My hero6(後編)




「やぁ、いらっしゃい」
「「「「こんばんわ〜!」」」」
 帰宅したクラウドさんは、まっすぐ私達のテーブルにやって来ると、やんわりとその表情を緩めた。
 久しぶりに見るクラウドさんは、金髪の髪からポタポタ雫を垂らし、店の照明を一身に受けてキラキラと雫を反射させ、いつもよりもうんと素敵に見えた。
「ライ、アイリさん、良く来たな」
「はい。あの時は本当にお世話になりました」
 プライアデスさんが立ち上がって頭を深々と下げた。
 クラウドさんは、苦笑しながらそれを止めようと片手を上げたんだけど、丁度その時、お店の奥からタオルを持って小走りにやって来たティファさんに「あ…」と小さく声を上げて困ったような顔をした。
 漸く自分が濡れ鼠だという事に気づいたみたい。
「もう、クラウド。風邪引いたらどうするの?」
「ああ、すまない」
「それに、『ただいま』も言ってくれないんだから」
「ん…そうだったか?」
「そうよ、ねぇ、マリン?」
「そうそう!クラウドったら、帰ってくるなり真っ直ぐライお兄ちゃん達の所に行っちゃったじゃない」
 ティファさんに話を振られたマリンちゃんが、腰に手を当てて怒ったような顔をしてみせる。
 クラウドさんは、タオルで頭を拭きながら「あ〜、そうだったか…?ごめん、えっと『ただいま』?」と肩を竦めて見せた。

 すると、それを見ていたお店のお客さん達が一斉に笑い声を上げた。
「何で疑問系なんだよ!」
「って言うか、かの英雄も女店長と看板娘にはてんで頭が上がらないだなんて、面白すぎ!」
「たまには何か言い返すところも見てみたいよな〜」
「あー、それ絶対に無理無理!」
「「「言えてる!!」」」

「もう、皆、言い過ぎよ!それじゃ、私がいつもクラウドを虐げてるみたいじゃない!」
 ティファさんが照れ隠しの為か、顔を真っ赤にさせながらそう言うと、たちまちお客さん達から反対の声が上がる。
「なに言ってるのさ!」
「そんな事、俺達は一言も言ってないぜ!?」
「俺達が言いたい事は一つ!!」

「「「羨ましいぞ、この野郎!!!」」」

 まるで打ち合わせをしたかのような見事なハーモニーが、店内に響く。
 ティファさんは首筋まで真っ赤にさせると、オロオロと困ったように視線を彷徨わせ、クラウドさんもほんのりと頬を染めると、タオルで拭く振りをして顔の大部分を覆ってしまった。

 ああ、良いなぁ。
 本当に素敵な二人だなぁ。
 はぁ、羨ましい。

 思わず見とれて溜め息をこぼしてしまう。


「リリーお姉ちゃん。どうしたの?」
 クイクイッと袖を引っ張られてハッと下を向くと、マリンちゃんが大きな目を心配そうに翳らせて見つめていた。
「あ、ううん。何でもないよ」
「そうそう。今夜のリリーは何だか変なの。ここに来るまでも、急にぼんやりしたりするんだよ〜」
「え…どこか具合悪いの?」
 慌てて笑って見せたんだけど、ラナが肩を組んで話しに割り込んできた。
 ラナの冗談に、マリンちゃんが真面目に受け取って益々心配そうな顔をする。
「え!?そんな事全然無いよ!もう、至って元気満々!ラナ、心配かける様な事言わないでよ!」
 早口で捲くし立ててラナを睨む私に、
「いいや、リリーちゃんは病気なんだ」
と、今度はグリートさんがとんでもない言葉を口にした。
「え!?リリー姉ちゃん病気なの!?」
 途端、マリンちゃんだけでなくデンゼル君までもがびっくりして私ににじり寄ってきた。
「そうなの!?」
「どこが悪いの!?!?」
 真剣な表情で痛いくらいに心配してくれる子供達に、思いっきり狼狽してしまう。
 勿論、そんな子供達に親代わりのクラウドさんとティファさんが気づかないはずが無い。
 二人が気づいたという事は、二人に注目していた他のお客さん達の意識も引き付けてしまうという事になるのよね……。

 もう、ものっすごい視線を感じるんだけど……!!

