「ほ〜ら、キュート。お花が綺麗だねぇ〜」 愛らしい笑い声を上げる小さい小さい妹の手を引きながら、心がぎゅ−ってなって、ホッコリ幸せいっぱいで…。 だからまさか、こんな目に遭うとは思いもしなかったよ…。 HAPPY DAY(前編)あ。 こんにちは、皆さんお久しぶりです、キッドです。(初めましての方は、初めまして〜♪) 今、俺は家の近くに半年前くらいに出来た新しい公園に、2歳半の妹と一緒に来ています。 とってもいい天気だから、妹を連れてお散歩に来てみました。 公園といってもすっごく大きい公園で、『レジャー施設』ってのがスッポリ入ってるんだ。 その『レジャー施設』の建物の周りには、お年寄りや小さい子供でものんびり歩ける散歩道があってね、そこを今、キュートと一緒にゆっくりゆっくり歩いています。 綺麗に整備されてるお花や木が風に揺られてサワサワ言ってるんだ。 え?お母さんはどうしたかって? うん、お母さん、最近ちょっと調子が悪くて横になることが多いんだ。 だから、キュートを連れてお散歩してるんだ。 家にいたら母さん、ゆっくり出来ないからね。 それに、俺ももう10歳だからさ、しっかりしないと! 小さい妹の面倒くらい、ちゃんと出来るんだし。 「あら、お兄ちゃん1人?偉いわね〜」 キュートと一緒に歩いてるとよくこうして声をかけられる。 んで、時々飴玉とかもらっちゃったりするんだ。 ニコニコ笑いながら、 「あ〜とぉ〜(ありがとう)」 って舌っ足らずに一生懸命お礼を言う妹に通りすがりのオジさんとかオバさんとかが目をふにゃ〜って細めて笑ってくれるんだ。 頭を撫でてもらってニコニコ笑っているキュートがこれまた可愛くて可愛くて! 俺の友達もすごく妹を気に入ってくれてるんだ。 この前もデンゼルが、 「キュート〜♪キッド兄ちゃんは優しいか〜?俺も優しいんだぞ〜?ほぉら、高いたか〜い」 ってデレデレしながら『高い高い』してくれたんだ。 それ見てマリンが、 「デンゼル、次わたし、次わたし!!」 って、必死になってた。 うん、あれは面白かったな。 やっぱり、妹が可愛がられるのを見るのは嬉しい。 そうそう。 デンゼルとマリンの家にも半年前に赤ちゃんが生まれたんだ!! ん? 違う違う!!デンゼルとマリンの子供じゃないから!! デンゼルとマリンも、俺と一緒でまだまだ全然子供だから!! そうじゃなくて、クラウドさんとティファさんの赤ちゃんなんだ♪ すっごく可愛い双子なんだ〜vv 良いなぁ、双子の赤ちゃん!! 勿論、キュートは掛け値なしに可愛いよ、うん。 でも、双子ってさ、すっごく特別に見えるんだよなぁ、なんでだろ…? とと、話がそれた。 とにかく! 俺はこうして友達に好かれて大事にされる妹が可愛い。 だから、家で調子の悪い母さんに遊んでもらえなくてしょんぼりしているキュートを置いて遊びには行けない。 というわけで…。 「ほら、キュート。お昼ごはんが食べれなくなったら困るから、飴ちゃんは1個だけな?」 「あ〜い」 口を開けた妹にポン…と飴玉を1個、放り込んでやる。 小さい口には大きい飴玉を、一生懸命コロコロコロコロする顔が可愛くてさ〜! あ〜…、俺って本当に『兄バカ』だよなぁ。 でも、良いんだ〜、兄バカでも。 「おに〜ちゃ、おに〜ちゃ」 一生懸命、キュートが俺を呼ぶ。 『おに〜ちゃ』は『お兄ちゃん』ってことなんだ。 小さい手を一生懸命伸ばしながらポテポテ歩く後姿は、もうホッコリするくらい可愛くて、同時に『こけないかな!?』ってハラハラさせられる。 まぁ、こけても上手にこけるんだけどね。 母さんが言うには、小さい子供がこけるのはバランスを養うために必要なことだから大丈夫…、なんだって。 でも、やっぱり怪我したらさぁ、可哀相だろ? だから俺はいつもハラハラ、ヒヤヒヤする。 そんな俺を、父さんと母さんはいつも笑いながら見てるんだ。 『まるでキッドの方が俺よりも父親みたいじゃないか?』 『ふふ、そうね』 『うぉい!そこは否定しろよ!』 『キッドはアナタよりも父親で、私よりも母親だと思うわ』 『む!