「たっだいま〜!遅くなってごめ〜……ん!?」 「うわっ!いきなり止まるなってマリ……ン!?」 元気良く帰ってきたセブンスヘブンの看板娘と看板息子は、店内で静かにコーヒーをすすっている人物に目を見開き固まった。 Fairy tail of The World 〜 heart to heart 〜 (前編)予想通りの子供たちにティファはカウンターの中で我慢することなく明るい笑い声を上げた。 満足げに、 「ね?言ったとおりでしょ?」 いささか胸をそらせる。 言われた相手はというと、 「そうですね」 サラリとした口調で流すと、戸口で固まった2人へ腰を上げた。 「お久しぶりですね、デンゼル、マリン。元気そうで何よりです」 淡々とした口調の中に、僅かにぬくもりを滲ませた。 弾かれたように駆け出す子供たちは満面の笑み。 「「 アイリ(お)姉ちゃん!いらっしゃーーい!!! 」」 そのまま勢い良く華奢な体躯の女性に飛びつく。 子供とはいえ、2人もの健康優良児に飛びつかれたというのに、危なげなく抱きとめると一瞬だけの抱擁を交わし、アイリはそっと2人の頭を撫でた。 「2人とも、ちゃんとティファを助けて頑張ってるんですね」 「「 えへへ〜♪ 」」 久方ぶりに会うアイリに褒められて2人とも嬉しそうに破顔した。 そのままアイリの腰掛けていたカウンターのスツールの両隣を占領する。 「ティファ、今夜はお店、お休みするんでしょ?」 「ティファ、なぁなぁ、シェルクはどこ行ったんだ?クラウドにはもう知らせた?」 「アイリお姉ちゃん、今夜は泊まってってよ!ね、良いでしょ?この前も泊まらなかったし〜!」 「そうだよ、泊まってってよ!んでさ、なんか面白い話し聞かせてよ!クラウドから聞いたんだけど、姉ちゃんって今、星を回ってるんだろ?ナナキと一緒だよな〜!イイなぁ〜、俺もいつか、世界を見て回りたい!!」 「うん、私も〜!そう言えばどうしてお姉ちゃん、突然来たの?言ってくれてたら遊びになんか行かなかったのに〜!」 「あ、そうだよ、マリンの言うとおり!前もって言ってくれよな、こう言うのを『水臭い』って言うんだぞ?」 先を争い、息をつかずに矢継ぎ早に話しかける子供たち2人を前に、アイリは無表情のままだった。 だが、決して『興味がない』というのではなく、ただ単にどういう表情をしていいのか分からない、といった感じだった。 ティファにはちゃんと分かっていた。 アイリが子供たちの一つ一つの言葉をちゃんと聴いていることに。 デンゼルとマリンにもちゃんとそれが伝わっていることも…ちゃんと分かっていた。 だから嬉しい。 嬉しくて胸がいっぱいで、うっかり涙腺なんかも緩んでしまいそうになるくらいだ。 泣く場面ではないので涙腺を引き締めるべく、ティファは満面の笑みを浮かべることで感情を思い切り放出させた。 「デンゼル、マリン。今夜、泊まらせて頂くことになるのか、それともお暇(いとま)することになるのかはまだ決まってないんです。ですから、もう少し待って下さい」 子供たちの言葉の本流の合間を突いてアイリが口をようやく挟んだ。 曖昧すぎるその予定に可愛い額にシワが寄る。 「なに、それ?」 マリンはデンゼルと同じように小首を傾げたが、すぐにポンッ!と手を打った。 「あ、そっか。シュリお兄ちゃんとライお兄ちゃんの予定で変わっちゃうんだ〜」 デンゼルも手を打つ。 なぁるほど!と仕草で表した少年に、ティファが煎れたてのカフェオレをコトリ、と置いた。 満足そうな笑みが浮かんでいる。 視線をデンゼルからアイリに向け、ティファはニッコリ笑った。 「本当にどうなるのかしら、楽しみね」 微笑みに対し、アイリは相変わらずだった。 無表情のまま、湯気を立てなくなったカップを手に取る。 