「本当に全然どこも悪くないのよ!って、もう!!グリートさん、何でつまんない嘘付くんですか!!!」
「なに言ってんだ、嘘じゃないだろう?」
 半分パニックになりながら抗議する私に、グリートさんは実にさらりとした口調でそう言い返した。
 ラナもプライアデスさんも訳が分からないようで、私とグリートさんの顔を見比べている。
「えっと……リリーさん、病気なの…?」
「違います!!」
 恐る恐る声をかけてきたティファさんに、思わず噛み付くような返事をしてしまう。
「もう!本当にいい加減にしてくれないと、怒りますよ!!」
「何で?俺、嘘付いてないもん」
「グリートさん!!」
 どこまでもシラッとした口調のグリートさんに、段々本気で腹が立ってきた。
 そんな私の視界の端に、ラナとプライアデスさんが揃って『ハッ!』としたのが見えた。
 思わず、勢い良く二人の方へ振り向く。
 その時。


「だから、リリーちゃんは病気なんだよ。『恋』っていう名前のね」


 グリートさんがグラスを傾けながら、ニヤリと笑った。


「「ブハッ!」」
「「ゲホッ!」」
「「ゴホッ!」」

 途端にお客さん達が吹き出したのと……。

「兄さん!!」「リト!!」

 ラナとプライアデスさんの鉄拳がグリートさんにクリティカルヒットしたのは、ほぼ同時だった…。



「もう、リトさんったら本気で信じちゃったじゃないですか」
「いやいや。つい可愛い悪戯心を刺激されて」
「兄さん、まだお仕置きが足りなかったりするのかしら…」
「可愛い妹よ、これ以上お前とライに殴られたら、兄さんは早期認知症になってしまうよ」
「じゃ、それ以上その滑り過ぎる舌を動かさないでちょうだい」
「おお、本当に何て怖い妹だ。いいか、デンゼル。あんまり妹を可愛がり過ぎると将来こんな鬼女になるから程々に……っと、本当にごめんなさい」
「うわっと、何すんだよ〜!」
 睨み付けるラナの視線を、グリートさんはデンゼル君の小さな体で遮ろうとした……デンゼル君を抱き上げて……。

「それにしても、本当にびっくりしたな。リリーさんが病気かと本気で思った」
 クラウドさんが優しく私を見つめて静かにそう言った。
 もう、それだけで本当に病気なんじゃないかってくらい、心臓が早鐘を打つ。
「あ、あはは…。私もびっくりしました」
 たった一言そう言うだけで精一杯。
 クラウドさんが私を見て話しかけてくれる事が本当に嬉し過ぎて、頭がフワフワと変な感じがする。
 でも、そんな私の目の前でクラウドさんはすぐに視線をアイリさんの方へ移してしまった。
「それにしても、アイリさんがセブンスヘブンに来てるとは思わなかったな。もっと飛ばして帰れば良かった」
 穏やかな声音のクラウドさんに、胸がチクンと痛む。
 初めてクラウドさんに出会って、そしてティファさんという素敵な人がクラウドさんにいるって知った時に感じた痛みと少し似てる……かも…。
 アイリさんがクラウドさんに語りかける事も、その表情を変える事もないのだけど、それでもクラウドさんは、ティファさんやデンゼル君やマリンちゃんに語りかけるように、ゆったりと穏やかな顔で見つめていた。

 それは、きっとミディールでの出来事が、クラウドさんにとってとても特別で大きな出来事で…。
 その為に、アイリさんとプライアデスさんを特別な人だと自然に認識したんだって事も分かってる。
 でも、それでも…。
 とても悲しく感じてしまうのは……私の心が狭いから…だよね…。
 そして、悲しい以上にアイリさんを妬む気持ちがあるのは……私の心が醜いから……だね。

