自分達が一体、どんなに危険で愚かな行為に走ったのか…。
 それをしっかりと思い知らせてやる。
 地獄の底に落ちた後でも絶対に消えないような恐怖を…。

 あいつらに…!






Are you ready? 2






 赤い髪を持ち、常にひょうきんな男は思った。

『どうしてこうも、間が悪いんだぞ……と』。

 スキンヘッドでサングラスが定番の男も思った。

『………不運だ…』と。

 今、彼ら2人は自身の日頃の行いを振り返り、『神様にお仕置きされる可能性』を探していた。
 ありすぎてしまうのが、なんとも情けない。
 だがしかし、2人は良い意味でも諦めが良く、状況に柔軟な対応をとることが出来る性格だった。
 朝早くに、仇敵の店に遊びに行くというバカなことをしたのが運の尽き。
 自分達の起こした『ちょっとした気まぐれ』と『仇敵(クラウドとティファ)を冷やかしに〜♪』というアフォな発想を恨みそうになりつつも、切迫した状況に一肌脱ごう!と気持ちを切り替えた。

「それで、あんたらと馴染みの深いお嬢さんが性質の悪いのに誘拐された…ってことなのか…っと?」

 言葉の最後に『〜っと』とつけるのがクセであるレノに、ティファが頷いた。
 クラウドは前方を疾走している。
 巨大なバイクを軽々と操っているクラウドの後姿を追いかけながら、トラックを運転するティファの横顔にうっかり惚れ直しそうになりつつ、ルードは赤い髪の悪友にニヤニヤ見られていることに気づき、わざとらしく視線を離しながら咳払いをした。

 トラックの助手席に座ると言う幸運を手に入れたルードだが、うっかり変なことが出来るはずもなく、前方を疾走するクラウドの姿をなんとなしに見やった。
 いつもなら、ティファの隣に男が座ることを容認しないはずなのに、今日に限って何も言わないばかりか、自分達が突然来訪したことを『ナイスタイミング!』と言わんばかりに、今回の事件に巻き込んでくれたクラウドに驚きを禁じえない…。
 それはもう、鮮やかに、自然に、文句を言うタイミングを全く与えてくれずに巻き込んでくれた。

 そんでもって驚きついでだが、一緒のトラックに乗っている面々にも驚いてしまう…。

 シドはシエラ号という飛空挺の艦長なのだから、どうして地面を走っているこのトラックに同乗しているのか分からない…。
 長い槍を抱え込んでドッシリと座っている姿は、それはそれは貫禄があるのだが…。
 紫の瞳をした青年にも目が吸い寄せられる。
 ここまで見事な紫色は見たことがない。
 まるで生きた宝石のような瞳。
 人間で紫の瞳をしたものがいるとは驚きだ。
 だがまぁ、わざわざそれを口にしてこの場にいるメンバーから『総すかん』を喰らうなど、好んでするほど愚か者ではない。

 視線を少し遠ざけると、ヴィンセントが後方を走っているトラックの助手席に座ってるのが、バックミラー越しに見えた。
 巨漢の男が運転しているトラックに乗らなくて本当に良かった…と、こんなにも緊張感溢れる場面であるというのに、ずれたことを考えてしまう。
 だが、ギラギラした目で運転しているバレットのトラックに乗り込むような羽目にならなかったのだから、喜んでも罰は当たらないだろう…。
 ヴィンセントがシートベルトを締めることなく、ドアに寄りかかっているのは、絶対にバレットから距離を開けようとしているからだ…と、何故か妙な確信が持てた。

「それにしてもよぉ…」

 レノが口を開いた。

「そんなお嬢さんをわざわざ誘拐して、WROにまで脅迫をするってことは〜…」
「…よっぽどのバカだ」

 レノの言葉を引き継いだルードに、ティファはフッと口元を綻ばせた。
 その表情に心臓が高鳴るが、仏頂面とサングラスのお陰でバレずに済んだ。
 まぁ、悪友にはバレバレなのだが…。