そ、そんなことはないぞ!?お前に勝る母親はいない!』 『あら、ありがとうアナタ。嬉しいわ』 『そ、そうか?』 『えぇ。ふふふ』 『ハッハッハ』 …父さん。 完全に母さんの手の平の上で転がされてるね。 うん、でもそれで我が家は幸せ家族が築けてるからそれでいっか。 「きゅ〜も〜、きゅ〜も〜♪(注:『雲』です)」 「キュート、ごきげんだねぇ」 俺の袖をキュッと掴んで、空いてる方の手を空に向かって握ったり開いたり。 真っ青な青空には真っ白い雲がモコモコ浮かんでる。 きっと、雲を握ろうとしてるんだ、可愛いなぁ。 と…。 空から目を戻したとき、女の人が外灯の下に立ってるのが見えた。 別に外灯の下に女の人が立っててもおかしくないんだけど、その人がすっごく綺麗だったから目が勝手に吸い寄せられたんだ。 あれが『ストロベリーブロンド』って言うのかな? ちょっと赤みがかってる金髪は、軽く波打って腰まで伸びてる。 高い鼻、濃いグレーの瞳。 ほっそりした顔立ちの20歳くらいの美人さん。 スラリとした身体はとっても綺麗に伸びてて、通り過ぎる人たちがチラチラ見ちゃうくらいだった。 でも、どこ見てるんだろ? お姉さんが見てる方をチラッと見てみたけど、別に何にもない芝生と木々があるだけ。 丁度公園と道路を隔てている区画だったから、木々は30メートルくらい林立してて、それが終わると道路になっている。 壁とかで公園を囲んでないから木々の隙間からは自動車や向こうを歩いている人影がまばらに見えるんだ。 木々が植わっているせいで、ちょっとした林みたいなんだけど、少しだけ陽の光が遮られて暗く見えるから、俺はちょっと行ってみよう、って気にはならない。 そんなところになにか見えるわけ? でも、やっぱりよく見えなかった。 お姉さんに目を戻して、やっぱり美人さんだなぁ…とか、ティファさんとはまた違った美人さんだなぁ、とか感心してから突然ハッとした。 「え、キュート!?」 ゲゲッ! ちょっと目を離した隙に妹は美人さんとは全然違う方向へポテポテと歩いてるじゃないか!! わわわわわっ!! 慌てて妹へ駆け寄って、空に向かってヒラヒラと握ったり開いたりしてる手を掴む。 力を入れ過ぎないように、でもこれ以上どっかに行かないように掴むと、 「あ〜、おに〜ちゃ、おに〜ちゃ、だっっこ、だっっこ!」 人の気も知らないでご機嫌な笑顔を見せてくれた。 小さい両手を一生懸命俺に伸ばして『だっっこ』と言う。 『だっっこ』は『抱っこ』だ。 妹からうっかり目を離してしまってバクバクとうるさい心臓が耳のすぐ傍で鳴ってるようで、息切れまでしちゃいながら、それでも何も危なくなかったことにホッとしつつ妹の前にしゃがみ込む。 「よいしょ」 って言いながら抱っこすると、キュートは明るい笑い声を上げながら小さい手をパチパチ叩いて、また空に手を伸ばした。 ちょっとだけ視線が高くなったから、キュートはきっと、空に浮かぶ雲に手が届くって思ったんだろうな、うん。 そんな俺と妹を、若いお兄さんとお姉さんのカップルがニコニコしながら通り過ぎた。 なんとなく、可愛い妹が誇らしくてニッコリ笑い返すと2人はもっとニコニコしてくれた。 その2人をなんとなく見送ってると、例の美人さんの前を通りかかった。 「あ…」 お兄さん…、隣には恋人がいるっていうのに美人さんに見惚れてちゃって…、ムッとしたお姉さんに頬っぺたつねられた。 痛そうだなぁ…。 今みたいな光景は俺にとって珍しくない。 デンゼルやマリンと一緒にレッシュとエアル、キュートと遊んでるとよく見るんだよな。 遊んでる俺たちからちょっと離れたところでニコニコ笑ってるティファさんに、男の人たちがボーっと見つめちゃって、一緒にいる女の人につねられたりイヤそうな顔されたり…。 一番ビックリしたのは女の人が持っていたバッグで後頭部を思い切り叩き倒したことだ。 あれは…かなり痛そうだったし、お兄さんにとってはメチャクチャ恥ずかしかったに違いない。 他の道行く人たちの注目を集めまくってたし、女の人は鬼みたいな顔して怒ってどっか行っちゃうし。 