「そうですね。まぁ、兄上にとってはあまり楽しみではないでしょうが…」 一口啜ってアイリはもの問いたげな子供たちをチラリ…と見つつ、 「何はともあれ、これくらいの根性は超人であろうが凡人であろうが誰だって持っていると思うので、なんとかなるでしょう…」 と、空っとぼけた口調でデンゼル、マリンにはさっぱり分からないことを呟いた。 心意を問うべく口を開いた2人は、実にタイミング良くカウンターの入り口近くに置かれていた檜のベビーベッドから、己の存在を主張するかのように泣き声をあげたレッシュとエアルにより、すっかり意識を奪われた。 そうして、戻ったときには忘れてしまったのだった…。 * ところ変わって…。 「シュリ…」 常にない華やかさで彩られているWRO支部では、その装いとは全く正反対の、陰気で低い、ジメッとした声音が1人の青年を拘束していた。 その青年は、漆黒のクセ有る髪を持ち、満天の星空を髣髴とさせる黒曜石の瞳を持つ。 いつもは何事にも動じないことで有名な彼だったのだが、彼は今、その『クール』で『WRO一の出世頭』という肩書きを持つというのに、ジト目で自分を見る同年代の青年を前に、戦々恐々としていた。 全ての肩書きを下ろさなくてはならない状態のシュリの周りには、彼と同じ装いの隊員たちで溢れている。 彼も、他の隊員たちも常の戦闘服とは一変する装いでその場にいた。 WROに所属する人間が身に纏うにはお洒落すぎるその『隊服』は、黒をベースとした生地に紫とシルバーの光沢にてアクセントをつけている。 周りには2人と同じ制服に身を包んでいる男性隊員、そして同じ生地であつらえた制服に身を包んでいる女性隊員がそれぞれいつもと違う自分たちや周りの隊員たちに気分を弾ませていた。 滅多に着る事はない『隊服』での召集。 星の害となるあらゆるものと戦う組織にお洒落なぞ必要ない!という考えのリーブに賛同した者たちの集まりといっても過言ではないWROに、なぜこのような『隊服』があるのか。 それは、新年の祝賀会や年末の慰労会といった行事関係のときにまで、『任務』で薄汚れてしまう『制服』では気持ちにメリハリがつかないことと、一般人からのパーティー等に招かれたとき、招待してくれた相手に失礼になってしまうからだ。 勿論、そうそう滅多に有るわけではないが、極々たまに招待されることがある。 ならば、わざわざ『隊服』なんぞ作らなくとも、各自でそれぞれ自分の持っている一張羅で参加させてもらったら良い、という意見もあった。 しかし、わざと『隊服』を作ることで、パーティーに参加している一般人に一目でWRO隊員であると分かってもらうことと、逆に隊員たちがそういう『パーティー』においても『WRO隊員』であることを忘れないため、気を引き締めるためという目的があった。 そのため、入隊したときに各自一着ずつは必ず支給されている。 今ではパーティー用のWRO隊員の隊服は、ちょっとした話題を呼んでいたりもして、一般人が隊服姿の隊員と一緒に写真を撮りたがる現象がひそやかに巻き起こっていた。 というわけで。 WRO隊員は『今回』、滅多に着用することのない『隊服』に身を包んでいた。 このWRO支部の広い講堂に、なぜ『隊服』かというと、理由は簡単。 日頃の激務をこなしている隊員たちへの慰労会をリーブを始め、上層部に位置する幹部たちが催すことを決めたのだ。 全隊員を1度に『慰労会』へ出席させることは不可能なので、数回に分けて催される仕組みとなっているのだが、それでも数回に分けたとしても結構な人数が集まっている。 日頃任務で汗水たらし、お洒落とは程遠い世界に身をおいている隊員たちにとって、今回の慰労会は非常に楽しみな行事。 