共に過ごし、共に歩みて…共に生涯を全うせんことを…。







「クラウド、忘れ物はない?」
「あぁ、大丈夫だ」

 いつもの挨拶が、ある一軒の家の前で交わされている。
 それは、どの家庭でも見られる普通の『家族』の会話だ。
 巨大なバイクに跨った青年を、微かな微笑を湛えて見つめる女性と、両脇にはまだ幼い少年と少女。
 顔立ちから察するに、血の繋がりはないと判断出来る。
 だが、そんなものは関係ないほど、この四人には『家族の輪』に包まれている雰囲気がある。
 それは、『血よりも濃いもの』が確かに存在するのだと証している様だ。
 青年は口元に微かな笑みを浮かべているか…いないか、という微妙なラインの表情を崩さずに見送ってくれている『家族』に視線を注いでいる。
 何も知らない人間が見たら…、いや、彼を良く知る仲間達が見ても、
『もう少し愛想よく出来ないもんか…?』
 と思うことは間違いない。
 だが、三人は違う。
 青年が温かく見つめ返してくれるというだけで充分、青年の気持ちが伝わってくる。

「クラウド、気をつけてね」
「早く帰ってきてくれよ?」
「ああ、ちゃんと今日中には帰る」

 子供達のキラキラした顔に、これまた無表情で返し、言葉も素っ気無い。
 だが、それで充分なのだ。


「じゃ、行って来る」
「「「 行ってらっしゃーい! 」」」


 ゴーグルを装着し、青年は家族の明るい声に送り出された。


 大型バイクは改良に改良を重ね、世界に一つしかない青年のためだけのものとなっている。
 そのスピードと重圧感は凄まじく、青年の姿をあっという間に豆粒にして……消えた。

「相変わらずのスピード凶だねぇ…」

 呆れたような声で少女が評する。
 大人びたその言葉に、
「クラウド、やっぱりめっちゃカッコイイ!俺も将来絶対にクラウドみたいになるんだ!」
 応えているのか、それとも全く聞いていないのか、少年がウキウキとした声で、若干ずれたことを口にする。

 女性はそんな子供達の頭に軽くポンポン、と手を置くと、
「じゃ、後片付けしましょうか」
「「 は〜い 」」
 可愛い天使と共に店に…、我が家に入っていった。

 その後姿を、近所の噂好きな主婦や、先ほど仕事に出発した青年に密かに心を寄せている人、また、女性に惹かれている人達が『ほぉ〜…』という、なんとも満足したような…、あるいはガッカリしたような、様々な感情を込めて溜め息を吐き、自分達のするべき事へと戻って行った。


 *


 青年は星の隅々まで、バイクで走れるところはどこへでも駆けていく。
 それが彼の仕事だ。
 大切な想いのこもった荷物を、大切な相手に運ぶのが彼の務め。
 未だにモンスターの脅威に曝されている荒野を渡る手段は、一般人に普及しておらず、クラウドのように腕の立つ人間は重宝されている。
 乗り物酔いをしやすい青年だが、愛車である巨大バイクは別だった。
 恐らく、一番一体感を感じやすい乗り物だからだろう。
 己の体の一部のように巨大なバイクを操る姿は、老若男女を問わずに感嘆させ、魅了する。
 中にはライバル心を燃やす者も少なくない。
 だが、肝心の青年はそんな闘争心など露ほども感じる事無く(あるいは、あえて無視を決め込んで)日々、己の仕事を全うすべく心血を注ぐ日々。
 辛くはない。
 むしろ、楽しくすらある。

 …仲間や他人達は、とてもじゃないが『楽しそう』とは思えないだろうが…。

 だって…、頑張って働くことで、家族を守れるのだから。
 守らなくてはならない家族でもあり、自分を守ってくれる大切な宝である『家族』。
 その家族を守るためならなんだってする。
 守っていく手段、しなくてはならないこと等は沢山あるだろう。
 その一つがこうして配達の仕事を実直にこなすことで叶うのならば、簡単なものだ。
 むしろ、まだ分からない『しなくてはならないこと』の方が正直怖い。
 これから沢山立ちはだかるであろう障害を考えると、気分が落ち込みそうになったこともある。
 だが、現在(いま)はもう考えないようになっていた。

『その時はその時…でしょ?』

 明るく笑ってくれる人が一番傍にいてくれるのだから。
 なら、男の自分がウジウジしていてどうする?
 いや…、むしろ男だからウジウジ考えるのかもしれない。
 女性は男と違い、新しい命をまさに命がけで産み落とすのだから。

 そう考えるとつくづく女性という存在…、とりわけ、愛しい人の存在が大きく感じられる。

 いつか…。

 いつの日か、彼女もその腕に自身が産み落とした命を抱くことになるのだろうか…?


