その日の早朝。
 セブンスヘブンに大事件が勃発したと報告が入った。





Are you ready? 1






 連絡を受け取ったのはティファ・ロックハート。
 早朝6時という非常識な電話に、朝食の支度をするべく身支度を整えていた彼女は眉間にしわを寄せた。
 こんな時間に電話とは、よっぽどの用件ではないか…と不安がよぎる。

 そして、その不安は見事的中してしまうこととなってしまった。

 電話を切ってから正確に1分後。
 愛する彼女によって、久々に自宅で安眠を貪れると言う幸せを無残にも奪われてしまった金髪・碧眼の青年は、厳しい表情で携帯で仲間達に連絡を取りまくっていた。
 そして、その傍らでは、同じくティファも仲間達に召集をかけている。
 更に、セブンスヘブンとは離れた場所でも、非常線が張られていた。

 更に更に、凶事を知らせた電話から1時間後。
 子供達は騒がしい大勢の声によって夢の国から引き剥がされた。
 怪訝な顔を見合わせ、素早く着替えて1階に降りて…。

「なに…?」「どうしたんだ…皆…」

 勢ぞろいした面々に、目を丸くした。
 そこに集まっている顔は、どれも見知ったもの。
 ただの顔馴染みではなく、子供達の大好きな大人達だ。
 しかし、そのいつも陽気で子供達に笑顔を向けてくれる大人達は、今朝はいつもと様子が違った。
 どの表情も戦々恐々としている。
 中には憤りも露に、落ち着きなくウロウロと歩き回っている者もいた。
 そればかりではなく、テーブルの上にはいくつかのコンピューターが設置され、床には黒いコードがまるで蛇のようにいくつも伸びていた。

「あ…2人ともごめんね」

 一番最初に気づいたティファが、階段入り口で固まっている子供達に小走りに駆け寄った。

「うぉ!マリン!!」
「やかましい!!」

 久方ぶりの再会に思わず大きな声を上げた巨漢の男を、無情にもウータイの忍が張り飛ばした。
 低く呻きながら床にめり込んだバレットに、誰も哀れみの眼差しを向けず、起きたばかりの子供達へ気遣わしそうな視線を投げている。
 だが、その一方で、イライラとせわしなく動き回っていた者は、子供達が登場しても一向に落ち着きを取り戻す気配を見せず、常にない苛立ちと焦燥感を露にギリリ…と奥歯を噛み締めながらウロウロと歩き回っていた。
 胸いっぱいに膨らんだ不安を抱えきれないが故の行動。
 デンゼルとマリンは、大人達のただならぬ気配に暗雲が垂れ込めるのを感じずにはいられなかった。


「リリーさんが拉致されたの」
「「 !? 」」


 子供達が説明を求める前に、ティファが静かに口火を切った。
 目を見開き、2人は大人達を見渡した。
 心のどこかで『冗談だよ』と言ってくれることを期待して。
 そしてそう願いながらも心の大部分は、ティファがその手の性質の悪い冗談を言うはずがなく、必然的にそれが事実だということも瞬時に理解してもいた。
 ゴクリ…、と2人はつばを飲み込んだ。

「本当に…?」「リリー姉ちゃんが…誘拐…!?」

 囁くような声音で繰り返す2人に、クラウドが重々しく頷いた。
 ナナキもヴィンセントも微かに頷く。
 ユフィにいたっては、何度も拳を作ってバシバシと自分の手の平でそれを受けている。
 WROに勤めているグリート・ノーブル、ラナ・ノーブル、プライアデス・バルト、そしてシュリが揃っているところを見ると、これがただの『誘拐』ではないことが想像できた。

「リリー姉ちゃん、なんで誘拐なんかされたんだ…?」「犯人の目的は?って言うか、誰が犯人か分かってるの?」

 同時にしゃべった子供達に、クラウドとティファはそれぞれしゃがんで視線を合わせた。
 子供達の大きな瞳は不安と混乱で大きく揺れていた。
 子供達を落ち着かせるために、クラウドとティファはゆっくりと説明した。