慌てて追いかけてたけど、仲直り出来たのかなぁ…? その後、妹の手を引いてゆっくりゆっくり散歩をして、もうそろそろお昼ご飯の時間になったから来た道をこれまたゆっくり戻る。 時間的に30分くらいかな? 流石に妹はちょっと疲れたみたいで、少しだけぐずついたから負ぶってるんだ。 まだ2歳半とは言え、結構重い。 まぁ、家に帰るまでだから大丈夫。 それでもやっぱり早く帰りたいなぁ…とか思ってると視線の先にあるベンチに若い男の人が身体を少し揺らしながら座ってるのが見えた。 ひょろっとしてて、あんまり運動が得意じゃない感じの男の人は、縁なしメガネをかけててなんか…あんまり近づきたくない雰囲気をしてた。 身体を揺らしてるのは誰かを待ってて、退屈したときにする仕草に似てる。 ちょっとソワソワ周りを見回してるし、誰かと待ち合わせなんだろうな。 ま、俺には関係ないや。 とか思ってたのに、そのお兄さんは急に立ち上がってスタスタ歩き出してしまった。 お兄さんが座ってたベンチの足元に紙袋を置いたまま。 え〜……、忘れ物だよぉ…。 俺、見つけちゃったけど、やっぱり教えてあげないとダメ〜…? ヤダなぁ…、なんとなく近づきたくないタイプの人なのに。 なぁんて、悪いことを考えてる間にどんどんお兄さんは遠くなる。 うっ、嫌がってないで早くすれば良かった。 寝ている妹をちょっぴり揺すり上げて背負いなおすと、ベンチへ小走り。 紙袋をゲットして、今度はお兄さんへ小走り。 でも、追いつかない。 …意外と足が速い。 てか、なんでいきなりそんな慌ててどっか行くのさ! 「あの〜、そこの細いおにいさーん!忘れ物ですよぉ!!」 これ以上距離が開いたらたまらない。 呼びかけたりすると、他の人たちの目を引いちゃうからイヤだったんだけど、そうも言っていられない。 腹を括って大声で呼びかける。 それなのに、全然聞こえてないんだけど!? え?でもちょっとこっち振り返ったことない? それなのに、なんで前よりももっと足が速くなってるのさ! てか、思い切り走ってない!?!? 「ちょっとー!そこの水色のTシャツと黒いズボンを着てるカーキ色の帽子を被った身長170センチくらいのおにいさーん!!」 公園の中を思い思いに散歩したり、お弁当を食べようとしていた人たちが一斉に俺を見る。 次いで、俺が追いかけている方向へ顔を向けてお兄さんを見た。 あ、止まった。 流石にここまで詳しく呼びかけたら自分のことだって気づくよね? とか思ってる間に、お兄さんが血相変えて走ってきた。 「あの、これ…」 どうぞ。 って続くはずだった言葉は行き場を失い、お兄さんはひったくるようにして紙袋を俺の手から取り上げると、猛然と走り去った。 しかも、今まで走っていた方向とは反対の方向に。 ………え〜〜〜〜………。 なにさ、それ〜〜〜…。 お礼の一言もなし〜? そりゃさ、お礼を言って欲しいから拾ってあげたわけじゃないけど、そこはやっぱりお礼の一言くらい言ってもバチ当たらないんじゃない…? 呆然とする俺に、一部始終を見ていた公園にいた人たちが、 「ボク、えらかったよぉ」 「そうそう、あんなの気にすんな!」 「それにしても、ほんっとうに失礼な人よね!」 「坊や、あんな男になるじゃないぞ?」 温かい言葉をかけてくれたり持ってたお菓子をわけてくれたりしてくれた。 「ん〜〜?おに〜ちゃ〜?」 励まされて、慰められている間に目を覚ましたキュートの寝ぼけた声で、ようやっと俺は気持ちを切り替えることが出来た。 うん、なんとなく凹んでたけどもう良いよ。 俺が悪いことはなんにもないわけだし、お腹減ったしね。 「ありがとうございました。大丈夫です」 心配そうな顔をしてくれている人たちにニッコリ笑って頭を下げる。 大人の人たちがパッと顔を明るくしてくれてホッとした。 「エライわね〜!」 「本当になぁ、親御さんの躾の賜物だな」 褒められた。 気持ちがフワッと浮上する。 「あぁ、本当にキッドはイイ子だな。