電話しなかったら良かったのに…。
 そう言ったら…。

「ちょっとビックリさせてみたかったんだ」

 いつもはほとんど表情を変えないくせにちょっぴり目を細められて微笑まれたら…。
 顔を赤くするしかないではないか。

「も、もう!そんなこと良いから早く汗流してきて」

 自分はこんなに恥ずかしいのに、何故か余裕すら感じさせるクラウドの背中を押して2階へ追いたて、ティファは全身で息を吐き出した。
 そんなティファに子供たちはニンマリ顔になる。
 そしてチラッと小さな目は店の一角に向けられ、更にニンマリと満足そうにほころんだ。

「本当に2人ともたいしたもんだ…」

 デンゼルとマリンに、客の1人が苦笑しながらジョッキを呷った。
 ティファが少し冷静になれたらいつにないクラウドの様子を疑問に思えたはずだし、何かを画策しているような子供たちの様子に気づけただろうに…。
 さらにさらに、一番やかしましかったテーブルがある意味静かに、ある意味もっと盛り上がったことに気づいただろうに…。

「やっぱりカッコイイよねぇ…」
「本当。すっごい素敵よねぇ…」
「いいなぁティファさん、羨ましい」
「て言うか、今日クラウドさん、帰ってくるの遅いって言ってなかった?」
「「「 …言ってたよね? 」」」

 先ほど盛り上がっていた時とは打って変わった女性たちの会話はとても落ち着いていたのだが、それでも子供たちの耳にはしっかり届いていた。
 気を取り直して仕事に戻ったティファの手伝いをしながら、さりげなく合コンテーブルへ寄っていったり聞き耳を立てたり…。

「あ〜、やっぱアレじゃない?」
「…そうよねぇ」

 妙に得心したような女性たちに、
「おっと、料理が冷めちまう〜」
「そうそう、ほら、みんな食べようぜ〜」
「あ、さっきから気になってたんだけど、そのネックレス、超似合ってる〜」
 我に返った…というよりも、本来の目的を思い出したらしい男性陣がやや矢継ぎ早に声をかけた。
 空回りの気配が濃厚だ。
 クラウドが髪から雫を垂らしつつ店内に戻ってきて更にその空気は濃厚になった。
 女性たちの視線は、『水も滴るイイ男』に釘付けなのだから。
 男性陣がムッとしながら最後の料理を胃袋に詰め込む間も、彼女たちは仲睦まじい2人へ羨望の眼差しを向けて盛り上がっていた。

「良いわよねぇ、美男美女カップル」
「うん、想い想われてってのが見てて良く分かるし」
「あ〜、良いなぁ、アタシもあんな風に想い、想われる男性(ひと)に出会いたいな〜」
「人間、顔じゃなくて中身だ〜って言うけど、クラウドさんは顔も中身も素敵過ぎよね!」
「あ、それを言うならティファさんだって〜。アタシ、ティファさんじゃなかったら絶対にクラウドさんのこと、諦めなかったっていうか、納得出来なかったし」
「言えてる〜!あ〜あ、私たちにはこんな素敵な人は現れないか〜」
「大丈夫よ、私たちにだってきっと『この人』って人が絶対に現れるから」

「「「「 中身も大事だけど見た目も素敵な人はクラウドさん以外にも絶対いるわよね! 」」」」

 隣のテーブルに着いていた年配の夫婦が堪えきれずに噴き出したのだ。


 *


「ねえ、クラウド?」
「ん?」

 早めに店を閉め、子供たちはいつになく満足そうな様子で子供部屋へ上がっていった後…。
 2人きりでコーヒータイムを楽しんでいたとき、ふとティファは疑問に感じていたことを思い出した。

「若い男女グループがいたの、覚えてる?」
「あぁ」
「女の人たちが『ナイス牽制』とか『子供たちとのファインプレー、素敵でした』って言ってたみたいだけどなんのこと?」
「…さぁ…」
「最後に女の人がクラウドにヒソヒソ話ししたわよね、なんて言ってたの?」
「…なんのことだか分からないな」