「本当にね。絶対に…許さないわ」
「お〜お〜、怖い怖い」

 ティファの言葉に不適な笑みを感じ、レノは短く口笛を吹いた。
 茶化すような彼の口調に、ティファは軽く笑った。

「ティファさん、このまま真っ直ぐお願いします」

 コンパクトタイプのコンピューターを操っていたプライアデスがティファに指示をした。
 短く了承の声を上げつつ、ハンドルを操作する。
 目の前を走るクラウドは、常にサイドミラーでトラックの動きを確認している。
 トラックが進路を変更したら迅速にその方向へ走るためだ。
 なら、何故トラックの後ろを走らないで前方を走る…という、妙なことをしているか、と言うと、答えは簡単。
 ティファを守る盾となるためだ。
 敵の配置がどこに隠れているのかまでの詳細は分からない。
 トラックの後ろをピッタリと付いて走ってもクラウドならばすぐに迅速な対応が出来るだろうが、こればかりは譲れないそうだ。
 仲間達は既に諦めてるのでクラウドが前方を走ることに反論しなかった。
 ティファは少しだけ文句を言ったが、結局はクラウドの意見を受け入れた。
 言い争っている時間がなかったからだ。

 二台のトラックに乗り込む際、WROの隊員らしき若い女性と男性がいたことを思い出す。
 2人はバレットの運転するトラックに乗り込んだ。
 男性の手にはプライアデスと同じコンピューターが握られていた。
 絶対に離すものか、と言わんばかりに握り締められたその手が腱を浮かせていた様子を思い出し、ザワリ…と気持ちが不快にうねる。
 初めて見る青年だったが、彼が非常に追い詰められていることは簡単に察しがついた。
 下手に触れると大火傷をすること間違いない。

 そして感じた青年の気迫と秘められた力量に、舌を巻いた。
 WROを密かに警戒している自分達の主(あるじ)に拍手を送る。
 リーブは確かに素晴らしい人材を着々と集めている。
 ルーファウスが危険視するのも頷けると言うものだ。

「それで、一体どこに向かっているのかなぁ…と」

 お茶らけた口調に混ざっている『ヒーリンはありませんように』という願いに気づいたのはルードだけ。

「エッジの南南東に位置する荒野です」
「そうか。それでそこが敵さんの本拠なんだな?」
「いえ」
「違うのか?」
「はい、恐らく」

 プライアデスの落ち着いた口調と比べ、驚いたレノの声は浮ついて聞こえる。
 何となくこの状況を楽しんでいるかのようだ。
 いや、実際に楽しんでいるに違いない。
 何でも楽しく、困難を乗り越えようとするのはレノの美点だろう。
 楽しみながらも、決してフラフラと本来の目的を忘れてしまう危険を持っていないのだから。

 プライアデスは淡々とした口調でその場にいる全員に聞こえるようはっきりと言った。

「恐らく、敵はリリーさん達を本拠地に引き込んではいません。我々が人質の救出を何よりも優先していることは既に周知の事実です。それに伴い、我々が脅迫に屈することなど絶対にないと言うことも分かっているはずです」
「確かに、一々脅迫に応じてたら、WROはあっという間に崩壊するわなぁ…。てことはだ…。脅迫に屈することなど絶対にないってことを世の中に知らしめるためにも、WROは迅速に行動に移す必要があるってワケだな?」
「はい、その通りです。その辺のことは敵も分かっているでしょう。ですから、自分達の本拠地に人質を連れ込むという愚かなことはしないと思われます」
「ま、そうだろうなぁ。自分達のホームが人質奪還を目論むWRO達に目を付けられたら、軽いダメージで済むはずないだろうしな」
「えぇ。それに、我々の行動は既に敵も把握しているでしょう。我々の行動を各地方に配置させている仲間達に速やかに伝え、且つ、的確に指示を与えるためにも、ホームの場所は絶対に我々にバレないように細心の注意を払っているはずです」
「そりゃそうだろうなぁ…と」
「でも…」
「あん?」