「 ! 」


 その考えに至った瞬間、クラウドはハンドル操作を誤りかけ、慌てて体勢を立て直した。
 ガラにもなく汗が噴き出す。
 ちょっと小高い丘陵だと認識してぼんやり走っていたのだが、実際上りきってみたら、その部分でブツリ…と、途切れていたのだ。
 いつもなら、こんなにギリギリまで気づくことが出来ないことなどない…。
 助かったから良かったものの、これでもしも事故でも起こしたら…。

「……絶対に質問攻めだな…」

 この程度なら落ちても死なない。
 だが、配達の依頼品は確実に『死ぬ』だろう。
 そうなったらそうなった時なのだが…。
 家族が『この程度の道のりを見抜けずに商品をダメにした』ことを、問いただすのは必至。
 その時、自分はその質問攻撃をかわせるだろうか?

 自問自答し、青年は即答した。


 無理だ。


 家族関係の中で、彼の立場が特段低いわけではない。
 むしろ、とても大切な大黒柱として慕われ、大切にされている。
 愛されている。

 だが、こと『口』を使った攻撃では、彼の立場はあっという間に転落する。
 あの子供達の不安げな瞳、八の字に寄った眉。
 彼女の『私達には……話せないの…?』と、悲しげに伏せられた瞳。

 それを想像するだけで、『…すまない、実は…』という具合に、あっさり彼の黙秘権は剥奪されるだろう。
 そして、たった今、想像してしまったことを口にしなくてはならなくなる。

 …考えただけでも恐ろしい。

 身体中から水分が汗となって噴き出すほどの羞恥心に見舞われることは確実だ。
 本当に…事故にならなくて良かった…。

 青年は、次々と脳内で勝手にシミュレーションされた、近未来図を追い払うように頭を数回振ると、全身で溜め息を吐いた。
 それは、事故を起こさなくて済んだことと、たった今想像してしまった信じられないくらい恥ずかしいことを白状しなくても済んだという安堵の溜め息でもあり、あと少しで大切な荷物を『死亡』させるところだった、という肝が冷えた心から出た溜め息でもあった。

 眼下に広がる雄大なる自然を見つめ、クラウドは深呼吸をすると巨大バイクを軽々と方向転換させ、丘陵を周りこむようにして先を急いだ。


 そんな、ちょっぴり後ろ暗い…と言うか、なんと言うか…。
 気恥ずかしい思いをピッチリと心の奥底にしまいこみ、配達を無事に終えたクラウドは、配達先の青年から受取書にサインをもらいつつ、ふと何かに気づいてゆっくり振り向いた。

 クラウドの斜め後ろには、出来たばかりのこの小さな町に相応しい、ちょっとした広場があった。
 可愛い噴水の周りには幾つかベンチが周りを囲むようにして設置されており、幼い子供を連れた母親達が楽しげにおしゃべりをしたり、子供達が噴水から跳ねる水を熱心に、そして楽しげに見つめている姿がある。
 更には、その幼子の姿に目を細めている老人達が、ちょっと離れたベンチに腰掛けながらのんびりと陽の光を浴びていた。

 のどかな風景だ。
 しかし、別に珍しくはない風景。
 クラウドの意識に引っかかったのは、そののどかな風景ではなく…。


 純白のドレスを身に纏った女性と、タキシードに身を包み、最愛の女性と腕を組んでいる男性。
 そして、生まれたての夫婦を祝うべく、取り囲んでいる大勢の客達。

 噴水広場に面した場所にある小さな教会から、まさに今、新郎新婦が沢山の客達に祝われるために出てきたのだ。

「あ〜、彼女、今日が結婚式なんだよね…」

 ふいに依頼先の青年がクラウドの意識を引き戻した。
 彼はとっくにサインを書き終えている。
 クラウドは若干慌てながら(それでも、顔には慌てているのが出ないのだが…)それを受け取った。
 その間、青年の顔は教会に向けられている。
 青年の横顔が何だか寂しそうに翳っていることに、クラウドは気づいた。
 そして悟る。
 あの花嫁をこの青年は憎からず想っていたのだ…と。
 そして分かった。
 彼が自分以外の男性に嫁ぐ彼女の幸せを願っているのだ…と。
 それが、どれほどこの青年にとって辛い選択だったのかは分からない。
 もしも、目の前の青年の立場が自分だとして、果たしてここまで落ち着いて愛しい人の晴れ舞台を第三者として見送れるだろうか?