 さっき、アイリさんと手を握った時に……アイリさんに手を握ってもらった時に、『アイリさんの事、物凄く好きになれるかもしれない』とか思ったくせに、ちょっとこういうことがあると、途端に正反対の感情に支配されてしまうんだから…。


 本当、私って最低。


「な、だからリリーちゃんは病気なんだよ」
「え…?」
 俯き加減になって、独り落ち込んでる私に、グリートさんがそっと囁いた。
 顔を上げた視線の先で、グリートさんが笑っていた。
 その笑顔は、私が今まで見たこともないくらい穏やかな、年上の男性の優しい微笑だった。
「クラウドさんが好きだから、他の人に彼が優しくすると嫉妬する。でも、嫉妬だけじゃ終わらなくて、嫉妬してしまう自分に嫌気が差して『私って、サイテー』とか思い込んで落ち込んでしまう……という『自己嫌悪病』がおまけでついてくる…だろ?」

 何で分かったんだろう…。

「あ、今『何で分かったんだろう?』とか思っただろ?」
「うぇ!?」
 びっくりし過ぎて変な声を上げた私に、グリートさんは笑いを堪えながらも肩を震わせている。
「え…?え…??」
 な、何で分かったの!?

「だってさ、リリーちゃん、分かりやすすぎ。もう、『目は口ほどにものを言う』って諺そのまんまなんだもんな!」
 ヒーヒー笑い転げるグリートさんに、私は顔がどんどん熱くなるのを感じてしょうがなかった。
「そ、そんなに笑わなくても…」
 ボソボソと呟くような私の抗議の言葉が、全然力を持ってないって事くらいは分かってるもん。
 でも、本当にそこまで笑わなくても…。
「兄さん、まさかリリーを苛めて楽しんでるんじゃないでしょうね…」
 ラナの不機嫌そうな声で、私はハッと顔を上げた。
 途端に皆の不思議そうな視線が、私とグリートさんに集まっているのに気づいた。

 う……。
 全然気づかなかった。

「いや、だってな。本当に珍しいくらい真っ正直だからさ。ついつい」
「兄さん!」

 恥ずかしくて俯き加減な私を余所に、グリートさんとラナがいつものじゃれ合いを始めてしまう。
「グリートお兄ちゃんとラナお姉ちゃんは本当に仲良しだよね」
「そうだよなぁ」
 お盆を胸に抱えたまま、ご機嫌のマリンちゃんに、デンゼル君がコクコクと頷く。
 それを見たティファさんが、微笑みながら子供達を見つめた。
「あら、デンゼルとマリンだって負けてないわよ?」
「「ええ〜、そうかなぁ…?」」
 途端に顔をしかめたデンゼル君とマリンちゃんに、
「……何でそんなに意外そうな顔をするんだ…?」
 と、クラウドさんが困ったような笑みを浮かべた。
 セブンスヘブン名物仲良し家族のそんな会話を聞きながら、私は何となく落ち着かない気持ちのまま、テーブルに放ったらかしになっていたグラスに手を伸ばして一気に煽った。


 今にして思えば、何でそんなにお酒を飲んだんだろう…?って思うんだけど、その時は、自分の汚い心がイヤで仕方なかったっていうのもあるし、それをさり気なく受け止めてくれたグリーとさんとラナがとても嬉しくて、でもとっても申し訳ない気持ちもあったりして、更にはいつも守られてばっかりで情けないなぁ、とまたまたつまらない自己嫌悪状態になった……と言う何とも複雑な状態だった…。

 だから、つい……。

 飲み過ぎた……みたいで……。



「リリー…大丈夫…?」
 ラナの綺麗な顔が、不思議と妙に歪んで見えるのは…何故?
「へーきへーき…あ〜、楽しいねぇ〜」
「…平気じゃ無いだろ…」
 突っ込むグリートさんの端整な顔も何だか歪んでるのは…何故?
「ん〜…楽しくないですか〜…」
「リリーって酔っ払うとハイになるのね…」
 って言いながら肩を竦めるラナが、やっぱり少し…?ん〜、ちょっといつもよりも歪んでる…みたいな……?

