風とあなた 




小高い丘の上の草原に立ち

向かい風が気持ちいいとティファは言った。

挑むように風に向かい 長い黒髪をなびかせる。

過去の憂いを残した瞳は それでも凛と前を見据えて。

どんな強風にも揺らぐ事のない力強さを湛えている。

そんな君の姿は昔も今も とても綺麗だ。

 

なあ、ティファ。 

風に吹かれている君は、確かに輝いているけれど。

たまにはここに来ないか?

ほら、俺の 腕の中。

ずっと閉じ込めたりなんかしない。

ただ、君の中にある脆い心を 時々は曝け出したらいいと思うんだ。

泣いてもいい。怒ってもいい。愚痴だって言えばいい。

悲しみも後悔も

苦しみも恐怖も

全てを取り除いてあげる事なんか、俺には出来ないけど。

ただ受け止めて、ティファの全部を包んでやることしか出来ないけど。

 

不器用で、頼りないかもしれない。

でも、そうさせて欲しいんだ。

 

俺は、そのために君の隣にいるんだから。

 

 

 

 

 

風が気持ちいい

そう言えば そうだな、と言ってクラウドは淡く微笑む。

頭上に広がる空よりも、もっと青く澄んだ瞳で。

見つめられると ときめいてしまうなんて 彼に言った事はないけれど。

勝手に温度を上げた頬を、風にさらして深呼吸。

鼓動を鎮めて振り向けば、じっと注がれたままの青い瞳。

なあに、と首を傾げても、黙ってふわりと微笑むだけ。

 

ねえ、そんな優しい瞳で

私を見つめないで。

全てを受け止めて包んでほしいって 甘えてしまいそうだから。

弱さも脆さも 醜い感情も 

あなたの前で見せたくないの。

だって、私はいつだって、明るく強い私でいて

あなたの支えになりたいんだもの。

 

それでも

あなたが両手を広げて おいで、と小首を傾げて笑うから

吸い寄せられるようにその中に納まってしまう。

まるで磁石が引き合うように。

パズルのピースが合うように。

 

 

 

高い空と、広い草原のまんなかで。

抱き締め合う二人の側を 清かな風が駆け抜ける。 

 

強くなくても いいんだよ

 

そう囁いたのは 

風と あなた。

  

 

 

 

 

 

 

FIN


2周年ありがとうございます。
拙い文章ではありますが、おそらく拙宅最初で最後のフリーです。ご自由にお持ち帰り下さい。
配布期間は2月25日までです。
感謝を込めて。



 感想♪

 グハッ!!(吐血)

 こんなに素敵なお話しをフリー!?
 な、ななななんて太っ腹なんだーー!!!!(絶叫)。
 二人の透明感溢れるやり取りが素敵過ぎです!!
 おおう……素晴らしい〜!!!

 夏生様、お言葉に甘えて頂戴してしまいました!!
 本当にありがとうございます<(_ _)>

 これからもどんどん素晴らしいお話しを沢山生み出して『萌え〜♪』させて下さい(笑)