コスタ・デル・ソルの夜は美しい。
 寄せては返す波が、ビーチに軒を連ねている沢山の店の明かりで煌いて…。
 そして、店から離れて砂浜に下りて空を見上げると、そこには満天の星が輝いているのだ。
 そんな…恋人同士にはもうムード満点の星空、シチュエーションの中…。

 ティファ・ロックハートは思い切り不機嫌になっていた。



可愛い彼女のヤキモチ(前編)




 何故にここに独りでいるのか…。
 ティファは憮然とした表情を取り繕うこともなく、ひたすら一人で地酒を呷っていた。
 チラリ…。
 視線を横に流せば、そこには彼女の恋人であるはずの青年が、他の女性達に囲まれて困ったように座っている。

『なによぉ…クラウドのバカ!!』

 すっかり気分はやさぐれモード。
 クラウドが必死に救出を求める視線を送っても、完全に無視を決め込んでいる。

『絶対に助けてなんかやらないんだから!!』

 グイ〜ッ…と、実に男前に何杯目かのグラスを空けてしまったティファは、手酌で再びグラスに酒を注いだ。
 数歩分しか距離は無いのに、手を伸ばしても微妙に届かない。
 そんなイライラする場所から、クラウドは気が気ではなかった。

『いくら酒に強いからって…そんなに飲むなよ……』

 ハラハラ、ヒヤヒヤ。
 彼女が確実に怒り心頭なのを察知している故に、余計にその心労が大きくなる。
 しかし、この周りにいる女性達を無下にあしらえない。
 何故なら…。

「クラウドさん、本当にありがとうございました〜!」
「これ、本当に気に入って下さってとっても嬉しいですぅ!!」

 そう言ってクラウドの足元にある大きな紙袋を指した。
 中にはデブモーグリのぬいぐるみとチョコボのぬいぐるみ、どれもキングサイズのものが入っている。
 この二体の大きなぬいぐるみをクラウドが手にしたのは、何という事はない。
 ティファがおトイレに行っている間、チンピラに絡まれていた女性グループを助けたのだ。
 その時、彼女達が持っていた荷物。
 その一部がこうしてお礼としてクラウドに渡された。
 彼女達は、手作りの雑貨を営んでいるという。
 今日は、コスタで試しに屋台を出してみたのだそうだ。
 屋台は昼間だけ。
 夜となった今はお店を片付けて、皆で初屋台成功のお祝いを……と、盛り上がっている所に酒の入ったチンピラに目を付けられたらしい。
 周りにいるのはカップルがほとんど。
 しかも、男性達は戦闘や喧嘩からはほど遠い人達ばかりだったようで…。
 出来れば目立ちたくなかったクラウドだが、結局、彼女たちの一人が殴られそうになった為、重い腰を上げてしまった…というわけだ。

 ティファが戻って来たとき、一応ちゃんと紹介はした。
 そして、彼女達も最初はティファともちゃんと会話をしていたのだ。
 だが…。
 酒が進むにつれ、段々彼女達はクラウドばかりに絡むようになった。
 自然とティファに皆が背を向けて、ティファが孤立するようになってきてしまい、クラウドがその事実に気付いてどうにかしなくては…!と、真っ青になったときには時既に遅し。
 ティファはすっかり膨れっ面になってそっぽを向いていた。

『………参った……』

 クラウドとしては、本当は何の見返りも受け取るつもりなど無かったのだ。
 だが、彼女達が持っていたこの二体の大きなぬいぐるみは、以前、エッジにある雑貨屋で売られていたものよりも大きくて、マリンがとても欲しそうにしていたものと同じだったから………つい…。
『マリンにあげたら喜ぶだろうな…』
 そう思ってしまったのだ。

 父親心が招いた大失敗。
 クラウドはそっと溜め息を吐いた。



 そもそも、どうしてコスタにクラウドとティファがいるのかと言うと。



「おっは〜!元気してた〜?」

 またもや急襲をかけたお元気娘。
 時刻は……午前6時半少し前。
 ティファは起きて朝食を作りにかかろうとしていた矢先。
 そして、クラウドはボサボサの頭で下りてきて、ティファにおはようのキスを送ろうとしたまさにその寸前のことだった。
 カウンターの中の二人と、お元気娘、そして無理やり連行されてきたナナキが同時に石化する。

