まったく。

 不器用で鈍感な自分自身へ苛立ちながら、クラウドは愛車を走らせていた。






彼と彼女のすれ違い(後編)






「おはよう…」「うん、おはよう…」

 子供達は目を若干腫らしながら子供部屋で朝の挨拶を交わした。
 夕べは泣きながらいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
 とっくにいつもなら起きている時間を時計の針がさしている。
 いつもなら、大慌てで服を着替え、階下へと飛んでいくのだろうが、とてもじゃないがそんな気分にはなれなかった。

「…クラウド…帰ってない…よな…」

 落胆したようにデンゼルが呟く。
 もしかしたら、朝起きたら彼が帰っているかもしれない、という淡い期待を持っていたのだろう。
 それが見事に空振りしてしまった少年の心境を、マリンは痛いくらい理解した。
 自分もそうだったのだから…。

 昨夜遅く、マリンの携帯に養父から電話があった。
 クラウドがなにやら暗い顔をして自分のところに来た…と。
 そして、マリンとデンゼルにこれ以上心配をかけまいと考えているようだ、との言葉に、不覚にもまた、泣いてしまった。
 あれだけ派手な喧嘩をしたクラウドだが、デンゼルと自分を気にかけてくれた父親代わりがとても愛しくて、とても悲しく感じてしまった。

「なぁ、マリン…」
「…なに…?」
「あの『合成写真』さぁ…」
「…うん…」
「今までにも似たような嫌がらせってあったのに、なんであんなにティファは怒ったんだろう…?」
「…うん、何でだろうね…」

 言いながら、二人ともなんとなく分かっていた。
 ティファが最後まで見せてくれなかった数枚の写真。
 あれがなにかとてもまずいものを写していたのだろう。

 子供たちには当然、ティファは最後まで『20歳未満、お断り』の写真は見せていない。

 だから、子供たちにはあそこまでティファが怒って、こだわるくらいの写真の中身が分からない。
 分からないのだが、とてつもなくヤバいものだというのは分かった。

 …分かったからどうということも出来ないのだが…。

 暫く互いに黙ったままベッドにボーっと座っていたが、やがてどちらからともなく、ノロノロと着替えだした。
 そうして、互いの服装、表情をチェックする。

「…マリン、目が腫れてる…」
「…デンゼルも…」
「「 …… 」」

 黙って一緒に部屋を出る。
 洗面所でいつもよりも長い時間かけて顔を洗った。
 タオルで拭いて、もう一度互いにチェックする。

「…うん、さっきよりマシ」
「…デンゼルもマシになったよ」
「じゃ、行くか…」
「うん…」

 スーッ…と大きく息を吸い込む。
 これから向かう1階には、恐らく自分達以上に落ち込んだティファが待っているだろう。
 寝坊した自分達起こしにこなかったということは、彼女なりの精一杯の気持ちなのだと分かっている。
 だから、自分達が1階に下りたら、いつも以上に明るく振舞うはずだ。
 それに自分達は応えなくてはならない。

 ティファをこれ以上苦しめないために…。

 デンゼルとマリンは、こっくりと頷き合うと、元気良く1階へ駆け出した。


 二人の予想通り、ティファはいつも以上に明るく笑いかけ、いつもよりも豪華な朝食を用意して待っていた。
 いつも通り、二人はティファへ『おはようのキス』をし、ティファの腕を振るった朝食を絶賛した。
 本当は…、いつもの朝食の方が美味しく感じられたのだが、それを微塵にも出さずに二人はいつも以上に笑いながらそれを全部胃袋に収めた。

 ティファも笑いながら心の中で子供達に詫びた。
 口に出して詫びると、きっとこの可愛く、聡い子供達は『なに言ってるんだよ』『気にしないで』と言うに決まっている。
 そして、今以上に頑張るのだ。
 だから言わない。
 ちゃんと、今回の事件に決着がつくまでは。


