ジェノバ戦役の英雄達が三度、星を救ってから一年半後…。
 それは一年半前から途切れる事無く続いている物語…。



Fairy tail of The World 〜その後 二人 (前編)〜




 ティファは生後四ヶ月の我が子を胸に、至福を感じていた。
 だがそれでも心はいつも、もう一つの願いを抱いており、それを諦められずにいる…。

『二人にも抱っこしてもらいたいな』

 生死がはっきりしない状態で一年探しながら待っていた『彼ら』。
 その中の一人がつい四ヶ月ほど前にひょっこりと戻って来た。

『シュリ』。
 シュリから聞かされた『二人』の話しがどれだけ嬉しかったか。
 どのようにして三人で時を過ごしたのか聞いた時はビックリしたが、それ以上にやはり歓びが勝った。

『もしかしたら近々帰って来るかもしれない』

 そう思って期待してしまっても、仕方ない…とティファは思う。
 イヤでも期待は膨らんだ。
 だが、彼らは姿を現せる兆しを見せず、WROに入ってくる『癒者』の情報もてんでバラバラの地方であるため、『二人』が一体どこに向かっているのか、何を基点として動いているのかが全く分からなかった。
 唯一、『二人』についてよく知る人物はたった一言。

 ― 時が熟せばまた会えますよ ―

 だから待っている。
 ひたすら待っている。
 時が満ちるのを…。
 もしかしたら、十年後かもしれない。
 二十年後…、死ぬ直前?
 いや、死んで星に還ってから…?

 出来れば死ぬまでにもう一度会いたい。
 会って、お礼が言いたい。
 子供達を抱いてもらいたい。
 そして…。


 抱きしめたい。


 彼女がいかに自分を大切にしてくれていたのか、今なら分かる。
 彼女は自分が間違えた道を歩いていることをずっと諭してくれていた。

 ― 手駒とするために攫った ―

 彼女は最後までティファにそう言った。
 ティファもまた、彼女の過去を見せられて、彼女の心は闇にあると信じた。
 しかし。


 トン。


 あの時、クラウドの身体越しに感じた『一押し』。
 彼女が最期の最後、クラウドと自分を『闇』に捕まらないよう、背を押し、盾となってくれたあの瞬間。

 初めて見せてくれた『微笑』。

 アイリの輝く笑顔は、今も脳裏に焼きついて離れない。


「…頑張ってるよ」
 口に出してみる。
 そうすることで、彼女が彼女自身を責めるのをやめさせるかのように…。

「幸せだよ」
 我が子の寝顔へ口付けながら、心の底からの想いを口にする。

 そう、幸せだ。
 こんなにも…、こんなにも幸せで、眩暈がしそうだ。
 この今ある幸せは…。

「アイリ達のお蔭よ。本当よ」


「ティファ?」


 まるで目の前に彼女達がいるかのようにそう言うティファを、帰ったばかりの夫が目を丸くして戸口に釘付けになっていた。
 ティファは、まさか見られているとは気づかなかったので、ビックリし、危うく可愛い我が子二人を床に落とす所だった。
 赤ん坊が目を覚まし、火がついたように泣き出した。
 慌てて二人で一人ずつを抱き上げ、必死にあやす。

 どうにか赤ん坊が泣き止み、二人揃ってホッと肩の力を抜きながら最愛の我が子をベビーベッドに寝かせた。
 そうして、今更ながらだが…。

「ただいま」
「おかえりなさい」

 二人は照れ臭そうに笑いながら、そっとキスを交わす。
 夫婦になって早一年。
 親になって四ヶ月。
 それでも、こうして「ただいま」と「お帰り」のキスを交わすのは幸せだけど…恥ずかしい。
 きっと、死ぬまで慣れる事は無いのだろう。
 そして、二人ともそれで良いと思っている。
 いつまでも自分達は変わらずに自分達のやり方で、愛していけばいい、大切にしていけばいいのだから。


