disguise




 華やかな音楽と煌びやかな照明。
 暗いトンネルを抜けた後に見る世界は、一層鮮やかに見える。
 風船と紙吹雪が舞い、まるで別世界に来てしまったようだった。

「「わぁーー!!すごいすごい!!」」

 子供たちは目を輝かせ、外の景色に見入る。
 その姿に子供たちの背後に立っていたクラウドとティファは顔を見合わせて微笑んだ。

 今日初めて、家族揃ってゴールドソーサーに遊びに来ていた。
 きっかけはユフィからの電話だった。


「ゴールドソーサーでハロウィンイベント?」
「そ!!なんかケット・シーが…ていうかリーブが言ってたんだけどさ、お祭りみたいにするんだって。なんでもゴールドソーサーの再開園記念も兼ねてるみたいだよ〜!!だから一緒に行こうよ!!」
「行きたいけど…どうやって?交通機関だってそんなにあるわけじゃないし…」


 ゴールドソーサー、という単語を耳にした子供たちは期待に目を輝かせてティファを見ている。
 交通機関だって以前よりは発達してはいるが、便利、というわけではないのだ。
 エッジからゴールドソーサーまで、というとかなりの距離がある。
 それにクラウドの仕事の予定だって…などとティファが考えていると、

「な〜に言ってんの!!こんな時のために仲間がいるんでしょ!?シドに頼めば万事OK!!」
「OKって…シドにも予定が…」
「大丈夫!!ちゃーんとシドにも了解とったし!!あ、クラウドにも言っといたから配達予約も入らないよ〜」
「クラウドにも?」
「うん。なんか言われるかな〜って思ってたけど『ああ、わかった。』って。クラウドも家族で出かけたいんじゃない?ちょうどいい機会じゃん!!」


 ユフィの言葉は、シドに甘えてゴールドソーサーに行かせてもらう、という決意をティファにさせるのには十分だった。

「お〜い!!こっちだよ〜!!」
「あっ!!ユフィだ〜!!」
「ほんとだ〜!!」

 入口で大きく手を振っているユフィを見つけ、子供たちが走っていく。
 デンゼルとマリンは、優しく、自分達と遊んでくれるユフィのことが好きなのだ。

「デンゼルもマリンも久しぶり〜!!ちょっと大きくなったんじゃない!?」
「「ほんとに!?」」

 同じ台詞を同じタイミングで、しかも声を揃えて言う子供たちが面白かったらしく、ユフィは笑い始めた。

「なんでそんなに笑うんだよ〜!!」
「も〜!!」
「だって、二人ともまったく同じ反応するんだもん。面白くってさ〜!!」

 笑われて口を尖らせていた子供たちもユフィにつられたように笑い出す。
 そんな3人のところにクラウドとティファも遅れてやって来た。

「久しぶり、ユフィ。今日はありがとう。」
「いいのいいの!!気にしないでってクラウド!!あんた、アタシに感謝の言葉一つないわけ!?」

 ティファとユフィが会話している横を、我関せず、といったように通り過ぎようとしたクラウドを引き止める。

「……」
「あのねーこのイベントのこと知らなかったんでしょ?それをこの優し〜いユフィちゃんが教えてあげたわけ。はい、感謝の言葉は!?」
「……そうだな。ありがとう。」
「……えっっ!!??」

 素直に礼を言われるとは思っていなかったユフィは、驚きのあまりそのまま固まった。
 そして今度こそユフィの側を通り過ぎたクラウドは、“かぼちゃ”の飾りに見入っている子供たちのところへと歩いて行った。

「ちょっと、ティファ!!」
「何?ユフィ。」
「クラウドどうしちゃったのさ!!アタシに向かって礼を言うなんて!!」

 そんなに驚くことかしら?とティファは思ったが、旅の最中のクラウドの印象が強いユフィには仕方がないかもしれない。
 クラウドが自分の感情を素直に表すようになったのは、家で騒動の後からなのだから。

 ティファは幸せそうに微笑みながら、まだ納得がいかない、といった表情をしているユフィに向かって、

「クラウドも少しずつ変わってきてるんだよ。さ、私たちも行こう?せっかく遊びに来たんだから。」

 と言った。
 ゴールドソーサーに初めて来た子供たちにとっては見るものすべてが目新しいらしい。
 あっちへキョロキョロ、こっちへキョロキョロと、目を輝かせながら散策していた。

