ふっふっふっふ…。
 とうとうこの日がやって来たか!!
 喜びに胸が躍るぜ!!

 素晴らしく壮大に…雄大に出来上がった『闘技場』を前に、俺様は感無量だった。



夢か、願望か、はたまた幻想か…。




 俺は元・ソルジャー。
 クラスは……まぁ、良いじゃないか、なんだって。
 かつて、栄華を極めた神羅カンパニーで腕を振るい、一目も二目も置かれていた存在だ。
 そんな俺様も、神羅カンパニーが衰退してからめっきり出番がなくなった…。

 しっかーーし!!

 俺様くらいになったら神羅カンパニーという『後ろ盾』がなくなったとしても、引く手数多、どこでもやっていけると言うものさ!

 ん…?
 なら何故未だに『日雇い』をしてるのかって…?

 ……。
 ………。
 フ、フンッ!
 いつの時代でも非凡な人間は凡人から疎まれるもんなのさ!
 この俺様の実力を認められない『狭量』な人間が多くて困る!
 ま、そのうちデッカイ組織の要職に迎えられることは間違いない!!
 それに、今のところ『日雇い』で十分食っていけるしな。
 元・ソルジャーというだけあって、体力は十分有り余ってるのさ!

 …誰だ、今、俺の事を『体力バカ』と言ったのは!?
 まったくこれだから人を見る目がない奴は……。
 そう言えば、この『闘技場』を建築するにあたってのことだが…。
 かの『ゴールドソーサー』の園長という男があれこれとうるさく指示してきやがった…。
 あの格好のどこが『園長』なんだ!?
 ありえねぇだろう!?!?
 いっつも大口開けて笑うだけじゃなく、筋肉ムキムキマッチョマンなんだぜ!?
 しかも上はタンクトップに下はスポーツ用のハーフパンツときたもんだ!!
 あんなダサダサな格好で人様の前に平然と登場する無恥な野郎が、世界屈指の遊園地の園長…!?

 あんなオッサンが園長務められるなら、そこらへんで鼻たらしてるガキでも出来るっつうの!!

 ったく、世も末だぜ。
 あんな『変態』でも『金持ち』で『人望がある』と世間では評価されてるんだからな。
 とんでもない『誤解』だぜ!
 世間の評価なんか全く当てにならないという良い見本だな。
 という訳で、俺様は直に己の目で見て、判断して雇い主を選んでるってわけさ!
 俺様の『有能な能力』は『真の実力者』にこそ用いられるべきだからな!
 あんな『世間の評価とはまるっきり違う変人』に使われることになんかなったら、世界の大損失だ!!

 ま、てなわけで俺は現在、日雇いで星の復興に尽力しつつ、俺様の力を用いるに相応しい人間をのんびりゆっくりと探しているわけさ。

 そうして、今回の日雇いの仕事で請け負ったのが、WROの闘技場建設。
 何でも元々あった訓練施設を改築して闘技場にする……というやつだった。
 別に闘技場なんかなくたってよさそうなのに、WROの局長は変わってるな…やっぱ。
 神羅時代から一風変わってるおっさんだと思ってたが、やっぱり変わった奴だ。

 ― 一週間で闘技場を完成させてくれ ―

 アホかっつうの!!
 出来るか、んなもん!!!

 親方から話を聞いたとき、俺は即行で別の日雇いを探そうと思ったね。
 だがよぉ…。
 そん時の親方の一言が俺を繋ぎとめたのさ。


 ― 敵前逃亡は男の恥だ!この仕事、請けてやろうじゃねぇか!! ―


 ズガーーーン!!!!


 俺は頭をハンマーで殴られた気がしたぜ。
 そう!!
 敵前逃亡は男の恥だ!!!
 かつての神羅時代で叩き込まれてきた『男道』が胸に熱く蘇えった瞬間だった…。

 それからはもうそりゃ頑張った!
 仲間の日雇いの野郎共も、親方の心意気に胸を打たれて寝る間も惜しんで働いた!!

 …っつっても……。
 実は、WROの隊員達も『基礎体力作り』という名目で、闘技場建設に関わってくれたから、一週間で作り終えるのはそんなに大変じゃなかったりする…。
 なんだって『軍隊』みたいな組織のクセに、隊員の奴ら…手先が器用なんだ…?
 おまけに建築の技術と知識も持ってるし……。
 親方がえらく感動してたな……。

 ……。
 ハッ!!
 そんな事はどうでも良いんだ!!
 そう、今日は待ちに待ったこの『闘技場』が観客の熱気に包まれる輝かしい初日になるんだ!