 言葉を切った隊員にレノは片眉を上げた。
 青年は心なしか笑っているようだった。
 プライアデスは怪訝そうな顔をするレノにゆっくりと頭を振った。

「我々は甘くありません。そのこと、すぐに思い知るでしょう」

 細められた紫紺の瞳に宿った光は、レノとルードの背筋にちょっとした戦慄を走らせた…。


 *


 前方を走っているトラックを睨むように見ながら、巨漢の男はハンドルを握っていた。
 イライラしないでもないが、それは今回の事件に対しての苛立ちばかりではない。
 無論、か弱い一般人であるリリー親子を、富豪とWRO、ジェノバ戦役の英雄と交流がある…、というだけで誘拐した犯人達に憤りを感じないわけではないのだが、このトラックに漂う重苦しい圧迫感が苛立ちの大きな原因となっていることは否めなかった…。

「おい…」

 とうとう、堪えきれずに声を出す。
 だが、それに応えてくれる仲間はいなかった。

「おい」

 少しだけ大きな声を出す。
 隣に座っているヴィンセントが視線だけをよこしたが、すぐに前を向いてしまった。
 後ろに座っているユフィは、早くも乗り物酔いを起こしており、気持ち悪そうに窓にへばりついている。
 その後部座席に座っているのは、この重苦しい空気の元凶である兄妹だった。
 ラナは、セブンスヘブンで見せていた苛立ちと強い焦燥感こそ見せていないが、それでも不安が払拭されたわけでも、犯人への怒りが消えたわけでもない。
 兄が持っているコンピューターへ視線を落とし、片時も離さない。
 そして、彼女の兄こそがこの重苦しい、殺伐とした空気の大元だった。
 これほどまでにこの青年が押し黙り、静かに怒りに燃えている姿を英雄達は知らないし、実は妹であるラナも見たことがなかった。
 ラナが店で見せていたような焦燥感を見せずに済んでいるのも、若干この兄の存在がある。
 自分以上に怒りを感じさせる存在によって、怒りが若干削がれている、そんな感じだ。

 だが、だからと言ってバレットの呼びかけに応えるほどの余裕はないのだが…。

 バレットが運転席から声をかけているのは無論聞こえていたが、それが果たして自分達に向けられているのかどうなのか、分からないというのも応えない理由ではあった。

 バレットが不満そうに呻いたのが聞こえたが、結局それにも応えない。
 バレットは諦めて溜め息をついた。
 願わくは、この重苦しい空気をぶっ飛ばせる場面に早く到達することだけ。

 人質解放のため、大暴れ出来るその時をバレットは焦がれるような思いでトラックを走らせた。


 バレットが仲間達に無視されていた頃。
 丁度WRO本部にいるリーブの元に新たな情報が寄せられた。
 リリー親子を誘拐した犯人を目撃した、という美味しい情報だった。
 だが同時にその情報はとても怪しいものを含んでもいた。
 何しろ、目撃情報などというものは、いち早く隊員達が収集活動にあたった項目。
 それが、事件が勃発して約2時間経ってから寄せられた…と言うのが実に怪しい。
 犯人側のフェイク、という可能性もある。
 リーブは会議室に集まっていたメンバーに、目撃情報の信憑性を尋ねた。
 皆、一様にリーブと同意見だった。

「信憑性は限りなく薄いですね」
「真っ赤なウソ、と言うことはないでしょうが、罠が仕掛けられている可能性は充分高いでしょう」
「それに、誘拐された時刻と言うのがまたなんともウソ臭いですなぁ…」
「フロー家が営んでいるケーキ屋が閉店する時刻は20時。その時刻に数名の人間が訪れ、店内から悲鳴らしきものが一瞬聞こえた、とのことですが…」
「昨夜の20時でしょう?時間が経ち過ぎてますよねぇ…」
「本当にその時刻に誘拐されたのなら、どうしてこんなに時間が経ってから目撃証言が出たんでしょう…」
「その悲鳴らしきものを聞いた時、すぐ警察に連絡をしなかった理由を目撃者はなんと言ってるんです?」

