「そこまで!2人とも手を上げなさい!」

 突然女の人の鋭い声が響いた。
 ギクッと身体を強張らせた男の手が俺の胸倉から離れ、俺は尻餅をついた。

「両手を頭の後ろに組んで、ゆっくりこっちを向きなさい」

 軽く波打つストロベリーブロンドの髪を腰まで伸ばし、高い鼻、濃いグレーの瞳の美人さんが拳銃を構えて爆弾犯を睨みつけていた。






HAPPY DAY(後編)







「WROよ、大人しくその子たちを離しなさい」

 刺すような鋭い声で犯人達に指示をする。
 キュートを押さえつけていた男も、ノロノロとその言葉に従って妹から手を離した。
 途端、キュートが火のついたように泣き叫んだ。
 自分では分からなかったけど、怖すぎて腰が抜けてたみたいでさ、泣き叫ぶ妹に駆けつけて…とはいかず、膝で擦り寄るようにして掻き抱いた。
 抱きしめてその小さな身体と温もりにうっかりまた新たな涙がこぼれてしまう。

「ボク、大丈夫だからこっちにゆっくりおいで」

 お姉さんが優しくそう言った。
 その通りにしたいんだけど、中々震える身体は言うことをきかない。
 それに、ホッとしたのと同時に別の不安が胸いっぱいに広がったんだ。

 だって俺を掴んでいた男。
 こんな状況だって言うのに笑ってるんだ!

 お姉さんに対してはまだ背を向けている状態だから、拳銃を突きつけているお姉さんには分からない。
 妹を押さえ込んでいた男も口元が緩んでる。
 2人ともゆっくりゆっくり手を上げた。
 俺を掴んでいた男が先に頭の後ろで両手を組もうとしたんだけど、何かがその手に握られているのが見えた。
 その瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走った。
 咄嗟に泣きじゃくる妹を後ろに隠しながら叫んだ。


「そいつ、なにか持ってる!!」


 WROのお姉さんが鋭く息を吸い込んだのと、2人が忌々しそうに舌打ちをして俺を睨みつけたのとが重なった。
 次の瞬間、何が起こったのか良く分からない。

 一瞬で真っ白い煙に覆われちゃって、何も見えなくなってしまったかと思うと、お姉さんの「待ちなさい!」って怒鳴り声や、「誰が待つか!」って捨て台詞を残す男の声がした。
 かと思うと、空気がヒュッ!って裂ける音がして、男の声で「ウゲッ…」って呻く声が聞こえた…。

 そんで…。

 すごくすごく温かくて強い力に包まれたんだ。
 その瞬間は、また犯人に捕まったのかと思ってパニックになりかけたんだけど、
「大丈夫か、キッド!」
 って、すぐ耳元でしてさ。
 誰?とかそんなこと聞かなくても分かる。
 俺の憧れの男の人だ。

 身体全部を丸ごと抱きしめられて、さっきまで全身を覆っていた恐怖心があっという間に消えてしまった…。


 *


「遅くなってすまない、怖かっただろ…」

 視界が晴れた俺が一番最初に見たのは、妹ごと俺を抱きしめてくれているクラウドさんだった。
 至近距離で見たら改めてクラウドさんの『美人振り』に惚れ惚れしちゃうよ。
 でも、それ以上にクラウドさんの力強さと温かさがガチガチに凍り付いていた心をじんわりと溶かしてくれて、恥ずかしいくらいにしゃくりあげてしまった。
 泣かないように頑張ったら涙は止まってくれたんだけどさ、しゃっくりが止まってくれないんだよね。

 何度も頭をポンポン叩いてあやしてくれるクラウドさんの後ろでは、妹を押さえつけていた方の男を足元に転がしたまま、お姉さんとシュリさんが厳しい顔でやり取りしていた。
 いや…転がして…というよりも、地面に倒れている男をシュリさんが片足で踏みつけている。
 …それって、人道的に良いのかなぁ……?
 訴えられたりしないかな…?
 まぁ、失神してるから訴えられることはないだろうけど。

「ごめんなさい…、取り逃がしてしまって……」
「いや、気にするな。ところで怪我はないか?」
「うん、大丈夫。でも折角のチャンスだったのに…!」
「まだなんとかなる。大丈夫だ」

 …なんとなく、会話がホンワカと温かい気がするのはなんでだろう…?
 しかも、なんかさぁ、こういうどことなくハートマークがあたりを漂っているような雰囲気、どっかで…。
 どこだっけ?