 ふっふっふ。
 そうして、この『闘技場』から新しい俺様の人生がスタートされるのさ!

 ん?
 気になるか?
 ふっふっふ…。
 今日行われる『試合』を見たら分かる事だが……まぁ仕方ない、教えてやろう。

 実は、闘技場の建築をしている間、一緒に作業していた隊員から聞いた今回の『試合』の裏話し。

 あの『ジェノバ戦役の英雄』というむさくるしい野郎共の中で、ただ一輪、華麗に咲いている華……。(← ユフィの存在を忘れてます。因みに、エアリスの存在は忘却の彼方に飛んでます…)


『ティファ・ロックハート』


 この俺を一目で虜にしたあの可憐な女性が、なぁんと!!
 今回の『試合』の『景品』にされているというじゃないか!!
 俺は耳を疑ったね。
 なにせ、あの『ジェノバ戦役の英雄達のリーダー』と言われている『クラウド・ストライフ』の恋人でもあるっつうのに、なんて扱いだ!!
 しかも、その当の『クラウド・ストライフ』はあっさりと彼女を『景品』として差し出したそうじゃないか!!
 許せん!!
 あのように美しい女性を『物扱い』するなど!!

 話を聞いた時、『セブンスヘブン』へ殴りこみに行くところだった。
 だが、すぐに思い止まったのさ。
 なんせ、俺は『力』のみで解決する『暴力野郎』じゃないんだ。
『知性』と『理性』を兼ね備えた『有能な元・ソルジャー』なんだからな!


 それにしても…。
 クラウド・ストライフが女神様(← ティファのこと)を手放したとは(← 手放してません)信じられん!!
 あんなに……あんなに幸せそうに笑っている彼女を手放すとはーー!!(← だから、手放してません)
 彼女一人が傍にいてくれたらそれだけで……それだけであとは十分だと言うのに!!
 そう!!
 彼女はサイコーの女性だ!!
 彼女に比べたら、この地上の女達なぞ『月とすっぽん』『宝石と石ころ』『特上寿司とドロ饅頭』くらいの差があるのだから!!(← この上なく失礼)

 にも関わらず、彼女を簡単に『景品』にしてしまうとは!!!

 彼女がずっと傍にいてくれるという幸福に慣れすぎたせいだ!!
 なんと思い上がった傲慢且つ愚か者か!!
 そんな大馬鹿者のうつけ者は、痛い目に合って泣くが良い!!
 そうだ、大泣きに泣いてしまえ!!
 どんなに歯噛みしても、彼女は決してお前の元になど戻らないのだから!!

 何故なら…。

 その頃にはこの俺様が彼女の『正式な恋人の座』を手にしているからさ〜!!!!

 あん?
 何故そうなるのか…って?
 ふふふ…。
 それは、『景品』にされた彼女をこの俺様がカッコよく登場して救い出すからさ!!

 隊員達の裏話から、クラウド・ストライフが六人の隊員と試合をする事は既に知っている。
 いくら奴が『ジェノバ戦役の英雄達のリーダー』と言えども、猛者を六人も相手には出来まい!!
 そうして、奴が己の迂闊さを思い知った時、麗しの女神様は体力バカの隊員達の『景品』として差し出されるのだ!!
 そこを、この俺様が登場して、正々堂々と勝負し、彼女を悪鬼から救い出すのさ!!
 彼女が俺様の魅力にイチコロになるのは目に見えてるな。

 ふふふ…。
 完璧だ!!

 彼女とクラウド・ストライフを最後に見てから既に一年近く経っている…。
 あの頃は、二人の間に断ち切れぬ絆を見た気がしたが、一年も経つと凡人は変わるもんだな…。
 俺なら、彼女への想いは決して変わらない!!
 この熱い想いは……絶対に!!

 だからこそ、こうして俺様はこの街を離れられずに今日まで来たのだから…!!!!

 あぁ…。
 なんて健気なんだ…俺って奴は!!

 おお…。
 朝日が昇る。
 空を見上げると雲一つない!
 まさに、俺様の新しい門出をこの星が祝福しているかのような晴天だ!!
 見ろ!
 朝日を受けて輝く出来立てホヤホヤの闘技場を!!
 素晴らしい!
 俺の新しい人生の……麗しい伴侶と共に歩く輝かしい未来への第一歩に相応しい舞台だ!!