「ところで、なにを言ってたんだ?」

 場所を移し、店内兼家族の食卓を囲む場にて、クラウドが先ほどの疑問を口にした。
 ティファはすっかり忘れていた話しを彼が思い出させたことに真っ赤になると、照れ臭そうに煎れたばかりのコーヒーをクラウドに差し出し、自分にはカフェオレのカップを持って、彼の隣に座った。

「なんとなくね、ライ君とアイリが戻ってくる気がして…それでつい」
「そっか」

 たった一言でクラウドは理解した。
 自分達にとっては特別な人達だ。
 三年以上前にセフィロスを倒すために戦った仲間と同じくらい大切な人達。
 それほど、アイリとプライアデス、そしてシュリは大切な存在だった。
 星を救っただけではない。
 自分達を救ってくれたからでもない。
 そうではなくて。

 己の本心をひた隠しに隠し通し、闇の皇帝として最期までその烙印を保持し、死のうとした彼女。
 全ての十字架を一人で背負い、地獄に行くつもりだった彼女。
 そこまでして、彼女は自分を責め、苛んでいた。
 全ては『星に宿っているすべての命を救うため』。
 ただそれだけを胸に、彼女は二千年もの長い時を『闇』に身を置き、ずっと待っていた。
 時が熟し、闇から光へと魂が帰依出来るその一瞬を!

 ここまで自分を犠牲にし、そうして最期は地獄に行くつもりだった彼女が、あまりにも哀しくて…。

 だから、願わずにはいられない。
 どうか、彼女が幸せであるように。
 地獄に堕ちることよりも、生きて贖罪するべきだ、というプライアデスの言葉にて辛うじて彼女はまだ生きている。
 だから…どうか!
 今度こそ、彼女には幸せになって欲しい。
 そう…思っている。

「口にしたら…なんだか本当にアイリ達に届く気がして」
「そうか…」

 照れ臭そうに笑ってカップを口につけたティファを、クラウドはサッとその頬に口付けを贈った。
 ビックリして、危うくカップの中身をこぼしそうになったティファは、真っ赤になりながらクラウドを睨む。
「もう!」
「はは、ついしたくなった」
 ボンッ!
 ティファは真っ赤になった。
 そんな彼女を心から愛しいと思う。
 クラウドはもう一度、今度は彼女の唇にキスを贈った。


 ティファは。
 いつしか『アイリ』のことを呼び捨てにするようになっていた。
 それに気づいたのは、ティファが呼び捨てで呼ぶようになって随分経ってからだった。
 何故、自然と呼び捨てにするほど、ティファの中で関係が近くなったのか…。
 それは恐らく、アイリの過去に長い間『浸かっていた』ことにより、彼女に対して妙な親近感が宿ったのだろう…と、クラウドは思っている。
 その証拠に、プライアデスとシュリは、『ライ君』『シュリ君』と以前と変わらない呼び方をしているのだから。
 そんなティファの変化を、クラウドや仲間達は自然と受け入れていた。
 至極最もな気がしたのだ。
 ティファとアルファは、一つの魂の記憶を一部分ではあるが共有した。
 いわば、『ソールメイト』だ。
 『魂の友』。
 ティファはアイリの魂の根底にある闇を見た。
 そこがティファとクラウドの違い。
 クラウドは、ティファに見せられたものと比べ、随分『浅い部分』しか見ていない。
 そして魂同士が触れ合った時間も極々短時間。
 その違いは大きい。

 アイリが何を考え、何をしようとしているのか。
 何かは分からないが、確固たる『目的』を果たそうと頑張っているような…、そうおぼろげに感じることがある…。
 ティファはシュリが戻ってからふとそう口にしたことがあった。
 それを初めて聞かされたとき、クラウドは口にしなかったが…。