だからこそ、いつもよりも気分はハイテンションだし、ついつい異性の隊員へ目が向いてしまう。 そんな状況なので、女性隊員たちが注目してしまうのはやはりシュリとプライアデス、グリート・ノーブルだったりする。 ヒソヒソと囁き合う女性隊員たちの声は、興味津々、興奮状態な囁き声。 いや、囁き声だと思っているのは自分たちだけで、すでにその声のトーンはいささか甲高すぎて、半分以上聞こえてしまうレベルのものだったりする。 従って、隣やそのまた隣に立っている人たちにも聞こえてしまう程度のものだったりする…。 だから、青年たちは自分たちが異様に注目されていることも、どういった意図で見つめられているのかもちゃんと分かっていた。 分かっているからこそプライアデスはジト目状態で苛立っていた。 「シュリ、僕の言いたいこと、分かってるよね?」 「………」 「黙ってちゃ、分からないよ?」 「……分かってるくせに……(小声)」 思わず口を突いて出た不満に対し、耳ざとい青年は ジト目から一変、実に爽やかな笑顔を浮かべた。 「なに?言いたことあるならはっきり言おうよ。僕たち、お互いをとても大切に思っている従兄弟同士なんだから、思ったことをありのまま言うべきだと思うんだよね」 従兄弟の『作り笑顔』を前に全身が総毛だつ。 それとは対照的に周りで見つめていた女性たちが思わず小さな声を上げて色めき立つ。 (マジで殺(や)られる…!) 言葉に出来ないほどの確信。 シュリの心情など勿論、誰も気づかない。 男性隊員たちは、黄色い歓声を上げた女性隊員たちと、上げられる対象になったシュリに半目を向けながら、面白くなさそうな顔で手に持っているグラスをもてあそんだり、自棄気味に呷ったり、はたまた全く関係ないね、と言わんばかりに他の女性隊員へ声をかけるべくその場を立ち去った。 一番後者が一番賢明だろう…。 シュリは、従兄弟の穏やかな笑顔の下に隠れている本物の怒りを前に、戦々恐々とするばかりだった。 しかし、いつもの無表情さはやはり崩れていない。 良いのか悪いのか…判断に困るところだ。 シュリは全身の毛穴から汗が噴き出す思いだった。 そっと深呼吸をする。 意を決するのに要したのは僅か3秒。 「あのな…」 腹に力を入れて口を開く。 が…。 「へぇ!ラナ准尉って意外とお酒強いんだなぁ〜」 「そこもまた、イイ感じですねぇ〜」 「お、もうグラス空いちゃいました?じゃあ、今度はこっちもお試しあれ」 「いやいや、こっちのカクテルの方がキミに合うと思うなぁ」 ぐっ…。 出かけた言葉が喉の奥で止まり、全身が耳になってかなり後ろの方で繰り広げられていることに全神経が持っていかれてしまう。 目の前には穏やかな微笑みの裏で怒り心頭の従兄弟。 かなり離れたところには……未だにどこか、素直に認められない大切な人。 見た目では全く分からないシュリのその葛藤に、プライアデスはますます微笑みを冴え渡らせた。 「シュリ、イイのかな〜、このままで…」 「………」 「前にも言ったと思うけど、誰でも良いんだよ、あの子を幸せにしてくれるなら」 「………」 「でも、あの子はシュリと一緒に幸せになることを望んでるんだよね」 「………」 「………」 「………」 奇妙に固まったまま反応のない青年に、プライアデスは生暖かい微笑みになると、スーッと軽く深呼吸をした。 そのまま、妙にゆっくりした足取りでシュリの脇を通り過ぎる。 「アイリが来ても知らないからね」 ビックーーッ!! 通り過ぎ様に囁かれた一言。 シュリは、注目していた女性隊員たちがビックリするほど身体を強張らせると、油の切れたぜんまい仕掛けの人形のようにぎこちなく振り返った。 前世の従兄弟の背中は既に小さくなっていた。 