 ティファは言わなかったが一睡もしていなかった。
 ずっと、今回のことを考えていた。
 冷静になればなるほど、自分がどうしてあそこまでクラウドを追い詰めるようなことを口走ってしまったのか、情けなくて涙が出る。
 実際、かなり泣いた。
 クラウドがあんなことをするはずがない。
 そんなの分かりきっている。
 だが、それとは別に、クラウドの反応の薄さに腹が立ったのだ。
 自分が受けた衝撃を、少しでも分かって欲しかった。
 どれだけ傷ついたのか…。
 どれだけ悲しかったのか…。
 だが、疲れて帰ってきたクラウドに、それを求めるのは間違えていた。
 そもそも、クラウドはこういう『スキャンダル』とかにはさらさら興味がない。
 彼が言うには、
『そんなもの、いちいち気にかけて反応してたら面白がってエスカレートするだけだ』
 だそうだ。
 一理あると思う。
 事実、過去にも何回か中傷めいた手紙や写真が送られてきたことがある。
 英雄をからかって愉しむ心の歪んだ輩は世の中に多い。
 それだけじゃなく、クラウドを『ファン以上』の気持ちで見つめている女性はもっと多い。
 そして、自分も…。
 ティファに『横恋慕』している男性が多いことは彼女自身もちゃんと知っている。
 その彼らがクラウドに直接詰ったり、過去の古傷を逆手にとって脅迫まがいなことをしていた時期があったことも知っている。
 そのたび、クラウドは傷つきながらもそれをひた隠しに隠して、決して子供たちや自分にバレないように振舞っていた。
 そんな優しい彼を追い詰めてしまった…。
 それが言いようもなく…情けなくて…歯がゆくて…愚かな自分を責めずにはいられない。

 だが、責めたからと言って、昨日の失態がなしになるわけではない。

 これからどうするか…。
 クラウドが喧嘩の最中必死に訴えていた『今回の嫌がらせの犯人の目的』が何なのかを追求する方が、最優先課題だろう。
 こうして喧嘩しているのがその犯人にバレたら、暗い歓びでその犯人はほくそ笑むだろう…。

『…冗談じゃないわ…』

 ふつふつと怒りが湧く。
 まだ正体の分からない『敵』へ怒りがこみ上げる。

『負けられない』

 今回の敵の正体を絶対に暴いてやる。
 何が目的でこんなひどいことをしたのか、とっちめてやる。
 それが、クラウドにしてしまった大罪への贖罪だ。

 ティファは、遊びに行く子供達を笑顔で見送りながら、胸の内で闘志を燃やした。


 *


「…ふっ。完璧じゃない」

 その人物は狭い一室で歪んだ笑みを浮かべていた。
 目の前には一台のパソコン。
 両脇にはスピーカー。
 パソコンの画面には、戸口に立って子供達へ手を振っている黒髪の美女。
 笑ってるが、その笑顔が翳っていることをその人物は正確に見て取っていた。

「所詮『英雄』もただの女。これくらいで簡単に壊れてくれるなんて、本当に弱い絆」

 満足げにパソコンの電源を落とす。
 立ち上がって窓のブラインドから外を見る。
 眼下には、手作りで作られた小さな店。
 たった今まで画面で見ていた女性が、子供達へ手を振るのをやめ、貼り付けていた笑顔を取り払い、暗い顔をして店内に戻るのが見えた。

 クスリ…。

 唇を吊り上げてその人は嗤う。
 所詮、『英雄』と言えど、ただの人間。
 揺さぶりをかけたら簡単に壊れる絆しか持たない。

「さて、じゃあ行きますか」

 鼻歌交じりに窓から離れ、その人物は軽やかな足取りでクローゼットへ向かい、中から色とりどりの綺麗な服を取り出し、姿見の前に立ってどの服を着ていくか楽しげに選び始めた。


