嬉しいね。 うん、嬉しいね。 こんな素敵な世界が待ってるんだもん。 うん、楽しみだね…。 やさしい世界復興途上にある星にて…。 この大きな街にある小さな店の情景。 まだ10歳に満たない、いつでも明るい少年と少女が店員で、『ジェノバ戦役の英雄』という肩書きをはめられた女性がいる。 それがここ『セブンスヘブン』。 この店には本当に沢山の事情を背負った人達が、一日の疲れを癒すため、食欲を満たすために日々集まっている。 彼ら、そして彼女達にとって、この店は心の安らぎの場としても、非常に貴重な店だった。 店主であるジェノバ戦役の英雄は、決してその肩書きを鼻にかけることなく、むしろ、客達以上に謙虚で誠実だった。 いつでも温かな微笑と、明るい声、そして丹精込めて作られた料理を出してくれるセブンスヘブンは、エッジにとって欠かせない名物店としても有名となりつつある。 異性には勿論、同性からも好かれる店主は、毎晩とても忙しい。 だが、決して接客をないがしろにすることはない。 たまに、性質の悪い人間が店を訪れることもある。 だがそんな客にも、彼女はギリギリまで『普通の客』と同等の接客態度を保った。 中には性質の悪い客だという印象を受けていた人間が、ティファの『同等の接客態度』に触れたお陰で、とげとげしいオーラが柔らかく、優しく解かれて丸くなる人間もいた。 彼らは、それまでの人生経験上、自分の身を守るために攻撃的で他人を信用しない、信用出来ない性質を培ってしまわざるをえなかったのだ。 ミッドガルに沿うようにして出来たこの街には、ミッドガルのスラムで生きていた人達も数多くいる。 どうも、そのスラム街出身者にこそ、こういう人種は多いようだ。 彼らのそれまでの人生経験を少しでも垣間見たならば、決して彼らを『ガラが悪い』『人間として最低だ』等々の言葉は口に出来ないだろう。 ティファは、そういう人達の『無言の叫び』を正確に見極める目と、聞き分ける耳を持っていた。 だから、ティファは決して見た目で判断しない。 見た目で判断しない…ということは、『警戒しない』ということではない。 警戒しつつ、決して粗野に扱わない、ということだ。 変に勘繰ったり、バカみたいに丁寧に接しないことだ。 心のどこかで、臨戦態勢を保ちながら、表面上は全く分からないような『普通な接客態度』をとる。 最初、性質の悪い客だと思われる人種の人間は、ティファの『普通な接客態度』が気に入らない。 彼らは、『恐れられ』『特別扱い』されることに慣れていたからだ。 だが、同時に良い意味での驚きに見舞われる。 ティファは一見、ただの女性。 華奢な女性だ。 ジェノバ戦役の英雄として名を馳せ、顔が売れている彼女だが、実際に目の当たりにするとどうしても信じられない。 そんな『ただの女性』が、自分達の態度、醸し出している負のオーラに全く左右されることなく、普通の客として接してくる。 それは彼らの神経を逆撫ですると同時に、自分達を特別視しない貴重な体験を味わうのだ。 そうして、気がついたら、あんなに刺々しかった心が、ホンワリと、柔らかくほぐされている。 そうなると、彼らは店の外でも人から徐々に受け入れられるようになり、長い時間をかけてようやく彼らは『無言の叫び』をあげなくて済むようになっていた。 今。 ティファの目の前には、そういう人達の代表とも言うべき中年の男性達がいる。 彼らは悲惨な幼少期を過ごし、凄惨な青年期を経て、すっかり心が頑なになっていた。 だが、決して一歩も引かず、他の客と同じように『一人の人間』として接したティファによって、彼らはいつしか手に入れていた。 それは、心からの安らぎ。 まがいものではない本当の意味での心からの安らぎだ。 今までは、酒の力を借りなければ決して得られなかった。 酒の力を借りて得ていたまがいものの安らぎ。 彼らは、決して自覚することなく本物の安らぎを渇望していた。 そして、その願いが叶ったのは、一重にティファの心に触れて、彼女にほぐされた結果だ。 