「はぁ!?ちょ、ちょっと…それ本気……?」
「…ああ」
 クラウドから持ちかけられた話に、ティファは絶句した。



Mission1




 ティファは、目を丸くしたまま目の前で憮然とした顔の恋人をまじまじと見つめた。
 『実は、軽い冗談だ…悪かった』と、彼が言ってくれる事を期待しているのだが、一向にそう言ってくれる気配が無い。
 そればかりか、何がなんでもやってやる!!という決意がヒシヒシと伝わってくるばかりだ…。
 クラウドの真っ直ぐに注がれる眼差しに、ティファは「はぁ〜…」と深い溜め息を吐いた。
 それだけで、クラウドには彼女が了解してくれた事が分かった。
「すまない…」
「……分かったわ…。でも、マリンとデンゼルに話し…、するの?」
 呆れ返った顔をする彼女に、クラウドはしかめ面のまま「ああ、これには子供達の協力が不可欠だし…」と、ボソボソとこぼす。
 口調から、本当は子供達を巻き込みたくないという彼の心理が滲み出ていた。
 ティファは、それだけでクラウドに対する少しの苛立ちが和らぐのを感じた。

 彼だって、好きでやるわけじゃないんだ…。

 ティファは、再び溜め息を吐くと今は眠りの国にいる子供達の驚く顔を思い浮かべ……。
 その先にある子供達の楽しそうな表情までもが目に浮かんできて思わず吹き出した。
「なんだ?」
「え…だって、あの子達の事だもの、きっと物凄く張り切るんだろうな…って」
 ティファの言葉に、クラウドも漸く難しい顔を崩した。
「そうだな…あいつらは、俺達よりもうんと楽しむだろうな…」
「だね」

 二人は顔を見合わせると再び笑い合い、さて、子供達にどうやって説明すべきか遅くまで額を寄せ合ったのだった。



 事の起こりはこうだった。
 ストライフデリバリーのお得意さん、クラウドと同年代の青年が、両親の形見の品であるスタールビーという非常に高価で希少価値のある宝石が盗まれた。
 勿論、それだけならまだクラウドが躍起になる事も無いのだが、この青年、非常に人当たりが良く、純真無垢な子供のような性格だった。
 そして、当然のことながら、その様な性格ゆえに人に騙されると言う事も珍しくはないのだそうだ。

 『何て学習しない奴だ』

 クラウドは初め、そう思っていた。
 しかし、どうにも憎めない性格の彼に、いつしか情を寄せるようになっていた。
 ある時、配達の仕事で彼のところに行くと、何と土地の権利書を他人に譲ろうとしているではないか!!
 慌ててその手続きを横から取りやめさせると、どうみても『偽善者』の皮を被っている小太りの男がキーキーと喚き、耳障りな事この上ない。
 そして、その小太りの男のボディーガードと称する柄の悪い野郎共が、虫の如くにワラワラと湧いてくるではないか。
 その光景に、青年は初めて自分が騙された事を知ったのだという。
 目の前で、クラウドがあっという間にそれらの害虫を駆除して見せた後、彼の説明を聞いてクラウドは立ちくらみに襲われた。
 この小太りの男は、『先のジェノバ戦役において家族を失った子供達の保護をしている。しかし、二年経った今でも子供達を養う為にはどうしてもその建物を建てるための土地が足りない。その為、どうか力を貸してはくれまいか』そう言ってきたのだという。
 
 自分自身、先のジェノバ戦役において両親と兄弟を失った辛い経験を持つその青年は、涙ながらに訴える小太りの男に痛く共感し、両親の残してくれた土地の大半を譲るべく書類に判を押す寸前だったのだ。
 
『気付けよ!!』

 そう心の中で突っ込みを入れるクラウドだったが、青年の穏やかな表情を見ていると、何やら彼に後光が射している様に見えてきた…。
 その為、特にきついお小言を口に出来るはずもなく、軽々しく書類等を作成したりしないよう、判を押したりしないように念を押してから仕事をこなし、帰ってきた…。