 いや、無理だろう。

 彼女が心底、自分ではなく、他の男を求め、その相手も彼女に釣り合うだけのものを持っていたとしても、諦められたかどうか、甚だ怪しい。
 仮に、彼女に釣り合う素晴らしいものを持っていたとしても、それらを一つ一つ、消去法で消して最終的には受け入れられないだろう…。

 いや…受け入れようと悩んで、悩んで……。

 それこそ、血反吐を吐くような思いをして、必死になって彼女から目を……、心を……、魂を……、逸らせようと努力する。
 努力しようとして……、挫折する可能性が高いな…と、自問自答して、そんな自分に内心で苦笑する。


「ま、アイツは良い奴だから、彼女を泣かせるようなことはしないと思うんだけどね」


 依頼先の青年の言葉が、再びクラウドを現実に引き戻した。
 青年の言葉にはほんの少しのほろ苦さと、彼女の心を見事勝ち得た新郎への若干の皮肉、そして、彼女をまだ愛していることを裏付けるような色合いを持っていた。

『彼女が泣くようなことになったら、その時は躊躇わずに奪ってやる』

 言外にそう言っていることをクラウドは悟りつつ、依頼先の青年に軽く頭を下げてその場を辞した…。


 そのまま愛車に向かいながらも視線は新郎新婦に引き寄せられ、ゆるゆるとした歩調が完全に止まったのは、愛車のハンドルに手を置いてからだった。

 本当に幸せそうに笑っている新婦は、はっきり言って十人並みの容姿をしている。
 だが、彼女は本当に美しく見えた。 
 それは、内面から溢れ出ている幸せなオーラが彼女を美しく彩っているのだろう…と、ガラにもなく評してみる。
 新郎も、十人並み。
 年の割りには薄い頭、出たお腹。
 だがそんなもの、晴れの門出を迎えた二人には全く関係なかった。

 本当に……、美しい光景。

 幸せが満ち満ちており、将来への希望と、互いへの愛情で溢れている。
 それだけでもう充分だった。
 招待客達も心から新郎新婦を祝っているのが一目で分かる。


「健やかなる時も……、病める時も……か……」


『誓いの言葉』を知らず知らずの内に口にする。
 無骨なクラウドでも、そのくらいのことは知っていた。

 そう。

 まさに、『健やかなる時も、病める時も、富んでいる時も、貧しき時も、生涯、愛し抜くことを誓いますか?』と、問われることなのだ、人生の伴侶を皆に認めてもらい、祝福を頂くという事は。
 それがいかに重く、奥深い言葉であるか、一年前の自分と比べたら少しは今の方が分かっているとクラウドは思った。
 何しろ、数ヶ月前には『病んでいる時』に逃げ出してしまったのだから…。
 そして、『病んでいる時』に、彼女は手を差し伸べてくれた…。
 彼女がどんな思いでそれまで自分を待ち、思い続けていてくれたのか…。
 その気持ちに気付く事が出来たのは、愚かにも家に戻って数週間経ってからだ。

 自分が家を出ている間に彼女に言い寄っていた男達と店で鉢合わせをした時。
 または、配達の仕事先や帰り道で待ち伏せされていた時。
 直接、呼び出された時…。

 その局面に立たされて、初めて自分がいかに愚かなことをしたのかを思い知った。
 そして、感謝した。
 自分を想い続けてくれていた彼女に。
 自分が帰れる『家』を守り続けてくれた彼女に。

 自分を待ち伏せていた……、あるいは直接呼びつけて引導を渡そうとした青年(中には壮年の紳士もいたが…)達から聞かされた自分が知らない『家出をしていた頃のティファ』を聞かされた時の数々の衝撃は生涯忘れられない。