「おい2人とも、まったりしている場合じゃないだろ?」

 クラウドさんが俺とキュートを抱きしめたままゆっくりと立ち上がった。
 ピーピー泣いている妹は、身体が浮いた感覚にますます怯えてしまったけど、
「大丈夫…大丈夫、ほら、心配するな」
 クラウドさんがゆっくり身体を揺らしながら優しい声で繰り返してくれたことで少し落ち着いた。
 まだしゃっくりしてるけどね。
 シュリさんとWROのお姉さんは、クラウドさんに突っ込まれると真っ赤になって慌てて不自然なくらい距離を開けた。
 それを見た瞬間、この場にまったく相応しくないんだけどデジャブの正体にピンときた。


「あ〜、そっか。クラウドさんとティファさんにそっくりなんだ」


 クラウドさんとシュリさん、お姉さんがポカン…と口を開けて俺を見る。
 …あれ?
 もしかして…。

「…俺、しゃべってた?」
「しっかり声に出てたぞキッド」
「うそっ!」

 うわ〜、恥ずかしすぎる!!
 命の危険に晒されてたって言うのにさ、現金すぎるよね!?

「キッド、一体なにが俺とティファそっくりなんだ?」

 ちょっぴり困ったような、それでいてすごく気にしたように眉根を寄せてクラウドさんが顔を覗き込む。
 あわわわわ、絶対に言えないよ、そんなこと!
 それに、今はそれどころじゃないでしょ!?

「そうだな、それどころじゃない」

 またしても、俺の心の声を聞いたようにシュリさんが咳払いをしながらボソリ、と洩らした。
 だから…なんでいちいち俺が思ったことにタイミング良く返してくれるわけ?
 てか、耳がほんのりと赤い気がする。
 …照れてるの?

「ところでキッド。犯人の顔、しっかり思い出せるか?」

 抱き上げられたままの俺にシュリさんが尋ねる。
 あ、もしかして似顔絵とか描くのかも!
 あの顔は忘れられないよ、ほんっとうにほんっとうに怖かったし、腹が立ったんだから!!

 力いっぱい頷くと、シュリさんは優しく目を細めた。
 似顔絵を描くのかと思ったけどそうじゃなくて、どうやら特徴を覚えるだけだったみたい。

「身長170センチくらい、ひょろっとしてて、目は一重、鼻は短いのに尖ってて、髪は黒で長さはカーキ色の帽子から少し裾が出ている程度…、面長でにきび顔…か。よく見てたな」

 聞き終わったシュリさんは、ほんの少しだけ口元に笑みを浮かべた。
 それは笑っているのか微妙なくらいの微笑みだったけど、俺には充分だった。

「シュリ…今から探すのか?」

 それまで黙ってたクラウドさんが不満そうな口調でそう言った。
 今から探しても時間が無駄になったんじゃないのか?って言いたいんだと思う。
 きっと、煙幕で逃げ始めた直後に追いかけていたら間に合ってた…って思ってるんだ。
 それは俺も思った。
 勿論、落ち着いた今だから思えるんだけどね。
 だって、クラウドさんに抱きしめられた時は大混乱真っ只中だったからそんな余裕、全然ないし。

 シュリさんは軽く肩を竦めると、
「あのまま追走しても良かったんですけどね、『追い詰めたねずみ』よろしく『猫』に噛み付いたら周りの人にもっと被害が出るかもしれないでしょ。だから、わざと逃がしたんですよ」
 そうして背を向け、
「すぐ済みますからレッシュとエアルのところで待ってて下さい」
 一言言い残してさっさと公園の入り口向かって行ってしまった。
 あまりにもあっさりとしていて呆気に取られる。

