『信じるということは・・・』  




 今日もセブンスヘブンは賑わっている、営業時間は午後5時〜10時まで、 常連客の中にはもう少し遅くまでやってほしいという声もよく上がったが
「まだ治安の良くないエッジでそんなに遅くなると危ないですよ!」
というティファの気遣いによる言葉に誰も文句など言えよう筈がなく、儲け よりも自分達を心配してくれる店主に魅せらた住人達が、今日も一時の安らぎ を求めてこの店に足を運ぶ。  

「いらっしゃいませ!!」

 新しいお客が入ってくると同時に、看板娘であるマリンの元気のいい声が上 がり、すぐに空いているテーブルに誘導する。  

「ティファ!こっちのお皿は洗い終わったよ!!」  
「ありがとう、次はこっちを頼める?」  
「OK!任しといて!!」

 デンゼルは元来の綺麗好きが幸いしているのか、セブンスヘブンの裏方として大活躍してくれている、開店前の掃除や食器の洗い物はデンゼルの担当だ、子供達を働かすのは最初は心苦しかったが二人が本当に楽しそうに手伝ってくれるので、今では一緒に働ける事に嬉しく思い、又、誇りにも思っている。

 カラン

「いらっしゃ・・・マナお姉さん!今日も来てくれたんですか?」
 ドアベルの音に反応したマリンが新しいお客の姿を認めると、嬉しそうに駆 け寄り、マナと呼ばれた女性客をカウンターの席に案内する。  

「ありがとうマリンちゃん、料理はまだ大丈夫よね?」  
「はい!いつも通りの今日のおすすめ定食ー魚ーで宜しいですか?」  
「うん、よろしくね!」  

 この女性客はクラウドのファンで、クラウド見たさでセブンスヘブンに通うようになったが、ティファの人柄と料理に惚れて、今ではティファの仲の良い 友達の一人である。  

「あ、お姉さんいらっしゃい!」

 クラウドのファンと言う事で最初は警戒していたデンゼルとマリンも、マナが純粋に二人の事を応援しているのがわかったので、今ではすっかりなついて いた。

「デンゼル君こんばんわ!」  
「今日もこのまま飲んでいくんだろ?また飲みすぎて二日酔いになるなよ!」  
「デンゼル!お客様だよ!!」  
「あ!・・・えっと、気をつけて下さいね」

 マリンの指摘に慌てて敬語にかえるデンゼルにニッコリと微笑むと  
「生意気!」
 と言ってデコピンで軽くデンゼルを弾く  
「イッテ〜〜」
 大げさに痛がるデンゼルとそれを楽しそうに笑うマリンの態度から、マナが 常連客というよりは、よく遊んでくれるお姉さんとして認識されている事が良 くわかる。

 「おまたせしました」

 料理を持ってきたティファがマナに微笑んだ後、子供達に向き直って優しく抱きしめ  

「二人ともありがとう、さあ、ご飯を食べてもう休んでね!」

 時計を見ると午後8時前、ここから料理は終わり、お酒専門の店になるので ある、すなわち、午後5時〜午後8時までが家族で楽しめるレストラン、午後 8時〜午後10時までが大人たちが一時の安らぎを得るバーとなる。  

「は〜い!」  
「お姉さん、また来てくださいね!」

 ティファの抱擁にはにかみながらもしっかりとマナにも挨拶をし、子供達は ひきあげた  

「いらっしゃい、食事が終わったらいつものでいいですか?」  
「うん、キツイのよろしくね!」

 どこかで聞いたようなセリフを言うマナにクスリと笑い、他のお客達に料理 は終わりだという事を告げてまわる、そのお客達の中にマナは見つけてしまった、先日にティファから拒絶された男の姿を・・・  
「あいつ・・・また来てる・・・」

 ハッキリ言ってマナはこの男が嫌いだった、まず評判が良くない、女の子に よく手を出し、相手に彼氏がいようがおかまい無しにしつこく言い寄り、いざ 付き合っても飽きたら捨てるという事を繰り返し、マナも何度か言い寄られた て嫌な思いを味わった経験がある、そんな時に助けてくれたのがティファだっ たのだが、それ以来男の興味がティファに移ってしまいしつこく店に通ってい るという訳なのである  