 クルリ…。
 回れ右をして何事もなかったかのように立ち去ろうとするユフィとナナキは、ティファの悲鳴によって阻止された。



「それで、一体今日は何だ…」

 不機嫌オーラ全開のクラウドの左頬が痛々しく腫れ上がっている。
 向かい合って座っているユフィとナナキはそわそわとクラウドの冷たいオーラに耐え切れず、視線を彷徨わせている。
 何故なら、クラウドの頬が腫れている原因。
 それが、自分達の突然の登場に驚いたティファが、あろうことか恋人を思い切り張り倒したということにあるからだ。
 理不尽にも恋人に張り倒されて不機嫌にならない男は…そうそういるものではないだろう。
 身の縮む思いで、ユフィは「あの〜…、そのね…」と、しどろもどろ話を切り出した。
「実は〜、お宅の可愛いお子様二人を四日間ほど貸して欲しいなぁ…って思って…」

「「は!?」」

 お元気娘の突拍子もない話しには慣れている……つもりだった。
 だが、今回のこの言葉に二人は声を揃えて目を見開くばかり。
 いやいやいや、いきなり早朝に押しかけたかと思うと、可愛い子供達を四日間も貸せだと!?
 クラウドは怒りを通り越して呆れ果てた。
 いやもう……あまりのことに虚脱感が押し寄せる。
 対してティファは、先ほどまで朝のラブシーンを見られたことによる羞恥心から赤く染めていた頬を、怒りによって染め直した。

「ユフィ!なに言ってんの!?子供達はモノじゃないのよ!?!?」

 キーーーーン!!!!

 普段は滅多に大声を上げない彼女が怒りに駆られて甲高い声を発した。
 まるで超音波だ。
 隣に座っていたクラウド、そして向かい合って座っていたユフィとナナキは共に耳を塞いで仰け反った。

 脳天に響く…とはこのことだろうか…。

 奇しくも三人が心の中で同じように呟いている間にも、ティファは眦を吊り上げてユフィを睨みつけている。
「ユフィ!いくらユフィでも怒るわよ!」

 もう怒ってるじゃん…。

 心の中でこれまた三人が同時に同じ感想をこぼす。
 だが、誰もそれを口にするという愚かなことはしない。
 ウータイ産の忍びが、常の彼女からは考えられないほど引き攣った笑いを浮かべながら、「ま、まぁまぁ、ちょっと落ち着いて…ね?」と宥めに入る。
 いつも自信満々で周りの人間を巻き込んでしまう台風がウソのようだ。
 ティファはというと、ユフィの宥めなど全く効果が無いのは明白で…。
 爛々と目を光らせて怒っている。
 モンスターなぞ、こんな怒りのティファを目の前にしたら、戦う前から戦意喪失、とっとと尻尾巻いて逃げ出すに違いない。
 正直、隣に座っているクラウドにしてもちょっと、かなり…、逃げ腰になっていた。
 愛しい彼女がここまで怒るのは滅多に無いのだから。


 ― 美人が怒ると迫力がある ―


 昔誰かがそう言っていたような気がする。
 そう。
 まさにその良い例が目の前にあるわけで…。

 この日初めて、クラウドは仕事がオフである事を恨んだのだった…。
 だがそれも、すぐに消えた。

「なぁに〜…?」
「おっきな声だったけど、なんかあったの……って、ユフィにナナキ〜!」

 寝ぼけ眼で寝巻きのまま起きてきた二人の天使。
 諸手を挙げて歓迎した三人は、勢い良く立ち上がるとデンゼルとマリンに駆け寄った。

「おはよう、良く眠れたか?」
「おはよう!!もう、助かったよぉ!!」
「デンゼル、マリン、お願いだから助けておくれよ!!」

「「 ??? 」」

 必死の形相で自分達を取り囲む大人達に子供達はキョトンと目を丸くした。
 視線を転じると、不機嫌マックスの母親代わり。
 それだけで子供達は何事かを察したらしい。
 呆れたような…それでいて『仕方ないなぁ…』とでも言うような笑いを浮かべると、
「おはよう、クラウド!ティファ!それに…」
「ユフィにナナキ!」
 そう言って、それぞれの頬に『おはようのキス』を贈った。