 ん?おやや?それよりも、何だか人数が足りない気がするなぁ…。

「あれ〜?そう言えば、アイリさんとプライアデスさんは〜…?」
「「……覚えてないの…?」」
「わ〜、流石兄妹!綺麗にハモッタねぇ!!」
「「………」」

 ん〜?何でそんなに困った顔してるの〜…?私、褒めたんだけどな…。もしかして、イヤだったのかな……?
 私は一人っ子だから、お兄ちゃんのいるラナが本当に羨ましいし、ラナの様な妹のいるグリートさんが本当に羨ましいのに……。
 二人共大好きなのに〜……。

「リリーちゃん、イヤだったとか思ってないからな。勘違いして泣かないでよ…?」
「お〜、本当にグリートさんって超能力者みたい〜」
「「………」」
「それで、二人はどうしたの?」

「二人なら、今、私とデンゼルの部屋だよ」
 可愛い声がするから目線を右下に下げると、看板娘ちゃんがクリクリの大きな瞳を私に向けていた。
「あ〜、マリンちゃん。相変わらず可愛いね〜」
「……お姉ちゃん、酔っ払ったの?」
 マリンちゃんが心配そうな顔をしてるけど、その顔もやっぱりいつもと違って霞んでたりするのは…何故?
「何でマリンちゃん達の部屋?」
 首を傾げる私に、ラナが肩を竦めた。
「アイリが椅子の上で舟をこぎ始めたのは覚えてる?」
「……?『椅子の上で舟のこぎり始めた』って何?」
「”舟のこぎり始めた”じゃなくて”舟をこぎ始めた”だよ……。ま、ようするに寝ちゃったんだ」
 益々首を傾げる私に、グリートさんが苦笑しながら説明してくれた。
「あ〜、寝たんですか〜」
「「「…………」」」
 手を打った私を、グリートさんとラナばかりでなく、マリンちゃんまでが何故か心配そうに顔を見合わせている…様に見えるのは……気のせい…?
 ん〜、でもアイリさんってそんなに眠そうだったっけ?
「ん〜?でもいつの間に〜?」
「少し前だよ。ほら、リリーお姉ちゃんがライムサワーを頼んだ時」
 マリンちゃんの言葉に、今から少し前の事を思い出した。


『あ、姫はそろそろお休みしたいらしいな』
『うん。そうみたいだね。すみません、ティファさん、ちょっと』
『はぁい、あら?』
『すみません。アイリがそろそろ限界みたいなんでおいとましようかと…』
『あら、でもリリーちゃんはお酒が今来たところでしょう?良ければ私達の部屋で少し休まれたらどうかしら?ねぇ、クラウド』
『そうだな。折角来てくれたんだし、まだ時間も早いしな』
『じゃあ、私のベッド使って使って!!』
『あ〜、マリンだけズルイ!俺のも使ってよ!』
『だって、アイリさんは女の子なんだもん。同じ女の子同士のベッドの方が良いに決まってるもん、ねぇ、そうだよね?』
『『『『『確かに…』』』』』
『ちぇ〜!』
『じゃ、マリンちゃん。悪いけどベッド貸してくれる?』
『はい!!じゃ、こっちです』


「あ〜、そうだった〜、思い出した〜」
「……本当に大丈夫…?」
「だいじょぶ、だいじょぶ!もう、いっくらでも飲めるよ〜!」
「「いや、それ以上はもう止めて」
 グリートさんとラナが、ガックリと肩を落とす。
 言葉だけでなく、仕草までバッチリ揃ってるから、もう、可笑しくて笑いが止まらない!