 ― 『どんなに俺が、子供達もひっくるめて守ってやると言っても、彼女は頑として首を縦には振らなかった!』 ―

 ― 『自分にはクラウドしかいらない、そうキッパリ言われちまったんだぜ、俺ぁよ…。その辺のところ、あんた、ちゃんと分かってんのか!?』 ―

 ― 『僕の方が貴方よりも彼女を愛しているのに、彼女は僕の心に最後まで応えてくれなかった…』 ―


 ― 『あんたさえ…、あんたさえ星痕症候群で死んでたら、ティファはあんたの呪縛から永遠に解放されて自由になれたのに、なんで生き残ったんだ!!』 ―



 と、まぁ、このような具合に、散々なことを言われたものだ…。
 言われても仕方ないと、理解している。
 彼らの嘆きは立場を変えて客観的に見てみたら、純粋に『報われない愛』に苦しんでいる一人の人間だ。
 クラウド自身、彼らの立場に立って考えてみて、正直ティファの正気を疑ってしまわざるを得ない。

 何しろ、自分勝手に家族を捨てて一人で『孤独のヒーロー』を気取っている愚かな男のことを一途に思っているなど、あの美しい彼女には似合わない…。

 似合わないのだが…。

 同時に、とても彼女らしい、と苦笑してしまうのも事実。
 相反する気持ちに陥りながら、それでもやっぱりクラウドは『ティファには似合わない人生の選択ではあるが、彼女らしい』と思ってしまう。
 ティファは『頑固者』だから。

『可愛い頑固者』。

 その『頑固』さで、辛い時期を乗り越えこうして『幸せだよ』と笑ってくれる彼女を、心から愛しいと思う。


 パンパンパーン!


 ハッ…と、顔を上げると、新郎と新婦が車に乗り込んで笑顔で手を振りながら、招待客達からクラッカーとライスシャワーの祝福を受けていた。
 これから新婚旅行にでも行くのか…、それとも披露宴会場に向かうのか…。

 最高潮の幸せを沢山詰め込んだ車がゆっくりと走り出す。
 クラウドはそれを最後まで見送らず、依頼先の青年へと顔を戻した。
 しかし、青年はもう家の中に引っ込んでいた。
 恐らく、窓からそっと、彼女の晴れ姿を最後まで見つめているのだろう…。

 ズキリ…、と、胸が痛む。

 だが、それを無視するようにクラウドは今度こそ、愛車に跨りエンジンを噴かして走り出した。
 新郎新婦とは違う道を…。
 そして、胸に走った先ほどの痛みは、道を走れば走るほど段々と軽く翳んでいき、遂には『家族の元に帰れる』という歓びが勝った。


「今日は…ちゃんと店を手伝ってやれそうだな…」


 クラウドの口元に笑みが浮かぶ。

『もう…クラウド、疲れてるでしょ?お手伝いはいらないから、ゆっくりしててって言ってるのに…』

 困ったような…、それでもって瞳の奥底では嬉しそうに笑っている愛しい人の顔が脳裏に浮かぶ。
 その声が耳に聞えてくる。


 ティファが、先ほどの新婦と同じ姿で目の前に現れたら…。
 いや、自分の隣に立ってくれると、承諾してくれたら、それこそ……。


「……事故らないようにしないとな…」


 今朝の事がある。
 ティファとの輝かしい人生最初で最後の晴れ舞台を想像しそうになり、クラウドは幸せ一杯になりながら愛車のスピードを上げた。

 胸の痛みはすっかり消えていた…。


 *


「でね、すっごく可愛かったんだー!」
「そうそう、もう、フニャフニャで温かくて、良い匂いがして〜!」
「「 すっごくすっごく、可愛かったー!! 」」

 子供達が大興奮してしゃべるのを、ティファは柔らかな微笑みを浮かべながら、テキパキと手を動かした。
 店を開店するための準備をしているのだ。
 いつもなら、子供達も大人顔負けの手際の良さでティファを手伝うのだが、二人はそれどころではなかった。
 つい先日、友達に妹が産まれたのだ。
 その産まれたばかりの妹に会いに行った二人は、その感動を全身で表していた。

「すっごくすっごく可愛かったの、本当に!」
「俺、ずーっとアイツの事、『なに兄バカになってんだか…』って思ってたんだけど、ほんっとうに可愛かったんだー!ビックリした!!」
「手なんかとってもちっちゃくてね!」
「目もちっちゃいんだ!んでもって、足も全部ちっちゃいんだ!」
「時々目を開けて笑ってくれるの!」
「その笑い声が、これがまた可愛いんだよ!」

