*このお話は、『Missionシリーズ』に若干絡んでおります。 「あ〜……、ラナ……?飲みすぎじゃないかなぁ……」 「そうそう…。リリーさんの言う通りだと思うな…僕も…」 恐る恐る口にした私達は、 「何よ……放っといて……」 ギロリ…と一睨みされて、あっさり「「ごめんなさい」」と謝るしかなかった…。 My hero 7(前編)ラナ達に会ったのは、実に二ヶ月ぶりのこと。 突然『本日セブンスヘブンに集合!』のメールに驚いたけど、父さんと母さんが店のトラックを貸してくれるのを承諾してくれて、私は何とが緊急招集に従うことに成功した。 ラナ達は既に待ち合わせのセブンスヘブンの前にいたけど、いつもなら私を見て真っ先に声をかけてくれるはずのラナが何だかブスッとしている。 戸惑っている私にグリートさんが、「あ〜、ごめんねリリーちゃん。妹が何だか急に招集かけちゃってさ〜」と、いつも見せるお調子者な口調ではなくて、『ラナのお兄さん』として頭を下げてきた。 そのグリートさんに私はびっくりして、何が何だか…。 オロオロしていると、「取り合えず席は取ってるから…入ろうか?」と、ライさんが優しい笑みを浮かべて店の中に皆を促した。 そして、いつも通り飲み始めたんだけど…。 どうも、今日はすごぶる機嫌が悪いらしい私の親友は、さっきからお酒ばっかり口に運んで、美味しいティファさんのお手製料理をあまり口にしていない。 普段なら絶対に『これ、美味しいよね〜!』とか言いながら、料理も味わって、それでもって沢山おしゃべりしてくれるのに、これじゃあ、ただただ酔っ払いたいだけ……ようするに『自棄酒』じゃない…。 何やら不穏な空気を感じ、私は隣に座っているグリートさんをジッと見た。 グリートさんは、苦笑しながらラナに聞えないように私に顔を寄せると「上司とうまくいかなくてね」と、説明してくれた。 そのラナの上司は、何とライさんと同い年だというのに、もう小隊長になっているらしい。 ラナはまだ入隊してから半年経たたない新米なので、まだ二等兵。 だから、小隊長って言えば、かなり上の上司に当たる。 その上司とことごとく意見が合わないのだそうだ。 「ま、俺もあの上司の事は気に入らないんだけど、ラナはそれ以上にもう、生理的に受け付けないらしいんだ」 苦笑しつつ、お酒のせいで赤い顔をしているラナを見つめる。 その眼差しは、呆れながらも妹を心配して慈しんでいて……。 私は一人っ子だから本当に羨ましいなぁ…。 それにしても、一体何があったんだろう…。 ラナは、確かにお嬢様育ちで時々私の常識と合わない事があったけど、それでもいつもその『違い』をお互い楽しむ余裕すらあって、そんな『違い』をお互い尊重し合ってこれまで来ていたと私は思ってる。 だから、ラナが決して簡単に人を毛嫌いする人間じゃないってこともちゃんと知ってる。 人間を外見だけで…あるいはその育った環境だけで判断する人じゃない。 そのラナが、ここまで毛嫌いする上司…。 ある意味かなり貴重な人材だと思うわ。 何だか、一目だけでも会いたいなぁ…。 「そこ…何の話をしてるのよ」 ギラッと睨まれた私達(正確にはグリートさんに…だけど)は、文字通りビクッと肩を震わせてフルフルと首を横に振った。 ここまで超絶に機嫌の悪いラナ…。 ハッキリ言って……かなり怖い。 WRO隊員の人達の中には、ラナのように女性隊員も割りと多いって聞くけど、ラナみたいに一見『守ってあげなくちゃ!』って思っちゃうような華奢な美人でも、実は『守られる必要なんかサラサラないのよ!』って外見と中身が不一致な人…、他にいるのかなぁ…。 などと、実にくだらない事を考えていた私達のテーブルに、 「ラナお姉ちゃん、本当に今夜はどうしたの?」 と、看板娘のマリンちゃんが料理の入ったお盆を持ってやって来てくれた。 マリンちゃんは、この店の看板娘で歳の割にとっても中身が大人な可愛い女の子だ。 私達が店に入った時から、ラナの不機嫌がただならない事を敏感に察知して、極力刺激しないようにしてくれている。 でも、いつまで経っても機嫌が直らないラナに、とうとう我慢出来なくなったみたい。 心配そうに大きな瞳を翳らせ、ジッと臆する事無くラナを見上げる。 