 クラウドとティファはそんな子供たちを見ながら、普段このような遊ぶ所に連れてこれないことを申し訳なく思いながらも、今日はここに来て本当によかった、と思っていた。

「後でユフィにちゃんとお礼、しないとね。もちろんシドにも。」
「そうだな。でも何でユフィまで一緒に騒いでるんだ?」

 旅の最中に何度か立ち寄っただろ…と、クラウドは少し呆れたように言った。

 話題の中心となっているユフィは子供たちの間に立ち、二人が迷子にならないようにと手を繋いで、少し先を歩いている。

「きっとすごく楽しいんだよ。ユフィだって色々大変だったみたいだもの。」
「…まぁ、それもそうか。」

 滅多に人前では、たとえ仲間の前だとしても弱さを見せようとしないユフィ。

 そんな騒がしいながらも優しい仲間のことを話しながら、二人で微笑みあった。



「……仮装?」

 しばらく園内を遊び歩き、そろそろホテルに…とクラウド達が思い始めたころ。
 子供たちとユフィが見つけてきたのは、ハロウィンにちなみ、
「仮装して記念写真をとろう!!」
 というコーナーだった。

「ねぇティファ、写真撮ってもらおうよ!!」
「そうだよ!!せっかく来たんだからいい記念になるし!!俺、魔王の衣装がいいなぁ。」
「あ、私は魔女がいい!!」

 すでに心が写真撮影へと飛んでいるデンゼルとマリン。
 目をキラキラさせながら話している二人にダメ、とは言えない。

 もちろんクラウドもティファもそんなことを言う気はなかったが。

「じゃあ二人とも衣装、選んで来よっか。」
「うん!!クラウド、どうしたんだ?」
「いや…ユフィは?」
「ユフィならもう衣装見に行ったよ?先に見てくるねーって。」
「相変わらずユフィは行動早いわね…」
「…ああ。」
「そういえばクラウドとティファは何の仮装するんだ?」
「「……え!?」」

 最後のデンゼルの言葉にクラウドとティファは驚いた。
 まさか自分達も仮装するとは思っていなかったのだ。

「私とクラウドも仮装するの?」
「え〜!!しないの?」
「いや、俺は、そういうの苦手だから…」
「皆で記念写真撮ってもらおうよ!!」
「そうだよクラウド〜、あんたもティファも仮装するの!!」
「「ユフィ!?」」

 声がした方を振り返ってみると、頭に耳をつけ、顔には髭。
 服は茶色いふわふわしたキャミソールに尻尾のついたショートパンツ、これまた茶色いブーツをはいたユフィが立っていた。
 どうやら狼娘の仮装らしい。

「「わー!!ユフィ可愛い!!」」
「でっしょー!!ほらデンゼルとマリンも衣装、選んできなよ。魔王も魔女もあったよー。」
「よし!!行こうマリン!!」
「うん!!じゃあ私たち行ってくるね〜!!」
「ああ、クラウド達の衣装はアタシ選んできたから。はいクラウドのはこれ!!男の更衣室はあっち!!じゃティファ、着替えに行こ!!」
「ちょっとユフィ!?」

 ティファがユフィによって更衣室へと連れ去られ、しばらく呆然としていたクラウドだったが、自分の手に持っている衣装を見る。

(…ユフィからは逃げられない、か。)

 諦めたように一つため息をつき、更衣室へと向かった。



「お〜デンゼルもマリンも似合ってるじゃん!!」
「そうだろ〜?」
「ありがとう、ユフィ!!」

 デンゼルは上下黒い服に、黒いマント。それに柄の部分にかぼちゃの飾りが付いたレプリカの剣を持っている。
 そしてマリンは黒のローブにピンクのマントと黒い帽子。帽子にはマントと同じ色のリボンがついており、星の飾りが付いた杖を持っている。

「きっとクラウドとティファもびっくりするよ〜。」
「それにしても遅いなぁ、二人とも。」
「あれ…もしかして、あそこにいるのって…」

 マリンの視線の先に見えたものは…

 人だかりが左右二つに分かれ、その間を歩いてくる男女二人。
 その二人―クラウドとティファは周りの人たちの視線を一身に浴びている。
 まるで映画スターか何かが現れたかのような…
 そんな光景にデンゼルとマリン、そしてユフィでさえもしばらく口を開けたままになってしまっていた。