 本当は……怖かった、言葉に出来ないほど、恐ろしかった。

 ティファがそう感じるのは、アルファとの魂での繋がりが完全には切れていないのではないか…?
 そう思った。

 ティファがアルファの『闇』の部分と完全に切れておらず、細い糸のようなもので縛り付けられているのではないか。
 もしかしたら、『アイリ』としての部分とは別に『アルファ』としての『闇』が残っており、それがティファを再び闇に引きずりこもうとしているのではないか…と。
 しかし…。
 クラウドは案ずることを『やめた』。
 アイリがもしかしたら未だに『闇の女帝』であるかもしれないという疑念。
 ティファがまた、『闇の駒』として利用されるかもしれない恐怖。
 それら全てを案じ、不安に思うことを『やめた』。
 代わりに…信じたのだ。

『アイリ』を。

 10年以上、魔晄中毒患者としてつらい日々を送る仮面を被ったまま、二千年以上も闇に魂を晒し、見事『闇』から迷える魂たちを解放させた彼女の信念を。

 だから…待つ。
 ひたすら…最愛の人と、最愛の子供達と一緒に…。


「さ、手伝うよ。もうそろそろ、欠食児童達が帰って来るだろう?」

 笑いながら若き父親は立ち上がったのだった…。


 *


「やっぱさぁ、今、流行の服が一番良いと思うんだ〜!」

 ユフィがそう言いながらティファを振り返る。
 二人は今、生まれたばかりの赤ん坊のために『乳幼児被服店』に来ていた。
 生後4ヶ月の赤ん坊は、シドと共にエッジへやって来ていたシエラに預けている。
 シドもシエラも、赤ん坊の世話を嬉々として買って出た。
 特にシエラの喜びようは、見ていてくすぐったくなるほどだ。
 久方振りの自由な時間を満喫しながらも、ティファとユフィの頭の中は赤ん坊のことで一杯だった。
 いかにして赤ん坊を可愛くさせるか!
 そのことに思考が持っていかれる…。
 ティファもユフィも、その事自体に違和感を感じていない。
 わくわくしながら衣料ブースへと足を向け、あ〜でもない、こうでもない…とはしゃぎながら次々と可愛い服や帽子を見比べた。
 本当に愛しい、楽しい時間。
 ティファは『レッシュ』と『エアル』を連れて来なかったことを安堵すると同時に後悔も感じていた。
 愛しい人との間に生まれたいとし子の服を合わせて買ってやれないことのもどかしさと、混雑している店内を見て、生まれたばかりの赤ん坊には厳しい環境だった…という感想。
 中々どうして、素晴らしい親バカ振りだ。
 その親バカ振りは、しっかりとクラウドにも生まれ、日々育まれている。
 ユフィやシドなぞは、若干冷ややかともとれる視線で見やるほどだ。
 だが、デンゼルとマリンもクラウド、ティファと同等くらいの溺愛ぶりなのでなにも言えずに今日まできているのだが…。

「これ、すっごく可愛い!!」

 ユフィが店内の品を物色しているティファに声をかけた。
 手には『牛がら』の白地を貴重とした黒ぶちが描かれた小さい角を持つベビー服。
 ティファは顔を綻ばせながら「本当!レッシュにもエアルにも似合いそう!」と声を弾ませた。
 得意げに笑って見せるユフィにティファが近付く。
 そしてその服に手を伸ばしたその時。


 乾いた破裂音と共に上がった悲鳴。
 和気藹々とした楽しい空気が一瞬にして張り詰めた緊張感に変わる。

 ユフィとティファは見た。
 銃を天井向けて発砲した男達を。


「動くな!今から動いた奴は遠慮せずに撃ち殺す」


 お決まりの台詞が、髭面の男の歪んだ口から発せられた。


 *


「状況は!?」

 作戦本部であるテントに駆け込んだ金髪・碧眼の仲間に、リーブは腰を上げた。

「まだなにも…。ただ、ティファさんとユフィが敵に正体を知られているわけではないのは確かです。もしもバレているなら、もっとWRO(こちら)に対しての要求は大きくなり、大胆不遜な態度に出るはずですから」
「という事は……ティファはレッシュとエアルを連れてベビー服を買いに行ったんじゃないんだな…?」