「お〜い…大丈夫かぁ…?」

 おっと、感慨に耽りすぎて日雇いの仲間が心配してる。
 俺は緩む頬を引き締め、「勿論、大丈夫さ!良い出来上がりにちょっと感動してただけだ」と答えた。
 仲間達が疲れた顔をしながらもニッと笑う。
「おうよ!」
「ここで今日、『ジェノバ戦役の英雄のリーダー』と『WROの精鋭』が試合するんだなぁ…」
「感動だな…」

 地面に座り込んでしみじみそう言う仲間に、俺の心も感動で一杯だった。
 あぁ……試合開始が楽しみだ!!
 …とは言え…。
 流石に徹夜明けはキツイ…。
 今日は大事な日だからな。
 寝不足でノックダウン…などと情けない事になったら一大事だ!

「悪いけど、試合まで仮眠室で休んでるから試合開始三十分前に起こしてくれるか?」
「「「了〜解〜〜!!」」」

 うんうん。
 仲間というのはいいもんだ!!
 日雇いで気が荒い野郎共だけど、根はいい奴らなんだ!
 俺は素敵な未来を信じ、幸福のうちに仮眠室へ足を運んだ。
 簡易ベッドに横になりながら、念の為に携帯のアラームで目覚ましをセットする。
 いや、別に仲間達を信じてないわけじゃないが、皆も疲れてるからな。
 念の為だ!!
 携帯の待ち受けに設定している女神様が微笑んでいる。
 その微笑を胸に抱きしめている内に、いつしか深い眠りに落ちていった……。



 ……のが悪かったのか!?



 何やら周りが騒がしくて目が覚めた俺は、一瞬自分がどこで寝ているのか分からなかった。
 どうも闘技場の方から沢山の人が興奮してる声らしきものに聞えるのだが…。

 ハッと我に返って携帯を手に取る。


 ノーーー!!!!


 思わず叫んだぜ!!
 しっかりと携帯のアラームを止めて寝ちまってるじゃねぇか!!
 おまけに、仮眠室には日雇いの仲間達が気持ち良さそうに高いびきで寝てやがる!!
 ぐあーー!!
 し、しまったーーー!!!!
 俺様の晴れ舞台がーー!!!!


 まだ寝こけてる仲間達を飛び越えて、俺は闘技場へ走った。
 くっそ、寝起き直後に走ったもんだから闘技場に着いた頃にはすっかり息が上がっちまって、目がクラクラとしやがる。
 ええい、しっかりしろ俺!!
 この先には、俺の将来の伴侶が待ってるんだ!!
 ここで頑張らねば男が廃る!!!


 いっけーーい!!!!


 気合い十分、意気込みこの上なーし!!
 俺は闘技場の門扉をくぐり、観客でごった返す観客席へ飛び込んだ。


 ワーーーー!!!


 途端、溢れかえるその熱気に頭がクラクラする。
 誰も彼もが必死になって闘技場に声援を送ってる。
 つい…。
 俺は意識を麗しい伴侶を探し出す…という目的から試合へ逸らしてしまった…。
 そこで見たもの…。
 それは…。


 ガキーン!
 ズシャッ!!
 ザッ!!
 バキッ!!
 ブンッ!!!
 ガツッ!!!!


 凄まじい異音を立てながら、剣と剣を合わせ、時には素手で…時には蹴りで相手を攻撃し、互いに一歩も譲らない二人の『戦士』。

 な、な…。


 なんじゃ、この試合のレベルの高さはーーー!!!


 ありえねぇだろ、このスピードとこのパワー!
 見ろよ、地面がいくつも抉れてるし!!!
 おいおいおい!?
 クラウド・ストライフが強いのは…まぁ分かってたさ。
 なにしろ『英雄』と謳われてるんだからな。
 だがよ。
 あの相手の隊員はなんなんだ!?
 一対一で渡り合ってるじゃねぇか!
 しかも、なんだって両手で剣を操ってるんだよ!
 あ、あ、ありえねぇ!!!
 絶対に…これは現実じゃねぇ!
 ハッ!!
 そうか、これは夢か!
 俺はまだ仮眠室で寝てるんだ!!
 そうかそうか……あ〜、びっくりした。
 そうだよなぁ、こんなハイレベルの試合を『いちWROの隊員如き』が出来るわけないっつうの。
 おまけに、クラウド・ストライフの強さもちょっと半端ないしなぁ〜!
 あれは反則だぜ。
 そうそう、これが夢だと分かるとこの試合のレベルの高さも納得出来るってもんだ。
 うんうん。
 そうと分かったら、サクッと起きてササッと麗しの女神様を迎えに行くとするか!