 ティファは笑いながら、ふと思った。

 もしもこの先。
 自分にも赤ちゃんを授かったら、子供達は喜んでくれるだろうか……と。
 そして、うっかりそのことを想像して赤くなる。
 赤ちゃんを授かる…ということは、当然『父親』がいるわけだ。
 その父親は…勿論『彼』以外は考えられないのだが、今のところ自分達二人の関係は『恋人』。
『夫婦』同然の生活をしてはいるが、まだ彼からも、自分からも『将来』の話を切り出してはいない…。
 なんとなく…、そう、なんとなく…話しにくいのだ。
 クラウドと『恋人』としての生活が始まると同時に、血の繋がらない幼い子供達と『家族』になってしまったのが、大きな原因かもしれない…。
 いや、子供達を言い訳にしてしまうのはいささか卑怯過ぎる。
 だがしかし、それも事実の一つであることは否めない。

 大人なのだから、もっと自分達がしっかりとけじめをつけなくては…。

 そうは思うのだが、今の生活で充分過ぎる幸せを感じていたので、特に急いでけじめをつける…という気持ちにはなれなかった。
 だが、デンゼルとマリンが目を輝かせて語る姿を見て、フッ…とティファは自分とクラウドの将来を思った。
 このままダラダラと今の生活を続けて良いものか…と。
 自分はどうしたいのだろう?
 このまま、デンゼルとマリンという二人の子供とクラウドの四人家族でずっと生きていく。
 それだけで良いのか?
 無論、デンゼルとマリンの二人では不満というのではない。
 そうではなくて…。


「ティファ、私、妹が欲しいな!」
「俺、弟が良い!」


 ふいに上がった子供達の言葉。
 ティファの意識が子供達から離れていたのはほんの少しの間だけ。
 それなのに、いきなり過ぎるこの言葉にティファはビックリを通り越してギョッとした。

「え!?」

 素っ頓狂な声を上げたティファを尻目に、デンゼルとマリンはにらみ合っている。

「なんで弟なのよ!」「なんで妹なんだよ!」

 同時に声を張り上げる。
 一瞬の間。

「どっちでも良いじゃない、元気なら!」「どっちでも良いだろ、元気なら!」

 またもや同時に声を張り上げる。
 呆気に取られているティファは勿論だが、デンゼルとマリンもビックリして目を丸くし、互いの顔をジッと見た。
 そして、これまた同時に笑い出した。
 その笑いに、いつしかティファも釣られて笑い出した。
 笑いながら思う。


 いつか…。
 いつか、ちゃんと向き合ってみよう。
 クラウドとの将来を。
 彼の紺碧の瞳をちゃんと見つめながら、話をしてみよう。

 それは途方もなく恥ずかしくて…照れ臭いことだ。
 出来れば、男性であるクラウドにリードしてもらいたい…と、弱い自分がそう心の中で呟いている。
 そんな弱い自分を無視して、今度、頑張ってみよう。
 もしかしたら、クラウドも考えてくれているかもしれない…。

『…でも、考えてくれたことが無かったとしたら…すっごく落ち込んじゃうな…』

 胸にほんのポッチリした不安に、苦笑しつつ、ティファは腰に手を当てた。


「さ、お店を開けましょうか」


 笑いを抑えつつある子供達が、涙をふきふき、元気に返事をした。

 そして、今日もセブンスヘブンには沢山の客が来る。
 下心がある者。
 純粋にこの店のファンである者。
 特に理由は無いけど来てみた者。
 その様々な客達が、セブンスヘブンの『臨時スタッフ』を前にして目を丸くするまで…あとちょっと。


『『 これから先、どんなことがあってもずっと一緒に…って…いつ言おう…… 』』


 同じ思いで悩んでいるなど露ほども思いもしない不器用な二人が、その話をいつ『生涯の伴侶』へ『愛を請う』ことになるか。
 それは。


 もしかしたら、もうそんなに遠くない未来かもしれない。



 あとがき

 はい、何が書きたかったのか!?というと、それは…まぁ…。
 プロポーズ直前の二人の心境!(← そのまんまやんか!!)
 おまけに、ティファまでが悩んでいますからね。
 ティファからのプロポーズもありじゃん!?とか、書いてるうちに思いました(笑)
 でも、そうなると拙宅のクラウドはどん底に『ヘタレ君』ですねぇ…(^^;)。