 今朝、ノーブル家に脅迫の電話が入ったこと。
 同時刻、セブンスヘブンにも脅迫の電話が入ったこと。
 内容は言葉は違うものの犯人が求めているモノは同じものだった。

 ―『ノーブル家とその縁戚関係にあるバルト家に血の報復を』―
 ―『ジェノバ戦役の英雄と持ち上げられている愚者に正義の鉄槌を』―

 ――『『解放して欲しくば、1億ギルと共に大人しくその粗首を差し出すべし』』――

 更に、WROにはリリーと彼女の両親が縛り上げられ、猿ぐつわをかまされて恐怖に怯えている写真と彼女の毛髪が小さな箱に入って送られてきた。

 全て、この小一時間の間に同時に起こったことであることから、複数の人間が今回の事件に関与していることが窺える。


「だから、俺達はリリーさんの救出作戦に参加することになった」
「きっと、デンゼルとマリンも狙われる。それに、私達がこうして終結していることも気づかれているはず」


 そう語るクラウドとティファに、デンゼルとマリンは決然とした顔で頷いた。

「分かった」「私達はどうしたら良いの?」

 頭の回転が早く、物分りの良い子供達はすぐさま自分達が新たな『人質』とならずに済むよう、既に大人達がその対策を練っていることを察した。

「俺がWROの本部にまで連れて行くことになった」

 ゆっくりと大人達の輪が左右に別れ、現れたのはクセのある漆黒の髪を持つ若き中佐。
 クラウドとティファが安心して子供達を託せる数少ない人間の一人だ。
 デンゼルとマリンは大きく頷いて、2階へ駆け上がった。
 大人達が説明する間もなく、自分達でテキパキと荷造りを行って再び降りてきた。
 その僅かな間でも、状況は刻々と変化しているらしい。

 ラナは苛立ち紛れに店舗内をウロウロし、グリートは厳しい表情でパソコンの画面を睨みつけていた。
 プライアデスもいつにない緊張感に張り詰めた表情で、隣に設置されているパソコンを睨みつけていた。
 時折、なにやらブツブツと呟いているようだが、小さなマイクを装着していることから、別の場所で行動している隊員と同時に作業を行っているらしい。

 ヴィンセントはカウンターにもたれるようにして腕を組み、静かに目を閉じているが彼なりに緊張しているのだろう…。
 シドは落ち着きなくタバコの煙を吐き出し、バレットは義手の状態を何度も確かめつつ、時折発砲するポーズをとったりして士気を高めていた。
 ユフィに至っては、英雄達の中でもやはりと言うべきだろうか…、一番落ち着きがなく、せわしなく店舗内を往復するラナと似たり寄ったりの状態である。

「はい…、はい…。そのまま分析をお願いします」
「こちらはもう間もなく準備が整います。子供達を脱出させることに成功したら、すぐに計画を実行に移します」

 プライアデスとシュリがそれぞれ何やら指示を出したり、報告しているのが2人の耳にはっきりと届く所まで大人達に近づくと、すぐさまティファが駆け寄った。
 そうして、無理に笑顔を貼り付けると、子供達の視線に合わせるべくしゃがみ込んだ。

「2人とも、なるべく早く帰ってくるから待っててね」

 そう言ってギュッと抱きしめたティファを、デンゼルとマリンは短く抱きしめ返した。

「うん、分かってる!」「でも、無茶はダメだよ?絶対に皆、無事に帰ってきて!」

 ほんの少し、声が上ずった子供達に大人達は表情を更に引き締めた。
 背筋が自然とピン…と伸びる気持ちだ。
 クラウドはそっとティファの隣にしゃがみ込むと、
「あぁ、分かってる…心配しないで……と言うのは難しいだろうが、信じて待っててくれ」
 ポンポン、と2人の頭を軽く叩いてからそっと…、しかし力強く抱きしめた。
 2人も素直にその抱擁に応え、ギュッとしがみ付く。
 そして、すぐに離れていつの間にか親代わり2人の真後ろに来ていたシュリを見上げた。
 シュリは目だけで頷いてみせると英雄と部下達を見渡した。