不機嫌モード炸裂中のラナを真正面からジッと見上げられるマリンちゃんに、私は感服しちゃった。 だって、私もグリートさんもライさんも、ラナの一挙手一投足にビクビクしっぱなしだったのに、こんなに小さな女の子が真っ直ぐに見据えて声をかけてるんだもん。 う〜〜ん、本当に何て肝の据わった女の子なのかしら…。 ラナは、流石にマリンちゃんに八つ当たりするのはよろしくないと思ったのだろう。 苦笑いを苦労して浮かべると、 「ま、仕事でちょっと嫌な事があってね…」 と一言だけ口にした。 今のラナには、その一言を口にするのもしんどいくらい、はらわたが煮えくり返っているらしい…。 だから、その一言を口に出来たラナを、私は『えらいよ!!』心の中で賞賛した。 え…? だって、実際に口に出してそんな事言ったら、途端にこれまで我慢していた文句の数々が、堰を切ったように溢れ出てくるもんじゃない? 私なら…多分そうなると思うんだよなぁ。 「お仕事かぁ…。やっぱりWROの人達って大変だよね」 心のこもったマリンちゃんの言葉に、ラナはほんの僅かだけ機嫌が良くなったらしい。 「そうなのよね。何だか『女だから』みたいな事も言われちゃってさ…。全く、今時『女も男も』ないじゃない!ったく、歳は若いのに中身がおっさんなのよ、あの男は!!」 「ふ〜ん、その男の人にラナお姉ちゃんは『女だからダメ』って言われたんだ!それは許せないよね!!」 ラナの言葉に、マリンちゃんが可愛い頬をプックリ膨らませて怒って見せた。 実際に、本気でラナの言葉に腹を立てているらしい看板娘は、その怒った顔も可愛らしい。 ところが…。 肝心のラナは、本気で怒ってくれたマリンちゃんに、「あ〜、いや…そういうもんでもなくて……」と、何故か急に歯切れの悪い口調になって、しどろもどろしている。 そんなラナを残して、マリンちゃんは仕事に戻って行った。 その足取りがいつもより少々荒かったのを目ざとくカウンターの中のティファさんが気付き、看板娘から自然に私達のテーブルへと視線を流してきた。 何となく気まずい空気が私達を支配する。 首を傾げているティファさんに、何となく強張った笑みを浮かべて私達はぎくしゃくと会釈をすると、女店長の柔らかな笑みが返って来た。 「な、何か変に疲れたな…」 「そうだね…」 グリートさんとライさんが小声でささやき合いながら、それぞれのグラスを一口啜った。 それにしても、その『上司』って人は、本当にどんな人なんだろう…。 ちょっぴり気になる…かな…? 「なぁなぁ、ラナ姉ちゃんさ。やっぱり何か怒ってんだろ?」 マリンちゃんと入れ替わるようにしてデンゼル君がひょっこりを顔を出した。 「あ、デンゼル君、こんばんわ」 「ライ兄ちゃん、こんばんわ!!」 ニッコリ笑うライさんに、デンゼル君もニッと笑顔を返すと、そのままジーッとライさん顔を見つめた。 「え……と、なに?」 思わずそんなデンゼル君にたじろくライさんに、デンゼル君は二カッと笑うと 「うん、やっぱりライ兄ちゃんの目の色、綺麗だよなぁって思ってさ!」 俺もライ兄ちゃんみたいに綺麗な色だったら良かったよなぁ…、と、両手を頭の後ろで組んで笑って見せた。 そんなデンゼル君に、ライさんは照れたように微笑むと「ありがとう」と、一言口にした。 「それにしてもさ。今夜はアイリ姉ちゃん来てないんだな。マリンとティファが残念がってたよ」 「あ〜、アイリは僕の家にいるからね。今夜急に飲みに来る事になったから迎えに行く余裕がなかったんだよ」 優しくそういうライさんに、デンゼル君は首を傾げた。 「何で?一緒に住んでんじゃないの?」 ゴホッ!! デンゼル君の言葉に、ライさんが咳き込む。 グリートさんがニヤッと笑うと、小さくまだ咽返っているライさんの背中をポンポン叩きながら、 「俺達隊員は専用宿舎で寝泊りするのが規則なんだよな〜。本当、折角大切な姫が家にいるのに、会えるのは公休の日だけって寂しいよなぁ、プライアデス君?」 悪戯っぽく顔を覗き込む。 真っ赤になって「う、うるさいな!良いんだよ、別にそれでも!」とグリートさんの腕を払いのけるライさんに、デンゼル君が「そうなんだ。一緒に暮らせてないんだ〜。それは何か寂しいよな」と、うんうん物知り顔で頷いている。 