彼らは今の自分に至るまでの時間を振り返り見て、そう思っている。 同じように彼女と、セブンスヘブンのマスコットとしてクルクルと良く働く子供達の存在にて、解き放たれた仲間内でその存在を噛み締める。 だが、彼女にそう話したことはない。 ティファ、そして、彼女の恋人であるクラウド・ストライフを長い時間かけて見ていたら、彼女達がその言葉を決して受け入れないだろうことが容易に判断出来たからだ。 クラウド・ストライフとティファ・ロックハート。 決してこの二人は、謙虚さを装っているのではない。 本心で、自分達は贖罪をしないといけない人間だと思っている。 それが、見ていて分かるのだ。 だから、彼らは言わない。 言っても、受け入れられないし、逆に彼女の負担となることは明白だからだ。 ただ黙って、感謝の念を胸に抱きながら店に通う。 頑なだった心を優しくほぐしてくれた彼女に、恋慕の情を抱かないこともない。 だが、彼女がたった一人を見ていることなど、誰の目にも明らかなので、その密やかな想いを打ち明けるつもりもない。 ただ静かに料理を口にし、時折彼女へ冗談を飛ばして笑う。 穏やかな視線を彼女に向けて、マスコットである少年と少女に笑いかける。 一日のうちでの至福のひと時。 明日を頑張って生きるための力を充電する時間だ。 そんな彼らだからこそ、気がついたのかもしれない。 ティファの顔色が悪いことに。 「デン坊。なんかティファちゃん、顔色悪いんじゃないのか?」 こっそりと呼びつけて囁くと、少年は顔を曇らせた。 肯定の証だ。 「ティファ、なんか最近調子悪いんだよ。食欲もないみたいだし…」 「病院には行ったのか?」 テーブルにいたもう一人の男がデンゼルに訊ねた。 日に焼けて真っ黒な顔を、心配そうに歪めている。 少年はふるふる、と首を振ると、 「大丈夫だって言うんだ」 「少しくらい強引に連れてった方が良くないか?」 更にもう一人の男に声をかけられ、デンゼルはほとほと困りきったような顔をした。 「それはマリンとも相談した。でも、結局ダメだってことになったんだ」 「「「 なんで? 」」」 「クラウドがもうすぐ帰ってこられるから、それから相談した方が良い、って思ってさ」 少年の答えに、男達は顔を見合わせた。 やがて、ゆっくりとその顔に笑顔が広がる。 「そうか、旦那、もうすぐ帰って来るのか」 「久しぶりじゃないのか?」 「何週間ぶりだ?」 デンゼルの顔にも笑みが広がった。 嬉しそうに「一ヶ月ぶりなんだ。本当に今回は長かったよ」と言った。 クラウド・ストライフは、どんなところにでも荷物を配達してくれることで、非常に多忙な毎日を送っている。 このご時勢、良心的な値段でどこでも配達してくれる運送業はそうそうない。 しかも、確実に届けてくれるというお墨付き。 ジェノバ戦役の英雄であるがゆえに、危険な陸地への配達などは、遠慮なく依頼が来る。 そして、クラウド自身もそのことを重々承知しているがゆえに、決して断らない。 そうなると、彼がエッジのある大陸から離れて他の大陸へ赴いている間にも、絶え間なく依頼が舞い込む形となってしまい、今回のような長期出張となってしまったのだ。 星の奇跡から約一年。 まだまだ星の復興は行き届いていない。 少しずつ、交通手段は一般化してきているので、民間での配達業者も増えてきた。 だが、それでもまだまだ充分ではない。 と言うわけで、現段階で見るとクラウドの仕事が暇を持て余すようになるまでまだまだ時間がかかりそうだった。 仕事があると言うことは実にありがたい話ではあるが、やはり限度がある。 今回は本当にひどかった。 秘境とも言えるような谷底への配達や、密林のジャングルへの配達が相次いで依頼された。 なんでこんなところに…? ってか、誰がそんなところに住んでるわけ!? と、思えるようなところだ。 話は簡単。 その地で、研究をしている学者の家族達からの依頼だったのだ。 WROのような大きな機関に所属しているなら、その所属先に願い出れば届けてくれる。 