「では、すぐに出発します。途中、敵に走査される危険があるため、携帯はここに置いていきますので暫く俺との連絡は取れません」
「おいおいおい、それってもしも途中でマリンに何かあったらどう対処するんだ、この野郎!!」

 シュリの言葉にバレットが猛然と抗議をした。
 しかし、その抗議の声にシュリが反論する間もなく、四方八方から拳と蹴りが飛んできて巨漢の英雄はセブンスヘブンの床の味を本日二度も味わうこととなった。

「不吉なこと言うんじゃねぇ、このすっとこどっこい!!」(シド)
「シュリが失敗するわけないじゃん、ほんっとうにこの単細胞バカ!!」(ユフィ)
「バレット、いい加減にしなよ!」(ナナキ)
「お前の大声の方がよっぽど危険だ!敵が店の周りに盗聴器を仕掛けてたらどうするんだ!?」(クラウド)
「バレットのバカ!」(ティファ)

 シュリとプライアデスは、英雄達のその行動に一瞬、緊張感が解けてしまったような呆けた表情を見せた。
 そっと顔を見合わせ、気を取り直して顔を引き締める。
 デンゼルとマリンはそれをバッチリと目撃していた。
 なんとなく、変に緊張感が良い方向へ流れてくれたような…そんな気持ちがした。

「では、行って来ます」

 大勢でドアの外まで見送るのは流石にマズ過ぎる。
 そのため、泣く泣くバレットとユフィはドアの内側から見送ることで我慢し…。
 クラウドとティファのみがドアの外まで見送りに出た。

 そそくさとWROの所有しているトラックに子供達は乗り込むと、窓から身体を思い切り出してクラウドとティファ、店の中から心配そうな顔をして見送ってくれている英雄と隊員達を見た。
 その表情はまだ幼い子供とは思えないほど、引き締まった力強いものだった。

「皆、また後でな」「クラウド、ティファ、父ちゃん、皆も頑張ってね。デンゼルと待ってるから」

 クラウドとティファは、それぞれ子供達の額にキスを送ると、そっとトラックから離れ、決意新たに力強く微笑んだ。
 その微笑に子供達は微笑み返しつつ、店内をチラリ…と窺った。
 プライアデスの微笑みはあったが、グリートとラナの微笑みはなかった。
 ラナは強張った表情で子供達を見送ってくれていたが、グリートは見送ることすらしなかった。
 いつもお調子者で明るく、緊張する場面でも解してくれる存在が、ここまで静かな怒りに燃えているのを見たことがない。
 英雄やプライアデス達は心配ないが…、グリートのただならぬ様子に、一抹の不安がよぎった。
 だが、2人がそれを口にする間もなく、シュリはアクセルを吹かせた。
 最後に精一杯の笑顔で手を振りながら、デンゼルとマリンはあっという間に見えなくなった。


 *


「本当に大丈夫かよ…」

 子供達を見送ったクラウドとティファが店内に戻って最初に聞こえたのは、バレットの不安そうな声だった。
 シュリの腕は確かだが、今回の誘拐犯の用意周到さを考えると不安は拭いきれない…。
 だが、この場に集まっている者達の中で一番適任なのは、やはり『星の声が聞こえる』シュリだろう。
 ティファは軽く息を吐き出すと、カウンターの中へ入って行った。
 まだ誰も朝食を食べていない。
 腹が減っては戦は出来ぬと言うが、実際に本当のことだと思う。
 満腹だと動きが鈍るため、腹六分目が一番良い。
 緊張と不安で朝食を摂る気になれないだろうが、そういう時こそしっかりと備えておかなくてはならない。
 ブドウ糖が不足したら、脳が正常な判断を下せなくなる…と、何かで聞いたこともあるし…。