「それで、一体何なの?」

 子供達から『おはようのキス』を受けたティファは、幾分か機嫌を良くして座っていた。
 そんなティファに、三人が心の奥底からホッとしたことは言うまでも無い。
 それでもどこかまだぎこちなさを引きずってしまうのは仕方ないだろう。
 ユフィはいつもにない歯切れの悪い口調で、今回の訪問を説明した。



 そして…。
 現在に至る。

 いやもう、あまりにも……あまりなこと過ぎて!!
 ティファも…勿論、女性に囲まれているクラウドも今回の展開についていけてないままなのだ。

 今回のお元気娘が持ち込んだ騒動を要約すると…。

 @ ウータイで催されるお祭りのマスコットとして子供達を貸して欲しい。
 A 子供達のレンタル期間は四日間。
 B 子供達のレンタル料は、コスタ・デル・ソルまでの船代往復分をペアで。
 C ちなみに、子供達には既に了承済み。

 というものだった。
 あんぐりと口を開けるクラウドとティファを尻目に、二人の天使は満面の笑みを見せた。

「ってわけだから、二人共、ゆっくり楽しんできてね!」
「クラウド、配達の仕事はちゃんと明日から四日間分の調整済んでるから心配すんな」
「そうそう、コスタの別荘は、ちゃんと管理人さんに連絡してるからすぐに使えるようになってるはずだよ」
「あ、それから二人共、ちゃんと楽しんで来いよ?俺達、二人の為にウータイに仕事に行くんだからさ」
「そうだよ。二人共絶対にしっかりと楽しんできてね?私達が帰ってくるのが四日後だからね。
「俺達が帰った翌日もクラウドの仕事をキャンセルにしてる理由、分かってるか?」
「ちゃんと沢山お土産話聞かせてね!丸一日かけて聞くんだから!」
「楽しみにしてるからな〜!」

「「 ……… 」」



 なんということはない。
 今回の騒動の首謀者は、ユフィだけではなくて子供達も含まれていたのだ。
 しかも、話を持ちかけたのはユフィだろうが、それに輪をかけて大きくしたのは間違いなく子供達。
 クラウドの仕事をいつの間にか調整してしまったというのは…どうよ、それ!?という話の展開だ。
 いやもう…天晴れというか……何と言うか…。

 慌ただしく嵐は去った……二人の天使と共に。
 子供達の満面の笑みがクラウドとティファを大人しくコスタに来させたわけなのだが…。
 正直、あんまりな展開過ぎて……楽しむどころの話ではなかった。
 しかし、そこはまぁ…なんというか…。
 破天荒な仲間を持ち、しっかり者の子供達の両親をしている…というべきなのか。


 コスタに着いたらなんとか楽しめる……かな……。


 という実に投げやり……いやいや、開き直り、いやいやいや、前向きな考えにてこうしてやって来ることとなった。
 ジュノン港まではフェンリルで二人乗り。
 そこから船でコスタへ渡る。
 大海原を眺めているうちに、二人の心が落ち着いて……きてはくれなかった。
 乗り物に弱いクラウドは、出港から僅か十分もしないうちに船酔いに苦しめられ、ティファはそんなクラウドの背をずっと擦って介抱していた。
 いやもう…コスタに着いた時のあの解放感!
 船酔いに苦しんだクラウドとそんなクラウドを介抱していたティファは、これほど『シエラ号』のありがたさを感じた事は無いのではないか!?というほど飛空挺の素晴らしさを痛感した。
 飛空挺も勿論長い時間乗っていたら酔ってしまう。
 だが、飛空挺のほうが乗っている時間は少ないし、揺れも船に比べたらさほどではない。