しかし、彼らは独自の研究開発チームとして存在していた。 ようするに、全部自分達で持ち寄って、貧乏グループを結成していたのだ。 研究にかかる費用は非常に莫大だ。 結構な資産家がパトロンとしてついていてくれないと、中々に苦しい経営状態となる。 彼らは自分達の知識への探究心一つを胸に抱き、理解のある家族の協力にて極貧研究生活を営んでいるチームだった。 当然、クラウドのような民間配達業者にお願いしないと研究材料やそのほかの必要物資を運んでもらう手段がない。 と言うわけで、どんなモノでも(犯罪とは無関係なものに当然限られる)、どんな所にでも配達を請け負うクラウドは、彼らに非常に重宝されていた。 必然的にクラウドも彼らや彼らの家族と面識が深くなる。 現在、クラウドはウータイの秘境に赴いていた。 ミディール地帯の密林ジャングルと比べたらまだマシだ。 そうクラウドが携帯で話したのは一昨日のことだった。 現在、クラウドは何度乗っても慣れない船に乗って、帰途に着いている。 デンゼルは嬉しそうに笑うと時計を見た。 時計の針は午後20時を指していた。 「もうすぐ着くと思うんだ」 「そっか。良かったな」 フワフワの髪をくしゃくしゃと撫でながら、中年の男は心からそう言った。 数ヶ月前の自分からは想像出来ないような優しい言葉、優しい気持ちに、男は少し照れながら、嬉しそうに笑ってくれる少年を見つめた。 その時。 女性の小さな声と共に、陶器が割れる音が上がった。 ハッ!と振り返ったデンゼルが、同じく顔色を変えて駆けつけるマリンと一緒にカウンターへ走る。 カウンターの客達は総立ちになって、 「大丈夫かい!?」 「ティファさん!?」 「怪我、してないか!?」 覗き込みながら声をかけた。 「大丈夫です、ごめんなさい皆さん」 まだ立ち上がっていないのでティファの顔は見えないが、意外としっかりした声が返ってくる。 その言葉に安心して座る者もいれば、まだ心配そうな顔をして必死になって身を乗り出し、カウンターの向こうを覗き込もうとしている客もいた。 一種の喧騒の中、 「ティファ、大丈夫?」 「ティファ、やっぱりお店、もう閉めようよ」 という、子供達の声が男達の心に不安を植えつけた。 ティファが無理をするタイプであることを知っているからこそ、子供達の言葉はより現実的な問題として、大きな不安を抱かせた。 テーブル席に着いていた客の一人が、不安と状況を知りたいと言う気持ちに負けてゆっくりと立ち上がった。 そのまま、おずおずとカウンターの中へと覗き込む。 丁度、ティファが立ち上がって弱弱しく子供達に微笑んでいるところだった。 男の胸がギシリ、ときしんだ。 それほどの儚く、弱弱しい微笑み。 これまで見せてくれていた明るい微笑とは違う笑み。 小さな不安が急速に育つ。 「ティファちゃん、病院行った方が良い」 思わずカウンターの中に足を踏み入れ、弱弱しい微笑を張り付かせている彼女の腕を掴む。 茶色の瞳が驚きで見開かれ、男を見上げた。 男はそのまま、引きずるようにしてティファをカウンターから引っ張り出し、戸惑う彼女を掴んだままでドアに向かって歩き出した。 「ちょ、ちょっと待って、どこに…」 「病院だ。具合が悪いんだろう?」 「ちょ、大丈夫ですから、本当に。それにお店をこのままにして行くわけにはいきませんし、もう時間も遅いから病院は閉まってますよ」 屈強な男に引きずられるようにして歩くティファに、他の客達が驚いて腰を浮かせた。 だが、誰も間に入るまでもなく、ティファはその男の手から自分の腕を引き抜いた。 男がビックリして立ち止まって…振り返る。 掴まれていた腕を摩りながら、真っ直ぐ立つ女性、ティファ・ロックハートに、改めて彼女がジェノバ戦役の英雄であると認識させられた。 ティファは微笑んだ。 「本当にありがとう…心配して下さって。でも…大丈夫なんです、本当に」 きっぱりと言い切った彼女に、男は戸惑いすら感じた。 