『本当に意味分かってるのかしら……』 苦笑しながらそんなやり取りを見ている私の目の前では、相変わらず仏頂面で(もっとも、先ほどのマリンちゃんとのやり取りで若干表情が穏やかになったんだけど)ラナはグラスを傾けている。 「それで、ラナ姉ちゃんは何で不機嫌なんだよ。そんなに機嫌が悪いのって珍しいじゃん」 ライさんの瞳の色とアイリさんの話題で話が逸れたと内心ホッとした私の心を、実に簡単に一蹴してくれたデンゼル君が少し憎い。 グリートさんも、再度質問したデンゼル君に「勘弁してくれよ…」と、小声で呟いている。 ラナは……と言うと、私達の心配を余所に、先ほどのマリンちゃんの一件から少し冷静になったらしい。 「ま、仕事で色々あるのよ……」 苦笑してお酒をちびりと口にした。 「ふ〜ん、大変そうだもんなぁ、WROの隊員さん達もさ〜」 デンゼル君がのほほんとさり気なく口にしたその一言に、私は何故か妙な引っ掛かりを感じた。 そう言えば…、さっきのマリンちゃんの一言にも何やら引っかかるものを感じたんだけど……はて…もしかして…? 「デンゼル君って、ラナ達意外にもWROの隊員さんと知り合いなの?」 「「え?」」 私の言葉に、グリートさんとライさんが反応する。 「えっと、だって何だか他にも知ってる感じがする言い方だったから…」 集まった視線にドギマギしながらそう答えると、デンゼル君は、 「うん、統括以外の人なら一人だけど知ってるよ。シュリって人なんだ」 ブーーーッ!!! ラナが飲みかけのお酒を勢い良く吹き出した。 「わわ!!何だよ、姉ちゃん汚いな!!」 慌ててデンゼル君が台拭きをカウンターから取ってきてテーブルを拭く。 被害に合った料理は下げられて、一部始終を見ていたらしいティファさんが代わりのものを持ってきてくれた。 その表情は、笑って良いのか考えているみたい。 時折、口の端がピクッと上がりそうになっている。 「はい、これ私からのおごりね」 「あ、どうもすいません」 ティファさんの実に心優しい気配りに、頭を下げて新しい料理を受け取った時、まともに動けるのが私だけなんだって漸く気がついた。 ラナはお酒を吹き出した時から何だか放心状態でデンゼル君を凝視している。(デンゼル君が妙に固まってしまってるのが何とも可哀想…)。 そして、なんとグリートさんとライさんも、同じ様にデンゼル君を呆然とした顔で見つめてるのよ…、これっておかしくない…!? 「えっと……まさかさぁ、ラナ姉ちゃんの不機嫌の元凶って……」 すっごく言いにくそうにデンゼル君が口を開く。 その人物の名前を口にするのは流石に気が引けたのか、そこで言葉を切ってグリートさんとライさんに視線で助けを求めた。 「「…………」」 二人は黙ったまま、コックリと一つ頷き、恐る恐るラナを見た。 ラナは、まだどこかボーっとした顔をしていたけど、ピクッと頬を引き攣らせて急に笑い出した。 「ふ、ふふふふ…おほほほほほ……」 『『『『怖!!!』』』』 ラナ以外の全員が固まる。 あ……隣のテーブルの人も気味悪そうにこっち見てるよ……。 そんな凍りついた空気の中、ラナはこれまで堪えに堪えていたものがプッツリと切れてしまったみたいで…。 もう、凄い勢いでその上司への不満を捲くし立て始めた。 「べ、べっつに〜〜!あんな偏屈頭の無神経・無愛想男の事なんか、全っ然気にしてなんかないわよ、ええ、私は至って普通よ、これからも『キミは大財閥のご令嬢だから、財閥の御曹司の所へ行くのには何の問題もないだろう』とか『ナンパされた…?それはキミが女性として認められた証拠ではないか、何をそこまで怒る必要が?おまけに全治二週間の怪我をさせただなど論外だな』とか『キミがただ街中を歩いてナンパされ、その相手をどうこうしたのなら何も言わないが、今回は俺がキミに命令して動いてもらったんだ。その結果、相手に怪我をさせたというのはどう考えても責任問題だな』とか『分かった、これからはこういう仕事はキミには回さない。『ティアマー・タシュミト』に命令する事とする。』とか『これから一週間、任務に就かないでいい。大人しくしていろ』だなどと横暴極まりない事をネチネチネチネチ言われても!絶対にWROを辞めたりしないんだから!!!」 一気に不満をぶちまけると、グラスをグイーッと男前に空け、ダンッ!