 ケラケラ笑っていると、ティファさんが目の前のテーブルへ料理を運んでやって来た。
 その途端、笑いの発作がスーッと引いていく。

 グリートさんとラナは、笑いの治まった私に不思議そうな、戸惑ったような顔をしていたけど、私はただただ、ティファさんを見つめ続けた。

 スラリとした肢体に抜群のプロポーション、スッキリとした目鼻立ちの整った顔に浮かべられた女神のような微笑、そして、見せ掛けだけではない本当に素敵な人格を兼ね備えた憧れの人。
 どう考えても……。

「不公平だなぁ〜」
「リリー?」

 思わず零れた心の暗部に、ラナが怪訝そうな顔をする。
 グリートさんも、いつものお調子者の仮面を外して、真面目な顔をして私を見つめた。
 私は、お酒のせいか……、湧き上がってきた感情に抗う事が出来なかった。
 視界が見る見るうちに滲んでいく。

「だって……、ティファさんって容姿も性格も完璧で、料理も上手で……。それなのに、私は取り得なんか何にも無いし…、性格悪いしブサイクだし……、もう、同じ女の子としてどうなの、これ…?」
「それにそれに…。
 ティファさんは、私が初めて好きになった人が恋人だし…」
「私……もう、こんな事ばっかり考えちゃって、本当に嫌な奴だし…」
「クラウドさんが、アイリさんに話しかけただけで物凄く嫉妬しちゃうし…」
「それなのに、アイリさん、私の事、全然嫌がらないし……」
「私の周りの女の子って、本当に素敵な子達ばっかで……」
「もう、私、こんなんじゃ駄目なのに、どうしたら良いのか分からないよ〜!」

 グシグシと涙が零れる私に、ラナとグリートさんは顔を見合わせると同じ様な表情で苦笑した。
 それは、全然嫌そうでなくて…。とても温かな苦笑。
 今の私には、勿体無いくらい、温もりの溢れた苦笑だった。

「今のリリーは私がライの事好きだって分かった頃と似てるみたいだね」
「ふえ?」
 何を言われたのか分からない私に、リリーは椅子を寄せるとピッタリ私にくっ付いてきた。
「私もライの事が好きだな…って思った時に、アイリに対して物凄く嫉妬したの。だって、ライったら今と同じでアイリ以外は全然眼中無いんだもん」
「そうそう。それでよく拗ねてたよな〜、俺達」
 懐かしそうな目をしてグリートさんがグラスを傾ける。
「うん。それで、いつの間にか『アイリなんかすぐに死んじゃうから、ライもその時には気づいてくれる』ってリリーよりもうんと酷い事思ったりしてたんだなぁ、これが」
 恥ずかしそうにそう言うと、ラナは目を丸くする私からそっと視線を逸らした。
「アイリって体力が普通の人の半分くらいしかないんだ。魔晄中毒の症状の一つで、免疫力が極端に低下しててね。今夜、急に寝ちゃったのもそのせい。寝てないと身体が持たないんだ〜」
 寂しそうなラナから視線を逸らせない。
 綺麗な顔をした友人の語る言葉に、全神経が集中する。
「それで、私達がまだまだ小さい頃、アイリは何度もヤバイ状態になったことがあるんだけど、初めてベッドの上で苦しんでるアイリを見た時、『ああ、私って本当にバカだった!』って気づいたの。だって、アイリが苦しんでる姿、とてもじゃないけど正視出来ない。それに……きっと、私の好きなライは、アイリが死んだその瞬間に死んでしまうって事もわかったし…」
「え…?」
 またまた良く分からない私に、グリートさんが口を開いた。
「ようするに、俺達と仲良くなったライは、姫と出会ってからのライなんだよ。それって、ライの中に姫が生きてくれるようになってから…ってことなんだよな。だから、俺達が好きになったライは『姫と一緒にいるライ』ってわけ。分かる?」
「…わかる…ような気がします…」

 うん、何となく分かる。
 アイリさんを大事にしてるライさんが、今のライさんという一人の人間に成り立ってるって事…だよね?