 そう考えながら、手早くティファはサンドイッチとコーヒーという朝食を整えた。
 贅沢を言えば、スープやサラダも欲しい所だが、手づかみで食べられて状況が一変した時に迅速に行動出来る食事形態の方が良いだろう。
 コーヒーメーカーのコポコポ…という音を聞きながら、ティファは早朝にかかってきた電話の声を思い出していた。

 粗野で卑猥な男の声。
 背後で聞こえてくる小さな息遣い。
 怯えきったその息遣いは、リリーと両親のものだろう。
 嘲笑しながら脅迫の言葉を紡いだ男に、心の底から怒りがこみ上げてくる。
 そうして、ティファの回顧は場面を変えた。
 早朝に電話したにもかかわらず、しっかりとした声をしていたラナ・ノーブルに、既に彼女達にも同じような脅迫の電話があったのだと理解した。
 そして、彼女から知らされた『箱』の話に怒りで目の前が真っ赤になった。

 リリーの頭髪が入っていた…というその言葉に。

 リリーは元々短髪だ。
 クセの強いクルクルとカールをしている髪は、リリーをとてもキュートな女性に仕上げていた。
 その髪を…。
 女性にとってとても大事な髪を脅迫の道具とするとは…!
 誘拐されただけでも強い恐怖を感じているはずなのに、直接刃物を髪に入れられたリリーの恐怖心はいかほどだろう…!?

 ハッ!とティファは背後に気配を感じて振り返った。
 いつの間にかクラウドがカウンターの中に入っていた。
 コーヒーを注ぐために人数分のカップを棚から取り出している。

「ティファ、大丈夫だ。俺達には星の中にも仲間がいるんだから」

 カップを取り出しながら小さく、落ち着いた声でそう言ったクラウドに、ティファは軽く目を見開いた。
 自分の不安、怒りはどうやらクラウドにバレバレだったらしい。
 目を細めて口の両端を軽く持ち上げる。

「うん、ありがとう」
「いや…」

 なんてことはないやり取りだが、怒りが正常な判断が出来る程度に収まっていくのを感じた。
 クラウドの何気ない言葉、手伝おうとしてくれるさり気ない心遣い。
 それらがこんなにも嬉しい。

 ティファは出来上がったばかりのサンドイッチを大皿に乗せた。

 仲間達は深刻な顔をしながらも、ティファの気遣いを無駄にすることはなかった。
 いつも元気一杯で、人の分まで食べようとするユフィだったのだが、流石に今朝はそんな気になれないようで、サンドイッチを頬張りながら険しい顔を崩さなかった。
 バレット、シド、ヴィンセント、ナナキ、プライアデス、クラウドにそれぞれ皿を差し出す。
 サンドイッチを受け取りながら、クラウドは逆にティファの手から大皿を取り上げて彼女に差し出した。
 ティファもサンドイッチを手に取りながら小さく微笑む。
 そのままクラウドは、落ち着きなくイライラしているラナに皿を差し出した。
 ラナは突然現れたサンドイッチの大皿にビックリして顔を上げた。
 怒りのために周りが見えていなかったことの証明だ。
 取り繕うように微笑もうとして失敗し、ラナは顔をクシャリ…と歪めた。

「あの子…、本当に優しい子で…」

 今まで堪えていたものが零れ落ちるように、ラナの声が震えている。
 英雄達と従兄弟が、そんな彼女にビックリして目をやった。
 ラナはそんな視線に気づいていない。
 彼女の目はサンドイッチに注がれているようで、その向こうを見ているようだ。
 誘拐されて恐怖に怯えているであろう、大切な友人へ…。

「すごく…怖がりで……。でも、本当に…本当に良い子で……!」

 堪えきれない思いが言葉の奔流となるのを止められない。

「私が…、『ノーブル家』だって分かっても…、変わらずに友達としていてくれて…!」

 段々、声が高くなるのを…、悲鳴のようになっていくのを…止められない。

「いつでも…私をただの友達として……!それなのに……、『ノーブル家』と関わりがあるからってだけで……、こんな!!」


 ヒュッ!