「ほんっとうに諦めの悪い・・・」

 嫌な気分になりながらも先日の事を思い出して思わず吹き出してしまいそう になった、なぜなら・・・
「なあティファちゃん、一度でいいから俺と付き合ってよ、クラウドさんには とても出来ないような経験をさせてあげるよ・・・たとえばとろける様なキス とかね・・・」
 今まで甘い言葉やロマンティックな言葉で誘惑していたが、まったくと言っ ていいほど反応がないのでここはストレートに攻めたのだが、ティファの反応 は・・・  

「え?!」

 心底驚いた顔をし、その後に一瞬だけ想像してしまったのだろう・・・  ゾワ!!  一気に体中に鳥肌がたち、顔も青ざめてしまっていた  

「お、お客様・・・ち、ちょっと飲みすぎのようですね・・・き、今日はもう お止めになった方が・・・よ、よろしいかと・・・」

 言葉ではなく、体すべてを使っての拒絶にさすがに男は肩を落として帰って いったのだが、今日も来ているという事はまだ諦めていないのだろう。

 「どうせ無駄なのに、あ〜もう!気分の悪い!!」

 気分の悪さをまぎわらす為にティファの料理にかぶりつく、しかし、予想に 反して男はマナが料理を食べ終わった後も、さらには飲み始めて暫らくたってもティファを目で追うばかりで大人しくしていた、いつしか男の事も気になら なくなってティファと談笑し、もう帰ろうかと時計を見ると午後9時になって いた。  

「もうこんな時間か・・・楽しいと時間って早く感じるわね」
 さて、最後にもう一杯!と思った直後にとても嬉しい事が起こった

 カラン

 ドアベルが鳴り、ティファがお客を迎えようと顔を上げ声をかける  

「いらっしゃ・・・おかえりクラウド!!」 

 すぐに言葉を訂正して極上の笑みで恋人を迎えにドア近くまで駆け寄った  

「ただいま、ティファ」
 ただいまのキスをほっぺに落とし、ティファに手荷物を渡すといつものカウ ンター席に腰掛けた  

「今ご飯の準備をするから少しまっててね!」

 ティファは手荷物を居住区の入口に一旦置くと、クラウドの食事を作る為に 厨房にひっこんでしまった

「お疲れ様です、クラウドさん」
「ああ、アンタか・・・いつもヒイキにしてくれてありがとう」  
「いいえ!ティファさんの料理がおいしいからですよ!!」  
「それは、ティファに言ってやってくれ」  
「言いましたよぅ・・・でも謙遜ばかりするんですよ」  
「ティファらしい・・・」
 クククと忍び笑いを漏らすクラウドに、あー本当にこの二人は最高!!と幸 せを感じていると

「へっ!いつまでも彼女がお前の物だと思うなよ!!」

 あの男がクラウドに食ってかかってきた  

「だれだアンタ?」  
「ティファさんにしつこく言い寄っている奴ですよ」
 マナの説明にわずかに顔をしかめたクラウドだが  
「で、俺に何か用か?」
 本気で相手をするつもりはないらしく、適当に声をかけた  

「いいか、おぼえておけよ、必ず俺が彼女を物にするからな!そうやって余裕 ぶってるのも今のうちだぜ!!」  
「そうか」
 これで話は終わりとばかりに背を向けるクラウドに、馬鹿にされたと感じた 男はさらに食ってかかった