 リーブは顎に手を添えながら渋い顔をした。

「目撃…と言うよりも、誘拐の『音』を聞いた『証人』が正確ですね。『本当に悲鳴だったのか確信がなかったし、他人の厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだった』とのことです。ちなみに、今更証言してきたのは、『もしも本当に事件とかだったら、やっぱり後味が悪いから』だそうですよ。良心の呵責と言う奴でしょうかね」

 隊員達は溜め息を吐いた。
 確かに、他人の厄介ごとに巻き込まれるのは誰でもイヤだ。
 だが、フロー家の評判はすこぶる良く、今回新たな情報を寄せてきた人間も、フロー家には何かと日頃から世話になっている人間だった。

 そのことを思うと、人間関係の希薄さが浮き彫りに見えてしまい、侘しさを感じさせる。

 リーブは気を取り直したように隊員達を見渡した。

「とにかく、信憑性が低いからと言って無視をするわけにもいきません。新たな情報も視野に入れて、人質救出と犯人グループの割り出しにかかって下さい」

 隊員達は敬礼でその命令に応えた。

 そしてその敬礼と同時に、リーブに新たな連絡が入った。
 セブンスヘブンの子供達が無事に本部に到着したという、任務の1つが完了した知らせだった。


 *


「では、俺も合流するから、2人とも、少しの間我慢してくれ」

 デンゼルとマリンは、漆黒のクセある髪を持つ青年中佐にそう言われ、こっくりと頷いた。
 その瞳は、しっかりと現状の大変さを理解していると悟るには充分だった。
 子供達のために割り当てられた部屋は、客室として度々用いられる部屋だった。
 広くて開放的なその部屋は、まるでホテルのようだ。
 もっとも、豪勢なもので部屋を飾っているわけではなく、あくまで『WRO組織』を感じさせる簡素なものではあるが、子供達にとっては充分なものだった。
 TVも勿論あるし、ベッドも2つある。
 小さいなりにも冷蔵庫があり、中にはジュースと水、お茶がそれぞれ2本ずつ用意されていた。
 スナック菓子とプリンも用意されており、子供達の顔がほころんだ。

「兄ちゃん達も大変なのに、こんなに用意してくれてありがとう」

 ニッコリ笑って礼を言うデンゼルに、シュリは目を細めた。

「これくらいしか用意してやれなかった…すまない」
「充分だよ」

 ニコニコと笑うマリンに、デンゼルが頷く。
 シュリは後方に控えている隊員から新たな携帯を受け取りつつ、子供達に向き直った。

「任務が完了するまでここにいてもらいたい。退屈だと思うけど…」
「「 大丈夫。待ってるから 」」

 声をはもらせた子供達に、控えていた隊員達の表情も和む。
 シュリはデンゼルとマリンの頭をポンポンと叩いて姿勢を正した。

「もうすぐ女性隊員が食堂に連れて行ってくれるから、そこで朝食を食べてくれ」

 そして、控えている隊員達に、
「出発だ」
 一声かけ、敬礼で返した部下達を伴い、颯爽と出立した。
 その青年の後姿を、子供達は頼もしく感じながら、見えなくなるまでジッと立って見送った。