その妙に確信めいて言い切ったティファが、なんとなく今までの彼女とは違うように感じられたのだ。 「ティファ…でも…」 「うん、最近なんか本当に具合悪そうだし…」 不安を拭いきれていない子供達が、寄り添うようにして彼女を見上げる。 ティファは微笑を子供達に移した。 その流れるような仕草は、実に優美で目を奪われる。 「ごめんね、二人とも。大丈夫よ、本当に。ちょっと軽く眩暈がしただけだもの」 「「 そ…! 」」 抗議の言葉を口にしようとした子供達に、ティファはそっと首を振って遮った。 「大丈夫。でも、二人ともすごく心配してくれてるのはちゃんと分かってるわ。だから…」 言葉を切って、肩を竦めた。 そして、注目している客達をグルリと見渡し、深々と頭を下げた。 「申し訳ありません。これでラストオーダーとさせて頂けますでしょうか」 反対する者は誰もいなかった。 * 「ティファちゃん、大丈夫だろうか…」 月明かりを頼りに帰る道中、中年の男達は心配そうに女店主の話をしていた。 彼らにとって、彼女は憧れでもあり、恋慕の対象でもあり、恩人でもある。 大切な彼女の身に何かあれば…と、思うだけで、心配で胃がよじれてしまいそうだ。 「…大丈夫…って言ってたが、本当に具合が悪そうだったな…」 「あぁ…」 どうしても気分が沈みがちになる。 他人のことでここまで気持ちが左右されるとは、人生は驚きで一杯だな…と、男達は思っていた。 そして、それをわざわざ口にしなくとも、仲間達も同じ気持ちだと分かりきっていた。 早めの閉店に、丁度来店したばかりの客達も大勢いたし、一斉に帰り始めた客達が今まさに客として来たばかりの人達とすれ違って驚かれ、残念そうな顔をされたものだ。 そんな人達も含め、ティファと子供達は丁重に頭を下げていた。 『そんなこと、しなくて良いのに』『夜風は身体に障るから、早く休め』 等々の言葉を飲み込んで、男達は他の客達と共に帰途に着いた。 早く彼女の視界から消えなくては。 その一念は、皆の共通の気持ちだった。 彼女が最後の一人の背が見えなくなるまで見送るつもりだと言うことが分かっていたからだ。 どこまでも丁寧で、謙虚で、それを自然にしてしまう彼女だからこそ心惹かれるのだが、こういう場合はその謙虚さをお留守にしても良いのではないだろうか? まぁ、そんな器用なことが出来る人間ではないと分かりきってはいるのだが、思わずにはいられない。 ― 『本当に大丈夫です。クラウドが帰ってきたら、ちゃんと病院に行きますから』 ― 他の客にそう言っている彼女に、心からそうして欲しい、と男達は願わずにはいられなかった。 その日の晩は、鬱々とした気持ちで彼らはそれぞれ帰っていった。 そしてその次の晩。 これまた打ち合わせたかのように同じ時間に同じメンバーがセブンスヘブンへの道の途中で鉢合わせた。 その事実に照れたように笑いながらも、誰もが心ここにあらずな状態だった。 ティファがまた調子の悪そうな顔をしていたらどうしよう? 本当に病院に行ったのだろうか…? 様々な思いが交錯する。 彼らの心配は、しかし、ドアノブにかけられた『臨時休業』の札で一気に膨れ上がった。 休業の札がかかっているにもかかわらず、思わずドアを押し開ける。 鍵はかかっていなかった。 中では、丁度夕飯の食卓に着こうとしていたセブンスヘブンの住人が勢ぞろいしており、目を丸くしてドアを見つめていた。 立ち尽くす男達に、 「あ、昨日は本当にすいませんでした」 「ごめんなさい、今日はお休みなんだ〜…」 「おじさん達、昨日はほんっとうにごめんな!でも、大丈夫だったんだ!」 ほんのりと頬を染めて幸せそうなティファと、申し訳なさそうな顔をするマリン、対照的に嬉しそうな顔で笑いかけるデンゼルに、男達は気まずそうに顔を見合わせた。 チラチラとティファを見る。 顔色は昨日より断然良い。 眩暈を起こして座り込んだ女性と同一人物とは思えない。 そんな彼女を支えるように、金髪・碧眼の青年が立ち上がった。 