 いつもお元気娘の突発的な思い付きで振り回されているシエラ号の艦長は、今回その嵐を避けることに成功したようだ。
 しかし、そんな仲間の幸運を喜べないクラウドとティファは、
『『いつもだったらシドがシエラ号で送ってくれるのになぁ…』』
 と、実に情けない感想を抱くのだった…。(そして、そんな自分に凹むのである)

 コスタに着いたのは丁度昼食時だった。
 暑い地方独特の辛い料理を中心とした昼食を食べ、なんとか混乱している頭と身体も慣れてきた……かに見えたが、実はそれもあまり上手くいっていない。
 なんとなく……そう、ほんっとうになんとなく気まずい。
 子供達や仲間にお膳立てをされてコスタにやって来てしまったという事実が…この上なく気まずい。
 船の往復代金を押し付けられたことと言い、配達の仕事をいつの間にか調整されていたことと言い、そして…。
 準備された二人の私服。
 ナナキが鼻先で持ってきていた荷物をツンツンと押しやり、上目遣いで、
「これ…多分サイズは大丈夫だと思うから……着てくれる?」
 と言ってきた時には眩暈がした。
 なにゆえ仲間と子供達は自分達の為にここまで綿密に計画し、準備をしたのだろう……。
 呆然とする二人を気の毒そうに見やりながら、それでもナナキは持って来た荷物を引っ込めるという事はしなかった。
 そんな事をしたら、お元気娘の制裁に加え、今回は子供達の不興をも被ることとなるのだから…。


 ちなみに。


 荷物の中身である二人の服。
 クラウドはジーパンと黒のタンクトップ、その上から白いXネックのカットソー。
 襟ぐり部分には細い皮ひもがアクセントとして縫いこまれている。
 一方。
 ティファは膝下までのデニム生地のクロップドパンツに襟ぐりの大きく開いたベージュのカットソー。
 左肩から胸にかけて木陰をイメージした刺繍が入っているそれは、非常に可愛らしい。

 まさにコスタへやってくるカップルに相応しい服装。
 違和感など微塵も無い。
 しかも美男美女!
 注目を集めないはずが無いではないか。
 しかし、周囲の好奇の視線とは裏腹に、二人の心境はまだまだ動揺の域を出てはいなかった。
 絡まらない視線と、繋がれない手。
 周りにはアツアツのカップルばかり。
 そんな雰囲気に呑まれて自分達も……と、ならないのがなんともこの二人らしい…と言えばそうなのだが…。

 子供達の、
『『絶対に二人で楽しんできてね!』』
 という言葉が異様に重苦しく感じられる。

『『楽しめって……どうやって……???』』

 なんとなく…なんとな〜く、隣の愛しい人を見る。

 バチッ!!

 音を立てて合わさった瞳。
 慌てて逸らしてしまった顔。
 それ以来……気まずい…。
 決して彼女と…彼と、目を合わせたのが不快だったわけではない。
 当たり前だ。
 誰よりも大切な人なんだから…。
 だが…。

『………顔、逸らしてしまった……』
『………どうしよう……咄嗟につい…そっぽ向いちゃった…』

『『怒ってるか(しら)…』』

 お互いがお互いを思うが故のすれ違い。
 自分が相手を怒らせたかもしれない…という不安から、ぎこちなさに拍車が掛かる。
 そしてそのまま。
 夜を…現在の状況を迎えてしまった。
 確かに。
 クラウドはカッコイイ。
 容姿端麗、媚びた表情は一切無し、格闘技は超一流。
 そんな彼が自分達の危機に突然現れたとしたら、世の女性達のハートが奪われたとしても仕方ない。
 事情を知らされたティファは最初、そう割り切った。
 そして、事情を説明された当初は彼女達も自分への配慮を持てるだけの理性を保っていたからこそ、クラウドの傍にいることを暗黙の了解として認めていたのだ。
 しかし!
 酒が進むにつれ、彼の周りにいる女性達の雰囲気がこうも変わってくると…やけ酒もしたくなる。

『クラウドは…私のなのに…』

 いつも押し殺している感情が酒のせいで表に出る。
 クラウドに媚びた笑いを浮かべ、話しかけている女性達に嫌悪感が募る。
 同時に、それを拒否しないクラウドに対し、理不尽な怒りが生まれる。
 そして同時にこうも思う。


 クラウド・ストライフに心奪われた年数は断然自分の方が長い!