「ねぇ、本当に大丈夫なの?」

 思わず聞いてしまうほどのあっさりぶり。
 だけど、クラウドさんもWROのお姉さんも困ったように笑うだけだった。


 *


 失神している犯人をズルズルと引きずるクラウドさんと、まだちょっぴりぐずっている妹を抱っこしてくれているお姉さんに囲まれて、さっきまでクラウドさんと一緒にた場所に戻った。
 そこでは若いカップルさんがベビーカーを困ったように囲んでいた。
 あぁ、そっか。
 俺とキュートの危機に駆けつけるためにこの人たちにお守りを頼んだのか。
 ありがとう、お兄さん、お姉さん。
 お2人が赤ちゃんを見ててくれたお陰で、俺も妹も英雄さんに助けてもらえました。

 戻ったクラウドさんにホッとしてニコニコ笑いつつ去る恋人さんにクラウドさんは深々と頭を下げて見送った。
 それを隣に立って、当然のようにお姉さんも同じようにして見送っている。
 なんとなく、クラウドさんの隣に立っているのがティファさんでないことに違和感とモヤモヤしたものを感じた。
 ジッと見ているとハタ…とお姉さんと目が合った。

「ボク、えっと…キッド君…だっけ?」
「えっ?あ、うん」

 あんまりイイ気持ちがしないで見ていたから、きっと俺の目つきは悪かったと思うんだけど、それがバレたのかな?とか、ドキッとした。
 でも、お姉さんはニッコリ微笑んで視線を合わせるべくしゃがみ込んだ。

「キッド君、本当に偉いわ!こんなに小さいのに妹を最後まで全力で守ろうとして…。私、感動したわ!」

 満面の笑みで褒められて、悪い気がする人っている?
 正直、メチャクチャ恥ずかしくて、すっごく嬉しい。
 あぁ…本当に俺って現金だ。

「リトも小さい頃はキッドみたいにラナの事を守ってたんじゃないのか?」
「あ〜…どうでしょう。兄さんはお調子者ですけどあれで責任感が強いので、もしも同じような目に遭ってたら守ってくれたかもしれません。でも、幸運なことにこういう危険な場面に出くわしたことはないので正確なところは分からないですね」
「…いや…そうじゃなく…ものの例えだろ…?」
「あ、ごめんなさい、つい言葉のまんま捉えちゃった…」

 赤くなったお姉さんに、
「…シュリの影響、モロ出てるみたいだな」
 クラウドさんは小さな声で呟いた。

 俺はそんな2人のやり取りを見てまた、モヤモヤしたものを感じた。
 だって、クラウドさんが女の人を呼び捨てにするのって仲間とか、家族以外では聞いた事がない。
 勿論、俺が知ってるクラウドさんはすごくちょっぴりなんだって分かってるんだけど、それでもなんか面白くなかった…。

「ところで、その変装はシュリにしてもらったのか?」
「えっと…はい…」
「またなんで変装なんだ?そんなに2人とも、顔が知られているのか?」
「いいえ。そうではなくて…ですね…その、私達、今日非番なんです」
「…そう言えばシュリもそう言ってたな。じゃあ、なんで非番なのに2人してこんなことしてる?他の隊員に頼めばいいだろうに」

 首を傾げたクラウドさんに、お姉さん……ラナさんは苦笑いをした。

「犯行声明や内部告発のようなことがあったわけではないので隊員を動かせなかったんです。ですから、万が一、今日犯人を捕まえることが出来なかったとして、私と大佐が普通の格好で捜査まがいのことをしているとバレたら色々と後が面倒だったので」
「…そうか」

 …なんか良く分からない。
 大人の世界は難しいな。
 にしても、変装してるのか、このお姉さん。
 へぇ、どんな顔してるんだろ?