 …。
 ……。
 だが、どうやって起きたら良いんだ???
 そもそも、こんなにリアルな夢…ってこれまであんまり見たことねぇな…。
 むむ〜…。
 普段から夢なんか見ないから、夢から覚める方法なんか知らねぇし…。

 考え込みながらとりあえず観客席を歩く。
 その間も、目を見張る攻撃を英雄と隊員が繰り出し、その都度俺は度肝を抜かれた。
 観客達も妙にリアルに興奮してる…。

 うぉっ!
 おっさん、汚ねぇな!
 唾が飛んできたじゃねぇか!!!

 …ま、夢だから良いけどよ…。
 だがしかし、夢とは言え……やなもんだな……。

 とか思いながら歩いてると、俺の鋭い視覚がイトシイ彼女を発見した!!

 おお!!
 夢の中でも彼女はなんて綺麗なんだ!!
 頬を薄っすらと赤くして、一生懸命試合を見つめている彼女の輝く横顔に思わず見惚れる。
 吸い寄せられそうなその表情に、一気に鼓動が早くなる。

 ドッキドッキドッキドッキ!!

 お、お、落ち着け、俺!!
 これは夢だ。
 現実の彼女じゃないんだ!!
 だが…。
 それでも…。
 彼女の美しさがいささかも損なわれていないこの夢は、なんて素晴らしいんだ!!
 …この騒がしささえなければ…。
 まったく、なんて騒々しさだ。
 俺の夢なんだから、もう試合は良いんだよ。
 ほら、彼女と俺の二人きりにしてくれよ!

 …おっと、夢で満足してどうする、俺!!
 ダメだろ、ちゃんと目を覚まして現実の彼女を迎えに行かないと!!


「「「「あ!!」」」」


 周りの観客達が一斉に声を上げる。
 何事かと思って闘技場に視線を戻すと…。
 金髪の髪を陽に輝かせ、地面に倒れている隊員の喉元に大剣を突きつけている英雄の姿があった。

 カッコイイ…。

 思わず見惚れてしまった俺の耳に、奴の勝利を告げる司会の女の興奮した声が突き刺さる。
 途端に歓声に沸く会場と、隊員にそっと手を差し伸べる奴の姿。
 そして…。
 そんな奴に輝く笑みを浮かべ、一生懸命手を叩いて奴と隊員の健闘を湛えてやまないイトシイ彼女の姿。

 ズキーーン!!!

 うっ。
 夢とは言え…なんてキツイ光景だ。
 完全に彼女の目には、奴しか見えてない。
 しかも!!
 優しい目で隊員に手を差し伸べ、相手の健闘を認めて満足そうに笑みを浮かべてる奴と、ガッシリと握手を交わす隊員のその光景のなんて素敵な事か!!

 くあ〜〜〜!!
 そうだよ、これが男の世界さ!!


 しかし…。
 これは俺の夢であるはずなのに、なんて胸が痛む夢なんだ。
 それも悪夢…とはほど遠い『感動』が確かにある。
 何故だ!?
 イトシイ彼女は奴しか見えてない。
 そして、奴も彼女しか見ていない。
 観客達は、そんな二人にからかうような口笛を贈ったり、歓声を上げたり…。


 何でだ!?
 俺の夢なのに…俺は主役じゃなくて脇役じゃねぇか!!
 グルグルと疑問符が頭一杯に渦巻いてる。
 そうこうしてる内に、とっとと試合の方は次の第二試合に突入した。


 今度の相手は、これまた俺から見たら『若造』が二人。
 クラウドの野郎はその間、エリクサーで完全回復してやがる。
 チッ!
 そのまま負傷した状態で試合して自爆したら良かったのによ。
 あ、いやその…。
 これはどうせ夢だから、最後はこの俺様がババーンとカッコよく登場する場面が待ってるはずなんだから、別に奴が完全回復しようがどうしようが…関係ないんだが…。


 ザシュッ!!
 ヒュンッ!!
 スタン……ザッ!!!
 ブンッ!!
 ガキッ!!
 ッキーーン!!
 ガガガッ!!
 キンッキンッ!!
 ヒュン、ビシッ!!!
 ガッ!!


 ……これまた目を見張るばかりのスピードと二人の隊員のコンビネーションプレイに目を奪われる。
 一人一人の力は、さっきの隊員よりは落ちるのだろうに、そのコンビプレイの絶妙な事!!
 ありえんだろうが!!
 しかも、その二人を相手に、クラウドの野郎はちーっとも引けを取らずに戦ってるし!!
 な、な…。


 なんて試合だーーー!!!!!