そうして、はるか彼方(に見えるのは、シュリの心境をそのまま表している)で同僚の女性隊員たちと一緒に男性隊員に囲まれていたラナの傍にあっさり到着すると、爽やかスマイル全開で隊員たちを見事にあしらい、実に自然な仕草で彼女の腕をとって颯爽と掻っ攫ってしまった。 半ば呆然…、と言った風でラナとプライアデスを見送る隊員たちに、何故だかちょっぴり親近感が沸く。 と…。 チラリ、とラナが何か言いたそうにシュリを見た。 心臓が跳ねる。 そのまま、勢いに任せて行けば良いのに、一瞬の隙も与えない怒り心頭のプライアデスがラナの隣で視線を寄越した。 ―『いい加減にしないと、本当にサクッと刺しちゃうよ?後ろからでなく、前から刺してあげようか?』― 殺気混じりの怒気に踏み出そうとした足が固まって動かなくなる。 本当に…どうしたら良いのやら。 いや、原因は分かっている。 いつまでも煮え切らない態度を取り続けているから、彼女に辛い思いを味わわせているし、彼女の兄も、従兄弟であるプライアデスもイライラさせてしまっている。 重々承知だ、そのことは。 その彼女の兄は、これまたかなり離れた場所で他の隊員たちと談笑している。 時々、彼の意識が自分に向けられているのを感じるが、プライアデスほどは心配もイライラもしていない…らしい。 ラナが男性に囲まれているのは珍しくないので今夜のような場面は免疫があるのかもしれない…。 「…参った…」 思わずこぼれたぼやきは誰に聞かれることもなく床にころり…と転がった。 そのまま、なんとなく歩き出したのは良いのだが、何故に誰もいない壁へ足を向けたのだろう…? そう自問自答することになるのに時間はかからなかった。 まったくもって不器用極まりない。 それに比べ、プライアデスはどうだ? 先ほど鮮やかにラナを男性たちの中から掻っ攫った従兄弟の手腕が反芻される。 「……俺にも出来たら良いんだろうが……無理だ……。というよりも、ライの奴、なんであんなに自然に出来たんだ?…場馴れしているとしか見えなかったぞ……?」 ぶつぶつ呟くうちに、いささか余計なことにまで考えが及ぶ。 横道逸れそうになる思考を手繰り寄せ、講堂の前方にあつらえられている講壇を見た。 そこにはリーブを筆頭に、大佐クラスの人間が腰掛けて談笑している。 本来ならシュリもその列に加わっていなくてはならないのだが、一番年若い彼をリーブたちと同席させるのはかわいそうだ、という意見が出たようで、シュリには自由に移動出来るよう取り計らってくれていた。 十中八九、リーブの心遣いだ。 いつもならそんなリーブに感謝するところだろうが、今回だけは違ってしまうのが情けない…。 だから、またもやボヤキが口を突いて出る。 「…参ったな…」 「なにが参ったんだ?」 またこぼれてしまったボヤキは、誰に拾われることなく床に転がるはずだったのに返された問い。 唐突に登場したはずのその人に、シュリは微塵も驚くこともなく、真っ直ぐ前を向いたままのスタイルを崩さなかった。 「…一昔前のアナタと同じ状態になってて、参ってるんですよ…」 そう言って。 「本当に、どうやったら良いのか是非アドバイスしてもらえませんか?」 ようやっと視線を横に流した。 「クラウドさん」 人が溢れている場に、そっと紛れ込むことは意外と苦労しない。 特に、クラウドのように気配を殺したりすることに長けている猛者にとっては言わずもがな。 クラウドは、壁に背を預ける形でシュリの真隣に立っていた。 片頬を持ち上げて笑って見せる。 「それは無理だ。いつも余裕なんかなかったから、同じことを今もやれ、って言われたら出来ない」 「そうなんですか?」 「あぁ…。情けないことにな…」 「ふ…。なら、俺と同じ…ってことになっちゃいますけど?」 「いや、むしろ俺と同じってことを嘆いてくれてかまわないぞ?」 