 だからどうなんだ?というツッコミを入れられそうだが、酒の廻ってきたティファにとって、その事実こそが非常に大切なものに感じられた。
 故に、クラウドに媚びている女性達に怒っても当然なんだ…と、ちょっとずれた頭で自分を納得させる。
 そしてそのまま、その感情というか…思いに囚われてティファの酒は進んでいった。


 一方クラウドはと言うと。
 ティファの細かい心情は分からないものの、それでも彼女が『ヤキモチ』らしきものを妬いてくれているとは理解していた。
 だが、悲しいかな。
 それを喜ぶだけの猶予が与えられていなかった……これっぽっちも!!

 いつも自分がセブンスヘブンに来るヨコシマナ思いを抱いている常連客に、ヤキモキさせられていること考えると不公平に思えるほどだ。
 常連客達の大半が、クラウド・ストライフという恋人がいてもいなくても、関係なくティファ・ロックハートの恋人の座に着きたい…と願っていることなど、彼女は夢にも思っていない。
 だから、ティファは非常に彼らに対して無防備で、屈託ない笑顔を惜しげもなく与えている。

『俺………普段は我慢してるのに…』

 心の中でクラウドはそう溜め息を吐いた。


 苦痛でしかない三十分ほどが経った頃。
 クラウドのハラハラはピークに達していた。
 ティファの身体が不自然に左右に揺れている。
 その頃には、クラウドを取り巻いている女性達もかなり酔っ払っていた。

『もうそろそろ良いかな…』

 クラウドは自分を取り巻いている女性達を見てそう思った。
 いくら酒を勧められても…。
 いくら酒を飲んでも…。
 ティファの事が気になってこれっぽっちも酔えない。
 クラウドは腰を浮かせながら脱出する機会を窺った。

 だが…。

 グッドタイミングとでも言うべきなのだろうか…。

 愛しい彼女がとうとうナンパにあってしまったではないか!!
 もうほんっとうに…腸(はらわた)が煮えくり返りそうな程の男達の殺し文句。


 ― 一緒にディナーを… ―
 ― キミみたいな素敵な女性をほったらかしにするような男なんか… ―
 ― きっと、キミのように素敵な女性、そんな男には勿体ないさ ―


 よくもまぁそこまで、恥ずかしい台詞を口に出来るもんだ!
 呆れ一割、怒り九割の感情に背を押され、クラウドは勢い良く立ち上がった。
 席を立つことを躊躇っていたのがウソのようだ。
 そのまま勢いを殺さないで無礼者達を成敗!!

 しようとしたその動きは…。


「どうしよっかなぁ〜…」


 信じられない彼女の甘えたような言葉によって封じられた。

 ビシッ!!!

 これまでに聞いたこともない彼女の甘えたような声音に音を立てて石化する。
 逆に、ティファを誘った男達はその声と表情にメロメロになった。

 いやもう…。
 猫にまたたび。
 アルコール中毒患者に上質のウィスキー。
 ティファの声音と表情はまさにそんな感じだった。
 デレデレと鼻の下を伸ばして男達が彼女に手を伸ばす。


 ブチッ!!!!


 怒髪天を突く。

 天をも突き上げるほどの怒りによって、石化は一瞬で解除された。
 ナンパ氏達はクラウドの絶対零度&殺気が思い切り込められた視線の前に竦みあがった。
 いやもう…なんというか。
 蜘蛛の子を散らす…とはこのことだろう。
 あっという間にナンパ氏達は見えなくなった。
 潔いほどの逃げっぷり。
 あともう少し逃げるのが遅かったらクラウドの鉄拳が繰り出されたのだろうが、そうならなかったのは不幸中の幸いかもしれない。
 誰にとってか?
 勿論、双方にとってである。

 彼方に消えていった背中を見送り、クラウドは怒り冷めやらないままベロンベロンに酔っ払って「あれ〜……どこにいくの〜……???」と走り去る男達の背中に声を投げる愛しい人を見下ろした。




あとがきは後編にて〜♪