 *


「……」

 ティファは手を止めた。
 チラリ。
 カウンターの上に置いてある携帯を見る。
 もう何十回も同じことをしている。
 店内の掃除、各寝室の掃除、洗濯物を干している時。
 それらの合間や作業中、ティファは幾度も手を止めて鳴らない電話を悲しげに見た。
 自分から電話をするべきだろうか?
 だが、昨夜あれほどの剣幕で追い出してしまった彼に、一体なんと言えば良いのか分からない。
 それに、まだ犯人を捜すために何もしていない。
 とりあえず、家事をこなしてから、と自分に言い聞かせていた。
 今回のことはすべて自分に責任がある。
 だから、一刻も早く解決に乗り出さなくてはならない。
 だが、だからと言って家事をおろそかにして子供達やクラウドにこれ以上迷惑をかけたくない、と思った。
 いや。
 それはただの言い訳だ。
 本当は、どこから手をつけていったら良いのか分からないのだ。
 だから、家事をしなくては、という言い訳をしながら、家事をしつつ考えている。
 しかし、自分の乏しい知識では、何からどうしていったら良いのかさっぱり分からない。
 差出人のない封書。
 消印等も、特にはない。
 ということは、直接犯人が郵便受けに入れたのだ。
 それを一体どうやって調べたら良いのやら皆目見当がつかない。
 むやみやたらと動き回って、それが功を成すか、と自問し、即、『否』と判断した。
 恐らく、慌てふためいているティファの姿は、相手を喜ばせるだけだと思ったのだ。
 どこから見ているのかさっぱり分からないが、絶対に今の姿を見ているはずだ。
 卑怯にもどこかに隠れて…。

 ティファはグッ…と唇をかみ締めて再び掃除に取り掛かった。

 悔しい。
 負けたくない。
 こんなことで、クラウドや子供達の生活を駄目にしたくない。

 力を入れてテーブルを拭く。
 ギシギシ、とテーブルが鈍い音を立ててティファの動きに合わせてきしんだ。

 このままではいけない。
 そう分かっているのに、自分から何も出来ないのが悔しい。
 歯がゆい。
 だが、こうして相手が何かしら動いてくれるまで待つしか、今のところ何も出来ない。
 ティファは神経を四方へと向けている。
 向けながら、相手が何か仕掛けてくるのをじっと待っている。
 その状態で今朝から…いや、昨夜からずっといるのでいい加減神経的にかなり辛くなってきたが、それでも彼女は自分のアンテナに犯人が引っかかってくるのをジッと待った。

 だから…。

「……」

 気づいている。
 どこからか、自分へ向けられている悪意に。
 しかし、相手の居場所を特定させるには微弱すぎるその気配に、じりじりとした焦りと苛立ちを感じる。
 それを押し殺してティファは待った。

 相手が尻尾を出すのを。

 だから、ギョッとした。
 慣れ親しんだ気配がアンテナに引っかかったときは。
 ビクッ!と身体を揺らして勢い良く戸口へ振り返る。

 …気にし過ぎ……だろう。
 だが、それにしては……。

 期待する自分の生み出した『勘違い』という結末を恐れ、ティファは近づきつつある気配を否定した。
 勘違いだ…と。
 彼のはずがない…と。

 だが。


 耳慣れたバイクのエンジン音。
 それが店の前に止まる。

 ティファは堪えきれずに駆け出した。
 狭い店だ。
 ドアまでの距離は短い。
 だが、とてつもなく長く感じるそのドアまでを、とてつもなく長い時間かけて走っている感覚を抱きながらティファはドアノブに手を伸ばして…。


「「 !! 」」


 今、まさに開けようとしたドアがひとりでに開き、現れた青年にぶつかりそうになってギリギリのところで立ち止まった。
 しばしの沈黙。
 その沈黙を破ったのは、いつもは口下手で、昨夜手ひどく傷つけた彼だった。


「……ただいま」


 恐る恐る、気まずそうに、不安いっぱいの瞳をそれでも逸らすまい、と勇気を振り絞っている彼に、ティファは胸がいっぱいになった。

 迷わずに思い切りその胸に飛び込む。
 ビクリ…、と彼が震える。
 震えながら、恐る恐る背に腕が回る。
 ティファの中にわだかまっていた不安やまだ見えない敵への怒りが一瞬にして氷解した。

「おかえり!おかえり、クラウド!!」

 必死になって彼の背に腕を回し、力一杯抱きしめる。
 クラウドのガチガチに固まっていた身体からホォッ…と力が抜けていくのを感じる。
 そして、反してティファに回されていた腕に力が入った。