 ところが…!!
 青年を狙うハイエナはその小太りの男だけではなかった。
 当然だ。金持ちで少し抜けたこの青年を狙わない手は無いだろう…。
 それから数週間した今日の事…。
 クラウドは仕事の為に青年の屋敷の近くを通りかかった。
 そこで、いつもなら仕事の途中で寄り道など…ましてや、仕事以外で他の人の所に立ち寄るなど絶対にしないクラウドが、先日の小太り男の一軒がある為、気になって顔を見ようと彼の元を尋ねた。
 すると!!!
 何と、広い屋敷のエントランスで、青年が首を括ろうとしているではないか!!
 それを、必死に止めている老いた執事と、ぽっちゃりしたメイド頭、そして多くの使用人達の姿に、クラウドは暫し唖然とした。
 そして、ハッと我に返ると猛然とその現場に突っ込み、はるか彼方に見える天井からぶら下げられたロープを腰に下げていた大剣で一振り、切って捨てた。
 初めて見る泣き喚く青年を、クラウドは何とか落ち着けると、執事とメイド頭、そして青年自身の口から事件の全貌を聞きだした。


 青年には一つ、困った癖があった。
 惚れ易いのだ…。
 少し抜けたところは…まぁ、この青年の人柄ゆえにカバー出来てしまう。
 が!!
 惚れ易いのだけはカバー出来ない…。
 今までにも、行きずりの女性に一目惚れしては、高価な宝石や服などを贈り、そして見事に捨てられていた。
 クラウドの配達の仕事も、実はこの一目惚れした女性達への贈り物を配達する事だったりするのだが、それにしても……。
 クラウドは、それでも青年に対して嫌悪感は抱かなかった。
 それは、青年が純粋に女性達に憧れているだけで終わるからだろう…。
 世の男から見たらちょっと幼すぎる彼の女性への憧れ…。それは、どうもクラウドから見ると、母親への憧れのようにすら見える。
 その為に、彼が女性へ贈り物をしたその行為には下心が無い。
 贈り物をしたから…と見返りを求めた事は一度も無いのではないだろうか…。
 勿論、青年の生活全般を把握しているわけではないのでクラウドが知らないところで『色男』振りを発揮しているのかもしれないが、きっとそういう事はないと断言出来てしまう何かがこの青年にはある。

 なら、この青年の抜けた性格につけ込んで正妻の座に…という女性が現れてもいいようなものなのだが、何故か彼は結婚しようとはしなかった。

 ……まぁ、本人の自由だしな。
 でも、いい加減、そのフラフラした性格…何とかするか、結婚して身を固めるかしたほうが良い様な気も…。

 そう思いつつ、クラウドは我が身を振り返ってそれを言えずにいたのだった。

 そして、話を戻すが…。
 例の『病気』が青年を襲ったのは、土地の権利書事件の翌々日の事。
 執事に屋敷の事を任せ、青年は近々開かれるバルト家のパーティーに向けての準備をする為、親の代から贔屓にしている店の前にやって来た。
 いつもは、彼も一種の良いとこのお坊ちゃんなのだから、お供となる人が一人くらいは付いている。
 しかし、彼は元々自由にのんびり・のほほんと過ごすのが好きな性分な為、今日はそのお供を置いてきたのだった。
 そこで…彼は運命の出会いを果たした……(というのは、彼の言葉)。

 流れるブロンドの豊かな髪、吸い込まれそうなサファイアの瞳、抜けるような白い象牙を思わせる肌、フワリと漂う甘酸っぱいコロンの香り…極めつけは抜群のプロポーション…。