 嗚咽交じりのその悲鳴。
 英雄達が鋭く息を呑んだ。
 ここまで弱々しくなっているラナを見たことがないし、彼女とリリーの関係の深さも見たことがなかった…。
 ただ驚いて、痛ましくて…胸が抉られる。

 取り乱し、一滴(ひとしずく)の涙を零した彼女を、プライアデスがそっと抱きしめた姿にもまた、心打たれるものがあった。

「大丈夫。中佐も言ってたでしょ?リリーさん達にはまだ危害が加えられてないって…」
「でも!髪の毛が…!!」
「うん…そうだね。女性にとって髪は大切だもんね。でも、まだ髪の毛だけで済んでる…」
「髪の毛だけって!!」

 プライアデスをキッ!と睨み上げながら甲高い声を上げたラナの目から、また涙がこぼれた。
 紫紺の瞳を優しく細めながら、青年はそっと涙を拭った。
 そして口を開く。

「大丈夫だよ。彼女は大丈夫。そのために僕達はここに集まったんだから」

 静かな声音に込められた力強いその言葉に、ラナは唇を震わせながら引き結んだ。
 そうしてボロボロッ…と涙を零しつつ何度も何度も頷いた。
 頷くたびに涙が宝石のように床に落ちる。
 青年は、そんな彼女をあやすように、優しく抱きしめながら背中をポンポン…と叩いた。

 クラウド達の胸に、リリー親子を絶対に救出してみせる、と強い思いが改めて宿った瞬間だった…。

 だが…。
 そのある意味感動の場面にあったのに、プライアデスが見せた表情にクラウドとティファは違和感を感じた。
 青年が心配そうな目を向けた先にいるのは、ラナではなく、彼女の兄。

 その時初めて、クラウドとティファは気がついた。
 グリート・ノーブルがセブンスヘブンに来てから、一言も口を利いていないことに。
 いつもの彼は、どんな困難な場面でも冗談にして笑い飛ばしつつ、決して油断しないでチャンスを掴もうとするしなやかで力強い青年だ。
 それなのに、今日は違う…。
 黙ったまま、硬い表情でコンピューターの画面を睨みつけている彼からは、怒りのオーラを感じる。
 その怒りのオーラは、決して清いものではなく、むしろ…。

『『 禍々しい… 』』

 何が何でも報復してやる。

 そんな殺気立ったものすら感じる彼の気配は、押し殺された感情の奥底から沸き立つようだった。
 ああ、だから…。
 プライアデスは心配している。
 従兄弟がとんでもない方向へ突っ走るのではないか…と。
 そして、同時に悟った。
 グリート・ノーブルにとって、リリー・フローがどれほど大切な人なのか…と。
 きっと、クラウドにとってのティファ。
 ティファにとってのクラウドと同じくらい、大切な存在なのだ。

 青年がいつから自分の妹の親友にそういった感情を持つようになったのか分からないが、時間は関係ない。
 大切な存在は、時として奇跡のように突然降って湧いてくることがある。
 そして、その大切な存在が生まれた瞬間、自分の命を投げ出してもそれを守ろうとするのが人間。
 ある意味、とても利己的なその感情は、周りの人間を不幸にすることもある。

 今回のこの事件は、グリートの周りにいる人間を不幸にする危険を孕んでいた。
 それをプライアデスは心配しているのだ。

 クラウドはティファを、ティファはクラウドを見た。
 そして頷く。

 絶対に不幸な結末にはしない…と。
 自分達には星の加護がある。
 ライフストリームで眠る親友達に願う。

 正しく導いて……と。
 彼女と両親を守って…と。

 その時、パソコンの画面がブン…とその表示を変え、皆の注意を引いた。


 ―【探査終了。標的はエッジの南南東に存在。速やかに任務を遂行すべし】―