 そのままボロボロと大粒の涙をこぼしながら、ティファはクラウドに謝った。
 クラウドも泣きながら謝り続けるティファに謝罪の言葉を口にした。
 何度も…何度も。

 そうして、散々互いに謝った後。
 そっと少しだけ身体を離して至近距離で見つめ合う。
 涙でくしゃくしゃな顔をしているティファの茶色の瞳に映る自分の安らかな表情にクラウドは自然と笑みを浮かべた。
 同じく、紺碧の瞳に泣き顔の自分を見てティファは恥ずかしく思いながらも、彼の穏やかな表情に言葉も出ないほどの至福を感じた。
 そのまま、自然に互いに目を閉じて顔を近づける。
 唇まであと少し。

 の、ところで。


「こんにちは〜♪」


 唐突にノックもなく、ドアが開いた。
 抱き合ったままビックリしてドアを見る二人と、突然の訪問者の目がかち合う。

 くすんだ金髪の美女が目の前の光景にスカイブルーの瞳を丸くし、あんぐりと口を開けた。
 そして、震える指でクラウドを指すと、
「な、な、な…!?」
 言葉にならない声を上げる。
 その瞬間、クラウドの直感が働いた。
 一瞬のうちに女性の背後に回り、その細い腕をねじ上げる。
 苦痛の悲鳴が女性の口から漏れる。
 ティファはただただ目を丸くして驚いていた。
 クラウドは、先ほどまでティファに向けていた甘やかな表情とは一変し、底冷えするような冷たい瞳で女性をにらみつけている。

「お前が犯人か!!」

 その言葉にティファは「え!?」と驚いて女性を見つめなおした。
 女性は耳障りな悲鳴を上げながら、必死になって身をよじり、クラウドをにらみ付ける。

「そうよ、折角邪魔なあんたを追い出したと思ったのに、なんでここにいるのよ、この恥知らず!」
「なに!?」
 クラウドの眉が急角度に跳ね上がる。
 瞳が危険な色を帯び、捻りあげた腕に力がこもる。
 女性の悲鳴が更に高くなった。
 ティファは我に返ると、クラウドの腕に手を置いて力を抜くよう懇願したが、クラウドは若干緩めただけで手を離そうとはしなかった。
 女性は痛みを訴えながらも、忌々しそうに毒を吐いた。

「この……この、女の敵!あんたみたいな男がいるから女は傷つくのよ!とっとと彼女の前から消えなさいよ!」
「なにわけの分からないことを言っている!」
「はっ!あんたみたいなクズ男にティファ様は勿体無いって言ってんのよ!!」
「さっきから勝手なことを!なにが『ティファ様』だ!………って………」

 クラウドの怒りに満ち満ちた瞳が、次第に困惑へと変わっていく。
 その隣で、ティファは既に硬直していた。
 クラウドは徐々に手の力を抜き、呆然と女性を見た。
 力が抜け切る前に、女性は憎しみでいっぱいの目をクラウドに向けたまま腕を振り払う。
 捻られた腕を摩りながら、真っ向からクラウドに対峙した。
 クラウドは自分へ向けられている『憎悪』と『嫉妬』の瞳に、顔を引きつらせながら、隣に立っているティファを見た。
 …石化している。
 もう一度女性を見た。
 彼女は瞳にいっぱい涙を浮かべ、唇をわななかせていた。

「私のティファ様を、あんたみたいな根性なしが…!!」

 クラウドは失神しそうになった…。


 *


「……と言うわけだ」

 電話の向こうで、バレットが絶句している雰囲気を感じる。
 クラウドとてそうだ。
 犯人の真の目的を知った今でも、信じられないのだから、唐突に真実を聞かされたバレットの心情は良く分かる。

『で……大丈夫なのかよ……その女…』
「まぁ…大丈夫だろう…これからは何もしない、ってティファに約束してたし…」
『…そっか……まぁ、…公にしないって選択は正しいだろうとは思うけどよぉ…それにしても…』
「…俺も驚いている…。女性の嫉妬ほど恐ろしいものはないと実感した…」
「『 はぁ… 』」