 彼は、入ろうとしていた店のドアからクルリと踵を返すと、彼女の後をフラフラと付いて行った。
 そこで、まさにドラマのような場面に出くわしたのだという。
 麗しの彼女が、暴漢によって裏路地に引き込まれようとしたのだ。
 咄嗟の事に、周りを歩いていた通行人達は誰も気付かない。
 気付いているのは、後をひたすらストーカーの如く(いや、ストーカーだ)付けていた自分だけ…。
 青年は決心した。
 腕っ節はからっきしなくせに、その時は何故か使命感に燃えていたのだ。
 そう、彼女を救うという使命感に…。
 そして、鼻息も荒く彼女が引きずり込まれた裏路地に突入すると、あわやという姿の彼女に一瞬にして目を回し、暴漢の一人にあえなくノックアウトされてしまった…というのだ。
 では、何故無事に帰されたのかというと、青年がノックアウトされた拍子に、青年の胸ポケットから手帳が落ちたそうだ。
 それは、その青年の身分を表す物だとかで、暴漢達は青年への制裁をあっさりと取りやめた…。
 何故なら、自分達が制裁するにはあまりにも身分の違う雲上人だからだ。
 青年の身分を知った暴漢達は、裏路地に引きずり込んだ女性をも無傷で帰した。
 彼女が青年と何らかの繋がりがあると思ったのだろう…。(実際は全くの赤の他人なのだが、そんな事をご丁寧に彼女が教えるはずもない)。

 青年が目を覚ましたのは、裏路地だったのだが、その時、彼は天国にいた。
 何故なら、青年の頭は麗しの女神の膝の上にあったのだから。
 青年に救ってもらった女性は、涙をうっすら浮かべ、柔らかな笑みをその艶やかな唇に湛えている。
 その姿はまさしく天上の女神。
 青年は、高鳴る胸を抑える事など出来ず、その女性にいつもの如く、贈り物をする事にした。
 しかしそこで、いつもと違う行動に出たのだ。
 いつもなら、どこか適当に高価な宝石店にでも女性を連れて行くのだが、青年はこれまでであった中で感じた事の無い激しい想いを彼女に感じたのだという。
 その青年の取った行動…。
 それは、自分の屋敷に彼女を招待する事…。

 実は、青年が自分の屋敷に行きずりの女性を連れてくることはただの一度も無かった。
 その為、屋敷では女性を伴って主が帰宅した事に大変な騒ぎとなったのだ。

 人が良いだけのどこか抜けた主を、屋敷の者達は皆、『しょうがないご主人様だ』『このままじゃ、社交界から断絶されても…』『いやいや、このご主人様の名前もいつか取られてしまうのでは…』などなど、言いたい放題言いながらも、それでも心から慕っていた。
 それは、一種の才能であろう。
 そのご主人様が!!
 とうとう行きずりの女性を屋敷に連れてきた!!!
 しかもだ!
 この屋敷から好きなものを持っていって良い…などとふざけた事をノタマッテイルではないか!!!!

 思わず、片言になる屋敷の者達の唖然とした顔には全く気付かない青年は、満面の笑みで彼女を伴い、自分の部屋に連れて行ってしまった。
 この屋敷の貴重な物は、ほとんどが彼の自室に保管されているのだ。
 セキュリティー的に、それは問題ないのか?とか思われそうだが、彼の部屋が一番厳重に保護されているので、その判断は正しいと言える。
 しかし、そのセキュリティーもその部屋の主である青年に対してはノンセキュリティーであるわけで…。
 彼は、女性を自室に招きいれ、自慢の家宝を披露した。
 彼女は最初、青年の申し出を必死に断っていた。
 普通から考えればそうだろう。
 自分が暴漢から助けてもらったのに、何故贈り物をされるのだろうか…。
 普通は、助けてもらった自分の方こそが、彼に贈り物をすべきであるのに…。
 彼女のこの言葉が、さらに青年の心を刺激した。
 今まで、青年に対してここまで謙虚な女性はいなかったのだから…。(何と女運の悪い青年なのだろう)
 青年は、自分が一緒に見ていたのでは彼女も選びにくいだろうと判断し、彼女を一人、部屋に残して自室を後にした。
 そして、彼女と自分の為、何か飲み物を…と厨房に足を向けたのだ。
 ところが!!
 青年が離れていた僅かの時間の間に、女性は青年に自室から消えていたのだという。
 慌てた青年が通りかかったメイドの一人に彼女の事を尋ねると、もう既に帰ってしまったというのだ。
 青年は慌てて屋敷を飛び出したが、彼女の姿はどこを向いても見当たらない。
 ちなみに、青年の屋敷は郊外にある為車等の『あし』がないと、街までは遠い。
 にも関わらず、彼女の姿はまるで神隠しにでもあったかのように忽然と消えてしまっただ。