「それと一緒。リリーが好きになったクラウドさんも、既にティファさんという人がクラウドさんの中にいたわけでしょ?もしも、出会った頃にクラウドさんがティファさんと一緒にいなかったら、リリーはクラウドさんのことを好きになってたかどうかわかんないと思わない?」
「そう……かな?」
「ま、一目惚れくらいはしたかもしれないけど、その次に会った時には幻滅してた可能性があるんじゃないか?」
 グリートさんが煮物を口に運びつつ笑って見せた。

 …そうかも。
 …そうなのかもしれないな…。

「それに、リリーは自分の魅力に全然気づいてないんだから、呆れてものが言えないわ」
「はい!?」
 思わぬ言葉に、びっくりした私のおでこを強く指ではじくと、ラナはにっこりと笑った。
「ま、そのまま自分の事には鈍いリリーが好きなんだけどね〜!」
「ん、俺も〜!」
「私も〜!」「俺も俺も!」
 いつの間にか、私達のテーブルに来ていたデンゼル君とマリンちゃんが、ニコニコと笑顔で手を上げてくれていた。
「リリー姉ちゃんが酔っ払うなんて初めてだよな〜」
「何かあったのかと思って心配したけど、大丈夫だよ〜?クラウドもティファも、リリーお姉ちゃんの事大好きだから!」
 子供達とラナとグリートさんの笑顔が有難すぎて、また涙が出てきちゃったよ…。

「ありがとう、私も皆の事大好きだよ!」

 そう口にした私の頬を、温かいものが一筋流れた。

 そして…。



「大丈夫か…姉ちゃん…」
「やっぱり泊まっていかれた方が良いんじゃないかしら…?」
「いえ、きっとそんな事したら、今後二度とこのお店には来ないと思いますから…恥ずかしがって…」
 どこか遠くでラナの声が聞える。
「そうか?気にする事なんか無いのに…」
 クラウドさんの心配そうな声も聞える。
 それなのに、どうにも瞼が重くて目が開けられない。
 それに、何だか身体が浮いてるみたいな感じがする…。
 温かくて、安心出来る力に抱っこされてるみたい……何で?
「それじゃ、本当にお世話になりました。また来ても…良いですか…?」
「「当然だよ!」」
 恐々そう言うプライアデスさんの言葉に、子供達が元気に返事をするのが聞える。

 あ〜、駄目…。起きれない、眠過ぎる…。
 ユラユラ身体が揺れるのを感じながら、「それじゃ、また!」というラナの声を聞いた気がした。

「それにしても、この前はラナで今夜はリリーちゃんか。順番で言うと今度はライかな?」
「やめてくれよ、そんな順番いらないって」
「フフ、リリーったら気持ち良さそう」
「うん、本当に。こうしてみてると動物の親子みたいだよ、リト」
「うお!?齢二十四にして既にこんな大きな子持ちかよ!!」
「大声出さないでよ!リリーとアイリが起きちゃうでしょう!」
「「ラナの方が大きいよ…」」

 そんな幸せになれる会話を子守唄に、私はそのまま深い眠りに落ちていった。




 翌日。
 ホテルのベッドで二日酔いと苦しみながら、ラナとプライアデスさん、そして何より私を運んでくれたグリートさんに謝りたおす事になったのは、言うまでも無い。



あとがき

はい、予定よりもうんと長くなってしまいましたが、My hero6完結しました。
ああ、ドウシテこんなに長くなったのでしょう……?本当に予定通り運べない管理人でごめんなさい。

今回は、リリーとラナの少し人間臭いところを書いてみたかったのですがいかがでしたでしょうか…?
ちょっと、これは……という部分もあったと思いますが、私自身がリリーやラナの立場ならどうだろう…、みたいな感じで書いてみました。というわけで、リリーとラナで『うわ!性格最悪!!』とか思われたら、
それは私自身です(爆)。どうか笑って許してやって下さい(苦笑)。

気づけば、『My hero』シリーズも6回目ですね…。書き過ぎな気もしますが、好きなキャラ達なのでこれからも書くと思います(汗)。どうか許して下さる方は、これからもお付き合い下さいませ!

ではでは、ここまで読んで下さって有難うございました!