 彼らがどんな仮装をしたのかというと…

 クラウドは上はワイシャツ、下は黒いズボン。その上にマントを羽織り、飾りとして牙を付けて―吸血鬼の仮装をしているのだ。
 いつも着ている服と色の系統は同じだが、形がまったく違うため、新鮮な印象を与える。

 そしてティファ。
 仮装の設定としては吸血鬼に狙われた美女…といったところだろう。
 クラウドの衣装とは対照的に、光沢のあるベージュのドレスを身につけている。
 そして普段はそのまま下ろしている髪を右耳の横で結いあげ、ドレスと同じ色の髪飾りをつけている。

「クラウド、すんごいかっこいい!!」
「ティファ〜すっごい綺麗だよ〜!!」
「これも私の見立てのおかげだね!!」
「「……」」

 クラウドとティファは根っからの恥ずかしがり屋。
 仮装だけでも照れてしまっているのに、さらに大勢からの視線を集めてしまい、顔が真っ赤になっていた。

「よっし!!じゃあ写真撮ってもらおー!!」
「「行こ!!クラウド、ティファ!!」」

 本来の目的であった写真を撮ってもらうべくコーナーへと移動する。
 そして写真を撮り始めてもらったのだが…

 モデル並みの人間が来たことにカメラマンが興奮してしまい、撮影が長引いたのは仕方ないだろう…


*****


 その夜、ホテルの部屋では…

「あ〜楽しかった!!」
「うん!!楽しかった〜!!」
「そうね。今日は本当にありがとうユフィ。」
「だから気にしないでって!!そうだ!!今度は皆で来ようよ、予定合わせてさ!!」
「賛成、賛成!!」
「ふふ…じゃあまたお願いね?ユフィ。」
「まっかせといて!!」

「今日はすっごい楽しかった!!ありがとう、クラウド。」
「礼を言うのは俺じゃなくて、ユフィにだろ?」
「だってクラウド今日のために配達の予定、調整してくれたんだろ?
 だからお礼言わなきゃって思ってさ!!」
「こっちこそありがとう、だな。」
「何?クラウド。」
「いや、そろそろ寝るか。疲れただろ?」
「うん、じゃあお休みクラウド。」
「ああ。お休み。」

 数日後、セブンスヘブンに写真が送られてきた。
 仮装しているものの、全員が楽しそうに笑っている写真。
 その写真は家族旅行の思い出として、子供部屋に大切に飾られている。


fin


 アトガキ

 ハロウィンだし何か書こう!!と思い立って書いたお話です。
 何の仮装をさせようかなーと考えましたが、クラウドには某映画(笑)の影響で吸血鬼しか思い浮かびませんでした。


 そして管理人の勝手なのですが、この話を相互して頂いている管理人様に限り、相互への感謝の意を込めてお持ち帰り可としました。

 といってもこんな駄文で無駄に長い話ですが…(^_^;)


 あ、blogに書いていた“とあること”というのはこのことです。


 持ち帰ってやってもいいよ、とおっしゃって下さる御心の広い、優しい管理人様は、どうぞお持ち帰り下さいませm(_ _)m

 それでは読んで下さってありがとうございました☆





 感想。。。

 いやいやいや、SOCLさ〜ん!?
 こんな素敵なファミリー話しをマジでフリーっすか!?!?Σ('◇'*)
 いや〜〜ん、即効頂きましたよぉ〜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+(←節操なし)

 子供達のはしゃぎっぷりが心ホッコリでした〜♪
 そしてそして、クラティの悩殺モノの仮装がですね〜、これまたツボで〜!!
 イエ〜イ♪クラウド、そのまま美女の首筋に濃厚なキッスを(殴!!)
 おおう、こんなアフォなことを書いたら折角の素敵なお話しが穢れてしまう!!(← 自覚はあるらしい)

 にしても、ほんとに良いんですか、こんな素敵なお話し相互サイト様へ…だなんて!!
 …。
 ……、拙宅も相互だから…頂戴して…良いんですよね?(← 小心者)

 はぅ…もう、心ホッコリ、癒されました〜゜+。(*´ ▽`)。+゜
 まさか、ハロウィンネタでここまで心ホコホコになれるとは〜♪
 流石でございます!!
 ほんっとにありがとうございました〜♪
 我が家の家宝がまた増えて嬉しい限りです〜vv

 お返し…は何も無いケチで無力なマナフィッシュを許してください〜〜(土下座)

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