 携帯電話でタクシーでも呼んだのだろう…。

 ガックリとしながらも、青年は自室に戻った。
 そこで気づいたのだ。
 家宝中の家宝、『スタールビー』が消えている事に!!
 真っ青になった青年は、すぐに自分の秘書、執事、メイド頭等々、頼りになる者達を招集し、彼女の行方を捜させた。
 街の探偵にも依頼した。
 そして…、彼女の行方を掴んだのが…まさにクラウドが尋ねた今日だった。


 彼女は、最近政財界に影響を出し始めた資産家の愛人だそうだ。
 しかも、その資産家は何かと『きな臭い』との噂があるそうで、ついこの間、リーブが珍しくセブンスヘブンにやって来て愚痴をこぼしていた。
 仕事の事で愚痴こぼすことなど非常に珍しい事なので、クラウドもティファも、WROを束ねる仲間を心配していた。
 青年の事件はその矢先の出来事だった。
 クラウドは、泣き喚く青年に『なら、取り返せば良い』と至極簡単に言ったのだが、その言葉に目を剥いたのは青年だけではなかった。
「それが出来るなら苦労はありません!!」
「クラウドさん、向こうがシラを切るのが分かってるじゃないですか、それなのにそんな『ドロボー』みたいなこと言ったら、こっちが悪者です!!」
「おまけに、かの資産家の愛人を自室に招き入れただなんて公になったら…ご主人様は社交界から消されてしまいます!!」
 執事に秘書、そしてメイド頭にこっぴどく反論され、クラウドは「そ、そうか。すまない」と何とも釈然としない思いを味わう事になってしまった…。

 青年は、泣き腫らした目でさめざめと両親と兄と弟の遺影を胸に、しきりに「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していた。

 それは何とも、情けなく、みっともない姿だ。
 しかし、クラウドはそれを、情けないともみっともないとも思えなかった。
 青年は確かにどこか間が抜けている。
 年の割には頼りない。
 しかし、近年まれに見る純粋で良い奴なのだ。
 その青年を小バカにしたような今回の仕打ち、黙って見過ごす事など出来るはずもない。

 クラウドにしては珍しく、他人の出来事に対して沸々と怒りが湧いていた。


 幸いな事に、配達の仕事はすぐに終わった。
 夕暮れまでには充分帰宅できる時間に終了した仕事に、クラウドは喜びよりも、むしろある種の使命感に支配された。
 そう、青年の手に『スタールビー』を戻してやる…という使命感に。
 ユフィあたりに話したら『はぁ!?他人のためにクラウドが!?!?バッカじゃないの?そんな一銭にもならないことしてさ〜、しっかも全然似合わないし!』などとバカにされそうだが…。


 クラウドは、フェンリルを問題の愛人…青年から家宝を盗み出した魔性の女の元へと走らせた。
 到着したのは、ヒーリンの近くにある豪奢な一軒家。
 白を基調としたその建物は、無論、青年の屋敷とは比べるべくも無いが、一人の愛人が住むには広すぎる建物だ。
 庭も、バラをメインに様々な花々が綺麗に植えられている。
 その建物の前で、クラウドは考えた。
 ここまで来たのは一種の勢いなのだが、その為に彼女から家宝を取り戻す手段を思いついたわけではない。