 二人同時にため息を吐いた。

 今回の事件の犯人である女性は、異性に抱く感情を同姓であるティファに抱いていた。
 クラウドが家出をした時よりもずっと前から、彼女に思いを寄せていたのだという。
 同姓ゆえに相手にされないことは重々承知していた。
 だから、この想いは墓まで持って行くつもりだったらしい。
 だが、クラウドが家出をし、その間のティファの健気な姿に胸を打たれ、帰ってきたクラウドに殺してやりたいほどの憎悪を抱いたのだと言う。
 だが、勿論殺すことは出来ない。
 腕っ節では到底敵わないし、なによりも殺してしまったらティファが悲しむ。
 だが、クラウドの存在は許せない。

 ならば!

 男がどんなに酷い人種であるかティファに教え、引き離すしか手はないと思ったのだ。
 最初こそ、ティファは傷つくだろう。
 だが、それも自分がずっと傍にいて慰め、支えていきさえすれば、いつかは『過去の話』として笑える日がくる。

 そう思ったとのことだった…。


『俺……もう寝るわ』
「あぁ、心配かけて悪かった」
『礼にはおよばねぇよ。ただ…』
「ただ?」
『おめぇも苦労が絶えねぇなぁ…』

 しみじみと言ったバレットにクラウドは苦笑いを浮かべて電話を切った。


 昨日から本当に災難続きだった…と思う。
 だが、今回の事件で分かったことがひとつあった。
 ティファにどれだけ愛されているのか…ということ。
 それを考えると、今回の事件も悪いことばかりではなかったが、やはり二度と起きて欲しくない。

 帰宅した自分を見た子供達の嬉しそうな顔。
 それを思い出すと、自然と口元に笑みが浮かぶ。

 クラウドはゆっくりと寝室へ向かった。
 既に寝室にはティファがくつろいでいた。
 クラウドを見て、少し恥ずかしそうに微笑みかける。
 クラウドはそっと近づくと隣に腰掛け、ゆっくりと彼女の身体を抱き寄せた。
 ティファも抵抗などせず、ゆるゆるとクラウドの胸に身を任せる。

「本当に…ごめんね…?」
「…だから、俺が悪かったんだって言ってるのに…」

 呆れたようにそう言うと、ティファは「うん、でも…やっぱり……ね…」と、言葉を濁すようにして、呟いた。

「…俺は悪いことばっかりじゃなかったな…と思ってる」

 ティファが少しだけ驚いた気配を感じながら、クラウドはティファの髪をいじりながら言葉を続けた。

「ティファが俺のことを本当に許してくれてたんだって分かったし…」

 黙ったままティファは言葉の続きを待っている。

「それに、ティファがどれだけ俺のことを想ってくれてるか分かったし…」


 言葉を切って、ティファの両肩をそっと包み、身体を離した。
 真っ直ぐ茶色の瞳を見つめる。
 彼女も真っ直ぐ見つめ返した。


「俺が…本当にティファのことを愛しているって実感出来たから」


 茶色の瞳に透明のしずくが盛り上がる。
 そのままスーッと頬に流れるそれを、クラウドは手の平で頬を覆って拭った。
 そっと互いに目を閉じて、今度こそ幸せな口付けをかわす。
 自然とそのままベッドに横たわり、二人の幸せな時間が訪れる。
 腕に彼女を抱きながら…。
 彼の逞しい腕に抱かれながら…。
 二人は今夜、星で一番の幸せ者となった。


 たまにすれ違って喧嘩するのも悪くはない。
 そうすることで、互いの存在を確かなものとして再認識出来るから…。


 そう思いながら、二人は至福の時間を心の底から味わった。



 あとがき

 なんか似たような話を以前、長編部屋にて書いたのですが、その時は二人の強い絆、ということで、喧嘩することはなかったので、ちょっと路線を変えてみました。
 でも、あまりにも内容が似たり寄ったりなので、犯人を若干『イロモノ』にしてみました(笑)

 お付き合い下さってありがとうございます<(_ _)>