 *


 人質が閉じ込められる場面は、映画や小説で何度も遭遇している。
 しかし、ここまで開放的な人質に出会ったことはない。

 そうリリーは思っていた。

 薄暗い部屋に閉じ込められているわけでも、縛り上げられているわけでもない。
 広くて明るい部屋は、床から天井まで一面をガラス張りにされている。
 一目で外の光景が分かるのは、敵の侵入に備えたものだろうか…?
 きっと、外からは中の様子は見えないだろう。
 入り口には、自分達親子を誘拐した男達が悠然と座っている。
 人質である自分達をこれっぽっちも威嚇したりしない。
 もっとも、脅迫の電話をかけた時には卑猥な声を出していたし、自分達へわざとナイフを突きつけ、恐怖を煽ったのだが、脅迫が終わるとさっさと解放してくれた。
 脅迫用の写真を撮り終ってから、一度も縛られていないし、猿ぐつわをかまされてもいない。
 いささか拍子抜けするほどだ。
 自分達を脅し、怯える姿を見る趣味はどうやらないと言うことだろう。
 それがありがたかった。
 恐怖は幾分か薄れてはいるが、緊張感がほぐれるわけではない。
 昨夜、閉店直前に来訪してきたこの迷惑な客達は、実に手際良くリリー達を誘拐してくれた。
 近所の人達が気づいてくれたかどうか、疑わしいくらいの手際の良さだ。
 悲鳴を上げられたのもほんの一瞬だった。
 もう少しだけ、悲鳴を上げ続けられたら警察に通報してくれたかもしれないのに…と、悔しく思う。

 ―『静かにしろ』―

 その一言と、突きつけられた拳銃を前にしてあっさりと言いなりになってしまった自分が情けない。
 だが…とも思う。
 大人しく従ったからこそ、両親も自分も無傷でここにいられるのかもしれない…。
 まぁ、自分は髪の毛を切られてしまったので、完全に無事かと言われるとそうではないだろう。
 だがまぁ、これくらいで済んでいるのだから、喜ぶべきだろう。
 誘拐犯が人格的にもっと破壊されていたら、髪を切られる程度では済まなかったはずだ。

『もしかして…、女として魅力がない……とかなのかなぁ……』

 などと、ズレたことを想像してちょっぴりガッカリしたりするあたり、リリー・フローは女傑なのかもしれない。
 両親は娘ほどリラックス出来ていないようだ。
 娘を挟んで固く抱きしめあい、誘拐犯が少しでも動いたりするたびにビクビクしていた。
 そんな両親に挟まれているから、娘が逆に落ち着けているのかもしれない…。

 ともかく、リリー親子は人質と言う実に不名誉な立場に立たせられながらも、命の危険には今のところ遭遇していなかった。

『今頃、ラナ達はどのくらい近くに来てくれてるのかな…』

 リリーは親友の顔を思い出しながら、申し訳ない気持ちになった。
 自分達のせいで、彼女が苦しめられていると思うとたまらない気分だ。
 きっと、ラナと彼女の兄は己を責めるだろう。
 紫紺の瞳を持つ青年も然り。
 彼らは、自身を責めることに関して『ジェノバ戦役の英雄達』と同じくらいの素質を持っている。
 金髪・碧眼の英雄を思い出してほんのりと頬を染めつつ、リリーはふとグレーの瞳をしたWRO隊員を思い起こした。
 彼は…。
 自分がこうして人質となったことにどう感じてくれているだろう…?
 勿論、妹の友人が誘拐されたのだから、平静ではいられないだろうが、『それだけ』だろうか…?
 もう少し…、もう少しだけ、『それ以上』の感情を抱いてくれないだろうか…?

 そこまで考えて、リリーはパッと頬を押さえた。
 緊張の糸を張り詰めている両親がビクッとする。
 リリーは気まずそうな顔をして両親へ首を竦めて見せながら、鼓動はバクバクと早鐘を打っていた。

 もしかしたら…。
 本当にもしかしたら。

 今回の事件は何か素敵なことを呼んでくれるかも…。

 こんな酷い目に遭いながら、そう考える自分に呆れながらも、リリーは想像することを止められなかった。


 グレーの瞳と紺碧の瞳の青年2人が助けに来てくれる瞬間を。


『私ったら惚れっぽいのかしら…』


 リリーは両親を驚かせないよう、小さく溜め息を吐いた。