 …………。
 ……………。
 ……………困った。

 クラウドは自分の考えなさに情けなくなった。
 正面きって『あいつの家宝を返せ!』などと言える筈も無い。
 そんな事が出来るなら、自分が行動を起こさなくても青年や、青年の周りの人間がやっている。

 愛人宅の前で、クラウドが困っていると、何と玄関が開いてしまったではないか!!
 しかも、その問題の女性自らが出てきてしまった。
 彼女の背後には、屈強な男性達が控えている。彼女のボディーガードだろう…。
 あまりにも長い間、クラウドが家の前にいる事に対して、不信感を持ったのだ。
 クラウドは焦った。
 今、彼女を前にして何事も無かったかのように走り去るなど出来るはずもない。
 だからと言って、何しに来たのか問われても……答えられないし…。

 見た目はポーカーフェイス、内心では焦燥感の塊になっているクラウドに、女性は嫣然な笑みを口許に湛えた。
「こんにちは、どうされたのですか?」
「………あ、いや」
 話しかけられたクラウドは、ビクッとしながらもその一言だけを口にする。

 『あ、いや』ってなんだよ、それ!!

 内心で自分に突っ込みを入れるが、見た目はポーカーフェイスのままだ。
 女性は、何を勘違いしたのか、後ろに控えているボディーガード達を下がらせると、クラウドに向かって庭先を指差した。
 見ると、可愛いテーブルと椅子が置かれている。
 恐らく、庭の花々を眺めながら午後の一時を過ごしたり、モーニングティーをするのだろう。
「あちらで、少しお話しませんか?」
 女性が甘ったるい声でクラウドを誘った。
 どうも、クラウドが気に入ったようだ。
 クラウドは、思わぬ誘いに一も二もなく頷くと、女性に先導される形で従ったのだった。


 そこで聞かされた衝撃の事実。
 彼女はクラウドがジェノバ戦役の英雄である事を知っていた。
 しかも、クラウドとティファが共に暮らしている事も、良く知っていた。
 別に、それらは隠している事ではない為、知られていたとしても特に問題無いのだが…。

 彼女にクラウドが一目惚れしている…と、勘違いされている事実には、クラウドは飲みかけの紅茶を吹き出しそうになった。
 激しくむせ返るクラウドに、女性はコロコロと珠が転がるような笑い声を上げ、そっとクラウドに白いハンカチを差し出した。
 そのハンカチを取るかどうか一瞬迷ったが、結局そのハンカチを受け取り、口許を拭った。
 ハンカチからは、ほのかにコロンの良い匂いが漂った。

 クラウドがむせ返ったのは、彼女の言葉が真実である…と、彼女は勝手に解釈したらしい。
 自分の座っていた椅子をそっとクラウドに寄せると、テーブルに置かれていたクラウドの手にそっと自身の手を乗せ、ジッとクラウドを見つめた。
 危うく女性の手を払いのけそうになるが、そこをグッと堪えて彼女を見つめ返す。
 彼女はその事で、益々クラウドが自分に甘い恋心を抱いていると確信したらしい。
「私も…貴方と同じ気持ちです…でも…」
 演技たっぷりに憂いを含んだ瞳をそっと伏せる。
 何も知らない世の男性なら、『コロッと』騙される事間違いない。
 
 アイツが騙されても仕方ないな…。

 内心で苦笑しながら青年を思い描き、クラウドは黙ったまま女性を見つめた。
 彼女は、フワリと優しい笑みを浮かべると、
「私…、貴方の事…ずっとお慕いしておりました。でも、貴方にはあのティファさんが………。ですから、ずっと、この想いは秘めて生きて行こうと想っておりましたの…。でも!!」
 ここで、クラウドの腕にしがみつき、潤んだ眼差しでクラウドを見上げた。
 危うく、彼女の華奢な身体を殴り飛ばしそうになるが、そこも必死に我慢する。
「どうか…私の想いを汲んで下さるなら…私のボディーガードに…!!」



 こうして、サイは投げられた。





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