「カツラを被っている程度だから今とほとんど変わらないぞ」


 背中からかかった声にビクッと跳ね上がる。
 振り返ると涼しげな顔をしたシュリさんがいた。

 いつの間に!!
 て言うか、だからなんでいちいち考えたことに返事してくれるの?しかもタイミング良すぎなんだけど〜!?

「シュリ、どうだった?」
「はい、お陰様で無事捕縛しました」

 自慢するわけでもなく、嬉しそうにするわけでもない。
 淡々と報告するシュリさんに、ラナさんがパッと顔を輝かせ、クラウドさんは1つ息を吐き出して頬を緩めた。

「犯人は?」
「公園のトイレの用具入れに縛り付けて放り込んでいます。警察にも連絡したのですぐ来るでしょう……」

 言いながら、シュリさんはクラウドさんの足元に失神して転がっている男を見た。
 無表情だけど、何を言いたいのか分かる。
 なんでここまで連れて来たんだ?って思ってるんだ。
 あのまま、茂みの中に放置していた方がトイレに近いもんね。
 でも、縛るものもなかったから放置出来なかったんだし、仕方ないよねぇ?

「そうだな、縛るものがなかったか…。手錠の1つくらい、持ち出して置けば良かったか…」
「……だから、どうしてそんなタイミング良く考えたことに返事が…?」

 思わず思ったことが声に出た。
 怒られるかな?それとも、機嫌が悪くなる?
 ちょっぴり心配したけど、シュリさんはやっぱり無表情だった。

「まあ、俺は勘が良いんだ、気にするな」

 一言で片付けると、「それよりも」と話を変えた。

「キッド、相変わらずイイ観察眼だったな。お陰で星に聞くのもラクで……うん、助かった」
「え…?」

 星に聞く…ってなに?
 聞き直したかったけど、
「身長まで正確だったぞ?なんで分かった?」
 はぐらかされるように新しく質問をされちゃって、聞きそびれる。
 ま、いっか。

 チラッとクラウドさんを見ると、俺を見ていた紺碧の瞳とかち合った。
 照れ臭くてすぐ視線を逸らす。

「クラウドさんと同じくらいの背だったから…」

 言うと、クラウドさんはちょっぴり目を丸くして、そして優しく微笑んでくれた。
 それだけで俺はもう、今日の恐怖を完全に消すことが出来た。
 シュリさんはどこまでも生真面目な顔をして、
「そうか、クラウドさんを基準したのか」
 とか言って妙に納得している。
 でも、ふと首を傾げた。

「普通、もっとも身近な親族を基準にすると思うんだが、なぜクラウドさん?」

 改めて聞かれて、俺も『はて?』と首を傾げた。
 俺の父さんは身長180センチだからなぁ。
 爆弾犯の身長は父さんよりも低かったし、自然と爆弾犯の身長と近い人がポン…と浮かんだんじゃないかな?
 まぁ、そんな正直に言わなくても…ね。

「クラウドさんは俺の憧れだし…」

 とか言ってごまかす。
 だって、憧れているのは本当だしな。
 クラウドさんは俺の頭をポンポン叩いて、「それは光栄だな」って言ってくれた。
 それなのにさぁ…。

「そうだな、父親の方が犯人よりもうんと身長が高かったら基準となる人がおのずと変化するな」

 爆弾犯並の爆弾発言を投下してくれたよ、このお兄ちゃん!
 クラウドさんの頬がピクリ…と引き攣った。
 ジト目でシュリさんを見ると、
「お前な…。なんでもストレートに受け止めてモノ言ったりするなよな…」
 ボソッと低く呟いた。

 ふ〜ん。
 なんでもストレートに……ねぇ。
 ますますクラウドさんとティファさんみたいだねぇ。


「シュリさんとお姉ちゃんは似たもの夫婦なんだねぇ」


 ピッツァァアアアアンッ!!