とテーブルに置いた。 その音に、私達は勿論、隣のテーブルのお客さん達も肩をビクッと震わせる。 「なぁにが『ティアマー・タシュミト』に命令する…よ。ハッ!あんな女がまともに命令を遂行出来るわけないじゃない!」 吐き捨てるようにそう言ったラナの言葉から、その『ティアマー』なんとかさんも、ラナにとっては気に入らない人物に入る事が分かってしまった…。 そっと固まっているグリートさんの服を引っ張って、耳を寄せる。 「あの…ティアマー何とかさんって……?」 「あ、ああ…。ラナの同期でルームメイトなんだけど…この女の子がまた厄介でね…」 意味ありげに青い顔をしているライさんを見る。 「アイツにどうも気があるらしいんだ…」 「え!?」 それは……確かにラナにとっては気に入らないわよね…。 「ま、それだけじゃなくてさ。その女の子、どうも男にだらしないっていうか……。ライの前はその『上司』だったしなぁ。まぁ、ようするにラナとは正反対なんだよなぁ」 ヒソヒソと私に教えてくれるグリーとさんが、やれやれ…と肩を竦めて見せた。 グリートさんもそのティアマーなんとかさんの事があんまり気に入らないみたいだね…。 「あ〜、なるほど。この前言ってた話で怒ってるのか」 「「は!?」」 コソコソと話している私達の耳に、デンゼル君が妙に納得したように腕を組んだ。 それに対して、ラナとライさんが間の抜けた声を上げる。 「そうよ……そもそも、どうしてデンゼル君があの嫌味野郎を知ってるわけ!?」 鼻息も荒く、ラナが看板息子に迫る。 その顔はもう鬼気迫るものがあって、思わず私はラナの両肩を引き戻した。 「落ち着いて、ね、落ち着いて話しましょう…?」 ハラハラ見守る視線を背中と言わず、全身で感じる。 今や、店内で私達のテーブルは注目の的だ。 そりゃそうよね。 いきなり気味の悪い笑い声がしたかと思ったら、立て板に水のような勢いで上司の愚痴を披露し、挙句の果てには店のアイドル、看板息子のデンゼンル君に絡んでるんだもの…。 注目しない方が無理よね…(涙)。 「いや…だってさ。ついこの前、その事件…って言うのかな?それに俺達も巻き込まれてたから」 「「「はい!?」」」 WRO所属の三人が、デンゼル君の口にした事実に目を見開く。 「この前って……」 「あの、シュリ小隊長が潜入捜査したっていう…」 「それで、リーブ統括が直々にシエラ号で……」 途切れ途切れに言葉を繋いでいく三人に、デンゼル君が「そうそう、それそれ」とどことなく得意げな顔をして頷いている。 「その時もさ〜、色々あったんだけど、今はこうして落ち着いてるし、前と変わらない生活を送れるようになったんだけど、それってシュリの兄ちゃんが色々根回ししてくれたからなんだぜ?だからさ、そんなにラナ姉ちゃんが言うようなイヤな奴じゃないと思うなぁ」 のほほんとした顔でデンゼル君がそう言った。 その言葉が、WRO所属の三人に聞えたかどうかは……ちょっと分かんないな…。 だって、三人ともすっかり固まってるんだもん。 その三人を余所に、デンゼル君は首を傾げて見せた。 「でもさ…。確かその時……シュリの兄ちゃん……」 デンゼル君が何かを言いかけた時、 「デンゼルお願い、手伝って!」 カウンターからティファさんがデンゼル君を呼んだ。 何だか両手に沢山の料理の乗ったお盆を掲げている。 「あ、ごめんティファ、すぐ行くよ!!」 じゃ、またね。 そう言い残して、デンゼル君はパタパタとカウンターへ戻ってしまった。 すっかりフリーズしている三人を残して……。 私に一体どうしろと……? しかも…『確かその時…』の続きが気になるじゃない!! 妙に宙ぶらりんな気持ち。 店の喧騒がやけに遠く感じる。 何だかポツンと取り残されてしまったような、……そんな心寂しいものを感じるのだった…。 お願いだから…誰か助けて……。 何だかちょっぴり泣きそうな気分になりながら、私は固まってしまっている三人を前に、すっかり温くなったカクテルを口に運んだ。 あとがき。 はい、やっちゃいました(苦笑)。 シュリと当サイトのオリキャラ達の関係のお話し! 何だか仲悪げですね(苦笑)。 これからどうなるのかは…次回という事で(逃避) |