 クラウドは全身から安堵の溜め息を吐き出した。
 勿論、最愛の妻が『反武装勢力グループ』の人質であることには変わりはない。
 ないのだが、ティファとユフィが『ジェノバ戦役の英雄』であると気づかれていないこの状況は有り難かった。
 何しろ、警察もそうだが、WROとしてもティファとユフィが人質にとられたら身動きが出来ない。
 ティファとユフィは当然、その場にいる他の人間を人質にとられて身動きがとれない。
 最悪のパターンだ。
 だから、出来れば相手を刺激しないように、密かにティファとユフィが動いてくれたら、一気に内側と外側から叩き潰すことが出来る…。
 しかし…。

 場所が悪かった。

 改めて言うまでも無いことだが、ベビー服専門店には、その客の大半が『赤ん坊連れ』の親や、祖父母なのだ。
 小さい赤ん坊が泣き喚くだけでも今回の敵を奇妙に興奮させ、いつ人質に向けてトリガーが引かれるか分からない。
 今のところ、数名の赤ん坊が泣いてはいるが、それでも敵は『見せしめ』と『口封じ』に移ってはいなかった。

 リーブから電話を受けたクラウドは、仕事の全てを途中で放り投げて駆けつけた。
 本当なら、いの一番にティファの元へ駆けつけたかったのが、作戦本部にいるリーブへ情勢を聞きに行くだけの冷静さはまだ持っていた。
 リーブは苦い表情をして双眼鏡を差し出した。
 無言で敵が立てこもっている建物を示す。
 黙って双眼鏡を覗いたクラウドは、衝撃のあまり呼吸を止めた。

 ベビー服のその店は、赤ん坊用から5歳くらいまでの服を取り扱っていた。
 中々評判の良い店であることから、近々二階に6歳から13歳くらいまでの子供服も取り扱う予定になっている。
 そう…。
 敵は、まさにこれから着工に入るその屋上に客と店員を集めていた。
 酷薄な薄ら笑いを浮かべ、泣いて我が子を取り戻そうとする母親目掛けて容赦なく蹴りつけているのが見えた。
 あと少し、倒れた先がずれていたら、彼女は地上まで5メートルの高さから落ちたことになる。
 下手をしたら最悪な結果となっていたかもしれない。
 クラウドは怒りにまかせてリーブに双眼鏡を荒々しく返すと、そのままの勢いで作戦本部から出て行った。

「クラウドさん、お気持ちは分かりますが待ってください!!」

 リーブが慌てて後を追いかける。

「クラウドさん、待ってください、怒りに身を任せてはいけません!」
「……止めるな」
 肩に置かれた手を振りほどく。
「それに、あそこにはまだまだ幼い赤ん坊とその両親がほとんどです。若い親だとまだ10代なんですよ。パニックになったら相手の思う壺です!!」
 前に回って遮ろうとするリーブを乱暴に押しのける。
「……邪魔するな」
「それにまだ相手の今回の立てこもり事件の要求は分からないんですよ」

なら聞き出せ!!

 魔晄の瞳が怒りにカッ!!と見開き、足を止めて真正面からリーブを睨みつけた。
 傍にいた隊員達が、その猛る怒りに背筋を凍らせる。
 だが、リーブは真っ直ぐクラウドを見つめ返した。

「もうやっています、交渉をね。でも、相手がそれに応じないんです」

 リーブの苦味を帯びた必死な表情に、クラウドは頭に上っていた血が少しだけ下がった。
 何度か怒りを抑えるために深呼吸する。

 やがて、
「分かった……待つ」

 怒りは収まりきってはいないが、感情に任せて行動するのを思い止めるところまで己の感情を殺すことにどうにか成功した。
 リーブはホッ…と息を吐き出すと、クラウドに深く頭を下げた。
「すいません、一刻も早く打開策を見つけてみせます」
「その時は、俺も作戦に混ぜてくれ」
「えぇ、勿論です」