 カップに口をつけて表情を隠したクラウドに、ティファがムッと唇を尖らせる。

「なによぉ、ウソばっかり!教えてくれてもいいじゃない」
「さぁ、なんのことだか」
「も〜、なんで教えてくれないわけ〜?」
「分からないものは教えられないだろ?」
「ウソ!本当に分からないって言うなら、ちゃんと私の目を見て言ってみて!」

 すっかり不貞腐れ、意地になって食い下がったティファは、身を乗り出して顔を寄せると睨みつけた。
 いまだに口につけているカップを取り上げようとする。

「おい、危ないだろ、こぼれる!」
「もう、じゃあカップ置いてこっち見て!」

 む〜〜!と、拗ねて食い下がるから頬がやや赤く染まっている。
 そんな子供っぽい姿にクラウドの胸が温かくなった。
 こんな子供っぽい姿をティファは他の誰にも見せない。
 頬を緩めてカップを置くと、そのままティファの後頭部に手を回して引き寄せた。
 目を丸くしたティファに口付けたまま腰を抱き寄せ、しっかり腕の中に閉じ込める。
 ビクッと震えて逃げようとするが、ギュッと抱きしめたまま放さない意志を身体で伝えると、ゆっくりゆっくり、ティファの身体から力が抜けていく。
 やがて、すっかりクラウドに身体を預けたティファが首に緩やかに腕を回した。


『ねぇ、ティファさんがもしも私たちみたいに見た目平凡な女の子だったとしても、好きになってました?』
『さぁ…、『全部ひっくるめてティファだから当たり前だ』って言いたいけどどうだろう、今と違うティファの顔とかちょっと想像出来ないから…。でも、やっぱり惹かれてたと思う』
『それって、ティファさんは見た目だけじゃないってことですよね?』
『そんな分かりきったこと聞くわけか?』
『ふふ、ごめんなさい。あ〜あ、やっぱりイイなぁ、羨ましい〜。建前と本音が一致してるなんて超理想〜♪』


「もぉ〜〜〜……バカ〜……」

 唇を離すとグッタリと脱力し、ティファが睨みつけた。
 しかし、真っ赤な顔、潤んだ瞳で睨まれてもちっとも怖くない。
 クラウドもほんのり頬を赤くして微笑んだ。

「頼むから無防備なのは俺の前だけにしてくれよな」
「ん?」
「はぁ…、本当に心配だ」
「もう〜、わけ分かんない!」
「まぁ良い。ティファはやっぱりこのままで…な」

 おまけのように軽くキスを落とすと悔しそうな表情が一変、びっくりした顔になる。
 それが可愛くて愛しくて、クラウドは脱力したままのティファを抱き上げた。
 恥ずかしそうにしがみついたティファを抱えたままゆっくりと2階へ上がる。

「あ、そうだティファ」
「え、なに?」
「もしもティファが全然違う姿形をしてても、やっぱり『ティファはティファ』だから」
「へ?」

 キョトン、と首を傾げた腕の中の愛しい人にとろけるような笑みを浮かべ、クラウドは寝室のドアをくぐった。


 超理想!!と、羨ましがられる2人の幸せな時間はまだまだこれから。




 あとがき

 え〜…何が書きたかったのか…と言いますと。

 本当は、ティファはもう少し『合コン』に興味を持って…という設定だったんですね。
 でも、書いてるうちに『合コンにこれ以上興味持ったらクラウド、出番ないじゃん』って気づきましてね(汗)
 拙宅、これでも『クラティサイト』なのに、このままいったら『クラティサイト』にあるまじき副産物が生まれてしまいそうになりまして却下!
 えぇ、慌てて却下ですよ!!
 というわけで、またもやどこかで似たような設定となりました…((((_ _|||))))
 はぁ、撃沈ですよ…(遠い目)

 でも、最後のラブラブな2人だけはどうしても書きたかったのでこのままアプというとんでもない管理人でごめんなさい(苦笑)

 それにしても、クラウドもティファも、超理想のカップルですよねぇ〜。
 羨ましすぎるよぉ〜゜+。(*´ ▽`)。+゜(← 妄想が止まらない)

 最後までお付き合い下さってありがとうございました〜♪