すっかり彼とも顔馴染みの男達は、照れくさそうに挨拶をした。 青年もちょっとはにかみながら挨拶を返す。 そうして…。 「昨日は心配してくれたみたいで、本当にありがとう」 屈強な男に軽く頭を下げた。 元は無愛想で、口下手な青年が実に礼儀正しく頭を下げるとは、小さな衝撃が男達の胸中に走る。 だが、彼らもクラウド同様、顔にあまり出ないタイプ。 「いや…そんな大したことは」「俺達は結局なにもしてないし」 もごもごと、口の中でそう呟く。 クラウドはそんな不器用な男達に目を向け、ちょっと照れ臭そうにしながら、そっとティファを抱き寄せた。 抱き寄せられた彼女も、恥ずかしそうにしながらそれを拒まなかった。 はにかみながら青年を見つめ、頬を染めて視線を落とした。 クラウドも微笑んだ。 微笑んで、男達に目を戻した。 紺碧の瞳が、今まで見た中で一番穏やかに…、そして歓喜に光っていた。 「俺達、来年の春ぐらいに親になるんだ」 告げられた事実。 衝撃の真相。 クラウドの言葉に、男達はポカン…と口を開け。 ゆっくり、ゆっくりとクラウドの言葉を脳に染み込ませて……。 「「「「 うぉぉおおおお!! 」」」」 クラウドとティファ、そしてデンゼルとマリンに負けないくらい、大きな声で、全身を使って、喜びを表した。 でかした! よくやった! ティファちゃん、身体にはこれまで以上に充分気をつけるんだぜ!? ちゃんとしっかり、メシ食えよ!? お腹の赤ん坊のためにも! 本当に良かった! デン坊、マリンも良かったな!! 妹か弟か…、どっちが生まれても二人の子供なら可愛いに決まってる! クラウドの旦那、これからは仕事も良いが家族を大事にしろよ!! 口々に祝福を述べ、己のことのように喜んで、クラウドの背や肩をバシリバシリと叩いた。 クラウドもこの時ばかりは満面の笑みでその祝福を受け、本当に幸せそうだった。 そんなクラウドを見て、ティファの目に涙が浮かぶ。 幸せそうな親代わり二人に、子供達は明るい笑い声を上げた。 嬉しいね。 うん、嬉しいね。 こんなに温かいところに生まれられるんだよ。 うん、嬉しいね。 楽しみだね。 うん、早く会いたいね。 幸せだね。 うん、幸せだね。 こんなにやさしい世界に生まれられるんだもん、幸せだね。 やさしい、やさしい世界に生まれられるんだね。 嬉しいね。 楽しみだね。 ―『早く生まれてこないかな』― ―『ふふ、クラウド…気が早いわね』― ―『男、女…どっちだろうな…』― ―『どっちが良い?』― ―『本当はさ、男の子が良いな、って漠然と思ったことがあったんだけど…』― ―『けど?』― ―『いざ、現実になると、どっちでも良い。元気なら…どっちでも』― ―『……クラウド…ありがとう』― ―『なんでありがとう?俺の台詞だろ、それ』― ―『ううん、私の台詞だよ。こんなに幸せにしてくれて…本当に嬉しい』― ―『俺の方こそ…本当にありがとう、ティファ。俺…これからもっと頑張るから』― ―『ううん、今のまんまで良いの。今のまま…傍にいてくれたらそれだけで充分だから』― ―『ティファは欲がないな』― ―『そう?これ以上ないくらい欲張りだと思うわ』― ―『はは、本当に欲がないな』― ―『ふふ…じゃあそういうことにしておいて?』― ―『はは。それにしても……動かないかな?』― ―『ふふふ、本当に気が早いわね。まだまだ先よ?』― ―『そうか…待ち遠しいな』― ―『うん、私も待ち遠しいわ』― 嬉しいね。 こんなに楽しみにしてくれて…。 早く会いたいね。 うん…、早く会いたいね。 やさしい世界にいるパパとママに。 あとがき うぉおおお!!(絶叫) とうとう書いてしまった、ティファ、ご懐妊話をーー!!(← 身悶えている) いえ、本当にとうとう手を出してしまいました、この手の話しに。 ティファもクラウドも、きっとメロメロだろうなぁ…とか思いながら書いちゃった。 おおう…本当になんかめっちゃ恥ずかしいですなぁ…(滝汗) 少しでも皆様に受け入れられたら嬉しいです〜(土下座) |