 2人は頷きあうと、そのまま立ち入り禁止区域まで歩いた。
 敵が立てこもっている建物からかなりな距離がある。
 立ち入り禁止区域の前まで来ると、どうにか肉眼でも銃を持った男がふんぞり返って立っているのが見えた。
 それに、普通の出入り口、従業員用の出入り口、あとは非常ドア、それに屋上の出入り口等、それぞれの扉の前には男が2・3人ずつ立っている。
 本当なら、一斉射撃をして射殺し、人質を解放させるのが一番良い手かもしれない。
 しかし、リーブは元々殺生に対して良い顔をしない。
 当然、WROという巨大組織の局長をしているのだから、そういう場面には何度も出くわしているし、その度に自分の良心の痛みに耐えている。
 だから、クラウドは逆に不思議だった。
 あんな風に、『狙撃兵』に狙撃しやすいように堂々とその姿を晒している敵を前にして、敵の要求が分からないから…と、攻撃を待機させていることを。
 何故、攻撃しない?
 何故、誰もリーブに『意見』を言わない?

「…まさか…!」

 クラウドは自分が突き当たった『結果』に、思わず声を漏らした。
 リーブが苦い顔でコックリと頷く。

「敵には『バック』があるんですよ。ここからの情報は、その『バック』がしっかりと見ています」
「くそっ!」

 クラウドは臍をかんだ。

 バック。
 要するに、あの男達とは別の場所に、指令を下す人間がいるのだ。
 そして今、WROに囲まれている自分の部下達を見ているのだ…どこかのモニターで。
 WROが不穏な行動に出たら、恐らく人質を一人ずつ見せしめに殺していくつもりなのだ。
 WROを…、リーブを『ゆする駒』として利用するつもりなのだ!

「おい、まだ分析は終ってないのか…?」
 いつの間にやって来たのか…。
 シドが深刻な顔で立っていた。
 クラウドとリーブは特に驚いた様子もなく、ゆっくりと首を振った。
 シドの目に怒りが宿る。

「まだあんなちいせえ命を人質にとるなんざ、くそ野郎だな!」
「まったくだ」

 珍しくクラウドがシドの意見に力一杯頷いた。

 リーブはチラリ…と、作戦本部となっているテントを見た。
 その中で作業を続けているシャルア博士の表情は厳しい。
 敵が『バック』から指令を受けた際、その電波を逆算して場所を走査しているのだ。
 だが、中々どうして、敵の後ろにいる奴は素晴らしい頭脳を持っているようで、WROが誇る科学者はまだ苦戦を強いられている。


 ザワッ!

 人質達の方が妙に騒がしくなる。
 座らされている人質の中から、誰かが引きずり出された。
 ここからでは顔はおろか、服装も……男なのか女なのか…どういう人なのか全く判別できない。
 先ほど、赤ん坊を母親から取り上げた男に向かってその新しい人質を押し投げた。
 とても細い身体つきをしているのか、フラフラと反武装組織の人間に片手を捻り上げられる。
 男の陰惨な笑みだけがクラウドの視界に映った。
 怒りが込上げる。

 その時。


 ―『こちらは、BB(ダブルビー)のメンバーだ』―

 隊員達がギョッとしたのをクラウドは見た。
 リーブでさえも、目を見開いている。

 男の声は続いた。

 ―『俺達の要求は唯一つ、そちらの優秀な中佐殿を渡してもらおう』―


 クラウドは目を見開いた。
 リーブをキッと睨みつける。

「おい、どういうことだ!」
「そういうことですよ」

 答えたのはリーブではなく、

「シュリ!」

 要求された当の本人が涼しげな顔で立っていた。