 俺がそう思った瞬間、その場の空気が完全に凍りついた。
 目を見開いて俺を見る3人のカッコイイ人たち。
 シュリさんは完全無表情鉄火面のくせに耳の端が赤くなってて、お姉ちゃんは見てるこっちが可哀相になるくらい固まってさ〜、顔…真っ赤だ、首まで真っ赤だ。

 ってかさぁ…あれ?
 …まさか…。

「俺…また声に出てた?」
「キッド…、今日のお前は心の声がモロに出まくってるな」

 はぅっ!!

 3人の中でクラウドさんだけが唯一すぐに余裕を取り戻して(当たり前だよね。ポロッとこぼれたのはクラウドさんのことじゃないもん)、おかしそうに喉の奥で笑いながら固まった俺の頭を軽くこづいた。


 その後。
 またもや慌てすぎた俺は、ひたすらシュリさんやお姉ちゃんへ言い訳(?)、取り繕い(?)をしようとしてことごとく失敗した。

「お休みなのに変装までしてお仕事頑張るところとかそっくりだし」
「照れ屋さんなところもお揃いだし」
「とにかく、変な意味じゃなくてお似合いだなぁって」

 どんどん墓穴を掘っていく……。

 極めつけは…。


「きょ、今日はもうお仕事ないんだよね?なら、お天気も良いしどっか2人で遊びに行くんですよね?あ、そっか、最初からその予定だったんでしょ?ごめんなさい、余計なこと言っちゃった〜……」


 あぁぁぁあああ、クラウドさん、お腹抱えて笑ってないでフォロー、フォローしてよ!!
 あぁあぁぁぁああ、本当にごめんねシュリさん、お姉ちゃん!
 今日は本当に余計なことばっかり言っちゃったけど、普段はこんなことない……はずなんだ!
 だから嫌わないで〜!!


 本当に…。
 今日は散々な1日だ……。


 その後。
 俺は疲れて眠ったキュートを抱っこしてくれたクラウドさんと一緒に家に帰った。
 最初の予定からメチャクチャ時間が経ったけど、クラウドさんを家に招待してお昼ご飯を食べたんだ。
 シュリさんとお姉ちゃんと別れたときに、
「キッドがWROに将来入ってくれたら安泰だな。ちょっとだけ頭の声がダダ漏れなのがきになるけど…」
 ってちょっぴり赤くなったシュリさんにそう言われた。
 嬉しかったけど、俺から顔を逸らして
「はぁ…、ライとアイリに生暖かい微笑みを向けられそうだ…」
 って呟いていたのが気になるけど…。

 その後で、
「お前も兄弟が増えるみたいだし、頑張れよ。ま…、きっとキッドなら心配ないけどな」
 目を少しだけ細めてそう言ったけど、なに言ってるんだろうねぇ?


 少しの疑問を抱えながらクラウドさんを連れて帰った俺を、母さんは予想通りホワホワした笑顔で出迎えてくれた。
 久しぶりに会うクラウドさんとティファさんの赤ちゃんに目を細めて大喜びする母さんに、クラウドさんが嬉しそうに笑ってくれたのがすごく嬉しかった。
 んで、大急ぎで作ったにしては美味しいパスタを4人で一緒に食べてようやっと幸せな心地を取り戻した。

 急な訪問を恐縮しつつ、それでも全部平らげてからクラウドさんは赤ちゃんを連れて帰っていった。
「ティファたちにいい土産話が出来た」
 って喜んでたな。
 顔は無表情だったけど。

 そして。

「そうそう、キッド」
「ん?なぁに?」
「キッドは弟と妹、どっちが良い?」
「……へ?」
「両方だったら困るかしらね〜」
「……え?」

 母さん…?なに、その含みのある言い方は…。

「ふふ、今日ね、キュートを見ててくれている間に病院に行って来たんだけどね…」


 俺、来年には双子のお兄ちゃんになれるみたいです!

 嬉しすぎてキュートをギューッて抱っこしたら、可愛い笑い声をあげてくれた。
 あぁ、今から来年が楽しみです!