ご両親がしっかりしてる」 聞き覚えのある声がすぐ傍でしてビックリした。 声のほうを見ると、そこにはツンツンした金髪を風にそよがせているカッコイイ俺の憧れの人。 「あ!クラウドさん!!」 「こんなところで会うとはすごい偶然だな」 あまり変わらない表情だけど、声はとっても優しい。 気だるげな歩き方はダラダラ歩いている感じじゃなくてこう…、『クール』って言うのかな? なんか、すっごく憧れるなぁ、カッコイイ! でも、今日はただカッコイイだけじゃなかった。 クラウドさんは1人じゃなくてさ…。 「ほら、レッシュ、エアル、キッドお兄ちゃんにご挨拶は?」 押していたベビーカーを覗き込むと、もう蕩(とろ)けてしまいそうになる声で赤ちゃんにそう声をかけた。 俺の背中でウトウトしていたキュートが、俺が屈みこんだことで完全に目を覚ましたらしい。 「あ〜!あかちゃ、あかちゃ〜!か〜い〜ね〜♪(赤ちゃん、赤ちゃん、可愛いね)」 俺の肩を乗り越えんばかりに身を乗り出して手を伸ばした。 うわっ!危ないから!! 重心が崩れるから!! 赤ちゃん目掛けてこける!って焦ったのはほんの一瞬。 背中から妹の重みがフワッと消えた。 ご満悦な妹はクラウドさんの腕の中で、俺に負ぶわれているよりも高くなった視線に明るい笑い声を上げている。 「ほら、こうしたら見えるか?」 「見える〜♪」 日よけを少しだけ上げて真上から妹が赤ちゃん2人を見られるようにしてあげたクラウドさんに、顔がにやける。 なんか…すっごく今日はラッキーだ! 可愛い妹が憧れの人に優しくしてもらえるとやっぱり嬉しいだろ? それにしても…。 ベビーカーの中で笑い声をあげている赤ちゃん2人と、その赤ちゃんを嬉しそうにはしゃぎながら見ている妹、その妹を軽々と抱っこして覗かせてあげているカッコイイ人。 この構図に見惚れない人間っているんだろうか? チラッと周りを見る。 うおっ! なんだよこの視線、いつの間に!? 興味津々で見ている人たちはいるにはいるけど、大半は『知らない振りしてガッツリ覗き見』状態だ。 あ、あの人写メ撮ってる。 良いのかな…クラウドさん、ああいうのってイヤがるんじゃない…? いつもは気配に敏感なのに、気づいてない…? 「クラウドさん……あの…」 そろっと声をかけてみると、クラウドさんは赤ちゃんから俺に目を移してちょっぴり苦笑した。 「良い、分かってる」 「へ?」 予想外の言葉に目が丸くなる。 クラウドさんはキュートを抱っこしていない方の手で俺の頭をクシャリ、と撫でた。 「あまり神経過敏になるなってティファに言われてるんだ。気にしすぎるとレッシュとエアルはそれに敏感に反応するから良くないってさ。赤ん坊って意外と鋭いからって」 「あ〜、そうですよね。赤ちゃんって本当に鋭いですよね」 「キュートもそうだったのか?」 「うん!俺が熱出したのを隠してたら大泣きしたことがある」 「本当か?それはすごいな」 クラウドさんはビックリするとキュートを両手で抱っこしなおしてマジマジと見つめた。 キュートは分かってないんだろうけど、クラウドさんにジッと見られてニコニコしてる。 小さい手を伸ばしてヒラヒラさせる。 それはまるで、『おいでおいで』をしているみたいだ。 「ん?なんだ?」 ちょっぴり頬を緩めてクラウドさんがキュートを顔に近づけると、キュートはますます嬉しそうに笑い声を上げて、クラウドさんの頬っぺたをペタペタ触った。 わ〜!! いいなぁ、この光景! めっちゃ貴重じゃない!? 英雄のリーダーが小さい女の子を抱き上げて、戯れているって…なんかもう、血圧上がりそうだよ! かすかに小さい歓声のような…悲鳴のようなものが聞こえた気がしたけど気のせい……じゃないよね〜。 ついでにシャッターが切れる音がした気がしたけど、それも気のせい……じゃないよね〜。 良いの?クラウドさん、本当に。 そんな一種の『ファンサービス』なんかしちゃって。(だって、クラウドさんはジェノバ戦役の英雄のリーダーさんだから、有名人だもんね) でも、俺も写真とかビデオに撮りたかった…って思ったのは、絶対に絶対に内緒だ。 