「よく言いますよ。今はこれ以上ない幸せをちゃんと手にして、守って生きておられる人に俺がなにを言えるって言うんです?」 「買いかぶりすぎだと思うがな…」 「そんなことはないでしょう」 クラウドはポンポンと交わされる会話に薄っすら笑った。 「それにしても、なんでライは怒ってるんだ?」 「あ、分かります?」 「分かるに決まってるだろ?原因は…」 ツイ、と向けられた視線の先に、シュリは肩を竦めた。 仲間と話していたグリート・ノーブルの輪に合流し、プライアデスとラナが和やかに談笑している。 その輪に次々と人が加わって、大きくなっていくのが見て取れた。 自然と人を惹きつけてしまう魅力があるのはザックスやエアリスのようだ…とクラウドは思った。 シュリは軽くため息をつくといよいよラクな姿勢で壁にもたれた。 「…ライから聞いたんですか?それともアイリ?」 「いや、ティファだ」 「…………マジで…?」 「大マジだ」 「は〜〜…」 肩を落としたシュリに、クラウドはクックック…と笑うと傍を通りかかったワゴンからカクテルを2つ取った。 1つをシュリに渡しながら自分の分をさっさと口に運ぶ。 口に含んだクラウドがほんの少しだけ奇妙な顔をした。 「ティファさんの作ったものと比べたらダメですよ」 「…見てたのか?」 「いえ、見なくても気配で」 「…お前は全身が目になれるわけか…?」 「なんです、その気味悪そうな失礼な態度は」 「ック…。お前、段々いつもの調子が戻ってきたな」 「そんなこと……あるかもしれませんね」 「あぁ、そんなことありありだな」 「クラウドさんのお陰…ということにしてもいいですよ?」 「なに言ってる。まんま、俺のお陰だろう?」 「はぁ…、ったく、英雄のリーダーさんは意外と狭量ですね」 「知らなかったのか?」 「いえ、知ってました」 「…お前、失礼だぞ」 口先では不機嫌そうだが、クラウドはどこまでも穏やかに笑っていた。 シュリはずっと無表情。 だが、その無表情の中にいつもの飄々とした雰囲気が戻ってきている。 受け取ったカクテルをあっという間に空けてしまうと、アルコールで少し熱くなった息を軽く吐き出した。 「本当に女心は俺には分かりません…」 呟いた声音は、どこにでもいる青年のもので、クラウドは『おや?』と言わんばかりに眉を上げた。 シュリはクラウドの様子に頓着せず、どことなく疲れたような顔をした。 「アイリたちの気持ちも分からないことはないんですが、そもそも俺はこのままの状態で満足してるんです。慌てて何らかの形にしないといけないことはないと思うんですが…」 「…お前がうまくいかないのはそれが原因だな」 やれやれ。 肩を竦め、シュリと同じように壁に背を預ける。 並んで立つ2人の姿に、隊員たちが流石に気づき始めた。 ジェノバ戦役の英雄のリーダー、クラウド・ストライフ。 その隣に立つWRO一の凄腕と謳われるシュリ。 目を引かないはずがない。 だが、2人の人を寄せ付けないオーラによって隊員たちは遠巻きにちらちらと視線を向けるので精一杯だった。 クラウドは講堂の一番前に座っているリーブが見ていることに気づいて軽くグラスを掲げて見せた。 遠目からも分かるニヒルな笑みで同じように返される。 貫禄のついた仲間の姿に心がほっこりする。 彼の周りには頼りになる隊員たちがこんなにいるのだ…と改めて知ることが出来て、クラウドは満足だった。 その満足感をより質の良いものとするためには、『先ほど聞いたこと』を実行に移すべきなのだろう…。 「お前、そんなこと言ってると本当にラナさん、誰かに掻っ攫われるぞ?例えば、あそこの隊員とか」 講堂に入ったときからマークしていた男性隊員を視線だけで指す。 そのとき、シュリの眉が僅かにひくついた。 |