 ハイレベルな試合が一試合だけじゃなくて二試合も!!
 いくら俺の夢とは言え、このあと一体どうやってババーンとカッコよく登場したら良いんだ!?
 な、なんかこれ以上夢を見続けるのは……甚だ悪い気がする。
 だけど…。
 俺の中を流れる戦士としての血がこの試合を止めることをどうしても許さない。
 惹き付けられる。
 三人が付かず離れず、時には攻撃しかけると見せかけて別の奴が攻撃したり…。
 クラウドも攻撃をわざと避けないで喰らったかと見せかけて、絶妙な体位でありえねぇ角度から大剣を繰り出して見せたり…。
 そりゃもう、神業のオンパレードだ。
 観客達はその都度歓声と悲鳴を上げ、息を飲み、目を見張ったり目を覆ったり…。
 とにかく大忙しだ!!

 ハラハラ、ヒヤヒヤ、ドキドキ…。

 そんな客達の胸中が耳に聞えるみたいだ。
 いつの間にか俺様も試合にすっかり引き込まれて…。


 そして、目を最大限に丸くする事となる。



 十六連続斬りの大技が若い隊員二人を襲い掛かった。
 しかも!!
 その大技を満身創痍の隊員は途中まで防ぎやがったんだ!!

 まぁ、結局最後は半分くらい喰らって倒れたんだがよ…。
 それにしても……WROの隊員が……普通の人間がここまで『英雄』と称される男と渡り合えるとは!!
 い、い、いくらなんでもちょっと……この夢は……冗談きつ過ぎる。
 おまけに…!!


 女神様とクラウドの野郎が、人目も憚らず熱い視線を交わしてるじゃねぇか!!


 二人から漂う甘い雰囲気。
 誰にも断ち切れないその強い絆…。
 お互いしか見えてないのが一目で分かるその究極の『愛』に、とうとう俺は我慢出来なくなった!!
 だって、これは俺様の夢だろう!?
 俺の夢ってことは、俺が主役じゃねぇか!!(← 完全に夢から覚めると言う目的を忘れてます)

 怒りのまま、二人の元に駆け出した俺だったが…。

「あ!!」

 何かに思いっきり躓いて…。
 そのまま観客席の階段を転げ落ちた…。


 暗転。




「……ってぇ…」
「お?気が付いたか?」
「んあ…?」
 ズキズキと痛む頭部に手をやりながらゆっくりと身体を起こすと、目の前に呆れたような…心配したような親方の顔があった。
「お前、闘技場の観客席からモロにダイブして頭打って気絶してたんだぞ?」

 ………へ…?

「まったく、いっつも『俺は元・ソルジャーだ!』って自慢してる割には抜けてるよなぁ」

 ………えっと…?

「せめて受け身くらい取れよ…」

 ………あ〜っと…その…。

「そうそう!お前が気を失ってる間に試合、終っちまったぞ。もうとっくに夜なんだぜ、今」

 …………ってことは、先程見た試合は……

「ま、もう少し休んだらお前も帰れよ?俺は一足お先に英雄の勝利を祝いに例のオヤジの店に行って来るからよ!」

 …………。

「もし、気分が悪くないならお前も来いよ?他の連中は皆先に行ってるからな」

 ………。

「じゃな!」

 ………。



 神よ…。
 もしかして、先ほど目にしたあの光景は…夢…じゃなくて……。



うそだろーーーー!!!!



 控え室に俺の絶叫が響き渡った。

 なんてことだ…。
 さっきのが夢でなく現実だとは!
 いやいや、もしかしたら、これはまだ夢の続きなんじゃないのか!?

 頼む!
 誰かさっきのは夢だと言ってくれ!!
 さっきの試合の凄まじさはぜ〜んぶ俺の脳内で見た幻だと言ってくれ!!




 ここまで現実を直視出来ないで自分の都合の良いように考えようとする人間も珍しい…。
 もしも、彼の一連の行動を見ている人間がいたらそう思うことはまず間違いない。
 さて…
 哀れな男の出した結論は……?

 それもやっぱり…。
 神のみぞ知る。



 あとがき

 終ったーー!!
 T・J・シン様!!
 お待たせしましたーー!!
 いやぁ……ほんっとうに難産でした(笑)。
 お笑いキャラは既に決定してたのですが、どういう風に『英雄シリーズ』と絡めたらいいのか分からなくて…。
 試行錯誤の末、『現実を直視出来なくてあたふた』という結末で終っちゃいました(苦笑)。

 甚だしくご期待に添えていないと思いますが……。
 どうぞお受け取り下さいませーー!!(脱兎)