「ところで、ティファさんは?クラウドさん1人?」 ゆっくりと公園の出口へ歩きながらクラウドさんを見上げる。 クラウドさんは小さく頷くと、今日は仕事がお休みだからティファさんに1人の時間をあげることにしたって話してくれた。 でもティファさんは、やっぱりどこまでもティファさんだった。 赤ちゃんの面倒をクラウドさんが見てくれているなら、その間はデンゼルとマリンのために時間を使うって言い出したんだって。 デンゼルとマリンを連れてショッピングモールに行っているらしい。 「デンゼルとマリンも、普段はレッシュとエアルのお守りをしてくれたり店の手伝いをしてくれたりだったからな、たまにはこういう時間も必要だろってことになったんだ」 「へぇ。あれ?じゃあシェルクさんは?」 「シェルクはシャルアのところに顔出しに行った。良い機会だから…だとさ」 「ふ〜ん、だからクラウドさん1人でお散歩に来たんだ」 「あぁ、考えたら初めてだな。こうして子供2人を俺1人で見るのは」 「へ〜、どう?初体験の感想は」 「そうだな、なんと言うか……ちょっぴりドキドキしてるな」 「ドキドキ?」 思いもしないその台詞が、まさかのクラウドさんから聞いちゃった俺の方こそドキドキしちゃうよ。 「あぁ、初めてだからな。こう…なんというか、普段してやれないことを俺1人がしてあげられるって言うのはなんと言うか、嬉しいものだなぁ…と」 「ふ〜ん」 「キッドもそういうこと、あるんじゃないのか?」 「俺?」 「あぁ、初めてキュートを1人で散歩に連れてきたとき、どうだった?」 ゆっくりとした口調でそう言われると、なんとなくそのときのことを思い出した。 うん、そうだったな。 初めて1人でこの公園に連れてきた時は、ちゃんと散歩して帰れるかなぁ?とか、怪我とかさせないようにしないと!って緊張したけど、それ以上になんだかとっても『誇らしかった』な。 母さんに『1人でお願いしてもいい?』って言われた時、本当は友達と遊ぶ約束してたけどすぐに『うん!』って言っちゃったくらいだから。 母さんにオッケーしてすぐ、友達に遊べないと電話した。 そうだったな。 俺も初めての時はドキドキしたんだ。 クラウドさんが言った『ドキドキ』と俺の『ドキドキ』はきっと違うと思うけど(なにしろ、クラウドさんは立派な大人だし、強いし、完璧だから俺と一緒のはずないもんな)、それでも俺に合わせて言ってくれたことがすごく嬉しかった。 本当にクラウドさんは優しい。 レッシュとエアルが生まれてから特に優しくなった気がする。 片手で妹を抱っこしながらもう片方の手でベビーカーを押すクラウドさんと並んで歩くとあっという間に公園の出口に近づいてきてしまって俺はちょっと残念だった。 こういう時間はきっとそうそうないに違いない。 だから、もう少しだけこの時間を…と思わないでもなかったけど、流石にお腹はペコペコだしね。 「あ、そうだクラウドさん。お昼ごはんはどうするの?」 もしもお昼ご飯は適当に…とかだったら俺の家でどうかなぁ…。 まぁ、ティファさんのことだからちゃんと準備してるんだろうな。 「いや、店にあるものを適当に食べることにしてたんだ。ティファはなにか作ろうとしてくれたんだが、それじゃあティファに時間を作った意味がないだろ」 一食くらい、なんとでもなる。 そう言って微笑んだクラウドさんに目を丸くして、内心でガッツポーズをした。 やった! じゃあ、俺の家に来てもらったらいいじゃんか! 母さんなら急なお客様でもいつもオッケーだし、うん! 「クラウドさん、じゃあさ……って…あれ?」 「ん?」 意気込んでクラウドさんを誘おうとした俺の目に、見たくもないものが飛び込んできて台詞がぶっ飛んだ。 クラウドさんが引き攣った俺に首を傾げたのが視界の端で見える。 でも、ちょっと……説明するだけの余裕が…。 「どうした、キッド?」 クラウドさんの少し心配した声を聞きながら俺の目は、公園の入り口近くにあるベンチの下に置き去りにされている紙袋に釘付けになっていた。 |