「馬鹿にしてんじゃねえ!あんな美人はお前にはもったいないんだ、大人しく 俺に彼女が惹かれるのを見ているんだな!!」
 自信満々にそう宣言する男に  ハア・・・  と一つ溜息をもらし  
「好きにすればいい」  
「クラウドさん?!」
 マナが信じられないというような目で見てくるが  
「だが言っておくぞ」
 その後に続いた言葉に安堵の溜息を漏らす事になる  
「お前にはティファを落とせない・・・絶対にな」
 そう断言された男は激昂し  
「ふざけるな!ティファがずっとお前のそばにいるという確証でもあるのか? 人間なんだ、そんな思い込みは幻想にすぎないんだよ!!」
 ティファを呼び捨てにされて少し眉を上げたクラウドが  
「くだらんな・・・」  
「何?!」
 男の考えを一笑に伏すと  
「本当にくだらん、もう俺の前でそんな事をのたまうな!」
 男をギロリと睨みつけ、釘を刺す  
「う・・・」
 クラウドの眼光に腰が引けている男に  

「二度は言わんぞ、ティファは俺を裏切らない・・・そうだな?」

 クラウドが振り返ると、いつのまにか立っていたティファが淡く微笑み  (ずるいよ・・・クラウド)
「そんな事・・・」  (そんなふうに言われて、裏切れるはずないじゃない)  「当然の事じゃない」  ティファはクラウドの前に料理を置くと  
「お客様・・・どうやら飲みすぎたようですね・・・」
 営業用スマイルで男に声をかけるが、その目は氷のように冷たかった  
「ここのルールはご存知ですか?」  
「あ・・うあ・・・」
 冷や汗を出している男に  
「他のお客様に迷惑行為を行ったり、私どもの家族に危害を加えたお客様は ・・・」
 男はゴクっと唾を飲み込み、ティファの冷たい視線にガタガタと震えだした  
「次からのご来店はご遠慮させていただいてます!おわかりでしたら御代は 結構ですのですぐにお帰りください!!さもなくば・・・」
 そのままグローブを装備しはじめたティファの迫力に、男は足をもつらせな がら店から逃げ出した  
「ごめんなさいね、騒々しくなっちゃて」  
「ううん、二人が好き同士だって再確認させてもらったわよ」  
「もう・・・」  
 あの騒動の後、すぐに勘定をすましたマナはティファに見送ってもらっていた  

「また来るからね!」  
「うん、待ってるわ、気をつけてね!」

 今日も幸せな気分でセブンスヘブンを後にする  

「やっぱりあの場所は癒されるわ」
 帰路につくマナの足取りはとても嬉しそうだった  その頃、閉店したセブンスヘブンでは  


「ねえ、クラウド」  
「ん?」  
「あなたも私を裏切らないよね?」  
「裏切れると思うか?」  
「ううん」  
「わかっているなら・・・」  

 
 突然ティファを抱き上げ  

「そんな事考える必要はない」

 と言ってティファを自分の膝の上に座らせた  

「・・・はい」

 ティファは素直にクラウドの胸に頭を預け、静かに目を閉じた・・・


--------------------------------------------------------------------------------  あとがき  リクエストはセブンスヘブンの日常なんですが・・・  すみません!普通では日常ではありえない話になってしまいました!!(スラ イディング土下座!!)  しかし、ティファに惹かれて言い寄り、こっぴどく振られるというのがこの 店ではよくあるんじゃないかと思い、こういう話になりました。  まあ、ティファならではの日常かと・・・・(汗)  こんな出来ですが、ぜひもらってやってください!!                       T・J・シン --------------------------------------------------------------------------------  感想♪
 いつも通って下さっているT・J・シン様から頂戴してしまいました〜!!  ギャーーーッ(((゜□゜;)))  私が登場してる〜〜( ̄□ ̄;)!!  おおう……勿体無い……。  でも……。  嬉しいよぉ゜+。(*´ ▽`)。+゜  二周年のお祝いに…とのことだったので、サイトを運営されてはいないシン様ですが、お宝部屋に飾らせて頂くことにしました〜♪  それにしても。  やっぱりシン様が男性だからでしょうか、すっごくクラウドが男前…o(≧∇≦)o  ふふ…私ももっと精進しなくては!!  いつまでもアフォでヘタレなクラウドじゃあ…ダメですよねぇ…(遠い目)。  本当に素敵なお話し&お祝いをありがとうございました〜(*´∇`*)